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「Catch up Premier League」~Match week 8~ 2023.10.6-10.8

目次

ルートン・タウン【17位】×トッテナム【2位】

4バックで受けるチャンスタイムを活かせず

 ミッドウィークに試合があったのはルートン。トッテナムは3週連続で日程面でアドバンテージがある相手と対戦することになる。

 ルートンはこれまでの試合において、前から出ていって捕まえるのはいい流れを作る最低条件。しかしながら、この試合では微妙にトッテナムのバックラインの枚数と噛み合わないせいか、前から捕まえることができない。

 結果的にトッテナムはウドジェに専念していたブラウンの裏を取る形で余ったリシャルリソンから決定機を連打。しかし、このいずれも決めることができず、早々の先制点を逃す。中央を割ったポロもまたゴールを決め切ることができず、トッテナムにとっては嫌な流れである。

 とはいえ、ルートンも自陣からのバックパスミスから不要なピンチを招くなど苦しい展開。良かったことをあえて挙げるとするならば、カミンスキーがやたらとセーブを繰り返すことでリズムに乗れたことくらいだろう。

 20分になるとルートンはプレスの連動が噛み合い、中盤からのプレスでカウンターを打てるように。CKを得ることができれば、モリスとマディソンのミスマッチが使えそうなので、ルートンはCKさえ取れれば得点の機会があるという感じだった。事実、前半終了間際のネットを揺らしたシーンは可能性があることを具体的に立証したと言えるだろう。おそらくはアデバヨのファウルでゴールは認められなかった。

 時間は前後するが、30分からトッテナムはバックラインの噛み合わせを回避しながら空いている選手から運ぶことを徹底。これにより、再びルートンのプレスは連動しなくなり、トッテナムは押し込めるように。

 セットプレーさえ回避できれば怖いシーンもなく、再びワンサイド攻勢のリズムを掴んだトッテナム。再び試合を支配するかと思いきや、前半終了間際にシミュレーションでビスマが退場。まさかの誤算でハーフタイムを迎えることになった。

 後半、トッテナムは4-3-2と4-4-1のハーフ&ハーフのような形で組んでいく。ルートンは右サイドからトッテナムの4バックを引き寄せつつ、ファーサイドに余る選手を生かしてチャンスを作っていく。アデバヨが逃したチャンスは前半にリシャルリソンが逃したそれと全く同じものだった。

 そうした中でセットプレーから先制したトッテナム。CKからマディソンがニアで揺さぶり、ファン・デ・フェンの技ありゴールをエスコートする。

 先行したトッテナムだが、特に組み方を変えるつもりはない様子。左のファーサイドでアタッカーが浮くという状況は変わらず、ダウディーがこちらのサイドからシュートやクロスを上げていくことでチャンスメイク。セットプレーも含めて彼の左足にかかる期待は大きかった。

 トッテナムは75分の交代で5バックにシフト。これでサイドでできたギャップができなくなる。トッテナムがバックラインのメンバーを固めていくのにつれて、前のメンバーを増やしていくが、どうも前のメンバーの連携がうまくいかず、闇雲にロングボールを放り込んではロストする。

 クルゼフスキを軸に右サイドからの前進にフォーカスしていたトッテナムの方が皮肉なところ。終盤に投入されたバークリーはこの辺りの交通整理を任せられたのだろうが、期待からは程遠い出来だった。

 10人で苦しみながら守り切ったトッテナム。45分の数的不利を乗り越えて、10月の代表ウィークに無敗でたどり着くことに成功した。

ひとこと

 ルートンはトッテナムが4バックでチャンスをくれた75分までの間に追いつくしか手はなかったように思う。そこから先はダイレクトプレーの精度を色濃く感じてしまう出来で、数的優位の強みを感じる場面はほぼなかった。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
ルートン・タウン 0-1 トッテナム
ケニルワース・ロード
【得点者】
TOT:52′ ファン・デ・フェン
主審:ジョン・ブルックス

フラム【13位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

不運を幸運で打ち消す

 軽い守備のミスから生み出される悪い流れから抜け出せないシェフィールド・ユナイテッド。今節は昇格組としては1年先輩のフラムのホームでの勝ち点奪取に挑む。

 試合はフラムの保持を中心に展開。IHよりも高い位置で攻撃を止めたいブレイズに対して、フラムはプレスに出てくるギャップを利用しての前進で主導権を握る。IHの背後のハーフスペースにパスを入れたり、あるいは大外を経由してハーフスペースの裏抜けをしたりなど。ワイドのCBであるバシャムの前後を使って揺さぶっていく。

 フラムは今季はやや寂しい出来だったウィリアンがこの試合では好調。クイックネスで相手をおいて行ったり、周りを冷静に使ったりなど、去年のいい時を彷彿とされるプレーでチームを牽引する。ヴィニシウスも深さのあるポストでブレイズを縦方向にコンパクトに守らせない。

 右サイドはイウォビが実質ハリソン・リードの役割をトレースする形で陣形をキープしたが、連携面がイマイチ。イウォビがボビー・リードの動きをあまり掴めていたように思えず、ボビー・リード自身も決定機をものにできないなど、やや湿りがちな展開になる。

 ブレイズはそれ以上に苦戦。敗れたニューカッスル戦、ウェストハム戦では序盤は横断しながらいいボール保持を見せたのだが、そうした横断は少なく、フラムの同サイド圧縮に苦しめられる展開となった。

 そうした中でバシャムの大怪我が発生。試合のテンションはこのプレーをきっかけにややトーンダウンし、単発のカウンター以外はどこか上の空といったプレーが続くようになる。前半ATに輪郭を取り戻しかけて、ハーフタイムを迎える。

 後半は前半よりも直線的な展開に。前半はほぼチャンスがなかったブレイズも敵陣の侵入の機会がもらえるように。奮闘していたのはアーチャー。ドリブルでマクバーニーに決定機を作ったり、ファウルでセットプレーの機会を得たりなど一人気を吐くパフォーマンスを見せていた。

 しかし、先手を取ったのはフラム。自陣のパリーニャからスタートした見事なカウンターはペレイラのラストパスを受けたボビー・リードが完結。前半の鬱憤を晴らすようなゴールでフラムが前に出る。

 だが、フラムは不運に見舞われてしまい失点。ディオプの負傷に絡んだピンチをクリアしきれずロビンソンがオウンゴールを記録。試合は再びタイスコアに。

 フラムの決勝点はこの同点ゴールの不運を打ち消すようなもの。軸足を滑らせたケアニーが放ったミドルはやや虚をつく浮き玉の軌道を描いてクロスバーにあたり、フォデリンガムの背中に当たってゴールイン。どこまで狙ったかはわからないが、この幸運なゴールでフラムは終盤にリードを奪う。

 この失点で意気消沈してしまったブレイズ。頼みのセットプレーで不発が続くと、最後は好調のウィリアンがカウンターから追加点をゲット。直近に比べれば均衡したスコアを維持できたブレイズだったが、この試合でも勝ち点は取れず、テーブルの一番下で中断期間を迎えることとなった。

ひとこと

 バシャムの早い回復をただただ祈ります。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
フラム 3-1 シェフィールド・ユナイテッド
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:53′ ボビー・リード, 76′ フォデリンガム(OG), 90+2′ ウィリアン
SHU:68′ ロビンソン(OG)
主審:サム・バロット

バーンリー【18位】×チェルシー【11位】

スターリングがターフ・ムーアを完全制圧

 立ち上がりは積極的にバーンリーが高い位置からチェルシーを捕まえにいくスタート。チェルシーはサイドにボールを逃しながら1on1か裏を取るアクションなどスピードを活かしたアプローチで対抗する形である。

 試合が落ち着くと両チームは時間を与えられたバックラインからの組み立てで勝負に行く。バーンリーはGKのトラフォードを使いながらゆったりとショートパスで組み立てていくが、ターンオーバーでコレオショがいないこともありいつも以上にボールの終着点がわからない展開となった。

 一方のチェルシーもバックラインからボールを幅をとって動かしながら勝負に出て行こうとするが、右のSBのククレジャにボールが渡ると必ずボールがバックラインに戻ってしまうため、こちらも停滞感があった。バーンリーが中盤を噛み合わせてきたこともあるが、フラム戦のような中盤の小気味良さは終始見られなかった印象だ。

 そうした中で少ないチャンスを活かしたのはバーンリー。ターンオーバーしたスタメンの中でもチャレンジ枠のオドベールが先制点をゲット。パリ=サンジェルマンのユース出身の18歳がチェルシー相手に見事なプレミア初ゴールを決めてみせる。

 停滞感もあったチェルシーだが、そうしたチームを牽引していたのは左WGのスターリング。中盤が硬直している中でアバウトなボールからあっさりとチャンスを作り出すなど、一人気を吐く働きを見せていた。

 そして、そのスターリングがこじ開けてゴールを決めたのが43分のこと。縦への突破からアル=ダヒルのオウンゴールを誘発する鋭いクロスを放って試合を強引に動かしてみせる。先制点以降は全くチャンスのきっかけが掴めないバーンリーからすれば、なんとかハーフタイムまでリードを維持したかったところだろう。

 バーンリーは後半まったりとした保持で巻き返そうとするが、チェルシーの高い位置からのプレッシングに屈することとなった。奪ってからは素早くスターリングに預けてあっという間にPK奪取。これをパルマーが決めてチェルシーは逆転。

 これ以降もまさしく試合はスターリング祭りだったと言えるだろう。マッチアップ相手がヴィチーニョからロバーツに代わってもその勢いは衰えることはない。バーンリーのポゼッションのあたふた具合がチェルシーにあっさり捕まったことも相まって、中盤でのボール奪取からスターリングまでの流れでチェルシーはあっさりと3点差をつけて見せた。

 バーンリーは終盤にボールを持てるようになったが、これはプレッシングを止めたチェルシー側の事情が大きい。新星の貴重なゴールが塗りつぶされてしまう大量4失点でバーンリーは敗北。チェルシーはこれで公式戦3連勝だ。

ひとこと

 後半のバーンリーのポゼッションのバタバタ具合を見ていると、プレミアでこの保持が通用する相手がどれだけいるのかは疑わしくなってしまうというのが正直な感想である。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
バーンリー 1-4 チェルシー
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:15′ オドベール
CHE:42′ アル=ダヒル, 50′(PK) パルマー, 65′ スターリング, 75′ ジャクソン
主審:スチュアート・アットウェル

マンチェスター・ユナイテッド【10位】×ブレントフォード【14位】

セットプレーでチームを救うカルトヒーロー

 怪我人が非常に多く、スカッドのやりくりに苦しめられているチーム同士の一戦である。試合は互いにGKへのプレッシングからスタート。繋ぎからのミスが狙われているオナナ、プレミアデビューとなったストラコシャとどちらのGKにも守備側はハイプレスをかけたくなる動機がある状態。ハイプレスの連動自体はブレントフォードの方が上だったが、どちらかといえば立ち上がりのビルドアップで不安定感があったのはストラコシャの方だった。

 ボール保持でもユナイテッドの方が前進のルートを見つけた感がある。左のSBに入ったリンデロフからのサイドチェンジや、右サイドから裏を狙うブルーノ、トップに入ったホイルンドなどいくつか起点になりそうな箇所はあった。特にロングボールを収められるホイルンドはリサマル不在によるショートパスでの組み立て放棄を正当化する存在だったと言えるだろう。

 サイドからのクロスでアタッキングサードに迫っていくが、ピノックの高さがファーを狙うユナイテッドのクロスの邪魔に。この山を越えられないクロスが山のようにピノックに跳ね返されることとなる。

 攻撃の決め手がない中でユナイテッドは後方にミス。パスミスをしたカゼミーロ、中途半端なクリアをしたリンデロフ、そして触れたのに弾けないオナナと最近のユナイテッドの悪いところの詰め合わせという感じの失点を喫する。

 プレスに出ていくことで解決したいユナイテッドだが、ストラコシャがポゼッションを落ち着いてできるようになったため、ユナイテッドは取り所を見つけられず。ブルーノの背後で受けたヒッキーから逆サイドのローアスリウまで正確につけられればさらにいいという感じだった。

 後半、ユナイテッドはカゼミーロに代えてエリクセンを投入。守備範囲と引き換えにポゼッションの安定化を図っていく。ブレントフォードは5-3-2でブロックを固めて迎撃。ウィサとムベウモのロングカウンターに賭ける構えで引いて受けることを選択する。

 サイド攻撃が安定しなかったユナイテッドはアントニーとガルナチョの投入からサイド攻撃の基準点をはっきり示す。両CBの攻撃参加も増えており、特に右のCBのマグワイアからファーを狙うクロスはブレントフォードの脅威になっていた。もっとも両WGのプレーには疑問が残るところ。右のアントニーはまだ精度不足を感じるし、左のガルナチョは後から入ったマルシャルとの連携が合わず、チグハグな密集打開を強いられていた。

 それでもブレントフォードの前線に疲れが見える終盤戦はほぼユナイテッドが押し込んでのワンサイドゲームに。クロスゲーになったチームを救ったのはマクトミネイ。後半追加タイムの2つのゴールを仕留めて一気に逆転まで持っていくことに成功。1つ目はガルナチョのマイナスのクロスからの混戦で、2つ目はマグワイアのファーのヘッドに飛び込んでの2ゴール。まさしくカルトヒーローというべき活躍で試合をひっくり返す。

 代表ウィーク前に大きな逆転劇を手にしたユナイテッド。ホームでの公式戦連敗を中断期間前に止めることに成功した。

ひとこと

 マクトミネイ、よくやった。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 ブレントフォード
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:90+3′ 90+7′ マクトミネイ
BRE:26′ イェンセン
主審:アンディ・マドレー

エバートン【16位】×ボーンマス【19位】

青く塗りつぶされた90分

 この試合を一言で表すのであれば4-4-2でのしばき合いといったところだろう。立ち上がりから好戦的な仕掛けを続けてくるのがお決まりのボーンマスと喜んでその舞台に上がってくるエバートンの一戦であればある意味当然の流れとも言える。

 というわけでこの試合はキックアンドラッシュが延々と続く。ボールが行き来する展開はリソース面で勝るエバートンにとってはありがたい展開だったと言えるだろう。間延びした中盤を蹂躙するのはエバートンのCHの得意技。広大なスペースを底知れない馬力で駆け回る。エバートンは前線のキャルバート=ルーウィンにとりあえずボールを当てて、オナナ、ドゥクレ、ガーナーの3人で暴れ回るというスタンスでボーンマスを圧倒する。

 先制点はサバルニーのロストからガーナーがダイナミズム溢れるシュートを決めて生まれたもの。この先制点以降もペースが止まらないエバートン。試合のテンポは落ちることなく、ハイテンポがエバートン優勢に傾くという流れも変わらない。

 ボーンマスにとってはなかなか光が見えない前半となった。前にボールの収めどころがなく、保持においては1失点目のように中盤中央の危険なロストが目立ってしまい、危ういカウンターを受け続ける。右サイドからのタヴァニアを軸としたカウンターで押し返す時間もあったがそれも一過性のものだった。

 ボーンマスはシンプルに早いテンポの中でエバートンのボールホルダーに捕まえるのに無理が生じていた。よって、自陣に引きながらのブロック構築はPA内を埋めることができても、外側のエリアが怪しい。ハリソンのミドルはそうしたボーンマスのブロックを外側から撃ち抜く技ありのものだった。

 このゴール以降もボーンマスを殴り続けるエバートン。オナナ、キャルバート=ルーウィンとエリアの外からの崩しで、ガンガンゴールに迫っていく。ボーンマスにとってはなんとか2点差でハーフタイムにたどり着いたという気持ちだろう。

 後半、流れを変えたいボーンマスだが、立ち上がりからハイプレスでドゥクレが決定機を迎えるなどエバートンの優勢の流れは変わらない。特に後半はドゥクレが一層大暴れ。カウンターから左右のSBの背後を狙うアクションを無限に行いながらCBを釣り出し、エリア内に穴を開けまくっていた。3点目では左サイドをマクニールと結託して同サイドの裏をとると、シュートの跳ね返りを自ら押し込んで3得点目を決める。

 後半もボーンマスはオープンな展開の中で攻め切る威力を持った攻め筋が見つからず。セットプレーからサバルニーが決定機を迎えるなど惜しい動きもあったが、そうしたシーンはエバートンの山のようにあったチャンスシーンに埋もれてしまっていた。

 まさしく最初から最後まで青く塗りつぶした90分。彼らの持てるポテンシャルを披露し、グディソン・パークでエバートンが大暴れし続けた一戦となった。

ひとこと

 ボーンマスは徐々に結果に内容が引っ張られ出したのが気がかりなところ。どこまで我慢できるだろうか。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
エバートン 3-0 ボーンマス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:8′ ガーナー, 37′ ハリソン, 60′ ドゥクレ
主審:デビッド・クート

クリスタル・パレス【9位】×ノッティンガム・フォレスト【12位】

ミスらず堅いインサイドを攻略する術はなし

 ドゥクレ、レルマ、エゼ、オリーズといつの間にか怪我人が多発しているクリスタル・パレス。今節の相手はこちらもエースのアウォニイの鼠蹊部の負傷による離脱が試合前に発表されたフォレストである。

 どちらのチームもバックラインにプレッシングをかけないため、ゆったりとボールを持つスタート。先にペースを握ったのはパレス。中盤のサイド封鎖が効いており、相手のポゼッションをよりうまく阻害できていた。特にヒューズはボールハントからのカウンターで盤面を裏返しての反攻ができていた。

 フォレストが反撃に出たのは20分ほどの頃。ターナーと両CBが広く距離をとりながらマテタのプレスの狙いを絞りにくくして、自陣から自在にボールを運べるように。

 特に効いていたのはCBのムリーリョ。前線で裏抜けするギブス=ホワイトに合わせたり、前半終了間際にはドリブラー顔負けの突破力でエリア内にドリブルで突撃し、あわや年間ベストゴール候補の決定機を作り出せて見せた。

 パレスは27分にシュラップが負傷交代。しかし、この日だけでいえば4-4-2への移行とラク=サキの投入により、パレスは盛り返すことに。右サイドに入ったラク=サキは対面のトフォロを脅かし、エリア内に迫っていく。

 だがどちらも決め手にはかける両チーム。ネットを揺らすことができないままハーフタイムを迎える。

 後半はパレスが持つ時間が長くなるスタート。バックラインが横に揺さぶりながら、フォレストのプレス隊を鈍らせる。

 しかしながら、ボールは外循環。サイド攻撃の十分な構築もできず、インサイドに差し込んでいくのも難しい状況。左右に振りながら保持の勝負のポイントを探るが、パレスはラク=サキの1on1以外になかなか勝負できそうなポイントを抑えることができない。

 フォレストも終盤戦はクロス勝負を挑むことができていた。本日は右サイド起用となったギブス=ホワイトからクロスを入れながらチャンスメイク。しかし、インサイドの固い守備をこじ開けることはできない。どちらのチームもクロスからの高さ勝負を問われている感があるのか、クロスを跳ね返せそうな選手から投入されているのがなかなかに印象的だった。

 互いにボックス内で致命的なミスはなし。自由に保持を許された両チームだったが90分では相手の守備を崩す解決策を見つけることができず、試合はそのままタイムアップ。勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 最後のエランガに入れたパスのようなインサイドの勝負パスの数は特に後半の両チームは足りないなという感じだった。

試合結果

2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
クリスタル・パレス 0-0 ノッティンガム・フォレスト
セルハースト・パーク
主審:クレイグ・ポーソン

ブライトン【6位】×リバプール【4位】

ビルドアップ・デスマッチは痛み分け

 どちらのチームもセットプレーからチャンスを迎えた序盤戦。よって、試合の構造がなんとなく見えてくるのに10分ほどの時間を要した。

 プレッシングはどちらのチームも強気。バックラインが降りてくるFWについていくあたりは下がるアタッカーについていく意識は強いのだろう。CBにもそこそこ厳しく当たる両チーム。アリソンは最近のブライトンのGKがそうなったようにボールを持ちながらどこが空くかを探していた。

 リバプールの保持は大きな動きからマンツーを外していく。ロバートソンが最前線に駆け上がっていくあたりはこの試合の特殊性を感じる部分だろう。インサイドに絞るアレクサンダー=アーノルドも三笘とのどこまでついていくかの駆け引きを行うための手段になっている。

 一般的にマンツー外しの有効な手段の一つとしてGKのCB化がある。リバプールもマンツー気味に噛み合わせてくるブライトンにこの策を採用。だが、これが裏目にでる。ファン・ダイクのマック=アリスターへのパスはショート。これをアディングラがカットして無人のゴールにシュートを打つ。ここがGKのCB化の難しいところ。本来ならば、ファン・ダイクを交わさなければシュートまでいけないところだが、アリソンがゴールマウスにいないのであれば、寄せられる前にシュートを枠内に蹴れば事足りてしまう。GKのCB化は失敗時の賭けるリスクは大きい。

 高い位置からGKにプレスをかけていくスタンスはリバプールも同じ。サラーが2トップに入る4-4-2のような形からブライトンのバックラインにプレスをかける。フェルブルッヘンは今節も相手を引き付けながらのショートパスビルドにチャレンジをしていく。

 ブライトンは滅多にCHが列落ちをしないのだが、序盤にはグロスが列落ち。このままではビルドアップで捕まるという危険な匂いを感じ取っていたのだろう。リバプールはショボスライが前に出ていくことでマンツー色を強めでプレスにいく。前から行く覚悟は感じる。

 リバプールはプレスの枚数以上にヌニェスがフェルブルッヘンの右足から制限をかけて、左側に狙い撃ちすることができるかどうかがプレスの成否を分けている感があった。20分過ぎから30分にかけてはフェルブルッヘンが左右に自在に蹴り分ける。インサイドではスリーオンライン気味に後方の選手が上がることでかなりリバプールの高い位置への侵入を決めていた。

 しかし、30分が過ぎるとヌニェスから再びフェルブルッヘンの右を切れる場面が増えてくる。ここからリバプールはビルドアップを咎めるカウンターから畳み掛ける。ダンクの縦パスのロストからバタバタしたカウンター対応であっさりとサラーがフリーになると、同点ゴールをゲット。

 さらにはグロスの降りるアクションを潰し切ったショボスライがPKを獲得。前半のうちに試合をひっくり返す。

 迎えた後半。ブライトンは三笘とマーチの左サイドに照準を絞る。こちらのサイドに3人目となるファーガソン、グロスを流すことでサポート役を作っていく。若干2-3-5のような形で前の5人は前線に飛び出しを図っていく。

 しかし、ハイプレスを外したところからショボスライが決定機を創出。これをグラフェンベルフが決められない。この後のシーンのマック=アリスターもそうだがサラーを軸としたコンパスのようにMFが旋回するように右サイドからリバプールがゴールに迫っていく。

 時間の経過とともにブライトンのプレスはトーンダウン。プレッシングに出ていくことができないようになり、合わせるようにリバプールもまったりとした保持を続けていく。

 やや、弛緩した空気の中でブライトンはセットプレーから同点に。ダンクが面目躍如のゴールで試合を振り出しに戻す。

 ここから先はグロッキーでオープンな撃ち合いを展開する両チーム。中盤は存在しない、互いのゴール前まで電車道で進み、シュート機会をセットする勝負に。だが、どちらのチームも3点目を手にすることはできず。試合は引き分けで勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 前半のビルドアップ・デスマッチは自分の中のサッカーの価値観がバグりそうだった。サッカーってこんなにビルドアップにリスク賭けていいんだっけ?的な。ミスったら失点との距離の近さがなかなかに考えさせられるものがあった。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ブライトン 2-2 リバプール
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:20′ アディングラ, 78′ ダンク
LIV:40′ 45+1′(PK) サラー
主審:アンソニー・テイラー

ウェストハム【7位】×ニューカッスル【8位】

「この展開なら・・」と互いに思うドロー

 どちらのチームも欧州カップ戦を抱えている実力派のチーム。強固なセンターラインを構築し、ミッドウィークが埋まっている今季においてもリーグで堅実な成績を残している。

 ボールを持つ側に回ったのはニューカッスル。DFラインのボール回しで左右に揺さぶりながらアクションをかけていく。一方のウェストハムはこれを受ける立場。CBに無理にプレスをかけて枚数を合わせることはせず、アンカーをきっちりマークする中盤を受け渡しする仕組みを優先していた。

 ニューカッスルが保持でウェストハムのブロックを打ち破る堅い展開になるかと想定された流れだったが、意外とウェストハムがあっさりと先制。左サイドの裏を取ったエメルソンの抜け出しが素晴らしい先制点を奪い取る。ニューカッスルはラッセルズとトリッピアーの受け渡しの部分と、飛び出した結果としてボールに触ることなく交わされたポープあたりは悔いの残るプレーとなっただろう。

 反撃に出たいニューカッスルだが、中盤5枚のウェストハムの守備の網をなかなか突破することができずに苦戦。危ういカウンターを受けるシーンもあり、ギマランイスはあわや退場となってもおかしくはなかった。攻撃の機能不全はここ数試合、打開役として活躍していたゴードンの不在が大きな影響をもたらしていたといるだろう。

 ニューカッスルは保持時に最終ラインを3枚において3-2-5を形成、2トップの脇から前進を狙っていく。右サイドはアルミロンとトリッピアーを軸に少しずつ押し込めるように。左サイドはイサクが流れながらアンダーソンを助けてボールを収めていく。

 ウェストハムは前半の中盤以降は2点目の匂いが消失。攻めあぐねが目立つ展開になっていく。

 後半、再びニューカッスルがボールを持ちながら動かしていくスタート。一方的にウェストハムを押し下げていく展開は続いていく。

 ニューカッスルはセットプレーから同点ゴールをゲット。イサクが合わせて試合を振り出しに戻す。するとここから一気にニューカッスルが攻め立てる。イサクは直後に2点目を叩き込む。後半になり、ニューカッスルはようやく優勢の時間を得点に結びつけていく。

 しかしながらウェストハムもこれに抵抗。右サイドからボーウェンが抜け出す場面を作ると、こちらもセットプレーからフェルナンデスがあわやというシーンを作る。後半はパケタが左サイドでボールの収めどころとなるなど、ウェストハムの抵抗も少しずつ見られる展開となった。同点ゴールを決めたのは交代で入ったクドゥス。嬉しい初ゴールはチームを救う一撃となった。

 その後は両チームともネットを揺らすことはできず。どちらのチームにも勝ち筋があった展開だったが、結果としては勝ち点1を分け合う結末となった。

ひとこと

 この展開なら勝ちたかったニューカッスルと、ギマランイスが退場していれば畳み掛けられた手応えがあったウェストハム。どちらにも悔いが残る展開だったと言えるだろう。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ウェストハム 2-2 ニューカッスル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:8′ ソーチェク, 89′ クドゥス
NEW:57′ 62′ イサク
主審:ピーター・バンクス

ウォルバーハンプトン【15位】×アストンビラ【5位】

サイドに狙いを絞ったウルブスが健闘を見せる

 ウォルバーハンプトンは5バック。ビラは5バックのような陣容と見せかけてキャッシュがSHになるというたまに見かける4バック。どちらのチームも布陣としてはやや後ろに重めのフォーメーションを敷いてきた。

 バックラインへのプレッシングはお互いに緩め。CBがボールを落ち着いて持てる展開となる。やや優勢だったのはアストンビラだろうか。ナローに守るウルブスの3トップの外側からボールをキャリーし、大外から相手を押し下げていく。ボールを失った後は即時奪回。押し込み続ける圧力は十分なものではあった。

 しかしながら、ウルブス視点から見ると押し込まれているとはいえ、このプランの妥当性は一定あったようにも見えた。今季のアストンビラの持ち味はワトキンスのキープ力やディアビのスピーディな運びから生み出される縦の推進力にある。5-4-1でまずは中央を締め出すというプランはこのビラの持ち味を消すという意味ではそれなりに意義はあったと言えるだろう。

 ウルブスもまた保持に回ると2トップに対しての3バックの数的優位を活かしながらキャリーする。攻撃の中心になったのは右サイド。好調のネトを軸に攻撃を組み立てていく。ビラは守備的なSHを組んだということもあり、マッギンがリトリートしながらここを埋めにいく。こちらもまたサイドに守備的な用兵を行った意義が見えたと言えるだろう。

 それでもウルブスは30分付近からサイドの裏を使いながら押し下げに成功する。それまでは主導権を握られていたため、前半を総括するのであれば互角なのだろうが、普通にぶつかればビラが優勢だったことを踏まえると、勝負のポイントをサイドに絞ることで互角まで引き戻したウルブスのプランが効いていた前半だった。

 後半の頭はややバタバタなスタート。両チームとも前半よりもやや縦に早いオープンな展開となった。そうした中で先手をとったのはウルブス。右サイドのネトの仕掛けからパウ・トーレスをぶっちぎると、絶好調のヒチャンがゴールを決める。直前の負傷の治療で鼻に詰めていたティッシュを放り投げてのゴールパフォーマンスだった。

 しかし、やられっぱなしではないのが今のビラ。セットプレーからネトにしてやられたトーレスがリベンジに成功。2分も立たずにアストンビラは試合を振り出しに戻す。

 1点ずつを取り合ったことで試合の展開はフラットに。ブロックの打開はやや停滞感がある両者だったが、後半も元気なネトと彼を囮とした裏抜けを仕掛けるセメドが存在感を放つウルブスの右サイドが印象的なパフォーマンスを見せていた。ネトとヒチャンは有効打を打てる時間帯が明らかに伸びており、コンディションの良さを伺える。

 苦しむビラだったが、後半追加タイムに再びチャンスを得る。ワトキンスの決定機から流れをつかむと、レミナの退場で残りの時間はビラの攻め一色に。ザニオーロに加えて、ラストプレーでは再びワトキンスが決定機を得るがいずれもネットをゆらせず。ビラは試合を決めきれずドローでの決着となった。

ひとこと

 ワトキンスの決定力がアキレス腱になるのは結構珍しい。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ウォルバーハンプトン 1-1 アストンビラ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:53′ ヒチャン
AVL:55′ トーレス
主審:ロベルト・ジョーンズ

アーセナル【3位】×マンチェスター・シティ【1位】

勝負の3枚替えをひっくり返したアーセナル

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 昨季の優勝を争った両チームがコミュニティ・シールドに続いて、今季2回目の激突。アルテタにとってはリーグのシティ戦で12連敗という屈辱的な記録を止めるチャレンジとなる。

 序盤にペースを握ったのはシティだった。セットプレーからファーのグバルディオルに詰めたアケと最初の決定機は試合開始早々のもの。意気込んだアーセナルに面食らわせる立ち上がりとなったと言えるだろう。

 その後もシティはプレッシングからアーセナルに圧力をかけていく。リコ・ルイス、アルバレスをスイッチ役としていつもと異なる4-2ビルドを組んだアーセナルのバックラインにプレッシャーをかけていくと、ラヤにあわやというミスを誘うところまで辿り着く。出し手には常に制限がかかっているため、アーセナルの受け手は相手の厳しいマークに苦しむことになる。特にグバルディオルの厳しい寄せに苦しんだジェズスはサカがいない負荷がそのまま降りかかってきた印象だった。

 保持においてもシティは左サイドから主導権。動き回るフォーデンからホワイトを上下に揺さぶると、そこでできたギャップにグバルディオルを突っ込ませることでラインブレイク。1回破られたジェズスが以降は慎重に彼を消すためのリトリートを行うようになる。

 アーセナルはプレスの優先度を整理することでシティの保持のルートを徐々に潰す。エンケティアがディアスを捨ててベルナルドのマークを離さないようにすることで左右に揺さぶられる機会を削ると、シティは確固たる前進の道筋が見えなくなる。カウンターの機会を潰したライスや、ハーランドのとのマッチアップを制し続けたサリバなど、シティの威力のあるワンパンチもアーセナルの守備陣がきっちりとガードを固めていたのが印象的だった。

 保持においてもジョルジーニョが低い位置に降りてボールを受ける機会を増やすことでリコ・ルイスのプレスのスイッチを入れにくくする。コバチッチやベルナルド等、中盤で警告を受けた選手がかさんできたのもシティにとっては誤算だろう。どちらの保持の局面も試合の経過とともに主導権をアーセナルに。

 後半、アーセナルはマルティネッリを投入。トロサール負傷による交代ではあるが、これにより左サイドの定点攻撃とハイプレスが活性化。シティに対してワンサイド気味に押し込んでいく。

 しかしながら、エデルソンを軸に左右に揺さぶってアーセナルのハイプレスを回避したシティ。左サイドから相手の背後を取るケースを増やしていくと、アーセナルは再び4-4-2気味に構えることに。

 中盤の整備役としてストーンズ、ヌネスを投入し、押し込んだサイドの打開役としてドクを置いたグアルディオラ。おそらく、この一手で決め切りたかったところだろう。だが、左右のSBにドクを止められてしまうと、今度はアーセナルが交代カードを軸に反撃に。シティにとって計算外だったのは冨安の攻め上がりだろう。対面のフォーデンはインサイドに絞るマルティネッリとハイプレス時にマークするガブリエウへの優先度が高く、冨安へのケアはあまり重きをおいていないように見えた。

 その冨安が前線に駆け上がると、トーマスが彼に向けたフィードを発射。冨安の落としをハヴァーツが体をはってマルティネッリにつなぐと、振り切ったミドルはアケに当たってゴールイン。

 劇的な先制点を挙げたアーセナルはそのまま前線のキープ力と盤石の守備力で逃げ切りに成功。実に8年弱ぶりのシティ戦の勝利を手にすることに。アルテタはついに長年閉じられていた重い扉を開くこととなった。

ひとこと

 アーセナル、シティと同じでいい意味でつまらなくなってきたので強くなってきたなという感じ。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
アーセナル 1-0 マンチェスター・シティ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:86′ マルティネッリ
主審:マイケル・オリバー

今節のベストイレブン

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