ゲームチェンジャーは江坂任
Kリーグ王者の蔚山のACLの初戦はホームにタイのパトゥム・ユナイテッドを迎えての一戦となった。ボールを握るのは蔚山。パトゥムのプレス隊は蔚山のバックラインに自由にボールを持たせる立ち上がりとなり、蔚山は後方からショートパスで繋ぐ流れだった。
蔚山のビルドアップは2-2のボックス型。SBの関与はあまり多くはなく、CBとCHで完結する。CHは動きが大きく縦関係になるか、片方が相手の2トップ間、もう一人が相手のトップの横に立つことが多かった。全体としては蔚山の左サイド側からの進撃が多かったと言えるだろう。バックラインは丁寧に繋ぎながら相手を動かしているのが特徴であり、特に5-3-2が得意な2トップ主導の同サイド圧縮には絶対捕まってなるものか！という意思を感じた。
蔚山はそこから先の攻め手はこれ！という決め打ちはあまりなかった。というか基本的にはどこからでも攻められるだろうなという感じ。左サイドのカサイシュヴィリのフリーマン化、サイドでのトライアングルの崩しからのクロス、そして押し下げられた相手のDFラインを強襲する強烈なミドルなどバリエーション豊かな攻撃でパトゥムを攻め立てていく。トップのアーダーム・マルティンは前進にあまり関与せず、ボックス内での仕事に集中している様子などは特徴の1つと言えるかもしれない。
パトゥムは奪ったら素早く2トップに当てて前進を狙う。降りて背負うのもあり、高い位置をとる蔚山のSBの裏もあり。さまざまなやり方で前進を試みるが蔚山に比べると多彩さが欠けていたのも事実。特に前半の終盤以降は押し返せない時間が続いた。
押し込む蔚山は順当に先制点をゲット。スンヒョンのミドルでゴールを脅かすとドンギョンの抜け出しから折り返しをアーダーム・マルティンが押し込んでゴール。GKのセーブしたボールにパトゥムのDFが棒立ちになってしまったのを蔚山は見逃さなかった。
しかし、パトゥムも前半のうちに追いつく。トップのセルゲーエフのライン下げのフリーランから決めたのはスチュアート。少ないチャンスをものにして試合はハーフタイムを前にタイスコアとなった。
後半、蔚山はポゼッション、パトゥムはカウンターを主体に攻めていく。時間の経過とともにパトゥムのカウンターは切れ味が鈍っており、蔚山の戻りの速さが際立つように。両軍とも相手のゴール前に広がるブロックに対してなかなか解決策が出せない状態が続く。
崩しのキーになったのは日本人にもお馴染みの江坂。交代で入った江坂は右サイドを縦に揺さぶる役割として大車輪の活躍を見せた。勝ち越し弾となった2点目は裏に抜けながら縦パスを引き出すと、最後はアーダーム・マルティンが決めてゴールをアシスト。
さらに、ダメ押しの3点目では江坂が出し手となり抜け出すカザイシュヴィリをエスコートするパスから再びアーダーム・マルティンがゴールを決める。江坂がゲームチェンジャーとなり、完全に右サイドは活性化。追いすがるパトゥムを3得点で下し、初戦を勝利で飾った。
ひとこと
これ！っていう攻め手がない分、逆に蔚山の強さを感じる展開だった。
試合結果
2023.9.19
AFC Champions League
グループI 第1節
蔚山現代 3-1 BGパトゥム・ユナイテッド
蔚山文殊スタジアム
【得点者】
蔚山:28′ 73′ 78′ アーダーム・マルティン
パトゥム:41′ スチュアート
主審:アフメド・アルカフ
