Fixture
プレミアリーグ 第38節
2022.5.22
アーセナル(5位/21勝3分13敗/勝ち点66/得点56 失点47)
×
エバートン(16位/11勝6分20敗/勝ち点39/得点42 失点61)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
直近10試合の対戦でアーセナルの5勝、エバートンの4勝、引き分けが1つ。
アーセナルホームでの対戦
過去9試合の対戦はアーセナルの7勝、エバートンの1勝、引き分けが2つ。
Head-to-head from BBC sport
スカッド情報
【Arsenal】
・ロブ・ホールディングが出場停止から復帰。新しい負傷者はいない。
【Everton】
・アラン、ドニー・ファン・デ・ベーク、ベン・ゴドフリーには先発の可能性。
・ジェリー・ミナ、ファビアン・デルフは欠場の見込み。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
【Everton】
予想スタメン
展望
■5-4-1でなお残る不安定さ
前節のニューカッスル戦のプレビューと似たような書き出しになってしまうので恐縮なのだが、いろいろあった激動のプレミアリーグの中で最もいろいろあったチームの1つがエバートンである。それでもなんとか残留を決めた。おめでとう!
昨シーズン、欧州行きを狙ったスカッド強化で奮発したスカッド構成に踏み切ったものの、目標達成はならず。アンチェロッティはレアル・マドリーに帰還してしまい、代わりにやってきたのは隣のクラブでビックイヤーを掲げたこともあるベニテスだった。
1月にはそのベニテスはクビになるのだが、直前にはそのベニテスとケンカしたディーニュを放出。そんな喧嘩両成敗を地で行かなくていいのに思ったのは僕だけではないだろう。
こうした混乱と忍び寄る残留争いの恐怖から冬には大量の補強を敢行。ただ、この冬の補強も怪しさが満点。エル・ガジと20試合使えば移籍金がかかるという変なサブスクみたいな契約で補強したデレ・アリはほとんど使わないままここまで来たし、不慣れなボランチで開花待ちされていたファン・デ・ベークは負傷。一番使われているマイコレンコはいろんな人の助けを借りながらなんとかサイドバックをこなしているという感じだった。
というわけでシーズン序盤には想像していなかった残留争いにがっつり巻き込まれたエバートンであった。正直、ランパードはもはや理想よりも残留するためにがっつり舵を切った感じがある。
基本のフォーメーションはここ何試合かは5-4-1が定番だ。アーセナルでおなじみのイウォビはWBで大外を駆け上がる役割をこなしている。
5-4-1にシフトした要因は守備時に間延びしやすい陣形が一番大きな要因だろう。前線からのプレスには後方はなかなか連動して押し上げることが出来ず、アランやドゥクレのような広範囲を動くことができる一部選手のハードワークで何とかしてきたのが今季前半戦のエバートン。その不安定な守備ゆえに失点を繰り返してきた。
ドゥクレが怪我した時にニッチもサッチも行かなくなってしまうことや、マイコレンコのように数的優位を守備側に担保してあげなくては厳しい選手がいるため、とりあえずランパードはスペースを埋める5-4-1で間延びを避けることを優先したように見える。
チェルシー戦では成功した5-4-1による人海戦術だったが、ツッコミどころは多い。負傷者が続出してCBがいなかったり、試合ごとに構成が変わる最終ラインのラインコントロールが一番の難題だ。レスター戦では連携ミスからダカにプレゼントパスを出したり、ブレントフォード戦では相手にあっさりとちぎられたところをブライスウェイトが後ろから引き倒して、一発退場を食らったりなどこれで完全に最終ラインが安定したわけではない。
頼みの綱はボックス内で体を投げ出す泥臭さは身についてきたことと、ツボにはまれば主演男優になることもできるピックフォードの神がかったセービングである。特に終盤戦のピックフォードは異次元。彼がいなかったら早々に降格が決まっていた可能性すらある。
泥臭く戦いながら推進力のある2列目のアタッカー陣からの吉報を待つ。すべてをなげうったエバートンの戦い方はそうだった。これまではそうだったが残留が決まった今はどうか?戦い方に変化はあるだろうか。
■わかっていてもできるかは別
全体的には満足のいく仕上がりでないことは間違いないが、グレイやゴードン、リシャルリソンなどエバートンのアタッカーの質は確か。そして、最終ラインが満身創痍なのはアーセナルも同じである。まともに起用できるCBがどれだけいるのかははっきり言ってわからない。ニューカッスル戦を見た感想は『ああ、何人も強行出場した選手がいたんだな』である。
理想を言えば、サイドでの優位が見込めるサカとマイコレンコを軸にマッチアップしながら5バックをぶっ壊していくのが丸いだろう。しかしながらサカは終盤戦は明らかに負傷を気にしながら戦っていた。あまり負荷がかかるやり方は怖い。
逆サイドのマルティネッリもしんどそう。となるともはや負荷をかけられるところはあまりない。エバートンと同じく、アーセナルもまたくたくたでこの最終節を迎えることになりそうである。コンディションを見ながらどこから攻めるかをアルテタは考えないといけないが、最終ラインで踏ん張り、サイドで起点を作るという今季の鉄板パターンはおそらく機能させるのは難しいだろう。
エバートンが5-4-1で来た時はサイドから溶かす動きとトップが裏を狙う動きを組み合わせながら後方の保持で揺さぶる形を作りたい。非保持においてはスピードアップできるタイミングを狙って縦パスを入れてくる。特にグレイとゴードンに入れられるときは素早く縦に急ぐ傾向が強い。
エバートンの弱みはわかったいる。とはいえ、アーセナルに後方に保持で揺さぶれる選手がいるのかも、CFが裏に抜ける意識を持つことができるのかも、エバートンの2列目に対して前を向かせずに遅らせながら対応できるかもはっきり言ってわからない。対策はわかっていても実践できるかは別問題である。メンバーの構成から始まって不透明なことが多すぎる。
とにかく、気を付けるべきはリシャルリソン、ゴードン、グレイの3人に裏抜けのルートを作らないこと。サイドからの1on1と最終ラインのラインコントロールのズレは狙い目になることは述べておきたい。
■サポーターの特権の話
さて、泣いても笑っても今季はあと1試合である。今季の最終結果は我々は自分だけでは決めることができない。まずは勝つことである。それでしか道は切り拓けない。
そして、エミレーツのファンに今季自分たちがやってきたことを見せるのも大事な仕事。ニューカッスル、トッテナムと大事なアウェイゲームを2つ落とし、多くのファンは肩を落としている。彼らに今年自分たちが何をしたかを最後の90分で見せる責任がチームにはある。
仮にこのまま5位に終わるとしたら、外野から見れば今年も同じアーセナルだろう。『またCLを逃した』『勝者のメンタリティがない』。どんな過程があろうとたどり着いたもので結果を判断する。もちろん、悪いことではない。むしろ当たり前のことである。自分を含めたアーセナルファンだって、他チームの結果に同じように外野から烙印を押し続けている。それは何らおかしいことではない。
だからこそ、過程を噛みしめて、1年という時間をかけて軌跡をたどった末に結果を受け止められるのはファンの特権だと思う。
『CLを取れなければだめなのか?』『アルテタでは限界なのでは?』『5位でも十分な進歩だ!』『アルテタと共に歩んでいきたい!』
どれも自分なりに今シーズンの軌跡と結果を見比べての結論だろう。それぞれの意見は尊重されるべきだ。自分自身の話をすれば最終節の結果はどうなろうと昨シーズンよりは穏やかな気持ちでシーズンオフを迎えることになるだろう。前に進んだ感触は確実にある。
だからこそ、最後の最後を飾ってほしい。21-22の自分たちが何者だったのかをエミレーツで示すチャンスはあと90分残されている。間違いなく万全のコンディションではないだろう。それでもユニフォームを着た選手たちには誇りを持って戦う責務がある。
自分たちが添い遂げた21-22のアーセナルはどんな最後の1ページを迎えるのか。日曜にどんな結果が待っているのかはわからないが、今年の軌跡の行きつく先が1人でも多くのアーセナルファンに光を灯すものであることを願わずにはいられない。