Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第13節
2022.5.14
川崎フロンターレ(2位/7勝2分2敗/勝ち点23/得点17/失点12)
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アビスパ福岡(11位/3勝6分3敗/勝ち点15/得点10/失点7)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で川崎は5勝、福岡は4勝、引き分けは1つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎が9勝、福岡が1勝。
Head-to-head
基本的には近年の成績においては他チームに対して優位に立つことが多い川崎だが、福岡相手にはむしろ劣勢のデータ。昨年の黒星や、ステージ優勝を阻害された博多の森でのドローゲームなど要所で邪魔されている感が強い。
気になるデータは2つ。福岡を倒すには直近のいずれの試合においても3得点を必要としていること。今季川崎はリーグでここまで3得点以上を決めていない。クリーンシートがないというデータも今の川崎にとっては不気味。得意なホームゲームであれば懸念は杞憂であったと胸をなでおろしたいところではあるが。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・ジェジエウは長期の離脱中。
・大島僚太は右足の負傷、登里享平は右ふくらはぎの負傷で離脱。
・広州戦で途中交代したチャナティップはヒラメ筋の肉離れで離脱。
【アビスパ福岡】
・アキレス腱を負傷している杉山力裕は離脱中。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
勝てばリーグ戦は3連勝。実はこのワードを使うのは今年になってすでに3回目。過去の2回はいずれも大阪勢を相手に回して勝利を逃し、連勝が止まってしまっている。三度目の正直になるか、はたまた二度あることは三度あるのか。今季3回目の3連勝チャレンジである。
キーになるのはクリーンシート。福岡相手にはクリーンシートできていないというデータがあるが、直近の試合の勝利ではクリーンシートは必須。清水戦では保持で存在感を出した車屋には引き続き奮起が求められる。
九州勢には苦手なイメージがあると思うが、ホームゲームに限れば2013年9月の鳥栖戦以降、リーグ戦では8年半以上負けていない。得点を取れば川崎では初となるリーグ戦連続ゴールをマルシーニョに決めてもらい、今季初の3連勝を達成したいところだ。
【アビスパ福岡】
公式戦は6試合無敗。勝ちきれない試合もあるため、絶好調とは言い難いが堅調といっていいだろう。リーグの中でもなかなかに倒しにくいチームである。
新しいエース候補として獲得したルキアンはフィットに手間取っている感は否めないが、強固な4-4-2ブロックは健在。失点を許していないため、残留争いとは少し離れた順位で時間をかけて待つことができる状態だ。村上の失点数の少なさはパク・イルギュと並びリーグ最少である。
先制された試合でもすでに2試合逆転勝利をしているというと聞こえはいいが、この2試合はいずれもルヴァンカップによるもの。リーグ戦においては先制されると勝ちきるしぶとさまでは有していない。
得点においてはラッキーボーイ化しているのが山岸。FC東京戦では2得点を決めており、得点の部分でも開花を予感させるストライカーが川崎相手に勝利を呼ぶゴールを虎視眈々と狙う。
予習
第10節 京都戦
第11節 FC東京戦
第12節 湘南戦
展望
■上積みの象徴である山岸
九州勢といえば昨年の川崎にとっては天敵である。リーグ戦で喫した2敗は鳥栖、福岡といずれも九州勢が相手。さらに天皇杯では大分にPK戦で敗れるという昨年J1に所属した九州勢には何かしらの痛い目には遭ってきた。
というわけで川崎には否が応でも気合が入る相手。今季初のリーグ戦3連勝がかかるのだからなおさらである。福岡のベースとなるフォーメーションは昨シーズンと同じ4-4-2。メンバーをそこまで固定しないというのも昨シーズンから続く長谷部監督のスタイルである。長谷部監督は準レギュラーを含めての10数人でシーズンを運用するのが非常にうまい指揮官。おそらく選手からの信頼も相当厚いのだろう。
特徴は何と言っても強固な4-4-2ブロックである。中央のCBには高さがあり、サイドの守備も粘り強く立ち回ることができる。今季のここまでの失点はわずかに7。これは鳥栖(九州勢!)と並んでリーグで最も少ないチームとなっている。こじ開けるのは容易ではない。
昨シーズンからの変化点といえばプレッシングに対する積極性が挙げられるだろう。昨シーズンもプレスをしないわけではなかったが、まずは迎え撃ってエリアで勝負するスタンスうが目立った印象。それに比べると、今年はFWから前向きにプレスを仕掛けて、高い位置からボールを奪ってやろうという意識が格段に上がったように思える。
高い位置からのプレスからショートカウンターに移行する流れはもはやチームカラーの1つといってもいいだろう。圧巻の5得点で大勝を飾ったFC東京戦ではCBからのショートパスの配球をことごとく仕留め、相手のポゼッションを完膚なきまでに破壊し、終始圧倒して見せた。
そのプレスの先導役となっているのが2トップの一角である山岸。高い位置からのプレスと中盤へのプレスバックを豊富な運動量でこなす。4-4-2のプレスの完成度はFWがどこまで頑張れるか次第で大きく変わってくるというのが持論なのだけど、山岸は守備においても非常に貢献度が高い存在である。
ルキアン、ファンマというJリーグでもすでに実績十分の外国人FWよりもここまでのプレータイムが長いのは、やはりその非保持での高い貢献度に拠るところが大きいだろう。得点がついてくれば、一皮むけるシーズンになったとしても不思議ではない。
保持の方に目を向けてみると、山岸の相棒となるファンマやルキアンにまず長いボールを当てるところから始める形が主体。細かくつなぐのが必要とされる場面になると、多少もたもたしている感は否めず、短いパスを小気味よくつないで前進するタイプのチームではない。
それよりはとりあえず蹴ってしまって前線のプレスからの回収の方が効率がいいだろう。もちろん、プレスだけでなくローブロックの堅さも健在。リードをすればブロックを組み、待ち受ける形で得意分野に引きずり込むこともできる。先制を許せば他のチーム以上に厄介な展開になるのは間違いない。
■『スピードアップ』の解釈
川崎としてはまず避けたいのは福岡のハイプレスに引っかかること。いうまでもなくFC東京の二の舞になることである。前進ができない状況でショートカウンターを食らい続ける状態は厳しい。川崎は清水戦ではバックラインから横幅を使いながらの前進がよくできていた。
中でもGKを使って横幅を広く取るような形は福岡相手にも効く。福岡は2CBとアンカーにすべてプレスをかけてくるというよりはアンカーを2トップで受け渡しながら見るチームである。まずは横に揺さぶることで2トップを確実に超えたいところ。
CBが気を付けたいのはパスを出す方向。福岡の選手たちはパスコースを読んでのインターセプトがうまい。特に谷口や車屋のようにパスを出す方向にわかりやすく体が向く選手は警戒が必要。特にCB→SBへのパスを彼らは狙ってくる。
中盤までボールを運んだら数的優位を生かしながらゆっくりしたいところではあるが、ここのフェーズでダラダラしていると山岸をはじめとする福岡のFW陣が中盤とサンドしてボールを奪いに来る。ということで中盤はむしろスピードアップが重要なポジションである。少ないタッチと少ない人数で一気に切り抜けたいところ。前節対戦した湘南ではタリクがこの部分で抜群の役割をはたしていた。
素早く前線に送るメリットは福岡のMF-FWにサンドされないことだけではない。福岡のバックラインにはなるべく早い段階で負荷をかけられるという要素もある。福岡のCBにPA内での守備に集中させてしまうと、崩すのは容易ではない。したがって、エリアの外の段階でラインの上げ下げの駆け引きなど負荷をかけることでミスを誘発していきたいところ。福岡のバックラインはスピードがないわけではないが、やはり狭いエリアを守ってるところを崩すよりは引き出して勝負した方が可能性は高まる。
よって、攻撃はバックラインはじっくりと回しながら慎重に1stプレスラインを越える。そして仕上げは手早く。川崎にとってはキャンプで掲げられた『スピードアップ』という言葉の捉え方が難しいシーズンであるが、個人的にはひとたびスイッチを入れたところから相手ゴールに迫ることを短い周期で繰り返すことと捉えた。
単純な速さ勝負ではなく、相手を止めたり動かしたうえで、その逆をとり進んでいくということを相手よりも早いサイクルで行うこと。それがスピードアップの本当の意味ではないだろうか。かけっこで勝つのではなくて、出し抜いて相手を置き去りにするイメージだ。
非保持においてはやはりまず気を付けたいのはロングボール。ACLでも外国人選手へのロングボールはだいぶ苦しんだが、福岡も同じような手法を使ってくる確率は高い。清水戦で好調だった車屋は捨てがたいが、スピードよりもパワー系が多いし、仕上げもクロスが多いチームであるので、山村を起用するというのも一手である。
福岡のサイド攻撃はあまりFWは流れることはなくSHとSBで完結させるシンプルなクロスを狙うケースが多い。気を付けたいのは彼らの右サイド。カットインシュートがあるクルークスと外から彼を追い越す前嶋の2人を共にシャットアウトしなければターゲットが多いエリア勝負に持ち込まれる。そうなれば、失点の可能性は高まってしまう。枚数は少ないだけにクロスを上げる前段階で川崎は手を打ちたいところだ。