迷える5バック化のギャップをついた先制点
勝てば突破が決まる可能性があるアーセナルと勝ち点を取らなければ星勘定的に厳しくなってしまうセビージャ。より厳しいのはセビージャのはずだが、アーセナルはスターターをそのまま使い(負傷者の関係もあるだろうが)、セビージャは主軸も含めた大幅なターンオーバーを敢行したメンバーの選考となった。
試合は両チームのこの試合に送り込んだ戦力の差を反映するような前半となった。バックラインに制限をかけられずにボールを持ったアーセナルは手始めにWGにボールを供給。ニューカッスル戦では苦しんだサカとマルティネッリだが、この日の対面であれば十分に差をつけられるコンディション。
サカはファウルを引き出し続けてFKのきっかけを作る。サカへのファウルを犯していたのが序盤はグデリだったことを踏まえると、手前でハヴァーツやホワイトがうまくサラスを引き出していたのだろう。途中から2人できっちり対応するようになっても、サカをファウル以外で止めるのは難しくここはファウルを無限に引き出せるポイントとなっていた。
逆サイドのマルティネッリは縦突破でファンルを圧倒。ただし、抜いてからのクロスが決まらずに苦労した印象。ベルバトフを彷彿とさせるライン側のテクニックは素晴らしかったが。
突破はできる状態だがPA内での仕上げがなかなか定まらないアーセナル。ボックス内でのもうひと工夫が足りない状態でシュートは枠の外に飛び続ける。ようやく、たどり着いた枠内シュートが先制点につながる。ジョルジーニョ→サカのラインでバックドアを決めると、折り返しにフリーで合わせたトロサールがゴールをゲットする。
セビージャ視点から見るとペドロザのところに迷いが見えた失点シーンだった。ホワイトに合わせて後ろに下がっていくのが基本の動きだが、前半途中からサカのマッチアップのフォロー役として5バックの左に入ることもちらほら。明確な指示が出たのがどのタイミングかはわからないが、この場面のペドロザの動きを見ると、1列後ろの選手がホワイトまでプレスに出て行く動作に近い。その動きにセビージャの最終ラインが対応した結果、サラスとグデリの間が空きジョルジーニョのパスが通るスペースができてしまったように見える。5バックからのプレスに出て行った際の歪みが失点に繋がってしまった印象だ。うまくプランを整理できていなかったのだろう。
反撃に出たいセビージャだが、立ち上がりからずっと攻撃はうまく行っていない。アーセナルがプレスのスイッチを入れればロングキックを蹴ることしかできないし、そうなってしまうとあっさりとサリバとガブリエウに回収されてしまう。
プレッシングに出て行っても空転。非保持からリズムを掴むのも難しい状況に陥る。そもそもペドロザを最終ラインに組み込む対応はプレスでリズムを掴みたいチームとは真逆の方向性である。
迎えた後半、選手を入れ替えたのはアーセナル。冨安に違和感があったため、ジンチェンコを投入する。むしろ、セビージャに交代がなかったことに驚いた。結果的にこの後主力組を使うのならば、ハーフタイムから投入しても良かったように思うが。
アーセナルはボール保持からWGにボールを供給する形で試合をコントロール。そして、セビージャが主力を投入する寸前でWG2人でゴールを取り切り、リードを広げる。怖い方向にことごとくターンを許してしまうあたり、日常で対峙しているプレミア勢とは異なるWGへの対応の不慣れ感をセビージャに感じるシーンだった。
セビージャは交代で入れたスマレが負傷など流れの悪さを拭えない。マリアーノにボールが入ればチャンスになるが、そうした形は片手で数える程度。サリバを出し抜いた1つ目をゴールまで持っていければ、アーセナルの終盤のマネジメントはよりバタバタしたものになっただろう。
サカの負傷は計算外だったかもしれないが、既存戦力のコンバートで乗り切りながらなんとか試合を落ち着かせてクローズしたアーセナル。公式戦連敗、そして負傷者が増える中で迎えた大きな一戦を完勝でまとめ上げた。
ひとこと
後ろのメンバーが揃っていれば変な負け方は想像しにくいチームなのだなと思った。SBが変わればWGの突破力も変わるし、セビージャの不可解な用兵のおかげで先制点でだいぶ安心できる展開となった。
試合結果
2023.11.8
UEFAチャンピオンズリーグ
Group B 第4節
アーセナル 2-0 セビージャ
アーセナル・スタジアム
【得点者】
ARS:29‘ トロサール, 64′ サカ
主審:イシュトバン・コヴァーチ