Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第21節
2022.7.9
川崎フロンターレ(3位/10勝4分5敗/勝ち点34/得点27/失点22)
×
ガンバ大阪(15位/5勝6分9敗/勝ち点21/得点21/失点25)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で川崎が8勝、G大阪が2勝、引き分けは3つ。
川崎ホームでの戦績
川崎ホームにおいての直近10試合は川崎の7勝、G大阪の3勝。
Head-to-head
公式戦では川崎が優勢。しかしながら、前回の対戦ではG大阪が優勢に試合を進める。が、ラストワンプレーで石川のミスに漬け込んだ小林により勝ち点3を奪うことはできず。G大阪ファンにとっては忘れられない試合になったはずだ。
それでも川崎戦での連敗は6でストップ。等々力はやや鬼門だが、元気のない川崎に対してなんとか結果を出したいところ。引き分けがない完全決着が多いのも等々力のG大阪戦の傾向だ。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・離脱中の登里享平、ジェジエウはトレーニングには合流済み。
・知念慶は札幌戦で負傷交代以降、ベンチ入りがない。
・Covid-19の陽性判定が1名おり、この試合には出場できない。鬼木監督は濃厚接触者認定で寺田コーチが代行指揮を取る予定。
【ガンバ大阪】
・一森純は練習に右手中指PIP関節脱臼及び右手環指PIP関節脱臼骨折で離脱中。
・福田湧矢は左肩関節脱臼で離脱中。
・山本悠樹は右膝軟骨損傷で離脱。
・宇佐美貴史は前回の川崎戦で右アキレス腱を断裂。
・鈴木武蔵、食野亮太郎の獲得を発表しているが、夏のウィンドウはまだ開いていないため、川崎戦への出場は不可。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
直近8試合の公式戦でわずかに2勝。これだけ勝てていないのはいつぶりだろう?と調べてみると意外と最近の2021年9月以来のこと。カップ戦敗退が続いた時期である。ただ、直近7試合で4敗とこれだけ負けているのはいつぶり?と調べてみるとこちらは2015年9月以来。およそ7年ぶりの負けっぷりである。
得点力とクリーンシート不足も深刻。複数得点はリーグ戦7試合で一度だけだし、直近の試合の中でクリーンシートだったのは札幌大学との天皇杯のみである。今季リーグ戦10勝のうち、8試合がクリーンシートというチームとしては勝てていなくて当然である。ソンリョンのセーブ率が低迷しているのはシュートを打たれる状況も関係する話なので一概に彼が悪いわけではないがチームとしてうまく守れていない証拠ともとれる。
得意の7月のリーグ戦で巻き返しを図りたいところ。キーになるの途中交代の選手。等々力劇場を演出するのに彼らの力は欠かせない。札幌戦のようにヒーローが遅れてやってくれば上昇気流の兆しも見えるのだが。
【ガンバ大阪】
リーグ戦での成績は芳しくはないが、内容自体は数字ほど悪くはないという感じ。ただし、試合運びに関しては得意パターンがはっきりしており、先行逃げ切り型でないと勝ちきれない。10人になった相手を攻め切ることができなかった湘南戦はその一例。逆転勝ちはここまではない。
4連敗中と苦手なアウェイでの戦いになるが明るい材料もある。片野坂監督は直近2試合の川崎戦で負けなし。昨年は天皇杯で等々力で決勝進出を決めている。
守護神の復帰も大きなプラス。彼の復帰以前のリーグ戦15試合で6試合あった複数失点だったが、復帰以降は5試合で1つだけ。しかもその1つもリーグ屈指の得点力の横浜FM。G大阪にとっては頼もしい守護神が帰ってきたと言えるだろう。
予習
第15節 広島戦
第19節 浦和戦
第20節 湘南戦
展望
■二段構えのプレスと保持で出てきた片野坂色
Match factsの項でも述べたが、ここ数試合のG大阪の試合内容は結果ほどは悪くないように思える。リーグ戦で見た3試合の中でもっとも良い内容だったのは、勝利した広島戦である。この試合はG大阪における今の成功パターンと言っていいだろう。
広島に勝った!という観点においてもっとも重要だったのは大外のアタッカーを封じることである。藤井の活躍を許さなかったことがG大阪快勝の要因と言えるだろう。IHを務めた石毛が黒川と連携して挟み込んで潰すということを90分繰り返しながらやり切った。
G大阪の守り方は5-3-2もしくは5-4-1のどちらかである。基本的には中央のプロテクトが優先だが、サイドに要注意の人物がいれば2列目が出ていってケアすることが多い。上に挙げた広島戦での振る舞いはまさにこの形がハマった展開になった。
中央の堅さをキープするブロックの中でどこまで外に出ていくか?の部分を託されているのは石毛、倉田、そして齊藤。彼らの判断の速さでサイドを封殺のスピード感は変わっていくはずである。
トップに定着した坂本や山見は前からのプレスもお手のものである。献身的でありマンマーク気味にはめてくるパターンも持っている。前半を支配的に進めた浦和戦はこのパターンに当てはまると言っていいだろう。
マンマーク式のハイプレスと2列目が主導権を握るサイドへの圧縮。この二段構えがG大阪の守備における武器ということになる。
保持においては徐々に片野坂色が出てきていると言っていいだろう。ショートパスでボールを繋ぎながら物事を解決していこう!という姿勢はより強く見て取れる。
特に福岡がCBとして定着しつつある右サイドにはよりポゼッションで押し上げる意識が強い。彼はちょっと岩田っぽい役割を頑張っている。チームを見渡すと大外で独力で突破できるアタッカーこそいないが、入れ替わり立ち替わりで大外を使うことでサイドの狙いの的を絞らせないことも有効。
CHではあるが、右サイドに流れての得点関与が続いている齊藤の存在は象徴的。ワイドからの攻撃の流動性が機能していることを示唆している部分である。
ちなみにサイド攻撃をよく使うというのは、G大阪のバックラインがプレスを受けた時の脱出パターンが対角パスが多いというのと関係がありそう。中央からの攻撃のパターンはないわけではなく、むしろ使えるのならばこちらを積極的に使っていきたいスタンス。
特に活躍が目立つのはダイナミズムに溢れている坂本である。守備側からすると彼にボールが入ることはもっとも警戒する必要がある。彼にボールが入ると攻撃は一気に加速。縦パスを引き出す動きもそこからのドリブルもうまい。猪突猛進型というよりもフィニッシュの形を意識したドリブルが持ち味で、ラストパスを出すタイミングを伺うようなスピードでボールを前に運ぶことができる。クオリティはここ数試合で本格化している印象だ。
PA内においても初速の速さを生かしたボールタッチで対面のDFを置いてくこともしばしば。G大阪の中でもっとも前を向かせたくない存在と言っていいだろう。ハイラインの相手であれば裏の抜け出しもレパートリーの範疇。G大阪からすれば、彼を生かすことが得点への最短ルートとなる。
■プレスはマストでいかに保たせるか
川崎が得点を取るためにはまずはG大阪のスタンスを見極める必要がある。片野坂監督は川崎戦においてはハイプレスで川崎のバックラインから時間を奪う形を志向することが多い。特に川崎にはその弱点がクリアしている様子はないので、普通に考えれば今回もそうである。先に述べたようにそのやり方に適した人材もいる。
だが、G大阪は現在過密日程の真っ最中。先週のミッドウィークに延期となっていた試合をこなしていた関係で、リーグの5連戦の最中である。そうした中でマンマーク型のハイプレスをこなせるかどうかは難しいところ。日程面での不利はG大阪にとっては重石になる。
特に厳しいやりくりになっているのはIH。G大阪の戦い方においては最も負荷のかかりやすいポジションではあるが、交代が遅い試合もある。おそらく齊藤、倉田、石毛への信頼度が高いのだと思う。齊藤は湘南戦では出場できなかった(レンタル元なので)ため、少し休むことはできたが、倉田や石毛は出ずっぱりである。少し話はそれるが、同じ心配はWBの黒川と小野瀬にも言えるだろう。小野瀬とか慣れっこかもしれないが。
どちらにしても川崎が狙いたいのはG大阪のIHがボールを奪いにこようと前に出てきた時に空く背後のスペースである。G大阪は終盤でもファイティングポーズを崩さない姿勢が強いチーム。だが、プレスに出てくるタイミングはどうしても遅れるようになる。
DF陣がラインを押し上げる姿勢は中盤に比べると低いため、後半は特に最終ラインと中盤のスペースができることが多い。G大阪のピンチはそうした部分から迎えることが多い。まずは中盤を引き出す、その上でライン間にパスを刺す。C大阪戦の立ち上がりでチャナティップがやったことを再現できれば、序盤からチャンスを作れる可能性はある。
もう一つ、川崎が狙いたいのはハイプレスである。G大阪はプレスの脱出で対角のパスを駆使している分、ショートパスで1つずつ繋ぎながら外していく部分はあまり得意ではない。ロングキックを蹴れない間合いまで詰めたいところである。湘南戦の立ち上がりのG大阪は繋いでは中央で引っ掛けることを繰り返していた。この再現を狙いたい。
東口は従来よりもはるかに繋ぐ意識が高まっているのはG大阪の変化点である。片野坂色が強い保持になってきたことの一端は彼の保持面での改善だろう。川崎はGKまでどこまでプレスに行くのかも考えなくてはいけない。
いずれにしても川崎が前節までの傾向を継続するのならば、ハイプレスはマスト。ハイプレスをやって失敗する可能性はあるが、ハイプレスをかけずに成功する可能性はほとんどない。やり続けて初めて土俵に乗ることができる。
よって、少しでもプレスが効く時間を長くして敵陣でのプレータイムを増やしたいところ。特にG大阪はオープンな展開を活かせるアタッカーが多い。スタメンの顔ぶれは当然として控えにもパトリックがいる。彼も開けた試合展開の方がもってこいである。そうした前線の殴り合いでは川崎がアドバンテージがあるとは言い難い。ならば、試合展開は制御してこれまで以上に長い時間川崎の手中に収める必要がある。
よって、ポイントはプレスの持続力。そのためには保持において押し込み、即時奪回を繰り返す。そしてこの状況をなるべく長くする。このやり方しかない。状況が芳しくないと思った時には素早い交代も求められる。寺田コーチにとっては難しい舵取りが予想される試合になってしまった。
大阪勢を相手に回しての連敗は絶対避けたいはず。スタイル構築中同士の難しい一戦だが、そろそろ片野坂監督にも痛い目を見せてあげたいところである。