フラム【14位】×マンチェスター・ユナイテッド【8位】
クラッチシューターが終盤の隙を見逃さない決勝点
ランチタイムキックオフのこの試合はマグワイアを巡るドタバタからスタート。開始早々に頭部の接触から倒れ込んで治療の時間を設けると、その直後にはわずかにオフサイドポジションから影響を与えてしまい、長いVARのレビューとOFRの結果、ノーゴール判定。ファーのガルナチョの折り返しをマクトミネイが決めたゴールは幻となってしまった。
このプレーの直後にハイプレスを仕掛けるなど、ユナイテッドの魂はここまでの流れと裏腹に死んでいないように見えた。しかしながら、それとシステムがうまくいっているかは切り分けないといけない。ユナイテッドのビルドアップは4-4-2で構えるフラムのミドルプレスに対して、エリクセンがポジションを細かく変えることで対応。特に左サイドに降りて、ダロトを中盤ポジションに解放する動きが目立った。
しかしながら、このSBの移動はビルドアップにおいてあまり役に立っていないように見えた。結局ユナイテッドのボール回しは外循環か、前線の裏抜け一発だったのでSBの位置の選手がそもそもビルドアップの際に登場する機会が少ない。
さらに、持ち場を離れることが多かったワン=ビサカの背後をウィリアンがカウンターでつくなど、フラムのカウンターからの反撃の機会も与えてしまっていた印象。こうなると流石に収支はマイナスに傾いている感じがする。
フラムは兎にも角にもサイドにギャップを作る形が第一。先に述べたワン=ビサカの背後をつくトランジッションでもいいし、横断でももちろんいい。フラムの攻めがユナイテッドに比べて良かったのはウィリアンなどがきっちりと止まれること。これにより、後方からの攻め上がりのフリーランが効くようになる。PA付近のアイデアとしてはフラムの方が前半は良かった。
どちらもチームの攻撃もクロスが出口になっていた感があったが、マグワイアやリームなど経験のあるCB人がこれを回避。ここを一つ越えればというところをことごとく寸断し、相手に決定機を与えないまま前半はスコアレスで終了する。
迎えた後半、フラムは攻勢に出る。前半は少しおとなしかった右サイドからも攻撃が活性化。ユナイテッドもカウンターでガルナチョが裏をとるが、展開的には明らかにフラムに分がある後半の立ち上がりだったと言えるだろう。
だが、そこに立ちはだかったのはマグワイア。前半以上にボックス内でのいい意味での邪魔者率がアップ。フラムにとってはシュートもクロスも彼に全てひっかけている形。一度、マグワイアを通らないチャンスを作れはしたが、これはオナナにスーパーセーブで阻まれる。
守備から勢いに乗りたいユナイテッドだが、WG陣がピリッとせず攻撃のスイッチがなかなか入らない状態が続く。攻めきれないまま終わるか?と思われた後半追加タイムに仕事をしたのは沈黙を守っていたブルーノ。流石のクラッチシューターぶりでミドルを沈めてユナイテッドはギリギリで3ポイントを確保。敗れたフラムはすんでのところでポイントを逃す結末となった。
ひとこと
2トップにしてからの攻撃の生きなさと、失点時のクリアとかのバタバタと。フラムは試合の締めが少しグダついてしまった印象だった。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
フラム 0-1 マンチェスター・ユナイテッド
クレイヴン・コテージ
【得点者】
Man Utd:90+1′ ブルーノ・フェルナンデス
主審:ジョン・ブルックス
ブレントフォード【10位】×ウェストハム【9位】
波に乗ったブレントフォードがシーソーゲームを制する
ボールを持ちたいスタンスを見せたブレントフォードだが、ウェストハムのプレスに立ち上がりからいきなり冷や汗をかくことに。寄せられたフレッケンはボールコントロール中に足を取られてしまい、何とか掻き出す格好に。アントニオからすればあと一歩でボールが取り切れる惜しいシーンだった。
このようにウェストハムは立ち上がりから非保持で積極策が目立つ珍しいスタート。前節のエバートン戦の敗戦で気合が入っているのだろうか。ブレントフォードは落ち着きを取り戻したフレッケンを軸にバックラインから左右に振る形でウェストハムのプレスをいなしていく。
このブレントフォードのサイドを変える動きが決まるかどうかが前半の生命線となっていたといっても過言ではないだろう。もしうまくいけば先制点のようなシーンを生み出すことができる。ハイプレスの意識が高いウェストハムはサイドからのクロス対応に後手に回ることとなり、ブレントフォードに失点を許してしまう。先制点となったモペイのゴールは非常に美しいブレントフォードのパスワークが見られた場面だった。
一方、ウェストハムもボールを奪い取ることができればチャンスは出てくる。特に左サイドからWGのベンラーマの外を回る補佐役が出てくればクロスからチャンスを作ることができていた。
ターゲット役として猛威を振るっていたのはファーに構えていたクドゥス。アクロバティックなシュートで同点ゴールを生み出す。ファーへのクロスは追加点の場面でも効果的。折り返しを沈めたのは好調を持続するボーウェン。ウェストハムは左サイドからのクロスから一気に逆転まで試合を持っていく。
リードをしたのでプレスを落ち着かせるウェストハム。自陣深い位置の守備もこれで安定。ブレントフォードとしては攻め手をもう一度探さなくてはいけない展開となってしまう。
後半、ブレントフォードはオンエカをサイドに引き出す3-4-3に変化しながらウェストハムに対してズレができやすい布陣を作る。これによって、安定した前進を見せるようになったブレントフォードは右サイドからのムベウモのクロスから同点のオウンゴールを誘発。オウンゴールをしてしまったマヴロパノスにとっては直後に警告を受けるなど、どこか波に乗れない夜となってしまった。
逆に波に乗るブレントフォードはセットプレーから逆転ゴールをゲット。コリンズが空中戦を制して大きな勝ち越しゴールを奪い取る。
失点後にポゼッションを回復したウェストハムだが、むしろブレントフォードの精度の高いカウンターを受けるなど返り討ちに合う場面が目に付くように。
シーソーゲームを制したのはブレントフォード。ウェストハムはエバートン戦に続き、またしても肉弾戦に強いチームに連敗を喫することとなってしまった。
ひとこと
野戦病院的な苦難は続くがブレントフォードはブレントフォードという勝利を時折持ってくるのがトーマス・フランクのすごいところ。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
ブレントフォード 3-2 ウェストハム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:11′ モペイ, 55′ マヴロパノス(OG), 69′ コリンズ
WHU:19′ クドゥス, 26′ ボーウェン
主審:トーマス・ブラモール
マンチェスター・シティ【3位】×ボーンマス【17位】
大暴れのドクがゴールショーを牽引
シティはウォーカーがWGになる3-1-6の形で組み立てをスタート。いつもは縦横無尽に動き回るストーンズは3バックの中央に位置しており、配置が固定気味だったのが特徴的だった。
5-4-1で構えるボーンマスだがミドルゾーンで踏ん張りたい意思を示してはいた。最近はシティ相手に初めからベタ引きではなく、ブロックの位置は高めに設定するチームが多い。
バックラインからのドリブルで中盤を引き出す試みをするシティ。中盤に穴が開いたら勝負をかけるポイントはWG。右サイドで止まりながらウォーカーやアルバレスに縦に抜けるタイミングを示し続けたベルナルドもさすがではあったが、この日の主役は左サイドのドクだろう。左サイドからの積極的な仕掛けで存在感を見せる。ロドリにミドルが出てくるようになると、シティは十分に押し下げられている状況を作れていることの裏返しとなる。
ボーンマスはボールを持つターンになればライン間への縦パスから可能性を感じないこともないが、いかんせんその機会は少ない。守備に関しても前への意識はあるがどこに追い込むかを共有されている感がなく、徐々に苦しい方向に追い込まれていく。
すると、シティは左サイドのドクから先制点をゲット。外を回って囮になったアケによって空いた中央のスペースにロドリとのワンツーで入り込みゴールを奪い切って見せた。
失点したのでハイプレスに打って出るボーンマスだが、それをカウンターでへし折ってシティはあっさりと2点目をゲット。ここでも右サイドに登場したドクがアクセントになっていた。
止まらないドクは前半のうちに3点目をゲット。記録上はボールに触ったアカンジのゴールにはなったが、実質的にミドルを放った彼が決めたゴールといって差し支えないだろう。完全な主役となったドクの活躍でシティは前半で勝負を決める。
迎えた後半、右サイドから3人の関係性を使った攻撃でボーンマスは反撃に。ポケットを取ったクリスティからの折り返しをビリングがうまく仕留めたかと思いきやこれはオフサイド判定に。
いけると思ったのもつかの間。すぐさまシティは反撃、もちろん旗手となったのはドクだ。4点目のゴールをあっさりとアシストして後半もきっちり出鼻を挫く。
さらには5点目をベルナルドのループで決めると、6点目は右サイドをえぐったボブからアケのラインでゴールをゲット。ボーンマスを大量得点でへし折りまくる。
ボーンマスはシニステラの一撃で反撃に出るが一矢報いるところが一杯。大量6ゴールを飾ったシティが順当に勝ち点を積み重ねた。
ひとこと
「独壇場」とか「独走」とか「単独」とかドクはあまりにもダジャレトラップになる単語が多すぎて書きにくい。林さんに同情する。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
マンチェスター・シティ 6-1 ボーンマス
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:30′ ドク, 33′ 83′ ベルナルド, 37′ アカンジ, 64′ フォーデン, 88′ アケ
BOU:74′ シニステラ
主審:クレイグ・ポーソン
シェフィールド・ユナイテッド【20位】×ウォルバーハンプトン【12位】
沈黙の先に待っていた歓喜
プレミアで唯一ここまで勝利がないブレイズ。そろそろ1勝が欲しいところ。ホームにウルブスを迎えての一戦に挑む。
バックラインからボールを持ったのはウルブス。セメドの肩上げから少し3バック化する形でビルドアップを行っていく。セメドが片上げした右サイドからウルブスは進撃。このサイドのハーフスペースから奥を取る形から敵陣に攻め込んでいく。
ミドルゾーンからの加速はさすが。ヒチャンの縦へのスピード感もなかなかだったし、中盤に降りてトリッキーなボールタッチを見せるカライジッチの存在もアクセントになっていた。
一方のブレイズはなかなかボールを前に進める機会を掴むことができず。ウルブスの攻撃を高い位置から止めることができず、敵陣に近い位置から素早く攻撃に出ていくことができない。わずかな攻撃の機会においてはWBを使い、ウルブスのSBの外側から進撃。ウルブスもまたバックラインへのプレッシャーがタイトではなかったため、3バックがボールを前に運びながらウルブスのSHを引き出し、WBが高い位置でボールを受けるためのサポートをすることができていた。
とはいえ、トータルの機会で見れば多く攻撃ができていたのはウルブス。ブレイズをねじ伏せて優勢に立つ時間は長かった。
押し込まれるブレイズは同サイドを圧縮していくプレッシングからスタート。前半よりもアグレッシブなプレスでウルブスを高い位置から食い止めにいく。
これにより、試合の展開はオープンに。前半はあまり敵陣に入る機会が多くなかったブレイズも後半は敵陣出ていけるようになっていく。
ミドルゾーンでの加速で優位に立っている分、優勢かと思われたウルブス。だが、先行したのはブレイズ。スローインからのリスタートから一気にウルブスのバックラインの裏をとると、アーチャーが先制点をゲット。終盤に前に出ることに成功する。
しかしながら、ウルブスも90分手前で同点に。ベルガルドのダイナミックなゴールがブラモール・レーンの観客を沈黙に陥れる。
両チームにチャンスがあった終盤、すったもんだの末にファビオ・シルバがPKを与えてしまい、ブレイズに決勝点の絶好の機会を渡すことに。シルバは直前にフリーのヘッドを外した末に守備で取り返そうとした結果、事態を悪化させてしまうという踏んだり蹴ったりなパフォーマンスとなった。
このゴールをノーウッドが仕留めると再び会場は爆発。11試合目にしてようやく観客に初勝利を届けることができたブレイズ。ブラモール・レーンは沈黙の先に待っていた歓声に包まれることとなった。
ひとこと
ブレイズとファビオ・シルバの対比は勝負の光と影を感じざるを得ない。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
シェフィールド・ユナイテッド 2-1 ウォルバーハンプトン
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:72’ アーチャー, 90+10’(PK) ノーウッド
WOL:89‘ ベルガルド
主審:ロベルト・ジョーンズ
バーンリー【19位】×クリスタル・パレス【13位】
前線の質が解決するもの
ボールを持つ立ち上がりとなったのはホームのバーンリー。パレスが積極的にプレスを仕掛けてこなかったこともあり、自由にボールを持つことができるバックラインからボールを前に進めていく。
これまでのバーンリーは枚数をかけたビルドアップでプレスを引き込んでしまい、どこか苦しくなってしまうところがあった。だが、この試合ではパレスは全然ついてくる様子がなかったため特に問題にはならず。
ただ、バーンリーは攻撃の出口のところでは苦労した。ボールを前に進める際の拠り所になっているのはサイドというのはいつもと同じ。このサイドのケアはパレスは入念。いくらコレオショが優秀でもウォードとアイェウの2枚を相手に自由に突破ができるということはまずあり得ない。よって、バーンリーはボールを運べるがサイドから効果的な仕掛けができない状態で停滞する。
パレスのビルドアップは自陣からCBがショートパスで繋ぎながら勝負をかけるが、サイドに枚数をきっちり合わせて高い位置から咎めていくバーンリーに対して苦戦。それならば!ということで高い位置からプレスに出ていくのだが、GKにプレスをかけたエドゥアールが警告を受けるなどなかなかうまくいかない。
それでも前線の質は全てを解決する。アイェウがバイヤーのところをちょっかいをかけるとハイラインからボールを奪取。そこからシュラップにラストパスを送り、あっさりとパレスが先制。バーンリーが求めても手が届かないものをすでに持っている感があるパレスの先制点だった。
後半も同じテンションで試合は進んでいく。押し込む時間は長くなるバーンリーだが、どうしても決め手がない。左サイドからボールを運べてはいるのだが、クロスの先から鋭いシュートを打つことができず、ジョンストンが守るゴールを脅かすことはできない。
パレスはエゼを入れて攻撃の主導権を握りにいくが流れを変えることができず。パレスもパレスで苦労している感があったが、アムドゥニやコレオショの左サイドの仕掛けがなかなか実る気配はなし。
そうこうしているうちに後半追加タイムにパレスが2点目をゲット。ここまで存在感がなかったのに、タメからの和ストパスというワンプレーで得点機会を与えるエゼはなかなかにニクイ。もがいてももがいてもチャンスにならないバーンリーを尻目にパレスが効率よく強かに得点を重ねた一戦となった。
ひとこと
質でぶん殴っていた。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
バーンリー 0-2 クリスタル・パレス
ターフ・ムーア
【得点者】
CRY:22′ シュラップ, 90+4′ ミッチェル
主審:ピーター・バンクス
エバートン【15位】×ブライトン【7位】
課題克服は棚上げも勝ちパターンの破壊に成功
アウェイでウェストハムを撃破し、勢いに乗るエバートン。ブライトンは昨年大敗した記憶もあって、嫌なタイミングでの巡り合わせという印象である。
まず工夫を見せたのはブライトン。CHのグロスが左サイドに落ちながら、SBのミルナーを押し上げる。その分、三笘はインサイドに入り込むケースが増える立ち上がり。逆サイドのアディングラとともにWGがダイレクトにハイラインの背後を取るアクションが増えるブライトンの仕掛けだった。
このアプローチの見方はいろいろあるだろうが、自分は左サイドにおける三笘のサポートが足りていないため、得点力のある三笘のボールを受ける位置をゴール近くに持ってくるためのアプローチのようにも見えた。この方向性自体は個人的にはOKのように思う。
だが、徐々にエバートンはこれに対抗。CBやピックフォードが見切って早い段階で対応するようになる。ブライトンからすれば手前が使えていないからだろう。今季のブライトンは手前ばかりで、奥が使えていないケースが多かったが、この試合ではその逆にバランスが一気に転じてしまった印象だ。
エバートンは早い段階で先制。速攻からインサイドに走り込んだマイコレンコが先制点を呼び寄せる。おそらくは外はマクニールに任せておけば抜き切らなくても上げ切ってくれると信じていたのだろう。インサイドに走り込むチャレンジが奏功した場面だった。
以降はブライトンの仕掛けのミスを咎めるようにカウンターからミス待ちの反撃に出ればOKという形となったエバートン。だが、キャルバート=ルーウィンとドゥクレの2人の息が合わず、追加点を奪うところまではいかないままハーフタイムを迎えることとなった。
後半、反撃に出たいブライトンは左サイドから攻撃を構築。もちろん、攻撃の中心になるのは三笘。サイドを鋭い角度で抉りながら攻撃に打って出る。
しかしながら、そもそもこの日のブライトンのプランを見ればわかるように、サイドのサポートの体制に今の彼らの課題はある。エバートンが後半の途中からばたつかずに対応できてしまったように、この辺りはまだ完成度の部分に難があると言えるだろう。
だが、カウンターの精度の部分が上がってこないエバートン。なかなか試合を決める2点目を仕留めることができない。
前節のウェストハムと異なり、1点差では凌ぎきれなかったエバートンの守備。終盤に三笘が左サイドからヤングのオウンゴールを誘発し、なんとか土壇場で同点ゴールをゲット。ヤングにとってはディアスに続いて三笘にしてやられるという2試合連続で苦い思いをすることになった。
ひとこと
エバートンの勝ちパターンを打ち砕いたのは良かったが、攻撃の枠組みの構築に関してはいまだにブライトンは苦しんでいる感がある。
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
エバートン 1-1 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:7′ マイコレンコ
BHA:84′ ヤング(OG)
主審:ティム・ロビンソン
ニューカッスル【6位】×アーセナル【2位】
WGの先が見えないアーセナル
レビューはこちら。
セント・ジェームズ・パークでのニューカッスルとアーセナルの一戦は近年はシーズンの重要なポイントで迎えている印象。アーセナルにとっては魔の11月の頭に対峙することとなった。
序盤の落ち着かない展開を過ぎるとボールを持つようになったのはアーセナル。ラヤも含めた3-2で固定したバックラインからの組み立てはニューカッスルのプレスに対して、ホワイトが浮く格好に。
サカを使ったレイオフやラヤからのフィードでホワイトにボールを届けることでニューカッスルのプレスを逃がすアーセナル。しかしながら、ここからの加速がうまくいかず、ニューカッスルに帰陣の時間を与えてしまう。
ブロック守備の攻略になればWGを軸とした攻撃に出るのがお馴染みのアーセナル。しかしながら、サカはゴードンとのダブルチームに苦しみ、マルティネッリはトリッピアー相手に優位をとれない状況。
結局、アーセナルの攻め手はミドルゾーンを鋭く進んでニューカッスルにリトリートの時間を与えなかったライスのドリブルと冨安のオーバーラップに集約されていた感があった。だが、どちらも決め手には欠けてしまい、なかなかチャンスを作ることができない。
ニューカッスルの保持はミドルゾーンからの加速はよどみなく進んでいったが、サイドからの仕上げがうまくいかなかった印象。この辺りは冨安、ガブリエウを軸としたアーセナルのバックラインの強固さが際立つ展開。アルミロンにボールを運ばれてもリトリートが間に合うのはさすがの強度である。
しかし、迎えた後半。シェアのロングボールから裏をとったジョエリントンからアーセナルのラインを押し下げると、マーフィーのシュートのこぼれ球を拾ったウィロックのクロスから最後はゴードンがゲット。アーセナルとしては判定にひとこと言いたくなる場面ではあったが、この試合で欠かさず続けてきたサイドの蓋が間に合わなかったことが失点に繋がってしまったことを踏まえれば、大事な場面で甘さが出たということになるだろう。
ブロック守備を強化するニューカッスルに対して、アーセナルはジンチェンコの投入やハヴァーツのポケットへのアタック、さらには密集に強いトロサールを使った攻撃などあらゆる手段で攻略に打って出る。
しかしながら、アウトサイドで優位が取れない十字架は重たく、最後までニューカッスルのゴールをこじ開けることができず。初黒星はセント・ジェームズ・パーク。今季初の無得点でリーグ戦を終えたアーセナルにニューカッスルが土をつけた一戦となった。
ひとこと
WGが不調な時にどの選手のどの要素を使って攻略していくのか次第で出場時間が決まっていきそうな予感
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
ニューカッスル 1-0 アーセナル
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:64′ ゴードン
主審:スチュアート・アットウェル
ノッティンガム・フォレスト【16位】×アストンビラ【5位】
シャープさと粘りが光るフォレストの完勝劇
ボールを持つことになったのはアストンビラ。フォレストの1トップのプレッシングに対して、バックラインは余裕を持ってのパスワークができる。
当然ボールを失ったら即時奪回で回復したいアストンビラ。しかしながら、フォレストは左サイドから裏を取る形で一気にラインを押し下げる形で反撃。5分でネットを揺らす。アイナの豪快なミドルから先制ゴールを奪い取る。
ビラの保持は十分にズレを作れる感があった。特にSBを上げての5トップ的なシフトから大外とハーフレーンの挟み撃ちは効きそうな感じ。しかしながら、ボックス内のところで跳ね返されてしまうビラ。フォレストはボックス内の迎撃と外に出て行っての潰しという両面において両CBの勘が非常に冴え渡っていたのが大きかった。
ビラは手数をかけてのサイド攻撃よりもワトキンスとディアビにとっとと預けてダイナミズムを溢れる形に持っていく方が得意なのだろうと思う。しかしながらここもフォレストのバックラインのタイトな守備に苦しむことに。
この日のフォレストは攻守両面で粘り腰があった。ボックス内での対応と出て行った時の潰しのシャープさ、そしてビラのハイラインを颯爽と狙うアウォニイ、ドミンゲス。やはりアウォニイがいるとチームとしての筋が一本通っている感じがする。
後半頭に自陣からのアバウトなボールに粘ったトフォロがボールをつなぎ、ワトキンスが深さを作ると、最後はマンガラ。ミドルシュートがクロスバーに当たってゴールインし、フォレストは後半早々にリードを広げることとなる。
ビラは後半、足元足元になってしまい、なかなか奥行きを使った攻撃が作れず前半以上に停滞感がある展開になる。70分付近には押し込むフェーズを迎えることができるようになったが、ここでもフォレストのバックラインの粘りが光り、なかなかビラはこじ開けることができない。
交代で活性化を図りたいビラだが、なかなか交代選手がアクセントにならないのも苦しいところ。特に後半途中からルイスとコンビを組んだティーレマンスは不完全燃焼。ルイスとの補完性が良くないのか、アピールしたい気持ちがフリーダムなルイスとの噛み合わせが悪いのかはわからないが、あまりお互いがお互いを見ていない感じが気になった。
サイドからの崩しを最後まで改善することができなかったビラ。苦しい前評判を覆したフォレストがビラを止めて、久しぶりの勝利を飾ることとなった。
ひとこと
フォレスト、文句なしで今季ベストパフォーマンス。
試合結果
2023.11.5
プレミアリーグ 第11節
ノッティンガム・フォレスト 2-0 アストンビラ
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:5‘ アイナ, 47′ マンガラ
主審:ジャレット・ジレット
ルートン・タウン【18位】×リバプール【4位】
DFラインがもたらす押し返す勇気
今節、ケニルワース・ロードに顔を見せたのは上位勢のリバプール。ルートンとしてはなんとか勝ち点を取れる状況を模索していきたい一戦ということになる。
リバプールはボール保持からスタート。無理にバックラインにプレスに来ないルートンに対して、落ち着いたポゼッションから試合を進めていく。3-2型をベースにアレクサンダー=アーノルドの右サイド進出などの一人二役からサイド攻撃の厚みを持たせていく。
ルートンは降りる選手に対してきっちりついていく姿勢もあったため、リバプールは列落ちからルートンの守備を縦に引き伸ばすことができる。例えば、マック=アリスターは自分が降りた分、縦パスを差し込むためのスペースを作ることができていた。
ライン間にパスを差し込み、そこから裏抜けすることでチャンスを作っていくリバプール。ただし、この日は前線のフィーリングが不調。ヌニェスは決定力のところ、ジョタはプレーセレクトのところに怪しいところがあり、チャンスをきっちり得点に結びつけることができない。
裏に抜ける選手にはおいていかれることもあったルートンの守備陣だが、降りるリバプールのFWに対して厳しめについていく。ロッキャーを軸に強気でプレスに出ていくルートンのバックスに少しずつ前線は勇気づけられるように。徐々に前線からラインを上げるチェイシングを見せるようになる。
相手のラインが高くなった状況は本来であればリバプールにとって得意な状況なはずなのだが、ミドルゾーンで捕まってしまい、鋭く縦に進まれるなど押し返すことができずに苦戦する。ルートンの中では潰し役とパスの出し手を兼務したバークリーと推進力のある縦へのスピード感を見せたカボレとオグベネが非常に目立っていた。
後半頭、リバプールは再びボール保持から押し込んでいく形でスタートする。右サイドの奥を取るアクションを中心に、サイド攻撃から押し込みながらルートンを再び自陣に釘付けに。
ルートンはタウンゼントとカボレを軸とした右サイドから反撃。ロングカウンターから一気に押し返すことで一発があることを後半も示していく。
押し込みながらも崩せないリバプールに対して、ルートンは80分にロングカウンターから回答を提示。バークリーの縦に速いパスからカウンターが始まると、最後はチョンのゴールで先行。ルートンがまさかのリードを奪う展開になる。
最後まで攻め続けたリバプール。ディアスのゴールで1点を奪い返しスコアを振り出しに戻すことができたが反撃はここまで。ルートンはファインセーブでチームを救い続けたカミンスキの活躍もあり、リバプールから勝ち点を奪うことに成功した。
ひとこと
前半30分、押し込んでいたフェーズをもう少しリバプールは丁寧に過ごしかった感じに見える。
試合結果
2023.11.5
プレミアリーグ 第11節
ルートン・タウン 1-1 リバプール
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:80′ チョン
LIV:90+5′ ディアス
主審:アンディ・マドレー
トッテナム【1位】×チェルシー【11位】
「9人じゃ試合は勝てない」という原則が最上位
立ち上がり特有のとりあえず強くあたってから考えるシーンを抜けると、ボールを保持したのはトッテナム。チェルシーは自陣に引いて構える気は毛頭ないので、CBにボールを持たせつつ2列目がプレスを仕掛ける機会を伺う形でスタートする。
クルゼフスキのゴールはシュートシーンだけ見ればチェルシーからすると不運なもので片付けたい気がするが、プレッシングのところまで遡ってしまうと話は別。プレスのスイッチを入れたパルマーにジャクソンは連動しきれず、カイセドのサイドへのフォローが間に合っていない。スピードに乗せた状態でクルゼフスキにチャンスを与えてしまったのは、彼らのプレスがトッテナムのビルドアップに上回られてしまったからであり、そこには運の要素は少ないという点は指摘しておきたい。
トッテナムは先制点以降もこのバックラインを軸としたスウィングでチェルシーのプレスを振り回していた。マディソンの展開力は今更触れるまでもないが、逆サイドからのボールの引き取り手としてウドジェやサールの貢献度の高さはさすが。そして仕掛けるタイミングでの同じ絵の加速を作れているあたりはチームとしての完成度の高さだろう。
トッテナム優位の風向きが変わったのはウドジェの警告あたりからだろうか。徐々にチェルシーのロングカウンターがトッテナムのハイラインを侵食するようになる。さらにはエンソのミドルなど(リプレイが被ってるせいでおそらくにはなるが)ハイプレスからボールを奪い取るシーンも少しずつ出てくるように。
そして、カイセドのミドルのシーンも同じ文脈。ネットを揺らしたこのシーンは流れの中でロメロの退場を生み出しており、これ以降盤面は大きく変わることになるが、チェルシーの同点ゴールを生み出したのもまた必然性はあったことは付記しておきたい。
トッテナムは4-3-2でのハイライン継続を選択。マディソン、ファン・デ・フェンという攻守の要を負傷で失ってなお、この方向性は変わらず。チェルシーは無限に左サイドからスターリングが抜け出しを続けるが、ダイアーとエメルソンの急造CBが裏抜けに食らいついていく奮闘が光り、試合は1-1でハーフタイムを迎える。
前半はいろんなことがありすぎたのでトッテナムは単に盤面を整理する時間がなかった可能性もあったが、後半の頭からもポステコグルーは4-3-2のハイラインを選択したことで、彼らの哲学がそこにあるのだなということがわかる。もちろん、CBがベンチにいないのならば、その道を行くことになる納得感もそれなりにある感じはする。
しかし、カウンター対応で3対2の局面からウドジェが2枚目の警告を受けてトッテナムは9人に。スターリングの対応がまごついたものになったが、逆にそれが退場を誘発するのだから、サッカーは難しい。
9人でも4-3-1でハイラインを継続するトッテナム。ホルダーにプレスがかからないようになると、裏抜けを全部なんとかするのは難しいという点で4-3-2より難易度はグッと上がる。
だが、チェルシーはスターリングが何もかも1人でやろうとしたり、ククレジャのように抜け出した後の選択がイマイチだったり、ジャクソンがそもそも抜け出さなかったり、ムドリクが普通に人数をかけたサイドの突破を狙ったりなど難がかなり見えた。トッテナムは強気のプレスにヴィカーリオのリベロ仕事を掛け合わせることで流れを引き戻す。
しかしながら、9人でホルダーにプレスがかからないハイラインを続けてしまえば、破られるシーンが出るのは仕方ないこと。ジャクソンがスターリングの抜け出しを仕留めて本当にようやくリードを奪う。
だが、トッテナムはセットプレーを中心に反撃。交代で入ったウゴチュクがプレスで飲みこまれたり、ムドリクやグストが軽率なファウルを犯したりなど、チェルシーは足元を掬われてもおかしくない試合内容ではあった。
しかしながら、「9人でサッカーを勝つのは難しい」という原則は強固。更なるチャンスを迎えたジャクソンがハットトリックを決めて、最後はチェルシーが大勝。プレミアリーグから無敗のチームは消え去ることとなった。
ひとこと
魔の11節を締めくくるに相応しい内容だったと思う。語りたい角度があまりに多すぎる試合だった。9人じゃ試合は勝てないし、世の中にはいろんなハットトリックがある。試合は見ないとダメだ。
試合結果
2023.11.6
プレミアリーグ 第11節
トッテナム 1-4 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:6′ クルゼフスキ
CHE:35′(PK) パルマー, 75′ 90+4′ 90+7′ ジャクソン
主審:マイケル・オリバー