判断と精度に課題を残す4連勝に
タイの一戦では暑さの中でなかなかにぐだぐだな試合を見せた両者。11月の日本ということで本来であれば暑さは心配ないはずなのだが、この日は100年ぶりとなる11月の最高気温を記録した日。夜であれば心配は薄いが、日本も暑い中で迎えるリマッチとなった。
パトゥムのゆるさは相変わらず。川崎は1分すぎには脇坂が家長との関係性を使いボックス内に簡単に侵入することができた。瀬古の飛び出しなど直後にも右サイドからのラインブレイクが見られるなど、MFのオフザボールが際立つ。
また川崎はSBがボールを持つと、前線は裏に走り出す決まりになっている様子。このラインブレイクの流れからのチャンスメイクは効果的。なぜかわからないが、抜け出した選手が前を向けなくても、ターンをしていると勝手に相手が遠ざかってくれていつの間にかマークが剥がれているので、川崎としてはくるくるしているうちにホルダーが前を向くという現象が起きていた。
しかしながら、川崎もゆるさを改善できず。相手がプレスをかけてこないうちにはMFだろうがDFだろうが前を向いてボールを持てるのだが、プレスがかかるとバタバタし始める。2つの失点はいずれも自陣低い位置からのボールロストからだった。
パトゥムがプレスに人数はかけてきているのはわかるのだが、それでもそんなにホルダーに厳しい制限がかかっていないという状況だったため、ロストをしたソンリョンと家長は失点シーンについては個人レベルで責を負うべきだろう。その一方で失点には繋がらなくとも脇坂が危ういロストをしたり、CBが運ばずにとっととつけてしまったりなどのチームレベルでの怠慢が見られたのはとても残念だった。
パトゥムのビルドアップに対しても、川崎は前半の中盤からボールを運ばれるように。特にDF-MF間のやや右寄りでIHのアルバレスを簡単にフリーにして、左右の配球や裏のセルゲーエフの動き出しに合わせるスルーパスの出し手として躍動させたのは問題だろう。得点シーンで輝いたのはチャナティップだが、流れの中ではこのアルバレスを抑えられていない方が問題だ。
川崎は得点シーンもマルシーニョやダミアンの個人突破による、盤面上は捕まっている状態からの破壊しかできていない状況。スコアこそ同点で済んだが、相手に合わせてのゆるいインテンシティが蔓延る前半となってしまった。
後半も大きく流れは変わらず。登里が多少キャリーをする場面もあったが、山村がアウヴェスを引きつけないせいで左サイドは相変わらず詰まっていたし、脇坂も中盤における雑なプレーで失敗することが非常に多かった。相手の寄せは甘いのでまずはきっちりと前を向くところから徹底して問題ないはず。そこを怠ったままとっとと前を向いてしまうのでパスが通らない。
それでも前線が動き直しをやめなかったため、アタッキングサードまで運ぶことができれば停滞しなかったのはよかった。家長、マルシーニョ、ダミアンの3人はチームの重さに引っ張られずに裏へのランを続けることができた。特にダミアンがこれだけ動きながら起点になると守る方は止めようがないだろう。
アルバレスが退場したパトゥムは5-3-1にシフトチェンジ。こうなると、川崎はサイド攻撃にだいぶ余裕が出てくる。3人の関係性から家長が抜け出してのクロスからのマルシーニョのシュートはオフサイドにはなったが理想的な攻撃ではあった。
山村がヘディングでゴールを決めたため、試合はだいぶ落ち着くかと思われたが、この日の川崎は終盤まで決まりが悪い。橘田は無理にボールをとりにいって、相手のカウンターのスペースを空けまくっており、後方に過度な負荷をかけていた。瀬川が終盤にサイドからキャリーしてキープに行った場面もロスト後に登里が深追いしてしまったりなど、その前のプレーを無駄にしてしまうことが多い。
攻撃面では小林が孤立するなど、交代選手の機能性は怪しかった。宮代は最後こそ結果を出すことができたが、その前のシュートセレクトは相手のカウンターにつながってしまっている。あらゆる角度から川崎は10人のパトゥムにカウンターの機会を与えてしまった。攻守のプレー判断でこれだけチャンスを供給してしまったのは試合運びの点で言っても軽視するわけにはいかないだろう。
ひとこと
前線の外国籍選手の好調さは朗報。だが、これだけ準備期間が空いたことを踏まえれば、それ以外の部分の乏しさには目を瞑りにくいことも正直なところ。レギュレーション的に次節も気を抜けない状況が続くため、課題はきっちり潰していきたいところだ。
試合結果
2023.11.7
AFC Champions League
グループI 第4節
川崎フロンターレ 4-2 BGパトゥム・ユナイテッド
等々力陸上競技場
【得点者】
川崎:16‘(PK) 40‘(PK)脇坂泰斗, 68′ 山村和也, 90+8′ 宮代大聖
パトゥム:33’ 41’ チャナティップ
主審:アブドゥルラフマン・アルジャシム