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「Catch up Premier League」~Match week 12~ 2023.11.11-11.12

目次

ウォルバーハンプトン【14位】×トッテナム【2位】

精度に欠ける重たい試合を動かすゲームチェンジャー

 ファン・デ・フェン、マディソンの年内離脱が決まり、ウドジェとロメロは出場停止。前節のロンドンダービーは4失点での今季初黒星ということよりも、4人の主力が戦列から離れることが決まったことの方が衝撃が大きかった。今季のスタメン基準で見ればDFラインは寂しさはあるが、この試合単体で見ればベン・デイビスの復帰とポロのフィットネステストの通過とよくメンバーが揃ったという方が先に来てしまいそうなスタメンである。

 ここから大事!という一戦において、先制点が3分にもたらされたことは幸運だった。クルゼフスキのタメ、追い越すポロが作り出す相手のバックラインのギャップ、そこにつけ込むジョンソンのスペースへのランという要素は離脱によって解体されなかった今季のスパーズのアタッキングサード攻略のエッセンスである。

 ウルブスは先制されても強気にプレスに出ていくことはせず、FW-MF間をコンパクトにすることでトッテナムの中盤をスムーズに前進を許さないことを優先。それならばと外循環で勝負するトッテナムだが、このフェーズでは流石に主力不在感が強い。スペースを配る&サイドにサポートに出るの両面でマディソンの不在は色濃く見えることとなる。左サイドのエメルソンとサールは細かくレーン交換を行っていたが、頑張っていた以上の効果が出ていたかは怪しい。

 トッテナムは前からのプレスの意識は弱くはなかったが、さすがにいつもほどの強気のスタンスは見られることはなかった。 そのため、ウルブスの保持は十分に機会を与えられることに。ウルブスの保持は前節と同じく4-4-2から右のSBのセメドがWB化することで変形する。

 ただ、精度はイマイチ。折り返しからセカンドボールが拾えれば波状攻撃ができるかもな・・・くらいの攻撃精度であり、この部分ではトッテナムに上回れた感がある。トランジッションからエメルソンの背後を狙うことができた前半の終盤はトッテナムの受け方がまずいシーンはあったが、ウルブスの精度の問題でチャンスの構築までには至らず。ただし、トッテナムもまた先制点以降はアタッキングサードの攻略に難があり、思ったような攻め方ができる状態ではなかった。

 迎えた後半は互いにハイプレスのカラーを強める立ち上がり。サイドから裏を取る形が両チームの攻撃の中で増えていき、試合は少しずつオープンな展開になっていた。

 しかしながら、アタッキングサードの精度という両チームの共通課題は後半も健在。ビハインドのウルブスは左のアイト=ヌーリからボックス内に迫る動きを増やしていくが、放送席の2人のぼやきが止まらないくらいにはパスが合わない場面が続く。

 交代選手が入ってもなおなかなか上積みが見えない展開の中で、試合を変えてみたのは80分過ぎに投入されたサラビアだった。2列目からのボックス内の飛び出しで91分に同点ゴールを生み出す。トッテナムはウルブスの左サイド側に流れたクーニャにダイアーが中途半端に釣り出されたところが傷に。このスペースにサラビアの侵入を許してしまった。

 そのサラビアは決勝点ではアシスト役に。レミナがもぎ取ったファウルからドイルが素早くリスタートし、サラビアのラストパスに飛び込んだのもまたしてもレミナ。後半追加タイムに奪った2得点で一気にモリニューのボルテージを上げたウルブス。試合の大半をリードで過ごしたトッテナムに勝ち点1つ持ち帰らせない結末を手繰り寄せた。

ひとこと

 試合自体がどちらもチャンスができない非常に重い展開だったので、カライジッチ投入による2FW化とか、サラビアというジョーカーの投入でウルブスがうまく試合を動かしたなという感じ。トッテナム側はポステコグルーが今季どのように歩んできたかを考えれば、このベンチメンバーで試合を動かせないのは仕方ないという感想が先に来る。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 2-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:90+1′ サラビア, 90+7′ レミナ
TOT:3′ ジョンソン
主審:ティム・ロビンソン

マンチェスター・ユナイテッド【8位】×ルートン・タウン【17位】

結果第一の一戦で首をつなぐ

 CLでは死闘の末に劇的な敗戦を喫してしまったマンチェスター・ユナイテッド。野戦病院状態のスカッドにいつまでも上向かない選手のコンディション。テン・ハーグはまさしく四面楚歌といった状態となっている。ホームにルートンという状況すら、負けられないという逆の意味でのプレッシャーに押しつぶされかねないチーム状況だ。

 3-4-2-1で組んだルートンに対して、マンチェスター・ユナイテッドはワントップの脇からCBが運ぶスタート。落ち着いたボール保持の機会を得るという意味では十分かもしれない。

 しかしながら、各駅停車でボールをWGに預けて、またバックラインにもどすというのがこの日のユナイテッドのボール保持の流れ。いわゆる相手の懐に入り込めないU字のポゼッションでなかなかクリティカルに切り込むことができない。

 シンプルなラッシュフォードのクロスを収められるホイルンドのおかげでアバウトな攻撃でもそれなりに差し込むことができるのは朗報ではあるが、やはり手前に引き出すアクションの不足は気になるところ。起点としても終点としても優秀なホイルンド。そんな中でも後方からゲームを組み立てられるエリクセンの負傷が暗い影を落とすのは今のユナイテッドを悪い意味で象徴している。

 ただし、押し込むことによる意義がなかったわけではないユナイテッド。スムーズに即時奪回に移行するスタンスや中盤の高いプレス意識はルートンのポゼッションをばたつかせるには十分。クロスまでが一杯となっていたルートンはなかなか敵陣に迫ることができず、35分のカボレ→モリスのクロスを除けばなかなか有効打を打てる状態ではなかった。

 迎えた後半、ボールを持ちながら進むユナイテッド。セットプレーから早々にチャンスを得て、ルートンのゴールマウスを脅かす。

 ルートンは左サイドから反撃に出る。ダウティーの攻め上がりやオグベネの推進力あたりはオールド・トラフォードでも十分通用する武器となっていた。

 しかしながら試合を動かしたのはホームのユナイテッド。再び、セットプレーからチャンスを迎えると決め手になったのはリンデロフ。先発復帰を祝う一撃でルートンのゴールを破りついに喉から手が出るほどほしかった先制点にたどり着く。

 この虎の子の一点を守り切ったユナイテッド。最後まで単調な感は否めなかったが、この日のユナイテッドにとっては何はともあれ勝つことが重要。交代選手がエンジンをかけられずに反撃に出れないルートンを尻目にゴールに鍵をかけ、クリーンシートで勝利を手にすることとなった。

ひとこと

 ここで負けたらやばい!のところで勝って延命するのはテン・ハーグあるある。スールシャールに続き、ユナイテッドの最近の監督の粘りはなかなか。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ルートン・タウン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:59‘ リンデロフ
主審:グラハム・スコット

アーセナル【4位】×バーンリー【19位】

セットプレーからの突き放しで逃げ切りに成功

 レビューはこちら。

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 前節、今季リーグ戦初黒星を喫したアーセナル。ホームでバーンリーを迎える一戦で立て直して中断期間を迎えたいところだ。

 立ち上がりのプレスをいなし、アタッキングサードへの攻略に入るアーセナル。左右のWGにボールを預けに行くが、特にサカへのマークはタイト。SHの戻りも早くなかなか簡単に預けるだけでOKとはいかない展開となる。

 FW-MF間のラインをコンパクトに維持していたバーンリー。まずは縦に陣形を間延びさせることを優先的に行いたいアーセナルはトロサールの裏抜けの動きを使いながら、バーンリーの陣形を縦に引き延ばすアプローチを優先する。

 裏を出口にするアプローチは悪くはないのだが、相手にもポゼッションの機会を与えてしまうのが難点。バーンリーはライスとジョルジーニョを自軍の左サイド側に引き寄せながら、中盤に穴を開けてアムドゥニの加速からカウンターを狙っていく。

 それでも徐々にペースはアーセナルに。押し込む機会を得たアーセナルは左右からクロスを放り込むことでバーンリーのボックス内での守備の負荷を増やしていく。ファーを狙うボックス手前からのアーリー気味のクロスと、ニアサイドを裏抜けする形でエグるマイナス方向のスピードの速いクロスを使い分けながらボックスに侵入していく。

 このアプローチが実ったのは前半終了間際。ジンチェンコからのクロスの折り返しに飛び込んだのはトロサール。ポストに激突しながら押し込む一撃でアーセナルはハーフタイムを直前に前に出る。

 バーンリーは後半頭にコレオショの特攻からチャンスを迎える。この特攻が前触れになったのか、冨安との1on1のところを起点にバーンリーは同点ゴールをゲット。アーセナルからすればファウルだろと言いたくなる場面だが、判定は覆らなかった。

 それでも左サイドのマルティネッリやトロサールを軸に攻撃は前半以上にスムーズに行うことができたアーセナル。失点直後にセットプレーからサリバのゴールですぐに押し返す。

 そして更なる得点の決め手となったのもセットプレー。今度はPA内からの跳ね返りをジンチェンコが仕留めて2点リードを確保する。

 終盤はファビオ・ヴィエイラの退場で少しバタバタしたアーセナル。しかしながら、いつものように落ち着きながらバックラインを増やして対応し、2点差を守り切り勝利を手にする。

 快勝とは言えるか微妙な内容ではあるが、負傷者の目立つ中の逃げ切り勝利でブレイクを迎えることができたのは何よりだろう。バーンリーはこれでテーブルの最下位に転落することとなった。

ひとこと

 ハヴァーツはもうちょい引っ張ってもよかったと思う。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
アーセナル 3-1 バーンリー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:45+1‘ トロサール, 57’ サリバ, 74‘ ジンチェンコ
BUR:54’ ブラウンヒル
主審:マイケル・オリバー

クリスタル・パレス【11位】×エバートン【16位】

予想外の撃ち合い、らしくないプレス

 堅い試合になるのではないのかという予想を覆し、試合は早々に動くことに。立ち上がりのすったもんだを利用して先制したのはエバートン。キャルバート=ルーウィンで深さを作り、2次攻撃をマイコレンコで仕上げるスタンス。2試合連続のゴールを決めたマイコレンコにより、エバートンは早々と先行する。

 しかし、クリスタル・パレスも反撃。スピードに乗ったエゼがブランスウェイトからファウルを奪取。PKを獲得。これを自ら仕留めて試合は早くも振り出しに戻る。

 試合が落ち着くとボールを持つ機会が増えるのはクリスタル・パレス。トップがバックスにプレスに行かないエバートンに対して、ポゼッションからボールを動かしていく。中盤がフリーになると攻撃は加速。特にライン間に入ったエゼが前を向けばアタッキングサードへの侵入が可能になる。

 一方のエバートンがボールを持つようになると、パレスもリトリート主体のスタンスに。よって敵陣まではボールを運ぶことができたエバートン。しかしながら、ボールを持ちながら攻略していくエバートンは少しテイストが異なった。いつもよりもサイドで手数が多く、とにかくクロスを入れるスタンスとは乖離があった。

 この手数をかけた崩しはあまり効いている感じはしなかった。それどころか、パレスはこのエバートンの保持をロングカウンターのスイッチに。パレスの方が主導権を握る形で前半は試合が進んだ。

 迎えた後半は前半の焼き直しのような流れ。ということで早々にエバートンがゴールを奪った立ち上がりとなった。わちゃわちゃした中からファストブレイクを演出し、ドゥクレがゴールを仕留めた。ちなみにこのシーンでもマイコレンコのシュートがポストを叩くなど攻撃に絡んでいた。

 失点したので保持から解決を図るパレス。すぐに反撃に向かう。1stタッチで対面を置いていくシュラップなど左サイドを中心にボールを動かしていく。

 それでもなかなか打開することができないパレス。復帰戦となるオリースの投入で流れを一気に変えにいく。そんなパレスはセットプレーから同点ゴールをゲット。セットプレーからエドゥアールがゴールを仕留める。このプレーはエバートンにとっては痛恨。ターコウスキとピックフォードの連携がうまく行かず、エアポケットに入られたエドゥアールにゴールを奪われてしまう。

 カサにかかって攻めていくパレスはプレスを強めて勝負に出ていく。しかしながらこれが逆効果になった感があるパレス。エバートンはベトへの長いボールから前進し、そこからライン間にパスを通すことで攻撃を仕掛けていく。ゲイェの3点目はエバートンにしては珍しい細かいパスワークから貴重な決勝点を生み出す。

 意外な撃ち合いとなった一戦はエバートンの勝利。これでリーグ戦3試合負けなしとなった。

ひとこと

 パレスが珍しくプレスに出て行った結果が裏目に出た試合だった。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
クリスタル・パレス 2-3 エバートン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:5′(PK) エゼ, 74′ エドゥアール
EVE:1’ マイコレンコ, 49′ ドゥクレ, 86′ ゲイェ
主審:サム・バロット

ボーンマス【18位】×ニューカッスル【6位】

エネルギーの差がスコアにダイレクトに反映

 前節、アーセナルを撃破したニューカッスル。勢いに乗りたいところだが、CLでは連敗となりグループ突破に向けてやや後手に回っている。この試合では出場停止のギマランイスの不在にも向き合わなければいけないなど、前向きにガンガン行こうぜ!と何も考えずになりそうな状況ではない。

 試合の立ち上がりの展開もそうしたニューカッスルのジレンマが前面に出る展開。ボーンマスの試合開始直後のセメンヨのドリブルからのシュートに対する無抵抗感は前節にアーセナルを完封したチームの強度としてはあまり考えにくいレベル。

 ウィロック、マイリー、ロングスタッフという並びは今季ほぼやったことない形ということもあり、守備での連携の部分では怪しさが残る。ボーンマスはニューカッスルの中盤の脇にパスを差し込み、2列目がここから仕掛けていくことで推進力をキープ。誰が前を向いてもドリブルを始められるというのは非常に今季のボーンマスの陣容をわかりやすく表している。この2列目のドリブルに前線のソランケが裏抜けで合わせる形からニューカッスルのゴールに迫っていく。

 なかなか保持でのプレータイムが増えないニューカッスル。さらにアルミロンが負傷で交代してしまうなどニューカッスルの悪い流れは止まらない。交代は免れたがシェアやソランケも負傷で時間を止めてしまうなど両チームともに懸念がある前半となった。

 そうした中でも後半もボーンマスのペースが続く。バックパスを掻っ攫ったソランケなど敵陣に迫る機会は明らかにニューカッスルよりも多い。ニューカッスルは前進のきっかけを掴むことでできず、プレスの強度も上がらない。

 ボーンマスは裏抜けから相手を押し下げ、ロスト後は即時奪回を敢行することで敵陣でのプレータイムを増やしていく。こうした積極性はボーンマスは今季立ち上がりから何度も見せてはガス欠を繰り返していたが、この試合に関しては相手をきっちり飲み込むことができていたし、無理なくギアを上げることができていた。

 ボーンマスはその強度のまま先制点をゲット。セメンヨのライン間からの仕掛けはやや引っかかり気味ではあったが、裏への抜け出しのシャープさでニューカッスルのDFを上回ったソランケはさすがであった。

 そしてセットプレーからソランケが再び追加点。ニューカッスルは失点が重なる状態でもなかなかエンジンがかからずに試合はそのまま終了。両チームのこの試合に残っているエネルギーの差がそのままスコアに反映される結果となった。

ひとこと

 ニューカッスル、先週の強度はどうしたのよ。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
ボーンマス 2-0 ニューカッスル
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:60′ 73′ ソランケ
主審:クリス・カバナフ

アストンビラ【5位】×フラム【15位】

仕掛けたフラムの隙をついたビラ

 立ち上がりはフラムがボールを持つスタート。バックラインが横幅を使ったパス回しを行い、アンカー管理型4-4-2を採用したアストンビラ相手に安定した保持から入る。高い位置をとり、相手の前線にタイトにあたるバックラインも含めて、フラムは保持のターンを回すためのアプローチから入ることができていた。

 しかしながら、ビラは先に決定機に辿り着く。タイトな中央ではなく左サイドから押し下げていくディーニュからエリア内でディアビがフリーでシュートまで持っていくことができた。

 10分も経てばフラムのプレスが落ち着き、アストンビラの保持の局面がだんだんと増えていくように。この時間帯からはどちらも前線が無理にプレスに行かなかったため、保持側が相手のブロックを壊すためのきっかけとなるパスから一気に加速していく形からチャンスを迎えるように。

 ただし、アタッキングサードにおける崩しの手段はアストンビラの方が明らかに豊富。フラムはサイドの崩しに昨年ほどのキレがなく停滞感があった。22分にウィリアンが逆サイドに出張した場面を除けば、相手をサイド攻撃から出し抜けるシーンがあまり見られなかった。

 よって、プレスに出ていって流れを変えなければいけない状況に陥ったフラム。そのフラムの前プレを外すところからアストンビラは先制点をゲット。外切りプレスを仕掛けたボビー・リードのスペースに入り込んだドウグラス・ルイスから攻撃を開始すると、裏に抜けたティーレマンスのクロスからロビンソンのオウンゴールを誘発する。

 先制点を得てもなおアストンビラは保持から主導権をキープ。押し込みながら攻撃を重ねていく。すると、前半終了間際にマッギンがミドルで追加点。ヘディングでボールをマッギンに渡してしまったロビンソンは受難の前半となってしまった。

 後半、同じく保持でスタートするアストンビラ。しかしながら、フラムも保持から反撃。右サイドのイウォビの抜け出しから決定機を迎える。だが、ヒメネスのシュートはポストにあたり、ウィリアンがシュートを押し込むことができない。途中交代で入ったウィルソンも含めて前半よりは攻撃の流れは悪くなかったフラムだが、ボックス内のプレー精度がついてこず、得点には結びつかない。

 するとアストンビラはファストブレイクから追加点。外を回るディアビからワトキンスが仕上げを決めてさらにフラムを突き放す。

 完敗ムードだったフラムの救いは受難のロビンソンが追撃弾の起点になったことくらいだろう。敵陣での仕上げの豊富さを見せたビラがホームで完勝を収めた90分だった。

ひとこと

 ビラは強いのだが、それにしても前半のフラムの停滞感は少し心配だった。

試合結果

2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
アストンビラ 3-1 フラム
ヴィラ・パーク
【得点者】
AVL:27’ ロビンソン(OG), 42’ マッギン, 64‘ ワトキンス
FUL:70’ ヒメネス
主審:サイモン・フーパー

ブライトン【7位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

悪いなりに保っていた平穏が退場で崩壊

 非保持に回れば無理にプレスに行かないブライトンと、積極的にボールを奪いにいくシェフィールド・ユナイテッド。立ち上がりの両チームの振る舞いはスタイルの違いというよりは直感的にコンディションの差を感じるものだった。

 しかしながら、地力の差があるのも確か。プレスに出てきたブレイズをブライトンはいなす力を持っている。立ち上がりに間を繋ぐパスからファティが決定機を迎えると、6分には先制点をゲット。アディングラが左サイドからのカットインで大外から1人でフィニッシュまで持ち込み、先制点を演出する。

 それ以降も大外から存在感を放つアディングラ。左サイドやや一辺倒になっていた感は否めないが、ブライトンはボール保持から攻撃を仕掛けることができている。セットプレーからブオナノッテが飛び出しからチャンスを得るなど、追加点のニオイもそれなりにある展開だった。

 勢いは良かったブレイズだが、反撃のきっかけを掴むことができない。かわされてしまったプレスはもちろんのこと、ボール保持に回っても相手を動かしながら敵陣に入り込むことができない。チャンスが出来そうになったのは42分にファン・ヘッケのミスからカウンター未遂の場面を作れてから。この場面からややブレイズが押し込む時間を作れるようになったところで試合はハーフタイムを迎える。

 後半、悪い流れを変化させようとブライトンはジョアン・ペドロと三笘を投入。長いボールを収めることでプレスに息巻いていたブレイズの心を折っていたペドロはすんなり入った一方で、三笘は大外からのカットインにキレがなく明らかにコンディションが上がっていない状況が見てとれた。

 それでもブレイズは後半も反撃のきっかけを掴めていなかったため、特に問題になる様子はなかった。風向きが変わったのはダフートの退場。何の変哲もないところでの一発退場で10人になってしまうと、5-3-1にシフトしたブライトンは一気に受けに回る。

 すると、ブレイズは右サイドから同点ゴールをゲット。明らかにCBのノリで守っていたWBのイゴールが大外を開けてしまうと、クロスからウェブスターのオウンゴールを誘発。試合を振り出しに戻す。

 失点してもなお、前に出ていく元気はブライトンには出てこず。終盤には三笘とペドロがコンビネーションからボックス内に侵入していくが、ペドロの折り返しが大きくなってしまいチャンスは至らず。

 望外の退場から勝ち点を拾うことができたブレイズ。悪いなりにもリードで試合を進めていたブライトンにとってはあまりに大きい2ポイントのロストとなってしまった。

ひとこと

 アクシデントが1つあれば覆せないくらいに今のブライトンがギリギリなのはわかる。

試合結果

2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
ブライトン 1-1 シェフィールド・ユナイテッド
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:6′ アディングラ
SHU:74′ ウェブスター(OG)
主審:ジョン・ブルックス

ウェストハム【12位】×ノッティンガム・フォレスト【13位】

好ゲームの結末はセットプレーに委ねられる

 エバートンに覇気なく敗れてしまったウェストハムとアストンビラにほぼ何もさせず完封勝利を記録したフォレスト。前節の結果は対照的なものになる。ウェストハムとしては続いている悪い流れを断ち切りたいところだろう。

 立ち上がりからボールを持ったのはウェストハム。4-1-4-1で組んでくるフォレストに対して、数が余るバックラインからショートパスを軸にボールを回していく。フォレストはサイドにボールを追い込んでいるようにも見えたが、2列目の特にクドゥスは相手を背負っても安定してボールを収めることができる。フォレストはなかなかボールの狩りどころを定めることができなかった。

 現代のポゼッション型に欠かせないのはロスト後のプレッシング。そういう意味ではハイプレスからのショートカウンターで3分に先制点を決めたウェストハムはポゼッション型の典型の道を突き進んでいたように思う。パケタのゴールは鋭くネットに突き刺さってみせた。

 ロスト後はボールを持ちながらフォレストが敵陣での時間を増やしていく。左右にボールを振りながら、WGから勝負を仕掛けていく。1on1でも仕掛けられる右のギブス=ホワイトとスペースがなくて窒息しそうになっていた左のエランガでは少し左右でのクオリティ差が出る展開だった。右サイドのギブス=ホワイトからのクロスはシンプルなものだったが、ボックス内にアウォニイがいれば勝負ができるのもフォレストの強みである。

 ウェストハムはカウンターから反撃を狙う展開。フォレストもウェストハムも悪い攻撃を仕掛けていたわけではないのだが、基本的には非保持側が優位に立つ流れ。チャンスをきっちりと刈り取っていたイメージが強かった。

 そういう意味では前半終了間際のアウォニイのゴールは少ないチャンスを活かした貴重なもの。マンガラとサンガレのボール奪取からの流れるようなカウンターは見事。ハーフタイムを前にフォレストが試合を振り出しに戻す。

 後半、追いつかれたウェストハムは保持から解決策を狙っていく展開。互いに保持のターンは慎重な展開が続き、やや展開は膠着気味になる。

 そうした中でゴールを決めたのはフォレスト。アイナのドリブルからできたスペースをうまく活用したエランガが試合を動かす。だが、直後にセットプレーからウェストハムが同点に。セットプレーからボーウェンが仕留めてリードを奪う。

 互いにソリッドな試合かと思われた内容だったが、最終的には撃ち合いになったこのカード。決め手になったのはセットプレー。試合を決めるセットプレーからのゴールを仕留めたのはソーチェク。高さを活かした一撃で決勝点を手にする。

 悪い流れを脱することに成功したウェストハム。トップハーフに滑り込みに成功する形で中断期間を迎えることとなった。

ひとこと

 内容的には互いの良さが出るいい試合だったと思う。

試合結果

2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
ウェストハム 3-2 ノッティンガム・フォレスト
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:3′ パケタ, 65′ ボーウェン, 88′ ソーチェク
NFO:44′ アウォニイ, 63′ エランガ
主審:マイケル・サリスベリー

リバプール【3位】×ブレントフォード【9位】

ラッシュの先の2点目で2位浮上を手にする

 ここにきて公式戦2試合と少し流れが悪いリバプール。前節に続きトッテナムが敗れたため、勝ち点を積むことができれば順位を上げるチャンスとなる。

 ブレントフォードは強豪との一戦でお馴染みの3-5-2型を採用してこの試合に臨む。しかしながら、WBのキャラクターがCB的なことを考慮してか、はたまたリバプールの強力なアタッカーに対しては後ろを余らせた方が得策と考えたのかはわからないが、3-5-2というよりは5-3-2という方がしっくり来るイメージである。

 よって、リバプールはSBに時間を与えられる形になっていたし、遠藤やアレクサンダー=アーノルドの移動はフリーになるという意味では有効ではあった。しかしながら、リバプールもまた選手選考のカラーが前に出ているというべきか、こうしたズレを前面に押し出しながら前進することはなく、アバウトに前線の裏をとるランに合わせて勝負する場面が多かった。

 ヌニェスの裏抜けの精度を考慮してもこの狙いは合理的だったと言えるだろう。さらには遠藤やアレクサンダー=アーノルドをはじめとする自陣の危ういカウンター対応を見る限り、ショートパスで繋ぎながらのトライに挑むのはリスキーに思える。マック=アリスターやグラフェンベルフがいるときと同じ尺度で挑むのは危険である。ブレントフォードの2トップは直線的なカウンターでシュートチャンスまで持っていけるのだから流石である。

 しかしながら、先行したのはチャンスの数で優っていたリバプール。オフサイドでゴールを取り消され続けたヌニェスがアシスト役として活躍。アレクサンダー=アーノルドの縦パスに合わせて、見事にサラーの抜け出しにラストパスを合わせた。

 ブレントフォードは後方に選手を余らせている分、少し出ていくのが遅れたように思えた。この辺りはマンツー勝負を選ばなかった故のファジーさを感じるところはある。

 迎えた後半もブレントフォードはリスクをかけないプレッシングをキープ。リバプールの保持を軸に試合は進むことになる。

 マティプの2枚目、さらには遠藤の退場などいくつかの危ういシーンでお目溢しをもらったリバプール。ブレントフォードのゴール前での猛攻を何とか凌ぐと、左サイドを抉ったツィミカスからサラーにラストパスが決まって追加点を奪う。

 実質、このゴールで試合の大勢は決着したと言えるだろう。最後の仕上げとして豪快にジョタがミドルを決めたリバプール。3-0の大勝で怪我人だらけの一戦を乗り切ることに成功した。

ひとこと

 ブレントフォードのハイプレス殺法が出てこなかった理由は気になる。遠藤、ボールハントのフィーリングは早いところで掴んでおかないと出番が増えてこないかなと思う。

試合結果

2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
リバプール 3-0 ブレントフォード
アンフィールド
【得点者】
LIV:39‘ 62′ サラー, 74′ ジョッタ
主審:ポール・ティアニー

チェルシー【10位】×マンチェスター・シティ【1位】

許容されたオープンな展開で激しい撃ち合いに

 2週間にわたるリメンバランスデイのトリを飾る一戦はチェルシーとシティの激突。チェルシーにとってはトッテナムに続く上位喰いのミッションに2週連続で挑むことになる。

 立ち上がりのプレーはこの試合の激しさを表していたものと言っていいだろう。ハイプレスに出て行ったシティに対して、ポゼッションからチェルシーがこれを回避。

 チェルシーは左サイドで上下に動きながらフリーになっているエンソを起点に逆サイドに流すと、ボールを引き取りに降りたパルマーから前進していく。割とテンプレートのような形でゴールに迫る武器を整理できていた印象である。

 非保持のチェルシーは人を見ていくスタイルではあるが、シティに比べるとミドルゾーンからの加速に警戒しているぶん、バックラインへのプレスの強度に甘さはあった。シティの保持は中央が封鎖されている分、外循環に傾倒。ディアスが大外のレーンに立つなど、シティがお得意の移動でのマンツー外しは全く何もなかったわけではないが、直線的な動きをチームとして好んでいたため、ハーランドやフォーデンが目立つ一方でロドリやベルナルドといったまずは構造で動かそう!派閥はあまり存在感がない状況だった。

 縦に速い攻撃の応酬にも足の長いパスを駆使してついていくチェルシー。ほぼ完璧なゲームプランかと思われたが、ククレジャがPA内でハーランドを倒してPKを献上。これを決められて先行を許してしまうことに。

 しかしながら、セットプレーから同点弾をゲットしたチェルシー。ニアに入り込む動きでチェルシーが早々に追いついてみせる。さらには勝ち越しゴールもすぐさまゲット。右サイドのスムーズな前進から加速し、最後はスターリング。この試合の頭から見られていた加速から勝ち越してみせる。

 それだけに前半終了間際の失点は痛恨。セットプレーの二次攻撃でアカンジをシウバが浮かしてしまい、試合は同点でハーフタイムを迎えることになる。

 後半も高い位置からボールを奪いにいくチェルシー。シティはこれをひっくり返す形で右サイドからのカウンターで勝ち越し。スターリングのゴールよろしく右サイドから奥行きを作り、ハーランドは自分もマーカーもボールも全てゴールに押し込んで見せた。

 シティのリードで試合は落ち着くかと思われたが、試合はまだまだここから二転三転していく。次に光を放ったのは交代で入ったムドリク。左サイドからの突破でロドリを引きつけると、ギャラガーがロドリが開けたスペースからミドルで強襲。このこぼれ球をジャクソンが押し込んで再び試合は振り出しに。後半のシティはロドリやグバルディオルなど受けに回ると不安定な守備陣のパフォーマンスがやや目につく。

 しかしながら、ロドリはクラッチシューターとしてその存在感を遺憾なく発揮。何度もみた80分以降のミドルシュートでシティに今日も勝ち越しゴールをもたらしてみせる。

 だが、試合はこれで終わらず。チェルシーは終了間際にPKを獲得。中盤のパスワークでコバチッチを振り回して作った穴をディザジ→スターリングで使うと、PA内でボールを受けたブロヤに慌ててディアスがアプローチ。このタックルが軸足を刈り取るものになってしまった。シティのバックスのらしくなさは最後まで尾を引くこととなった。

 プレッシャーのかかる場面でキッカーとしての勤めを果たしたパルマーにより、チェルシーはこの日3回目の同点弾をゲット。壮絶な撃ち合いは4-4のドローで幕をとじた。

ひとこと

 シティのバックスのキレキレ感のなさとリードを奪った時のポゼッションでのいなしフェーズのなさは結構気になる。

試合結果

2023.11.12
プレミアリーグ 第12節
チェルシー 4-4 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:29′ チアゴ・シウバ, 37′ スターリング, 67’ ジャクソン, 90+5′(PK) パルマー
Man City25′(PK) 47′ ハーランド, 45+1′ アカンジ, 86′ ロドリ
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

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