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「溶かした5バック」~2022.6.1 天皇杯 2回戦 川崎フロンターレ×札幌大学 レビュー

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目次

レビュー

■サイドから溶かしていく

 展開としては4-3-3の川崎が5-3-2の札幌大を押し込んでいく流れが延々と続いていくという内容だった。

 一般的に5バックを攻略するときに意識しなければいけないのは『溶かすように崩す』ことらしい。これは林舞輝さんの受け売りである。5バックがバチッと5バックを埋めている形ではなかなかぶっ壊すのが難しい。

 というわけで1つズレを作ることで、そこをきっかけに壊していくのが理想である。そのためには例えば5-3-2であれば大きくサイドに揺さぶりながら、3センターに横にスライドする負荷をかける。中盤が3枚だと、ボールをスムーズに動かせば90分間根性で間に合わせ続けるのは困難である。

 ただ、この試合の川崎は3センターの横のスライドを意識しながら札幌大の5-3-2を壊していくイメージはなかった。この試合でイメージが近いのは5バックから前の3-2ユニットを引き剥がすイメージだろうか。深い位置のパス交換を繰り返しながら札幌大の3-2ユニットを手前に食いつかせる。そうして、5バックとの距離を遠ざける。縦に動かしながらスペースを作るイメージである。

 序盤は裏に抜ける動きを使いながら一気にぶっ壊すことでゴールに向かう動きが多かった。序盤に迎えた遠野や知念の決定機などはその代表格。裏にに抜け出した選手がそのままフィニッシャーになる形である。

 これは純粋なアスリート能力での力量差を生かしたアプローチである。ただ、それだけでは川崎らしい人数をかけたフィニッシュの局面まで持っていくのは難しい。

 そこで川崎が用意したのは札幌大の最終ラインの動きを利用した形である。WB、あるいはワイドのCBを手前に引き出す動きとその背後を取る動きをセットで使うことで川崎は深さを作る。

 エリア内に入られてしまうと札幌大は中盤の戻りが遅れてしまうように。一度深さを作られてしまうと、エリア内のスペースとその手前のバイタルに雪崩れ込んでくる川崎の選手を止めることができない。

 サイドから最終ラインに穴を開けて、穴を開けたところに選手が走り込む。まさしく5バックを溶かしたところに漬け込んでいく形である。

 先制点の場面もサイドから最終ラインを溶かした局面から。松井と小塚で札幌大の左サイドを動かしてから、裏のスペースに飛び込んだ山村で深さを作った。右サイドのクロスからボールを知念が繋ぎ、最後は飛び込んできた小塚のゴールで先手を奪う。

 ここからはゴールラッシュ。セットプレーからアンタッチャブルだったシミッチが追加点を奪う。3点目はやはり空いてしまったバイタルから。シミッチのミドルから最後は知念が押し込んで試合の大勢を前半のうちに決める。瀬古の4点目は角度のないところから無回転で落としたコントロールショット。直近のチームを牽引するパフォーマンスをゴールに結びつけてみせた。

■期待が持てる選手は?

 札幌大は前半はなかなかボールを前線に繋げなかった。追い回す意思はあっても、プレスにいくと間延びしてしまうのでボールを川崎から奪い取れない。流れの中でサイドをプロテクトしようと、時には5-4-1っぽく守ることもあるのだが、そうなってしまうと今度はカウンターに出て行ける人数が足りなくなってしまう。

 GKの田中のキックの精度や、後半頭のこの試合初めてのシュートを見ると保持の心得があるチームではあると思う。特に後半頭のシュートは川崎のバックラインを横にスライドさせることで攻略するという湘南戦で川崎が苦しめられたパターンに少し似ていた。攻撃の機会をある程度確保できれば、川崎相手にゴールを奪うこともできるポテンシャルはあるチームだったように思う。

 後半の川崎は永長が投入されたのが最大の注目ポイントだろう。投入直後は左サイド、その後は右サイドにポジションを移してすぐのプレーで初ゴールを決めた。

 スピードと身のこなしを生かして相手を置き去りにするドリブルが最大の武器。おそらく、カットインから自らシュートを打てる右サイドの方が向いているように思う。この試合ではマッチアップ相手とのスピードの差があったように思うので、J1で通用するかはまだ未知数。とりあえずは次のラウンドの東京V戦でも出番を掴むことが目標になるのではないか。

 ボールを受けるための動き直しやクロスに入り込む動きはもう少し改善の余地がありそう。いずれにしても、新鮮な若い選手の活躍はやや停滞気味の川崎の前線に新しい風を吹かせてくれそうだ。

 最後に触れておきたいのは松井。SBは本職ではないのかもしれないが、PAに斜めに入り込んでいくタイミングが面白かったのが印象的。フリーランからエリア内の攻撃に絡める人材は貴重なので、こちらもリーグ戦でメンバー入り争いに絡んでこれると面白いのだけど。

ひとこと

 久しぶりにすんなり突破した気がする初戦。押し込んだ後の崩しのバリエーションと枠内シュートが増えればなおいいけども、まずはなかなか達成できなかった大量得点を喜びたい。

試合結果
2022.6.2
天皇杯 2回戦
川崎フロンターレ 5-0 札幌大学
等々力陸上競技場
【得点者】
川崎:13′ 小塚和季, 16′ ジョアン・シミッチ, 20′ 知念慶, 26′ 瀬古樹, 65′ 永長鷹虎
主審:川俣秀

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