■復活の右サイドと小林悠
川崎を軸として引き分け祭りを続けているせいで、どうやら2位通過は怪しくなってきたグループI。鬼木監督も『このグループで2位通過は狙えない』としているので、狙うは首位抜け。そのためには3連勝で勝ち点14を取らなければ突破は難しいという修羅の道である。
川崎はメンバーを半分近く入れ替えてジョホールとのリマッチに挑む。ここまで3試合同じスタメンを繰り返していたジョホールは流石に4試合目でメンバーを変更。4人を残し、他のメンバーを入れ替える形で川崎を迎え撃つこととなった。
立ち上がりはある程度相手に持たせる感がお互いにあった両チーム。川崎は家長を右のWGに起用しているにも関わらず、ある程度両WGを下げながら4-5-1気味に守っていたし、ジョホールは川崎のCBにはほとんどプレッシャーをかけずにミドルゾーンに止まっていた。
保持側はそれぞれこの状況を生かそうと試みる。川崎は宮城と家長の両WGが大外で幅をとり、相手のSBの位置を決める。サイドがある程度深い位置で幅を取ることで、ジョホールは全体をコンパクトに守ることが難しくなる。
そうなった場合、ジョホールの守備に負荷がかかるのは中盤である。広大なスペースを守らなければいけないし、トップの小林や家長は時折降りてくる。どこまで追いかけるかは難しいところだろう。ジョホールは前節、マンマークの時間帯においても川崎のFW陣に対しては同数で受けるのを嫌がった。降りていく動きについて行ってバックラインに穴を空けるのには抵抗があるはずである。
加えて、この試合ではジョホールのトップは守備の基準が曖昧。CBにはボールを持たせているし、アンカーの橘田への監視も割と緩かったため、車屋の縦パスや橘田の大きな展開を受けることができる選手は多かった。相手の守り方が人基準ならば、それを利用して広く攻めればコンパクトな陣形の維持は難しいでしょ!という考え方である。
一方のジョホールは後方からの対角パスで川崎のサイドを狙う。特に狙っていたのは家長の裏。高い位置をとるコービン=オングは家長の裏を取る形で攻め上がり、左サイドに攻め上がりの起点を作っていく。
そんな最中で先手を奪ったのは川崎の方だった。パスカットからボールを収めた小林がファウルを得ると、この直接FKを脇坂が沈めて先手を奪う。
均衡気味だったゲームはここから一変して川崎ペース。起点になったのは右サイドだった。コービン=オングの思い切りのいい攻め上がりは逆にいえば川崎のチャンスが作れるスペースを開けているということでもある。
川崎は幅を取る家長のタメから山根、脇坂の攻め上がりを使い3人の関係性で崩す。上がりを促し、タメを作り、裏に抜けて相手のバックラインを壊す。川崎の右サイドの滑らかな連携はこの試合で復活。小林へのお膳立てが完璧だった2点目を生み出していく。3点目も同じく右サイドから。抜け出した家長から小林にラストパスを送り、この日の自身2点目を決める。
この3点目で実質勝負アリだろう。後半頭にフォレスティエリを下げたのはジョホールの白旗宣言である。後半のジョホールのゴールのチャンスがないわけではなかったが、彼らのポゼッションをひっくり返す川崎のカウンターの方が得点の可能性は高かった。
カウンターでジョホールの最終ラインが晒される形になると、川崎の前線はドリブルできっちりと彼らの足を止めてから裏抜けで攻略。家長、チャナティップのドリブルは効いていたし、途中から入ったマルシーニョはこういう展開にはうってつけである。
やはり、パスやドリブルなど相手のDFラインの動きを止める材料が入ってくると、全然裏抜けのしやすさが変わってくる。ここ数試合そうした攻撃はできておらず、闇雲に蹴っていた川崎だったが、ここにきてようやくそうした従来の川崎らしい攻撃ができるようになってきた感である。
降伏したジョホールに対して、後半はチャナティップとマルシーニョが加点した川崎。メンバーを入れ替えた一戦を5-0で制し、選手層の厚さをアピールした。
ひとこと
たくさんの得点をとっての勝利、中でも得点が欲しかったはずの脇坂と小林のゴールは大きい。ジョホールとの1試合目は勝つ勝たない以前に『え、そのやり方に90分こだわるの?』という戦い方だっただけに、この試合では川崎らしいアクセントを使っての裏抜けからの崩しが見れたのは大きかった。うまくいく、いかない以前にどう取り組んでほしいかの部分が整理されたのは個人的には1番の収穫であった。
試合結果
2022.4.24
AFC Champions League グループステージ
第4節
ジョホール・ダルル・タクシム 0-5 川崎フロンターレ
スルタン・イブラヒム・スタジアム
【得点者】
川崎:14′ 脇坂泰斗, 31′ 43′ 小林悠, 81′ マルシーニョ, 88′ チャナティップ
主審:ナワフ・シュクララ