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「早くジェズスとってよ」〜アーセナル 個人レビュー2021-22 GK&DF編

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〈GK〉

1 ベルント・レノ

■寡黙な職人は出番が来ればチームを救う

 20-21シーズンの正守護神。21-22シーズンも開幕からゴールマウスを任されたが、地獄の3連敗スタートに伴ってラムズデールにゴールマウスを譲ることに。

 そこからチームの気流が一気に上がったこととアーセナルが欧州カップ戦がなかったこと、そしてアーセナルにとっては2nd GKの晴れ舞台であるFA杯も速攻で負けてしまったことなどから1年間ベンチに座り続けるシーズンとなった。

 セービング能力に疑いの余地はないが、長いレンジの鋭いパスはレパートリーにはなく、バックラインからのビルドアップの意識が高まる流れは彼にとっては不幸だったといえるだろう。ラムズデールが負傷した期間においては安定感抜群というよりもチームを救うセーブを連発していた。実力だけでなく、準備も怠らないその姿勢にプロフェッショナルさを感じたアーセナルファンも多いだろう。

 ということで寡黙な表情でアーセナルのゴールマウスを守り続けたレノはおそらくこの夏でお別れが濃厚である。何年もの間ベンチに座り続けてもらえるレベルのGKではないので仕方がないが、やはりお別れは寂しい。新天地でも多くのチームを救うセーブを見せてほしいところである。

32 アーロン・ラムズデール

■手のひらを返させた熱血漢型GK

 恐らく、1年でアーセナルファンがもっとも手のひらを返したであろう選手。安くはない移籍金と割と大人しい感じだった20-21のパフォーマンスから『無駄遣い』という声も続出。

   個人的には『ボーンマスやシェフィールド・ユナイテッドで隠していた足技でもない限りは割高な買い物になりそう』という印象だったのだけど、どうやら隠していた足技があったようである。第4節から出番を獲得すると、レノにはない高速フィードから局面を打開するスキルを連発。一気に正守護神に上り詰める。

 セービングも前評判通りレベルが高く、全体的に能力は高水準。終盤戦はやや尻すぼみではあったが、今季のプレミアでいえば年間を通して安定したパフォーマンスを披露したほうに分類できるGKであるように思う。

 熱いパフォーマンスとチームに喝を入れながら鼓舞をするスタンスは伝統的に物静かなGKが多いアーセナルにとっては新鮮。熱血漢のような振る舞いはサポーターの心をあっという間につかむための手助けになったように思う。

 来季はさらなるパフォーマンスの水準の向上と、彼の足元の技術をよりビルドアップに積極活用することは求めていきたいところ。消耗が激しいリーグにおいてほぼ1年間アーセナルの正守護神としてゴールマウスに立ち続けてきた経験を生かしてさらなるレベルアップを図りたい。

〈DF〉

3 キーラン・ティアニー

■負傷癖以外の課題は・・・?

 半袖のユニフォームとテスコの紙袋から醸し出される純朴なキャプテンは今季も健在。出場すればチームを牽引する働きをして見せた。

 大外を駆け上がっての攻撃参加はアーセナルのトレードマーク。彼が抜け出しながらボールをエリア内に入れる形を作ることができれば、アーセナルは大きなチャンスになる。

 不在時に影響を大きく感じたのは守備面の対応。同ポジションのタバレスと比べると、逆サイドから来るクロスへの対応が雲泥の差。アーセナルの最終ラインは特に右にスライドしながら守る機会が多いので、そうした時のクロス対応におけるティアニーの安定感はチームへの助けになっていた。

 最も大きな懸念はやはり怪我の多さだろう。加入当初から懸念ではあったが、やはり欧州がないシーズンにおいてリーグ戦22試合の出場にとどまるというのは、最終ラインのレギュラーとしては心もとない数字であるといわざるを得ない。21-22シーズンは代表がらみでの怪我もあったので、アーセナルからすると不運な部分ではあるが、フルシーズン何も言わずにポジションを任せられるわけではないというのは懸念になるだろう。

 大外からのクロスの精度ももう一声ほしい。この部分は入団時と比べるとやや割引な感じを受ける試合が多い。ファーサイドに正確に蹴る長いレンジのボールと低い弾道でニアに差し込むどちらのボールも向上の余地はあるところ。あらゆるレーンを動きながらボールを受けるところで工夫を施すタイプではないので、もっとクロスの質には多くを求めたいところだ。

4 ベン・ホワイト

■足技を組み込むところが次のステップ

 上々の1シーズン目といっていいだろう。ボール保持に傾倒するための旗印としてルイスの後釜として加入したホワイトは高いレベルでアーセナルの新しい哲学を体現した。

 保持するチームには欠かせないハイラインを維持するために体を張り、ボールを持つと相手にボールを晒しながら前にチームを押し上げることが出来ていた。加入前には課題とされていた空中戦にはそれほど悩まされなかったことと開幕戦と終盤以外はほとんど怪我がなく1シーズンを走りきったことも評価できる。あとやたらかっこいい。

 課題となってくるのは持ち前の高い技術の活かし方である。ドリブルで相手を動かすことはできているのだけど、リリースがワンタッチツータッチほど多くなってしまうことで密集に突っ込んでロストする場面がやたら多かった。ポジション的にもやたらめったら取っていいリスクではない。

 あとこれはホワイトだけのせいではないが、刺すようなフィードからもっとビルドアップのパターンを確立できればなおよかった。うまいけども、それが前進に生かされている!と実感できるほどシュートまで持っていけるパターンを持てれば理想的な1年だったといえるだろう。

   いずれにしても来季も中心となることは確実。攻守に連携を高めて、ワールドカップに向けての準備を進めていきたいところだ。

5 ガブリエウ・マガリャンイス

■完成度は高いがまだ伸びるはず

 高い身体能力でホワイトと共に防波堤を結成。近年のアーセナルの守備陣の中では最も優秀といっていいバックラインの一角を担った。

 最大の魅力は守備範囲の広さだ。ラインを上げての縦方向の守備はもちろん、横にスライドして相手を同サイドに封じ込める動きもお手の物。アーセナルでは守る際に右サイドが前に行きやすいのだが、カウンターを食らうときは中央から右側のサイドまで顔を出し攻撃を食い止めることもあった。

 保持においても収穫はあり。左足からのミドルパスの精度やバリエーションは昨シーズン以上だろう。ホワイトの加入で保持型に舵を切ったアーセナルのシフトチェンジにも見事に対応して見せた。セットプレーでの得点力も魅力の1つである。

 課題となるのは劣勢となった時にやや冷静さを失うことだろう。最終ラインということでプレーの中で警告を受ける頻度はただでさえ多いので、累積警告を考慮すると過度な抗議は避けたいところである。シティ戦における退場劇など、肝要なところでクールさを欠いてしまったのはDFとしては残念であった。

 現時点でもかなり高いレベルでまとまってはいるが、伸びしろはまだあるはず。圧巻の存在になるためにもさらなるステップアップを目指す来季としたいところだ。

16 ロブ・ホールディング

■よくも悪くもロールプレイヤーとしての地位を確立

 ガブリエウ、ホワイトというファーストチョイスが確立したことで、プレータイムとしては長い年ではなかった。それでも時折プレータイムを与えられれば安定感のあるパフォーマンスを見せていたのは事実。ここ数年の中では悪いパフォーマンスの年ではなかったのではないか。

 エリア内でのクロス対応の安定感は年々向上。退場者が出たウルブス戦など迷いなく5バックに移行できるのはホールディングのような存在がいるからでもある。スタメンで出た際にはボール保持で持ち運ぶ動きにもチャレンジする姿勢(うまくいくかは別問題です)を見せるなど、プレーへの取り組み方も悪くなかったといえるだろう。

 その一方で退場してしまったノースロンドンダービーのようにトップレベルの試合となると欠点が浮き彫りになってしまうのは否めない。アルテタの任せた役割に難があったとはいえ、プレーやファウルの基準を見極めて、どこまでのコンタクトならば許容されるかの駆け引きを審判や相手選手と行う余裕がないことがあの試合では明らかになったともいえる。

 厳しいことを言えばロールプレイヤーとしては頼りになるが、主力としては計算しづらいという評価を確立してしまったシーズンでもある。プレータイムを求めて外に移籍をしてもおかしくない立場ではあるが、今のところその動きがないのはありがたいところ。苦しい展開においてバックラインを強化する役割として来季も奮起してほしい。

17 セドリック・ソアレス

■できることは増えたけど・・・

 プレミアリーグは21試合の出場。なんだかんだで2月以降の17試合は全て出場しているということで、今季は彼を頼った試合が多かったといえるだろう。

 クオリティとしては何ともいえない!というのが正直なところである。オーバーラップのタイミングが良くなったり、フリーになってクロスを上げる場所を把握できるようになったりなど、進歩はあった。

 けども、そのクロスの質がイマイチだったり、対人では脆さを露呈してしまったりなど手放しで進歩したね!と喜べるほどではないというのが正直なところだろう。相手が強ければ欠点が目立つことの方が多かった。

 言い方は悪いけども、まぁ個人的にはこんなもんなような気もする。そもそも、これ以上のものを望んで獲得したか?といわれればそうではないだろうし、獲得した時の掴まされた!という感覚からすると十分働いてもらっている方かなとも思う。

 4年契約なので来季も残留は濃厚。SBは補強を望む声も多いが、彼が残留するならば後回しになるのは必至である。

18 冨安健洋

■日本からやってきた救世主

 アーセナルの救世主が日本からやってくる時代が来るとは思いもしなかったというのが正直なところ。加入前の壊滅的なRSB事情から考えると『出番がないわけないし、絶対に今のアーセナルのSB陣よりもはるかに高いクオリティを持っている』という予感をアーセナルファンならだれもが思っていたと思うが、普通にその期待に応えて見せた。

 ハイラインにおける迎撃のセンスはピカイチで特にSBでの空中戦におけるクオリティはプレミアでも通用することを示して見せた。スピードのあるドリブラーに正対された時はやや脆さを見せたのは否めないが、そもそも高い位置から迎撃できない人たちばかりだったので、そんなちょっとのことで誰も文句は言いません。

 保持においても左右遜色なくビルドアップに貢献。低い位置からの前進のサポートとサイドを変えるときにボールを引き取ることができるポジショニングが絶妙。アーセナルのSBとしては近年でももっとも高い完成度といってもいいくらいだ。

 やはり懸念になるのは稼働率だろう。だが、昨年は代表活動にフルコミットしてのオフシーズンに東京五輪だったというエクスキューズがある。本人も課題として重くとらえている節もあるし、来季に少しでも解決していることを期待したい。

 アタッキングサードにおけるプレーレパートリーの増加など攻守にスケールアップして来季はプレミアでベストのSBを目指してほしいところである。

20 ヌーノ・タヴァレス

■長所を伸ばせる時間がなかったのは不運

 今季のアーセナルのアナーキー枠として、無秩序な動きで相手も味方も監督も惑わせたシーズンだった。長所はとてもはっきりしている。ズバリオーバーラップのセンスである。特筆すべきはその読みの早さ。カウンターが発動するよりも一段階前に匂いを嗅ぎつけて、一気に駆け上がりカウンターの最先鋒を走りきることができる。両足をためらいなく使う度胸も魅力で、カウンターで駆け上がっていく形を作れれば、それなりにバリエーションのあるプレーを見せることができる。この部分に関しては明確にティアニーよりも優れている部分といっていいだろう。

 しかしながら、欠点もとてもはっきりしている。ティアニーと比べて最も劣っているのはクロス対応である。逆サイドから入ってくるクロスの処理はうまいとは言えず、右サイドを上げてつがい型で守る機会が多いアーセナルにとっては致命的な弱点になっている。

 終盤戦はチームの守備の不出来をやたらかぶせられているような意見もあったし、対人はクロス対応ほど悪いとは思わない(ここはティアニーもあまり得意ではない)が、プレミアの水準を満たしているかといわれると正直怪しいところではあるのは認めざるを得ない。

 短所をどう補っていくかというよりも長所をどう伸ばしていくかから考えた方がいい選手だと思うので、連携面での成熟を考えるともう少し出番が欲しかったように思う。欧州カップ戦の出場がなかったことの不利益を被った選手の1人だろう。

21 カラム・チェンバース

■待望論は早々に・・・

 ここからはシーズン途中にどっか行っちまった組だ!DFラインが怪我とかミスだらけになって全滅するとやたらと待望論が上がってくるのだけども、今季は開幕直後のシティ戦の1失点目で大やらかしをしてしまったせいでそうした声はほぼなかったように思う。とりあえず守ってワンチャン!を秒で崩壊させた責任は重たい。

 SBとしてはやたらとクロスはうまいのだけど、単純に高い位置に入り込むのが苦手なのでそもそもどうやってクロスを上げるところまで持って行くかがわからんぜよ!という感じだった。アストンビラでプレッシャーの低いCBから自由に足技を生かしたフィードを蹴っているのを見ると、あれが一番幸せなのかもしれない!ビラで頑張って!

22 パブロ・マリ

■身体能力を補う気遣いが欲しかった

 チェンバースがシティ戦で失望させたのならば、マリはチェルシー戦とブレントフォード戦で失望させた枠である。トニーとルカクにひたすら吹っ飛ばされ続けたのを見ればこの試合は苦しいだろうなと早い段階で覚悟せざるを得ないだろう。

 プレミアにおいてスピードやパワーは通用しないことはもうわかっていたので、あとはチームが保持に切り替えたことでそこそこ使える左足がどうなるか?といった感じなのだったけども、ボールをSBに預けた後にちっともポジションを取り直さないので、左足のキックはうまいけどもビルドアップはあまりうまくないのだなという結論になりました。

 この気の利かなさが最大の難点で、ラインを上げるのをサボったり、あるいは行かせたい方向にボールを誘導したりなどの動きがほぼなかったことでプレミアでの成功の可能性は完全になくなったといっていいだろう。身体能力を補える部分が彼にはなかったのである。

 すごい嫌いっぽい書き方になってしまったが、マルティネッリのメンターなど最近増えているブラジル人のサポート役としての貢献はありがたい。というわけで彼に合う新天地が見つかることを望んでいる。セリエAではよかったようなので、どこかイタリアのクラブの方、買い手をお待ちしております。

31 セアド・コラシナツ

■愛すべきコラさん

 どの試合か忘れてしまったけども『唯一前向きに守備をやっていた』という理由で彼がちょっとだけ再評価された試合が今季のアーセナルの一番悪かった時期だった気がする。

 猪突猛進スタイルは愛らしくはあったのだけども、アルテタのスタイルに合っているとは言い難かったし、怪我の多さもネックである。クンデの凶悪なタックルを受けても割とすぐ戻ってこれるという謎の丈夫さは見せたが、基本的には怪我が多く、シーズンに複数回は離脱することを覚悟しなければいけない選手なので計算が立ちにくい。

 アーセナルファン左のウォーカー的な感じで大成することを願っていたが、それはちょっと厳しかった。離れていても俺たちは強盗を撃退するコラシナツが大好きです。

続きはまた今度。

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