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「風向きを変える1週間」~2023.10.3 AFC Champions League グループI 第2節 川崎フロンターレ×蔚山現代 プレビュー

目次

Fixture

AFC Champions League
グループI 第2節
2023.10.3
川崎フロンターレ(2位/1勝0分0敗/勝ち点3/得点1/失点0)
×
蔚山現代(1位/1勝0分0敗/勝ち点3/得点3/失点1)
@等々力陸上競技場

直近の対戦成績

過去9戦で蔚山の5勝(PK戦含む)、川崎の1勝。引き分けが3回。

Match facts

Match facts
  • 直近7試合の蔚山戦で川崎は勝ちがない(D4,L3)
  • しかしながら、等々力で開催された蔚山戦においては過去3回で川崎は負けなし(W1,D2)
    • アウェイ扱いのチームは過去9試合全ての対戦で勝ったことがない。
  • PK戦も含めた川崎のACLでの直近6試合の敗戦のうち、4試合が蔚山相手のもの。
  • 蔚山はACLでの日本勢との対戦で23戦12勝5分6敗。
    • うち5勝は川崎相手のもの。

予習

第1節 パトゥム戦

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予想スタメン

展望

規定出来ない特徴が強さの証拠

 「どうせ今年も蔚山だろう」という抽選会前に川崎サポーターならば誰でも思い浮かぶであろう予想をACLは今年もベタに選び取った。かくして3年連続で川崎はKリーグ王者の蔚山と戦うことになった。

 上のMatch factsの項でも触れたが、蔚山との戦績は最悪の部類といっていいだろう。直近3年の対戦では勝ちがなく、蔚山は川崎の前にのびえたつ壁となっている。ただし、等々力開催で言えば1勝2分と3戦無敗と蔚山はこれまで日本で川崎に勝利したことがない。彼らにとっては決していいイメージがあるスタジアムではないということだ。

 川崎からすればグループステージでもっとも大事な試合といっていいだろう。蔚山と対戦する第6節が天皇杯決勝の直後ということを踏まえれば、国内タイトルが近づけば韓国での一戦はハード。ならば、ここで必ず勝利を収めておきたいところだ。

 ACLの1試合分しか蔚山の予習のデータはない。5-3-2で戦ったパトゥム・ユナイテッドとのホームゲームだ。この試合をもとに彼らのスタイルを考えていきたい。

 ビルドアップはCBとCHを軸として2-2でのビルドアップ。CHは片方が相手の2トップの間に立ち、もう1人が2トップの脇に立つ。左右の攻め手の偏りで言えば、蔚山はやや左の方が多い。よって、CHが立つのも相手の2トップの左側が多い。

 5-3-2のパトゥムは同サイドに圧縮する形で囲い込んでいきたかったところだが、蔚山は徹底してこれを避けていく。大きなサイドの展開を多用し、是が非でも狭いスペースに閉じ込められることを回避するにはかなり重きを置いている。そのためバックラインからのやり直しが多く、試合は蔚山の保持の時間がかなり長くなる流れとなっていた。

 アタッキングサードの攻略は実に多彩。サイドでのトライアングルでのパス交換や、シンプルな大外をフリーランするSBからのクロス、そしてフリーマンとしてインサイドに入り込んでくるカザイシュヴィリなど攻め手は豊富。これ!といった攻め手がないことで逆に強さを感じるパターンである。

 パトゥム戦では右のハーフスペース周辺で出し手としても受け手としても立ち回ることができる江坂がゲームチェンジャーになっていた。こうした味変でのギア上げもできるのが蔚山の強みである。

 唯一、攻撃における特徴といえるのはCFのアーダームはボックス内の仕事に専念しているということだろう。見た目で言えばかなりハグリット的であり、ロングボールのターゲットとしていけそうな風貌ではあるのだが、彼にとりあえず!という形で放り込むことはして来ない。

 蔚山は後方のCB陣が時間を前に運ぶような相手を引き付けるパスやドリブルがうまいからそこで勝負したいのだろう。アーダームはフィニッシュに集中。現にパトゥム戦ではボックス内に陣取ることでゴールを奪い取っている。

 非保持での時間はこの試合ではあまり長くはなかったが、中盤の枚数を合わせることを優先でハイプレスに出てくることはあまりしない。サイドの止めるアクションは早め。簡単にサイドの駆け引きで後手には回らない。オーソドックスだが、だからこそ強さを感じるのがあらゆる局面での蔚山のスタイルだ。

前進の火を消さないことができるか

 というわけで弱点があまりないのが蔚山の強み。粘り強く戦いながら少しでもスキを見出していくしかない。

 4-3-2-1の新潟戦のプレスはまず通用しないだろう。逆に新潟戦をスカウティングしていれば、蔚山はCHを大きく動かしながら川崎のWGである家長とマルシーニョがどこまでついていくかをさぐってくるはずだ。

 4-3-2-1を仮に継続するのであればまずはWGの守備の基準を見直すべきだ。サイドの深い位置まで顔を出してスペースを埋めろとまではいわないが、大きい動きのCHにつられて中央に縦パスを通す隙を与えてカザイシュヴィリを浮かす流れは避けたいところ。三戸のようにライン間でスペースを与えてしまえば苦しい相手なのは間違いないので、中央を締めるという4-3-2-1の特性はきっちりいかしたい。

 規律という面ではWGに守備的な選手を入れたいところではあるが、前進の依存度を考えるとこのポジションでの家長とマルシーニョを外すのは今の川崎は難しい。闇雲に追い回してもボールをとれないことは間違いないので、捨てるべき場所の線引きをくっきりさせて、相手にズレを許さないようにしたい。

 インサイドで囲って外に追い出すという今の川崎が取り組んでいるベースとなる戦い方はそこまで悪くはないだろう。保持で前にボールを送れるメンツにするとどうしても後ろの強度は足りなくなるし、前進はジョホール戦でも通用した外国籍CF+家長+マルシーニョに任せて、後方を固めたいところだ。

 相手がサイドでボールを交換しながら抜け出す選手を作るのに長けていることを踏まえると、5-3-2の方がよりいい感じはするが、車屋と佐々木がおそらくいないであろう状況でCBを3枚並べるのは難しいだろう。ジェジエウの復帰は近そうだが、いきなり強度の高いゲームを90分使うとは考えにくく、現実的には大南と高井か山村のどちらかが先発になるはずだ。

 試合の途中からは3人の前線が行っていた陣地回復を交代の選手がどれだけ引き継げるかがカギになる。ACLでは何はともあれ敵陣に進める手段を持てるかどうかが大事というのはここ数年の蔚山戦で戦った体感として間違いなくある。その手段がなくなってしまえば、粘れる時間はそう長くはない。

 体を張ることができる瀬川と山田、新潟戦ではキレの良さが垣間見えた遠野あたりのジョーカーとしての機能性は問われることになるだろう。横浜FMとの日産でのゲームがそうだったように、今季の川崎が大きな試合で接戦を制するには交代選手でのブーストは不可欠だ。厳しい試合を制して勝利を手繰り寄せた勝負強さをこの試合できっちり持ってきたい。

 間違いなく、今週は2023年の川崎においてもっとも重要な一週間。苦しいシーズンであり、フラストレーションがたまる年になっているが、重みのある位置づけの2試合をクリアして風向きを変えるチャンスはまだこのチームには残されている。大げさでなく2023年の川崎が数年後にどう語られるかが決まる連戦を迎えることになる。

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