Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第14節
2022.5.21
サガン鳥栖(5位/4勝7分2敗/勝ち点19/得点15/失点11)
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川崎フロンターレ(1位/9勝2分2敗/勝ち点29/得点20/失点12)
@駅前不動産スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で鳥栖は1勝、川崎は4勝、引き分けは5つ。
鳥栖ホームでの戦績
直近10試合の対戦で鳥栖の3勝、川崎が4勝、引き分けは3つ。
Head-to-head
とにかくロースコアが特徴のカード。昨年の鳥栖の勝利した試合を除けば直近の試合の得点は1と0がひたすら並ぶ形になっている。ここ7試合でお互い無得点は4試合。なかなかに得点が生まれない試合である。
鳥栖ホームは昨年のイメージもあり、川崎ファンにとってはあまりいい思い出がない。だが、ロースコアのカードの中では5試合連続で川崎は鳥栖のホームで得点を挙げており、場所としては相性が悪くはない。
スカッド情報
【サガン鳥栖】
・ミッドウィークのルヴァンカップではメンバーを大幅入れ替え。
・宮代大聖はレンタル規定により出場不可。
【川崎フロンターレ】
・ジェジエウは長期の離脱中。
・大島僚太は右足の負傷、登里享平は右ふくらはぎの負傷で離脱。
・広州戦で途中交代したチャナティップはヒラメ筋の肉離れで離脱。
予想スタメン
Match facts
【サガン鳥栖】
ホームゲームでの要塞ぶりは際立っており、無敗はもちろん4試合でわずかに1失点という驚異的な数字。しかも、関東のチームはお得意様であり、川﨑を自信を持って迎え撃つことができる。
チームが勢いに乗れば多くの選手がガンガンエリア内に入り点を獲りに行くスタイル。スコアラーは特定のだれかではなくバラバラ。ただし、試合ごとの得点の分布ははっきりしており、ここまでのリーグ戦では4得点以上の試合か1得点以下の試合しかない。
上位相手にいい戦績を残しているのも特徴。また、パク・イルギュのクリーンシートは7。同じく最多タイで並ぶソンリョンにここで差をつけるべくクリーンシートでの勝利が欲しいところだ。
【川崎フロンターレ】
勝てば5連勝となる一戦。あまり騒がれている感はないが、クリーンシートを達成すればクラブ記録の5試合連続無失点を達成することになる。シーズン序盤はやたら多いと騒がれていた失点数も、ここに来て3位タイまで浮上。川崎より失点が少ないのは鳥栖と福岡だけである。
今季の強さを牽引するのはセットプレーだろう。苦しいチーム状況からやたら2019年と比較されることが多いシーズンになっているが、2019年のセットプレーの得点は5つ。今季はすでにそれを2つ上回っていることになる。セットプレーへの強さはCKに逃げることやファウルを犯すことへの恐怖心にもつながる。例年と異なり多くない機会でこれだけ得点を生み出しているのは立派だ。
ただ九州のアウェイゲームは鬼門。得意の九州勢相手に遠野のゴールは期待したい。気がかりなのは交代選手がギアアップのスイッチになっていないこと。ACLでの空白があったとはいえ、2カ月以上交代選手の得点がないのは寂しい。プレータイムが少ない選手たちの奮起にも期待したい。
予習
第11節 C大阪戦
第12節 FC東京戦
第13節 神戸戦
展望
■局在化&全体最適化が優先事項
鳥栖のボール保持の基本的なスタンスはあらかじめ人を多くかける場所をある程度決めて局在化させること。誰をどこに置くという感覚は比較的薄く、全体の配置を優先して各個人がバランスを見てポジションに入る。そんな感じである。プレミアリーグになじみがある自分にはブライトンと少し似ている印象を受けた。
人数をかける場所はサイドとPA内。PA内に攻撃を完結させるためのクロスを上げるのが攻撃の終着点になっている。
人を重点的にかけるのはどちらかといえば左サイドが多い。CBのジエゴがSB化し、IH、2トップ、WBがどんどんボールサイドに絡みながらフリーの選手を作る。
左に人数をかける頻度が高いのは逆サイドのWBの飯野が突破力を備えているから。広いスペースさえあれば独力でクロスを上げ切ることができる。無論、昨年の鳥栖戦を覚えている川崎ファンには説明無用のことだろうが。
鳥栖としては左サイドを主体としつつも、当然逆サイドの選択肢は持っておきたいところである。左サイドのWBの岩崎はアタッカータイプ。むしろエリア内に飛び込む役割を担っている。
サイドを替える動きがゆっくりになってしまった場合は左右対称に右でも人数を使った崩しも行われている。左右が逆になってもできるのは設計図の共有がうまくいっている側面が強い。
攻撃で少し苦労しているなと感じるのはエリア内の高さが昨季よりも目減りしていること。高いクロスでも競り勝ってくれる酒井の不在で、ハイクロスの威力が低下してしまっているのは否めない。そのため、入れるクロスの質は昨シーズンよりもシビアだ。
その分、トップに小野を起用するなど流動性を上げることで解決を図っているが、なかなか効果は薄い。ここまでの15得点は少なくはないが、2試合で9点固め取りしていることを考えると得点には苦労している試合が多いのだろう。
守備では3-4-3というフォーメーションをベースにハイプレスで人を捕まえに来るスタイルが前提である。シャドーが外を切りながら内側へのパスを誘って刈り取る。ハイラインだけども、バックラインの対人は少し怖さがあるのが正直なところ。負荷をかけられ続けると決壊のリスクは少なくはない。
なのでCHより前で攻撃は食い止めたいところ。献身的に人を捕まえるということでバックラインをカバーしながら少ない失点数をキープしている。
■FC東京と神戸から学ぶ鳥栖対策
普段であれば川崎がどのように戦うかの話を始める時間なのだが、鳥栖の直近の試合は興味深い内容が多かったので少しケーススタディを。まずはFC東京が鳥栖に対して行った保持から触れていきたい。
FC東京の弱みは保持における意識が高いにもかかわらず、バックラインのプレス耐性が脆いこと。プレスの強度がある鳥栖には怖い弱点である。
そんなFC東京は非常に早い段階でボールをサイドに付けることでうまく弱みを覆っていた。先にも述べたが鳥栖のプレスにスイッチが入るのはシャドーが外から内にプレスに向かった時である。この動きをトリガーにCHがプレスを強める。
ならばとっととサイドに展開して中央を経由せずに大外でスピード勝負に持ち込もうという話である。FC東京はサイドでのスピード勝負は分がある。永井やレアンドロなど馬力のあるアタッカーから直接ゴールまで向かうことができる。
また、この戦い方はFC東京のIHのスタイルにもフィットしている。IHに求められるタスクはCBからボールを引き出すことではなく、大外で走るWGに追いついてフィニッシュに絡むこと。相手を背中で背負いながらボールを受けるスキルは改善の余地がある安部や松木だが、フリーランに関してはどちらも一級品。この戦い方ならばIHは強みを発揮しやすい。
ここから川崎が学べることはビルドアップの際にはワイドから逃げ道をもっておくこと、そしてWGのスピード勝負にキャッチアップできるMFを作ることである。
普段の川崎のボールの動かし方はまず内に付けることが優先になることが多い。まさに昨シーズンの鳥栖戦がいい例である。川崎の中では低い位置からのビルドアップに長けている車屋と山村のコンビがハイプレスでバシバシ捕まったように、鳥栖はインサイドには網を張っている。ならば、その外から攻撃する手段は持っておくべきだ。
というわけでコンディション面とご相談ではあるが、この試合で効きそうなのはワイドからスピードで優位に立てるマルシーニョとその速い攻撃についていける遠野である。逆にターンの方向やボールの持ち方にバレやすいクセがあるシミッチのアンカーなどは鳥栖のプレスの格好のターゲットになるように思う。
非保持において興味深かったのは4-0で鳥栖に大勝した神戸。水曜日に対戦した時に感じた人も多いかもしれないが、とにかく彼らは動かない。リードしたという状況を早い時間にとれた影響も多少はあるだろうが、降りていく選手にはとにかくついていかない4-4-2だった。
鳥栖の移動は割とついてきてくれてナンボという部分がある。ついてきてくれてもおいていくとか、ついてきたことで空いたところを使うとかがベースになるわけで、相手が動いてくれないとそもそも始まらない。
この神戸のスタンスはプレスの志向が強い川崎には完コピは厳しいようには思う。が、部分的に採用するのはどうだろうか。
鳥栖のバックラインは構造的に深追いすればするほど厳しくなる。一般的に考えればプレスをかける側の陣形が最も間延びしやすいのは相手のGKにプレスをかけるときである。そして、鳥栖のバックラインの中で最も速く正確にフィードを届けられるのもGKのイルギュである。
よって、イルギュがどこにでもパスを出せるような間延びした状況で強引にプレスをかけるのは危険である。GKまで深追いしすぎてもリターンは見込みにくい相手だろう。よほど、高い位置まで出てくれば話は別だけど。
それに比べればCB陣の足元のスキルは若干怪しい部分がある。よって、トップのプレスの位置をCBまでに定め、GKまではプレスを追わず、下げられたらリトリートに切り替えるくらいがちょうどいいのではないか。
いずれにしても大外だったり、DFラインの裏を明け渡した状態でイルギュのキックによりすべてが変わってしまう状況というのは避けたい。プレスのコントラストを付けることで相手に臨む状況を与えないことは意識しておきたいところである。
個人に目を向ければSBには試練だ。特に佐々木。ファーを狙うクロス対応、ビルドアップ時の縦方向のルートの確保、そして昨年はめちゃめちゃにやられた飯野とのマッチアップである。
中2日で休養たっぷりの鳥栖は非常に厳しい日程ではある。だが、何とか粘り強く戦って活路を見出したいところだ。