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「Catch up 日本代表」~2023.10.17 国際親善試合 日本×チュニジア ハイライトレビュー

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ショートパスにこだわり続けて呼び込む先制点

 W杯予選前最後の親善試合の相手はカナダと同じく昨年親善試合で対戦したチュニジア。連勝を続ける日本は昨年敗れた相手にリベンジを期することとなる。

 試合は日本の保持でスタート。チュニジアはジェバリが中盤に基準を設定する形で5-4-1で受けに回る。もっとも1トップのジェバリが完全に日本のCBを放置したわけではなく、折を見て捕まえにいく。2列目からはもう1枚サポートに来ることが許されており、ロムダンが特に前に入ることが多かった。こうなるとチュニジアの陣形は5-3-2っぽくも見える。

 基本的にはジェバリは後方の選手と日本のCHを受け渡しながら守っているが、2列目まで引き出されるようになるとギャップが出ることもしばしば。日本はCBのキャリーからそうしたズレを狙っていく。板倉が6分にドリブルから相手を引き出してパスを繋いだシーンは日本のビルドアップの狙い通りだろう。

 チュニジアのブロック守備にはやや左右の差があったように見えた。ロムダンが前にスライドする右サイドはWBのドレーガーが前にスライドすることがセットだったが、左サイドはアシュリやライドゥニが前に出ても後方のスライドはなし。よって、日本はライン間のギャップを覗くのが容易にできる状況だった。

 よって、日本の保持は久保や伊東がライン間で受けて前を向き、右の背後を狙う形で前進するケースが多かった。アンカー気味に振る舞うスキリの危機察知能力が低ければもっと日本は多くのチャンスができていただろう。チュニジアの個々人の守備における対人能力はさすがで、日本はパスやコントロールがズレるとあっさりと寄せられては回収される場面もあった。

 左サイドのビルドアップはできればもう少し中山をうまく活用したかったところ。彼の重要度が増せば、ドレーガーが前にスライドするところに迷いが出るようになる。

 左サイドは旗手も含めて工夫はしていたが、右に比べると構造的に壊せているシーンは少なかった。守田の助けを借りて中山が裏に抜けたシーンが一番うまくいっていただろうか。もっとも、これはチュニジアの守備ブロックの出来の差にも依存する部分だとは思うが。

 日本のプレッシングは古橋と久保をスイッチ役として前から一気に追い込んでいくスタイル。スイッチが入っていない時はSHがチュニジアのWBを見るなど、重心が低い状態と使い分けていた。

 カナダ戦では悪い意味で気になった古橋の守備はメリハリが効いていてとても良かったと思う。GKまで追い切る姿勢もさることながら、サイドや低い位置にサポートに入るタイミングもよく、ボールを奪った後に前に顔をだす馬力があるのもいいところである。日本は高い位置のプレスに呼応するように遠藤のチェイシングや冨安の高い位置でのインターセプトからハイラインでチュニジアの攻撃をストップしていく。

 20分を過ぎると、チュニジアは前方のプレスの匙加減を学んできた様子。特に守田には受け渡しで厳しいマークができるようになり、保持で自由を与えないようになってくる。こうなると日本の保持が滞るように。チュニジアはサイドからのキャリーでギャップを作り、SBの背後を取るシーンが出てくるなど、前半の中盤からはやや巻き返した印象である。

 チュニジアの日本のCBへのプレスが強くなったわけではないので、冨安と板倉は保持でショートパスからチュニジアの中盤をズラすトライを愚直に続ける選択をする。チュニジアのスライドが先か、日本が中盤を経由するワンタッチパスで切り抜けるのが先かのスピード勝負を呈していた前半の終盤。この勝負を制したのは日本だった。

 チュニジアのライドゥニやアブディ周辺(日本から見ればライン間の右のハーフスペース)を狙うパスワークから溢れた球は前線の古橋へ。これを冷静に流し込み、凱旋ゴールをゲット。ややアクシデンタルではあるが、日本のパスワークの狙いの延長線上から生まれたゴールと言っていいだろう。ハーフタイム前に日本はリードを奪うことに成功する。

 後半、日本はボールを持つターンが続く。チュニジアは明らかにプレスを強めており、縦への陣形の間延びを許容しながら日本のバックラインに迫って行く。ショートパスで繋ぐ形からチャンスも狙っていた日本だったが、菅原や伊東が前線に飛び出すなど、チュニジアが高いラインで守る形を牽制する攻め方をしていた。

 チュニジアは外→外で日本のSHとSBを釣り出してのハーフスペースに突撃する形は準備してきた形のようにも見えた。だが、日本の守備には見切られていた。この裏をフリにして違うルートを見つけることができれば良かったのだろうけど、そこまでの引き出しは今日のチュニジアにはなかったということだろう。

 日本のプレスの機能性は後半も持続。古橋が上田に代わっても前から強気でいく姿勢は持続。特に右サイドのユニットのプレス精度はさすが。後方支援役の遠藤が何の躊躇もなく出て行けているということは前からのプレスの限定である程度道筋が見えているのだろう。

 チュニジアは3枚の交代で4-1-4-1にフォーメーションをチェンジ。瞬間的に日本は4-4-2で様子を見ていたが、程なく再びプレスを開始。5-4-1の時と同じく初手でのプレスから相手の選択肢を削りながら、チュニジアを追い込んでいく。久保がプレス隊として前に出ていけなくなっても浅野と南野が上田の相棒を務めており、日本が前からのエネルギーを失うことはなかった。

 日本の追加点は入れ替わった左サイドのユニットから。町田の縦パスを浅野が落として、久保にボールが渡る。左サイドで抜け出した久保はラインを下げる前線の中で一人絞りながらインサイドに入ってくる伊東を発見。前線が裏に引っ張る動きと逆サイドのWGが絞る動きの掛け合わせはシンプルに超効くコンボ。王道と言える崩し方から日本は追加点をゲットする。

 アシストした久保はこの時間帯は左サイドの暗躍が目立っていた。プレス隊としての存在感は減退しても、カウンターの起点としての存在感は健在でファストブレイクの重要人物として日本の攻撃を支えていた。

 カナダ戦では終盤のプレスのトーンダウンが気になった日本だが、この試合では最後まで前線がプレスを牽引。遠藤と守田のコンビであれば前線の勝ち気な90分間のプレスも問題なく支えられることが今日も裏付けられる内容だった。

 最後は鈴木彩艶がバタバタしてしまったが、なんとか無失点で凌いだ日本。6連勝を飾りいい流れで二次予選に向かうこととなった。

ひとこと

 保持で粘り続けたCBコンビが印象的だった前半、トップ下久保の保持における暗躍とプレスを支えるCHコンビの存在感を感じた後半という感じの90分だった。

試合結果

2023.10.17
国際親善試合
日本 2-0 チュニジア
ノエビアスタジアム神戸
【得点者】
JPN:43′ 古橋亨梧, 69′ 伊東純也
主審:ワン・ディー

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