ストーリー性抜群の決勝点は生まれず
中断期間に監督交代を行ったセビージャ。新監督はカタールW杯でウルグアイを率いたディエゴ・アロンソである。
初陣のフォーメーションを見る限りはそこまで大胆な用兵の変更を行った感じはなし。強いて言えば、2列目の選手を1枚削ってアンカーにスマレを登用したことくらいだろうか。
この配置はそれなりに保持に落ち着きをもたらした。マドリーの非保持はベリンガムが左に入る4-4-2っぽい形になるし、2トップは特にアンカーの受け渡しを厳密に行うわけではない。したがって、アンカーのスマレには比較的自由を与えられることとなる。これが前後半を通してセビージャの方が相対的にボール保持で落ち着いた展開になった理由だろう。
もっとも、序盤にゴールネットを揺らしたのはマドリーだった。セットプレーからのファーへのクロスを叩き込んだシーンも、スマレの脇から刺していくカウンターを完結させたシーンも非常に見事だった。だが、どちらの判定もノーゴール。オフサイドとなったセットプレーはともかくとして、負傷でのドロップボールでの再開となった後者には多くのマドリディスタが疑問を感じたことだろう。
セットプレーとカウンターの2つでネットを揺らしたというのは実に象徴的。というのもそれ以外の形はセビージャが良く封じていたからである。中盤とバックラインが同サイドに積極的にスライドするこの日のセビージャのスタンスはスペースをドリブルで進撃したいマドリーのアタッカー陣にとって厄介なものだった。カウンター局面からのヴィニシウスが最も効果的な流れの中でのマドリーの攻め手となっていた。
マドリーが縦に速い攻撃に終始したことでセビージャはチャンスがある状態に。サイドの封鎖がタイトでないこともあり、セビージャはサイドからボールを運ぶことができる。だが、サイドではややWGが孤立気味。後方のSBは積極的な攻め上がりを見せてはいたが、中盤との連携が少なかったのは課題だろう。25分のソウの決定機のようにサイドとボックス内にうまく中盤が絡むことができる場面が増えれば、得点も増えてくるはずだ。
後半はマドリーが少しサイドで捕まえるタイミングを早める形で修正を敢行。試合はこれにより前半よりはオープンな展開に。こうなると、マドリーはベリンガムが少しずつ輝きやすい展開になってくる。
局面での個人勝負と化していた後半の中盤戦。セビージャはよく粘りを見せていたといえるだろう。保持では外循環気味になってはいたが、クロスで攻撃を完結させることもできていたし、きっちりマドリーを押し込む場面も作ることができていた。
その甲斐もあってセビージャは先制点をゲット。クロスの寄せが遅れたカルバハルを尻目にアクーニャがエン=ネシリを目がけたボールはアラバのオウンゴールを誘発。これでセビージャがようやく試合を動かす。
しかしながら、マドリーもセットプレーからすぐに反撃。ニアでそのカルバハルが同点弾を決めてあっという間にリードを消し去って見せる。
終盤はセットプレーの応酬でチャンスを作る。セルヒオ・ラモスのヘッドが決まっていればストーリー性は抜群だったが、ここはケパのファインセーブで阻まれることに。結局、両チームとも決勝点を奪うことはできず。試合はドローでの決着となった。
ひとこと
セビージャ、ちょっと引き締まっている感じがしていてめんどくさそう。
試合結果
2023.10.21
ラ・リーガ 第10節
セビージャ 1-1 レアル・マドリー
エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスファン
【得点者】
SEV:74′ アラバ(OG)
RMA:78′ カルバハル
主審:デ・ブルゴス・ベンゴエチェア