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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~Group B Match week 10~ 2022.3.29

第9節のハイライトはこちらから。

目次

①サウジアラビア×オーストラリア

■プレス耐性と中盤の層の薄さに泣く

 日本のライバルとして、今予選を通じて戦った両チームが最終節に激突。突破の可能性を賭けた一戦ではないということは残念ではあるが、この予選においては屈指の好カードである。

 両チームとも保持を落ち着いてやりたいスタンスは見ることができた。中盤1枚(オーストラリアならばジェッコ、サウジアラビアならばアルナージー)が最終ラインに降りてCBに加わりゲームメイクに参加。保持側は3枚でのビルドアップを行おうとする。守備の陣形はどちらのチームも2トップが先導するプレススタイルなので、このやり方はとりあえず数的優位を確保するという視点では妥当ではある。

 しかしながら、その数的優位の確保が両チームにとってはビルドアップの安定につながることはなかった。互いに高い位置からアタックしてくる相手チームのプレスに慌ててしまい、ボールを落ち着いて回すことはできなかった。

 特にひどかったのはオーストラリア。サイドにボールが出たタイミングでシャドーがスイッチを入れるサウジアラビアに対して、自陣でのボール回しが安定せず、結局はクリアすることになってしまったり、ボールを奪われたり。CHにレギュラーポジションの選手がいないというエクスキューズがあるとはいえ、もう少しできて欲しいというのが本音である。

 サウジアラビアはそれに比べればマシではあった。プレッシングに慌てる場面もないわけではなかったが、CHの相棒のカンノも降りて対角のパスを使いながら圧力を回避していたので、オーストラリアに比べれば逃げる手段はあった。

 オーストラリアのチャンスはほとんどハイラインを敷くサウジアラビアのDFの裏を狙う動きから。これだけ直線的な動きでのチャンスメイクが成立するのだとしたら、もう少しビルドアップの時に裏に蹴って回避することを積極的に取り入れていいと思った。38分のボイルの抜け出しによってネットを揺らした場面(オフサイド判定)はオーストラリアの裏抜けが最もクリーンに決まったシーンだ。

 一方のサウジアラビアはサイドに振りながら薄い場所を作り、壊していく幅を使ったやり方。特に予選を通して効果的だったアッ=シャハラーニーのオーバーラップを使える左サイドを使った攻撃はこの試合でも効いていた。

 後半になるとプレスもトーンダウン。そうなるとオーストラリアも幅を使ったポゼッションをできるようにはなったが、運動量が落ちた影響で直線的なゴールの手段が薄くなったマイナスもそこそこ。薄いサイドを使った攻撃でPKを得たサウジアラビアに比べるとやや物足りなさがあった。

 結局は彼らのスタイルで言えばポゼッションが物足りないのだろう。プレス耐性と負傷者だらけの中盤で3月シリーズはボロボロだった印象のあるオーストラリア。プレーオフの開催される6月にはもう少し上手く戦えるチーム状況になっているといいのだが。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
サウジアラビア 1-0 オーストラリア
キング・アブドゥラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:65′(PK) アッ=ドーサリー
主審:アドハム・マハドメ

②オマーン×中国

■良化の兆しはあるが結果は出ず

 共にプレーオフ進出の目もなくなってしまい、第10節は完全な消化試合になってしまった両チームの対戦。互いに高い位置からのプレッシングを行っており、試合のテンポはあまり落ち着かない中での試合となった。

 意外だったのはどちらかといえば保持の時間が長かったのは中国の方だということ。これまでは5バックは割と専制守備の要素が大きかったが、この試合においては3枚のバックラインを軸にオマーンの2トップをプレスで振り回していた。

   数的優位を活用しつつ、ワイドのCBから持ち上がり、相手を同サイドに寄せたところで逆サイドのWBにボールを届けるという中国の保持の流れは非常にスムーズ。中央に人が多いことを活用しながら、同サイドに圧縮をかけるやり方を得意とするオマーンのプレッシングを空振りさせるポゼッションで敵陣に迫っていた。

 これにより、オマーンの前線3枚は綺麗に置いてけぼりになる形に。4-3ブロックを押し下げてファイナルサードに迫るところまでは中国は出来ていた。

 一方のオマーンは中国へのプレスに苦しんでいた。中国のプレスは前線のチャンのプレスに両WGのどちらかが追従したところでスイッチが入る。オマーンは余裕がなくなりマイナスのパスを出したところを中国のプレス隊が追いかけることでボールロストを誘発させられていた。中国はプレスが決まった後、ショートパスを挟むせいでなかなかカウンターに行けていなかったのだけど、ボールのロストの仕方自体は結構危険だった。

   そのため、オマーンの前進の手段は前線へのロングボール一発。そこからタメを作りながら攻め上がりを待って、一気に相手を押し下げる形である。

   戦い方としてスマートなのは中国の方なのだけど、点が入るのはオマーンなのだからおもしろい。アルハジリとのパス交換で前に出たアラウィが先制点を挙げる。その後も、中国の保持に押し込まれつつサイドの裏に流れる前線のタメを活用する形で効率的に反撃するオマーンだった。

 後半もこの構図は変わらない。中国は押し込むことまでは出来てはいたし、オマーンは一発のカウンターで反撃を狙う。中国で物足りなかったところはWGの突破力だろうか。オマーンのサイドのフォローが早かったこともあるが、ドリブルでここが一枚抜けるのならば戦い方は全然違ったように思う。が、それができないからこそ、中国はどこか決め手に欠ける攻撃になってしまっていた。

 そんな中国を尻目にオマーンは追加点。中国が強引に中央をこじ開けようとする縦パスを入れたところをオマーンがカットし、そのまま2点目をゲットした。

 その後も決め手に欠ける状況は変わらない中国。ポゼッション良化の兆しは見えたが、最後までゴールに迫る術を見つけることができず、最終戦を黒星で終えることになった。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
オマーン 2-0 中国
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:12′ アラウィ, 74′ ファワズ
主審:コ・ヒョンジン

③日本×ベトナム

■フレキシブルさと上下の揺さぶりなしでは・・・

 W杯出場を決めてメンバーを大幅に入れ替えた日本代表。吉田、山根を除いた9人を先発起用し、ホームで最下位のベトナムを迎え撃った。

 この試合における日本代表のチームとしての最も大きな変化は中盤の役割配分と言っていいだろう。守田、田中、遠藤の3人の組み合わせは入れ替わったとしても比較的シームレスに役割を入れ替えられるのが特徴。だが、この日の中盤は柴崎、原口、旗手の3人であり、均質的な役割を求めるのは難しい。おそらく、この日出た3人ができていない!というよりも、守田と田中が入ることによってできること!という認識なのかもしれない。個人的にはこれまでの日本代表の躍進を支えていたのは、中盤のフレキシブルさだと思っているので、それが取り除かれた時にどうなるのか?は個人的には見てみたかったところだった。

 というわけでこの日の3センターは前方と後方で分業制。旗手や原口には守田や田中に課せられていたビルドアップ参加は免除されて、前方に位置することを命じられた形となった。

 結果的には日本は中盤のフレキシブルさが取り除かれたことで一気に苦しくなった前半とだった。特に困った感があったのはIHの2人。原口と旗手の2人はワイドのCBの前で立ったまま硬直してしまい、WGのサポートがほとんどできなかった。

 原口がカットインで中に入りたがる久保との相性に苦しむのはよくわかるし、前半の終盤では折を見てサイドに流れたりなど、工夫を見せることができてはいた。

 左の旗手は個人的にはとても残念な出来だった。同サイドでコンビを組んだ三笘は個でも輝けるドリブラーではあるが、味方とのコンビネーションでさらにその輝きを増すタイプ。だが、この日は動きながら受ける動きが極端に少なく、ニアに抜ける動きで最終ラインを揺さぶったりなどの駆け引きが非常に少ない。そう言った要素はほとんどCFの上田に任せられていたように思う。ビルドアップのタスクが軽減されていた分、サイドでの崩しにはもっと貢献しないといけないし、クラブチームで共にプレーした経験のある三笘とのコンビならなおさらである。

 そのIHを含めて動きの少ない前線に対して、後方でゲームメイクを任された感のある柴崎は割と困っていた。日本はそもそもCBからゲームを組み立てる意識が薄いチームなので、シームレスな中盤が取り上げてしまうと、柴崎が頑張らないといけん!という構造になるのは当然の流れである。何本かは印象的な縦パスを通したが、ゲームメイカーとしてコンスタントな働きをするのは難しかった。そもそも柴崎にそういう役割が求められているのかは怪しいけど。ちなみにセカンドボール回収役としては思わぬ存在感を見せていた感じはある。

 前半をまとめると分業制で戸惑う中盤、孤立した三笘が無限ドリブルチャレンジに挑む左、久保と山根と原口が噛み合わせを見つけるまで時間がかかった右という感じ。そうしている間にセットプレーから大外のフリーに合わせられてベトナムにリードされてしまった!という感じであった。

 後半、右のワイドの役割が伊東純也に変わり、流れが日本ペースになる。4-2-3-1に変更したことで低い位置のタスクを原口と分担できた柴崎も少しやりやすそうになった。

 最終予選を通して見る限り、ベトナムのバックラインはこまめなラインの上下動に対応するのがすこぶる苦手。スピードに乗った状態で受ける伊東が右に入ったことでベトナムにラインの上下動を強いることができるようになったのも日本にとっては大きかった。裏を返せば、前半の日本のようにワイドの選手が止まって受けながら打開策を探る動きはベトナムにとっては守りやすい形だったということでもある。

 同点ゴールを決めたのは吉田麻也。高い位置でのインターセプトからエリア内に入っていく動き、こぼれ球への反応とパーフェクトな攻め上がりでFWみたいな顔をして得点を決めていた。

 この流れでとどめを刺したい日本。ポット2に入る可能性がわずかにでもあるならば勝ちたいし、6万人集まってくれ!と言ったからには勝ちたい。繰り返しになるが、ベトナムのブロックを壊すにはラインの上下動を強いる動きが欲しい。そのためには出たり入ったりの動きが有効である。すなわち、シームレスな動きができる中盤の出番である。低い位置でも高い位置でも仕事ができる守田と田中が、スコアラー役の南野とセットで入る。勝ちに行くのならば必然と言っていいだろう。

 守田や田中が入ったことで、どう動くか迷いがあった感のあった山根や中山が自由にスペースに走り出して行ったのは個人的には興味深かった。後方からボールを引き出しつつ、外に開いたりエリア内に入っていく動きを状況によって使い分けることができて、周りの動きもスムーズにするこの2人は現状の日本代表では別格ということだろう。

 ネットを揺らす機会は作るも、オフサイドやハンドに阻まれた日本は結局引き分けに終わる。ベトナムは時間稼ぎかと思いきや、本当に怪我していたGKの交代が結構衝撃的だった。ラスト数分でガンガンシュートが飛んできそう!という超絶難易度の状況で交代で入ったにも関わらず、普通の顔で飛び出してセービングをして見せたダン・バン・ラムが勝ち点ゲットの影の立役者である。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
日本 1-1 ベトナム
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:54′ 吉田麻也
VIE:19′ グエン・タイン・ビン
主審:イルギス・タンタシェフ

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