ビルドアップ・デスマッチは痛み分け
どちらのチームもセットプレーからチャンスを迎えた序盤戦。よって、試合の構造がなんとなく見えてくるのに10分ほどの時間を要した。
プレッシングはどちらのチームも強気。バックラインが降りてくるFWについていくあたりは下がるアタッカーについていく意識は強いのだろう。CBにもそこそこ厳しく当たる両チーム。アリソンは最近のブライトンのGKがそうなったようにボールを持ちながらどこが空くかを探していた。
リバプールの保持は大きな動きからマンツーを外していく。ロバートソンが最前線に駆け上がっていくあたりはこの試合の特殊性を感じる部分だろう。インサイドに絞るアレクサンダー=アーノルドも三笘とのどこまでついていくかの駆け引きを行うための手段になっている。
一般的にマンツー外しの有効な手段の一つとしてGKのCB化がある。リバプールもマンツー気味に噛み合わせてくるブライトンにこの策を採用。だが、これが裏目にでる。ファン・ダイクのマック=アリスターへのパスはショート。これをアディングラがカットして無人のゴールにシュートを打つ。ここがGKのCB化の難しいところ。本来ならば、ファン・ダイクを交わさなければシュートまでいけないところだが、アリソンがゴールマウスにいないのであれば、寄せられる前にシュートを枠内に蹴れば事足りてしまう。GKのCB化は失敗時の賭けるリスクは大きい。
高い位置からGKにプレスをかけていくスタンスはリバプールも同じ。サラーが2トップに入る4-4-2のような形からブライトンのバックラインにプレスをかける。フェルブルッヘンは今節も相手を引き付けながらのショートパスビルドにチャレンジをしていく。
ブライトンは滅多にCHが列落ちをしないのだが、序盤にはグロスが列落ち。このままではビルドアップで捕まるという危険な匂いを感じ取っていたのだろう。リバプールはショボスライが前に出ていくことでマンツー色を強めでプレスにいく。前から行く覚悟は感じる。
リバプールはプレスの枚数以上にヌニェスがフェルブルッヘンの右足から制限をかけて、左側に狙い撃ちすることができるかどうかがプレスの成否を分けている感があった。20分過ぎから30分にかけてはフェルブルッヘンが左右に自在に蹴り分ける。インサイドではスリーオンライン気味に後方の選手が上がることでかなりリバプールの高い位置への侵入を決めていた。
しかし、30分が過ぎるとヌニェスから再びフェルブルッヘンの右を切れる場面が増えてくる。ここからリバプールはビルドアップを咎めるカウンターから畳み掛ける。ダンクの縦パスのロストからバタバタしたカウンター対応であっさりとサラーがフリーになると、同点ゴールをゲット。
さらにはグロスの降りるアクションを潰し切ったショボスライがPKを獲得。前半のうちに試合をひっくり返す。
迎えた後半。ブライトンは三笘とマーチの左サイドに照準を絞る。こちらのサイドに3人目となるファーガソン、グロスを流すことでサポート役を作っていく。若干2-3-5のような形で前の5人は前線に飛び出しを図っていく。
しかし、ハイプレスを外したところからショボスライが決定機を創出。これをグラフェンベルフが決められない。この後のシーンのマック=アリスターもそうだがサラーを軸としたコンパスのようにMFが旋回するように右サイドからリバプールがゴールに迫っていく。
時間の経過とともにブライトンのプレスはトーンダウン。プレッシングに出ていくことができないようになり、合わせるようにリバプールもまったりとした保持を続けていく。
やや、弛緩した空気の中でブライトンはセットプレーから同点に。ダンクが面目躍如のゴールで試合を振り出しに戻す。
ここから先はグロッキーでオープンな撃ち合いを展開する両チーム。中盤は存在しない、互いのゴール前まで電車道で進み、シュート機会をセットする勝負に。だが、どちらのチームも3点目を手にすることはできず。試合は引き分けで勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
前半のビルドアップ・デスマッチは自分の中のサッカーの価値観がバグりそうだった。サッカーってこんなにビルドアップにリスク賭けていいんだっけ?的な。ミスったら失点との距離の近さがなかなかに考えさせられるものがあった。
試合結果
2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ブライトン 2-2 リバプール
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:20′ アディングラ, 78′ ダンク
LIV:40′ 45+1′(PK) サラー
主審:アンソニー・テイラー