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「Catch up Premier League」~Match week 13~ 2023.11.25-11.27

目次

マンチェスター・シティ【1位】×リバプール【2位】

右足一つで失点を挽回したアレクサンダー=アーノルド

 プレミアの再開初戦はいきなりの頂上決戦。首位のシティがホームに2位のリバプールを迎え撃つ一戦だ。シティは立ち上がりからアレクサンダー=アーノルドを狙い撃ってのスタート。ドクの突破からファーに構えるハーランドにクロスを狙うスタートに。ドクはインサイドのハーランドに当てて自らが侵入する形が得意だが、ハーランドはファーで構える形に専念。その分、ドクはベルナルドと繋がる意識を強めながら左サイドの攻略にあたる。

 シティはボールを失うと即時奪回モードを発動。リバプールのこれに対する抵抗力はまあまあ。プレスを逃すことはできてはいたが、ヌニェスがキープして陣形を押し上げるまでには至らないという感じである。

 リバプールはWGが下がるなどプレスよりもリトリート要素を強めてシティの保持を迎え撃つ。サラーがアレクサンダー=アーノルドのヘルプに出て行ったのは印象的である。

 リバプールの振る舞いで意外だったのはセットしてボールを持つ局面。例年よりも保持を大事にするのが今季のリバプールだが、それは中盤が個人のスキルでスペースを作ることがベースになっていた。しかしながら、この試合ではCBの持ち上がりがアクセントに。マティプ、ファン・ダイクの両名の持ち上がりからシティの中盤に穴を開けて、リバプールのMFはロドリ脇でスペースをもらえるように。これによりシティのバックラインにヌニェスがアタックをかけることができる。

 だが、このヌニェスの抜け出しのタイミングがなかなか合わない。ヌニェスとともに受け手になることが多いジョッタも含めて、なかなかビシッときた抜け出しを決めることができない。

 押し込むことができるようになったため、リバプールは強気なライン設定に出るが、左右に揺さぶりながらWGが1on1を作る形をセッティングしていくことで対抗。薄いサイドを作り、WGでのドリブルから壊しにいく。

 こうした局面での駆け引きとは全く異なるところで先制点をシティがゲット。アリソンのキックミスは確かにきっかけではあったが、その後の対応がリバプールはまずかった。アレクサンダー=アーノルドの軽い対応がなければ、ラストパスを出したアケには縦パスを出す隙はなかっただろう。盤面の攻防とは少し文脈の異なるところでシティはゴールを奪った。

 後半の頭は前半のスタートと似た構図。シティに対してリバプールは慎重なアプローチを見せた。スイッチが入ればプレスを狙うが、基本は後ろ重心というスタンスである。ただし、ベルナルドに対してはアレクサンダー=アーノルドがチェックに行っており、ドクに対してはアンカーのマック=アリスターかマティプが対応する仕組みになったのは前半との変化である。アレクサンダー=アーノルドをドクから引き離したかったのだろうか。

 ただ、アレクサンダー=アーノルドを残すにはそれなりに意義がある。右の大外からの攻撃参加は明らかに増えており、リバプールはこの右サイドの攻撃をアタッキングサードでの仕上げとして活用することができていた。

 それでも優勢なのはシティ。ドクを生かしたカウンターとセットプレーからチャンスを作り、あわやゴールというところまで持ち込んでみせる。

 だが、これを決められずにいるとリバプールが押し込んだ流れからアレクサンダー=アーノルドが右足を一閃。ガクポの空けたスペースに入り込んだアレクサンダー=アーノルドが先制点の汚名を返上する一撃で試合を振り出しに戻す。

 最後はシティが猛攻を仕掛けるがファーサイドのSBのクロス対応でリバプールは抵抗。アリソンの足は限界を迎えていたが、ハーランドの決定機も枠の外に外れてなんとか事なきを得た。

 結局首位決戦は痛み分け。どちらのチームも抜け出すことができない今季のプレミアの混戦模様を象徴する結果となった。

ひとこと

 シティは勝ちたかっただろうが、自分の存在価値を証明したアレクサンダー=アーノルドもクールであった。リバプールはCBの保持における裁量の拡大が一時的なものなのかを注視していきたいところ。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
マンチェスター・シティ 1-1 リバプール
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:27‘ ハーランド
LIV:80′ アレクサンダー=アーノルド
主審:クリス・カバナー

シェフィールド・ユナイテッド【18位】×ボーンマス【16位】

明暗くっきりの下位対決

 共にここまでの勝ち点は一桁。残留争いにどっぷりつかっている両チームの対戦だが、90分を通してクオリティには明確な差があった印象だ。

 序盤の落ち着かない展開を抜けるとそこからは一方的にペースを握ったボーンマス。後方の3バック化である程度ブレイズの3トップを引き付けると、そこから左の大外に展開。タヴァニアもしくはケリーのどちらかが幅を取り、大外から仕掛けていく。

 タヴァニアはともかくケリーでは突破力が足りないのでは?と思う人もいるだろう。しかしながらブレイズの5バックはそもそもナローであり、大外に立つ選手を捕まえるのが非常に遅い。よってボーンマスは大外からあっさりとブレイズを押し下げ続けるだけでボックス内を脅かすことができている展開となっていた。

 先制点は右サイドから。こちらも大外でボールを持ったセメンヨの横ドリブルに合わせる形で抜け出したのはタヴァニア。1人かわしてゴールを決め、早い時間にリードを奪う。このシーンでもブレイズの大外への対応の悪さとチェックの甘さが見られてしまう守備だった。

 このゴールを機に大外からさらにWGが躍動。特に左で幅を取るタヴァニアは生き生きして大外からラインを押し下げてはPA内にチャンスを供給、もしくは自らがシュートを放っていた。

 一方のブレイズは保持に回っても苦しい。ボーンマスのチェックは厳しくなかなか前線に思ったようなボールが入らない。アーチャーのポストからダイレクトな裏へのパスなどはハイラインのボーンマスには刺さっていたが、そうした機会はどうしても少ない。

 そうした悪い流れを吸い取るかのように前半終了間際にフォデリンガムが大きなミス。飛び出してきたところの対応をミスってしまい、簡単に無人のゴールへのシュートを許してしまうこととなった。

 反撃に出たいブレイズはハイラインから後半をスタート。だが、これを前線のキープ力で破られるとクロスから再びタヴァニアがゴール。ブレイズは交代で入ったアフメドジッチが本当にあっさりとファーでクロス対応に負けてしまうなど、前半の終わりに続いて救いようのない失点の仕方だった。

 以降もオープンな展開の中でボーンマスが自在にシュートを打ち続けてはブレイズのゴールに迫るシーンの連続。そうした中であえてよかったことをあげるとすれば、ブレイズもまた右サイドを軸にボーンマスのゴールに迫れていたこと、そして終盤にゴールで1点を返せたことである。最後まで気持ちを切らさずにできたことは不幸の中での最低限の収穫だ。

 下位同士の一戦は実力差がくっきり。ボーンマスがブレイズに完勝する形で幕を閉じた。

ひとこと

 歴史に残るレベルで前半の終わり方と後半の入り方がひどかったブレイズだった。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
シェフィールド・ユナイテッド 1-3 ボーンマス
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:90+7‘ マクバーニー
BOU:12‘ 51‘ タヴァニア, 45+1‘ クライファート
主審:アンディ・マドレー

ノッティンガム・フォレスト【14位】×ブライトン【8位】

苦悩が詰まったデ・ゼルビの雄叫び

 前節はシェフィールド・ユナイテッドを振り切ることができず、勝ち点を失ってしまったブライトン。苦しい台所事情ははっきり言ってあまり解消に向かっている感じはしないが、とりあえず目先の一戦に対しての踏ん張りを見せたいところだろう。

 ブライトンのビルドアップはいつもよりも人数をかけた慎重なものだった。CB、CHだけでなく、SBもスポットで関与。GKも含めて6人程度で行われることが多かった。少しやり直しの頻度も高くなっていた。

 そんな慎重な入りをしているブライトンにフォレストはカウンターから先制点を奪う。右サイドを突き抜けたギブス=ホワイトのクロスを叩き込んだのはエランガ。流れるようなカウンターからあっという間にフォレストが先制点を奪う。

 ブライトンは左右の大外にファティとアディングラでポイントを作りながらフォレストを押し下げていく。いつもの目が覚めるような縦パスが見られないあたりは事情が違うんだなと感じさせる崩しのルートである。

 それでもダニーロのパスミスをかっさらったところからグロスがララーナの奥に立つファーガソンまでボールを届けて同点に。カウンターに移行しようとしたフォレストにとっては手痛いミスになってしまった。

 これで勢いに乗りたいブライトンだが、フォレストも中盤のパス交換から相手をいなしており、一方的にペースを渡さない。フォレストは中盤が高さを変えながら柔軟にプレスに対応していた。

 さらにブライトンは左サイドに負傷者が続出。ファティとランプティが揃って前半で負傷交代をしてしまう。スカッド事情的には苦しい流れになったが、ピッチの中ではブライトンの交代選手が躍動。左のWGに入ったジョアン・ペドロがクロスに合わせてゴール。リードを奪って前半を終える。

 迎えた後半はフォレストがハイプレスの意識を高めてのスタート。ブライトンは手数をかけながらこれをいなそうとしたが、なかなか試合を落ち着かせることができない。

 しかし、そうした試合の流れに反するように次のゴールを決めたのはブライトン。ウッドのホールディングがPKにつながり、これを再びジョアン・ペドロが決めて点差を広げる。

 これで安泰かと思われたブライトンだったが、まだまだ試練は続く。一方的に押し込まれてのクロス爆撃に耐える時間がここからスタート。左のエランガを軸にフォレストはガンガンボールを放り込んでいく。

 さらにヒンシェルウッドがこちらもホールディングでPKを献上。さらには抗議したダンクの退場というおまけまでついて、フォレストは1人多い状態で10人のブライトンと向かい合うこととなる。

 ブライトンにとって助かったのは特にフォレストが数的優位になってからの勢いが増したわけではないということ。押し込まれながらもボックス内で落ち着いてクロスを跳ね返す展開を続けて何とか残り時間を消費しきる。

 10分という長いATのホイッスルが終わると、駆け出して喜びを表現したデ・ゼルビ。ブライトンは6試合勝ちなしという未勝利のトンネルからようやく抜け出すことができた。

ひとこと

 デ・ゼルビの交代カードは怪我、怪我、退場。1回も自分のタイミングで使えなかった。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ノッティンガム・フォレスト 2-3 ブライトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:3‘ エランガ, 76‘(PK) ギブス=ホワイト
BHA:26‘ ファーガソン, 45+4‘ 58‘(PK) ペドロ
主審:アンソニー・テイラー

バーンリー【20位】×ウェストハム【9位】

前後のバランス改善で安定したビルドアップも・・・

 共にえんじ色をベースとする両チームの一戦は順位よりも互いの特徴がはっきり出たといえるだろう。順位としては下のバーンリーがウェストハム相手にボールを持ち、ウェストハムはロングカウンターを重視する戦法。互いのプランははっきりしており、どちらもそのペースを崩そうとしない立ち上がりだった。

 ボールを持つバーンリーはヴィチーニャを一列前に出す3-2-5の形に変形する。いつもであれば、こうしたビルドアップには無限に人を下ろして枚数をかけてビルドアップをしていたのだが、この日はそうしたことはなく前後の人数のかけ方のバランスが良かった。

 基本的には高い位置に出ていくヴィチーニャのいる右サイドが試合を作る側で、仕上げが左側。もちろんコレオショが出口となる形で左右のバランスを形成する。

 オープンさが増えた前半の終盤はバイアーが警告を受けるなど少し苦労した印象ではあった。基本的にはアンカーからのロングボールを放つウェストハムの攻撃はクドゥスもしくはイングスがターゲット役となり前進を狙う。

 しかしながら、バーンリーはボール保持の安定感で勝負。前進は安定しており、左のコレオショから勝負をかける方向性が機能。あわやPKという場面もあったが、OFRでは覆ることなくノーファウル。前半はスコアが動かないまま試合はハーフタイムを迎えることとなった。

 前半に実らなかったバーンリーの攻撃の核は後方開始直後に早速花開くことに。バーンリーはコレオショがようやくPK判定を引き出す仕掛けをもたらす。これをジェイ・ロドリゲスが決めてバーンリーが先制する。

 先制点で勢いに乗ったバーンリーはそれ以降も勢いを持続。馬鹿みたいにシュートを打ちまくるわけではないが、ボールを回して自分たちの時間を作ること、そして要人には厳しくマークに行くことでウェストハムの同点ゴールの可能性を抑制することができていたといえる。

 しかしながら、それでもまたこじ開けてしまうのが両チームの地力の違いだろう。右サイドに入ったクドゥスは2人にマークをされながらもなんとかクロスを上げきる。するとこれがオウンゴールを誘発し、1点差まで追いついて見せる。終盤は右サイドのクロスからフリーになったソーチェクがエリア内に突撃することで値千金の決勝ゴールを手にすることとなった。

ひとこと

 現状ではできることをやりつくし今季最高といってもいい出来だった感があるバーンリー。だからこそこれで勝ち点を取れないのはきつい。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
バーンリー 1-2 ウェストハム
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:49‘(PK) ロドリゲス
WHU:86‘ オシェイ(OG), 90+1’ ソーチェク
主審:サム・バロット

ルートン・タウン【17位】×クリスタル・パレス【13位】

猛攻をひっくり返して勝ち点3を確保

 ここにきてややトンネルに入ってしまった感があるパレス。やや昇り調子のルートンのホームに乗り込むのはどことなく嫌な感じがするタイミングである。

 しかしながら格上なのはやはりパレス。ボールをゆったりと持ちながらバックラインからアンデルセンがキャリーしつつ崩しの様子をうかがっていく。CHもこれに呼応して移動。高い位置を取るSBを後方からフォローするようにボールサイドにレルマが顔を出していたのは印象的だった。

 いつもよりも高い位置で相手の攻撃を食い止めて、自分たちのターンを引き寄せる。ハイラインで縦パスを咎めると素早くカウンターに。まさしく支配的にゲームを組み立てていく。エドゥアールの反転からシュラップが押し込めなかったシーンはパレスが順調な証拠だろう。

 ルートンはリトリート&カウンターで勝負に出るが、なかなか対抗するのは苦しいところ。工夫を見せていたのはオグベネで、ボールを受けるときは表だけでなく裏に出ていくパターンも織り交ぜながら勝負をかけていた。

 一度敵陣に入り込むと、こちらも勇気をもってラインを上げて再び下がらないように対応。バックラインの縦パスへの食いつき、そしてバークリーとラドックの挟み込みでなんとかパレスに食らいついていくような前半となった。

 それでも前半の終盤は押し込み続けるパレス。だが、得点をうみだすことはできず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

 後半もパレスがペースを握っていくスタート。しかしながらルートンの抵抗も必至。ボールを何とかキープしては左右に散らす役割を根性でこなしていたバークリーの姿が非常に頼もしく映る。順調に押し込むパレスだが、負傷者のアクシデントが発生。エゼとドゥクレが交代で下がってしまう緊急事態に陥る。

 それでも何とかしたいパレスは70分手前にオリーズ→エドゥアールのタッチダウンパスからゴールを決めたかと思われたが、これはハンドで取り消し。ルートンは胸をなでおろすことに。

 だが、このシーンがお互いのゴールの着火剤に。直後のセットプレーで今度はルートンが正真正銘の先制点をゲット。押し込んだのはCBのメンジだった。しかし、すぐにパレスも反撃。ロングカウンターから1人で攻撃を完結させたのはオリーズ。キャリーとフィニッシュまで独力で行い、完璧なカウンターでケニルワース・ロードの観客を黙らせる。

 得点をきっかけに乗っていくパレス。押し込みながらのクロス攻勢でひたすらルートンを追い立てる。防戦一方で苦しいルートンだったが、ワンチャンスから状況のひっくり返しに成功。カウンターからオグベネ→ブラウンへのボールが通りこれが劇的な決勝点となる。

 昇格組のルートンにとっては非常に大きな1勝。一方でパレスはまたしても悪い流れを食い止めることができなかった。

ひとこと

 アンデルセンのパワープレー、もうちょっと効果的に使ってほしい。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ルートン・タウン 2-1 クリスタル・パレス
ケニルワース・ロード
【得点者】
BUR:72‘ メンジ, 83‘ ブラウン
CRY:74’ オリーズ
主審:ジャレット・ジレット

ニューカッスル【7位】×チェルシー【10位】

手応えは前節と真逆

 前節はシティ相手に引き分けと健闘したチェルシーとボーンマス相手に完敗だったニューカッスル。対照的だった結果だが、代表ウィークを経てどのように変化をするかが重要な一戦となる。

 バックラインへのプレスはお互い控えめな中でボールはニューカッスルが握る。SBをインバートしながらビルドアップから配置を動かす形を使い敵陣に入っていく。

 チェルシーはカウンターを重視。ジャクソン、スターリングが直線的な動きを見せてゴールに迫る形で反撃に出る。マイリーの開けたスペースに侵入するククレジャとギャラガーのドリブルからのカウンターが印象的だった。

 チェルシーは試合が落ち着くと保持からも崩しに打って出る。ギャラガー、パルマーといったタメを使ったプレーで奥行きを作り、エンソのミドルを演出したシーンは見事だったと言えるだろう。

 雑に括るとボール保持のニューカッスルとカウンターのチェルシーという構図だったこの試合。お互いその形でゴールを1つずつ奪い取る。

 ニューカッスルはゴードンの横断からゴールを演出。イサクの抜け出しのパスを繋いだのはプレミア初アシストとなったマイリーだった。チェルシーからするとククレジャのラインアップが遅れてしまったのが痛恨だった。

 チェルシーはカウンターからスターリングが独走し、ファウルを奪い取ったところからゴール。直接FKを自ら決めて試合を振り出しに戻す。

 終盤はやや慌ただしい展開だったが、ミドルゾーンでの引き出しの多さを比較すると、どちらかといえばチェルシーペースで試合は進んでいる印象だった。試合はタイスコアでハーフタイムを迎える。

 後半はどちらも保持側が優勢な流れだった。どちらのチームもプレスには積極的だが、なかなか奪い取るところまでにはいかずファウルが嵩んでいく。保持側もまた非保持側のプレスをいなしきって敵陣に入る形は作れなかった。

 そうした状況で増えるのはセットプレー。この好機を生かしたのはニューカッスル。高いライン設定のチェルシーの守備に対して、ショートパスでのリスタートでボールを回してタイミングを外すと、ゴードンのクロスに抜け出したのはラッセルズ。このゴールで前に出ると勢いに乗ったニューカッスルはプレスからあっという間に追加点。チアゴ・シウバに襲いかかったジョエリントンがパスミスを誘発して3点目を決める。

 さらにはチェルシーはジェームズが退場。これを持ってこの試合は完全なるワンサイドゲームとなる。ボールを保持し、シュートを浴びせて試合を支配するニューカッスル。ゴードンの4点目、そして次々と投入される背番号の大きい若手と悠々としているニューカッスルを前にチェルシーは抗議とファウルで警告を増やしていく終盤になった。

 完勝を果たしたニューカッスル。両チームは前節の手応えとは全く逆の結果を手にする結末となった。

ひとこと

 チアゴ・シウバのロストが全てを決めてしまったかな。。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ニューカッスル 4-1 チェルシー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:13‘ イサク, 60’ ラッセルズ, 61‘ ジョエリントン, 83′ ゴードン
CHE:23‘ スターリング
主審:サイモン・フーパー

ブレントフォード【11位】×アーセナル【3位】

新戦力と苦戦する右サイドの融合でダービー無敗を継続

 レビューはこちら。

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 ホームチームは14戦、アウェイチームは16戦。共にロンドンダービーの無敗記録が継続しているダービーキラーの両チームの一戦である。

 負傷者続出のブレントフォードは高い位置からのプレスを仕掛けながら、ラムズデールが久々にゴールマウスを守るアーセナルの出方をうかがう。そのラムズデールはいきなり決定的なミスから致死性のピンチを招くなど、不安定な立ち上がりに。ブレントフォードはこれ見よがしに積極的にプレスを仕掛ける流れにもっていく判断をした。

 しかしながら、ラムズデールの決定的なミスを除けばアーセナルはそこまで危険なロストはせず。ムベウモの右サイドの裏抜けという前進の手段もガブリエウに先読みされて潰されてしまった感がある。

 20分を過ぎるとアーセナルの保持の時間が長くなる。ブレントフォードは5-3-2のリトリートでの守備に切り替え。DF-MF間をコンパクトに維持し、WGにはダブルチームを結成する形でアーセナルに対抗する。

 左サイドのマルティネッリとジンチェンコのペアはパス交換やオフザボールの動きで相手の右サイドを動かすことができており、抜け出してのクロスやPAやや手前からの斜め方向のパスを入れるなど有効打を打っていた。

 その一方で右サイドは機能不全。サカが集めるマークを利用することができず、窮屈な攻めに終始。良い位置にいてもボールを引き出すことができない冨安はサカとウーデゴールからやや信頼を置かれていないように見えた。

 スコアレスで迎えた後半、ブレントフォードは再びプレスをスタートする。このプレスは前半よりも長い時間持続。後半はアーセナルが一方的に押し込むような展開ではなく、ボールが両軍の陣地を行き来するような展開になる。

 一見押し込むフェーズを解消したブレントフォードに流れが来たように見えるが、ファストブレイクの方がWGのマークが軽いことからアーセナルもまたこの状況からスムーズにアタッキングサードの攻略に移行することができていた。

 それでも得点が入らない両チーム。スコアが動かないまま80分を過ぎるとアーセナルが再び押し込むフェーズに突入する。

 左右からのクロスを跳ね返し続けるブレントフォードだったが、後半AT前に決壊。ウーデゴールのドリブルの動きを利用してフリーになったサカがクロスを上げるとファーサイドに飛び込んだのはハヴァーツ。

 値千金の先制点は流れの中からの初ゴール。機能不全だった右サイドと得点に絡めなかった新戦力の2つが融合した決勝点でアーセナルがロンドンダービーの無敗記録継続と首位浮上を決めた。

ひとこと

 ライスとジンチェンコのゴールライン上クリアは全ブレントフォードサポーターがトーマス・フランクと同じくらい頭抱えたと思う。

試合結果

2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ブレントフォード 0-1 アーセナル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
ARS:89‘ ハヴァーツ
主審:ティム・ロビンソン

トッテナム【4位】×アストンビラ【5位】

5-3-2はロングカウンター専用機ではない

 昨日がシティ×リバプールならば本日はトッテナム×アストンビラ。第13節はトップ5の直接対決が多く組まれる豪華な説となった。

 スタメンを見た時に苦しいメンバーになっているのはトッテナムの方。しかしながら、試合の主導権を握ったのもトッテナム。ウドジェの抜け出しからの決定機を皮切りにプレスとポゼッションの両面から決定機を量産。ビラのDFをボックス内で翻弄する。

 オフザボールの動きの質と量がベストメンバーと遜色がなかったのはさすがと言える一方で、ラストパスの質などのディティールの技術に関してはマディソンの不在を感じるというのがトッテナムの正直なところだろう。それにしてもどれか1つは決めてもいいだろうというくらいには多くの決定機があった。22分のロ・チェルソのゴールはセットプレーの二次攻撃であり、数多く作ったチャンスとはまた文脈が違うものである。

 アストンビラはカマラがバックラインに入りながらボックス内でピンチを数多く救っていたのが印象的。リトリートフェーズに入るとあらかじめ彼がDFラインに組み込まれる5バックにシフトすることでボックス内に加勢しやすくなっていた。

 アストンビラにとって痛恨だったのはビルドアップで歯が立たなかったことだろう。アストンビラのビルドアップは引き込んでからの加速は得意であるが、トッテナムの飲み込むようなハイプレスへの対応はバタバタ。トッテナムはバックラインにCB不在という懸念がある状況からか、中盤が列を上げてでのプレスで意地でも前で止めてやるという意識でこの試合に臨んでいた。

 アストンビラはこの中盤の山を越えることができれば決定機になる。失点直後のオフサイドの決定機に代表されるようにマッギンでポロを引きつけつつ、外を回るディーニュという形は定番。パターン化した前進から一気にエリアに迫っていく。ワトキンス×トッテナムのCB陣ならば、とりあえず放り込みさえすれば可能性が出てくるのも大きい。

 トッテナムのプレスが弱まった30分以降は展開がフラットに。アストンビラは前進の機会を均等にすることができた。左サイドを中心に攻めるビラはカマラの2枚目の警告を見逃される幸運にも恵まれた。そして、前半終了間際にこちらもセットプレーから同点。ドウグラス・ルイスの長いレンジのキックをトーレスが合わせて、タイスコアに引き戻したところで試合はハーフタイムを迎える。

 後半、ビラは5-3-2にシフト。カマラを最終ラインに定常的に据えて、ドウグラス・ルイスをアンカーに置くこととした。しかしながら、ルイスは動き回りながら持ち場を空けるシーンが多く、トッテナムの保持に対してズレを作ることが非常に多かった。ローライン×ロングカウンターベースの変更であれば、悪手になりかねない交代だった。

 ロングカウンターの機会も多かったビラだったが、保持に回ると4バックに戻り定点攻撃を行うこともしばしば。リトリートでスペースを消すこと一辺倒ではなかった。そのため、トッテナムも左サイドを中心にファストブレイクのチャンスが。しかし、決定機はことごとくマルティネスに潰されてしまう。ヴィカーリオも含めてこの試合のGKのパフォーマンスはえぐかった。

 保持できっちりボールを動かす機会を得ていたアストンビラは後半に入ったティーレマンスのアシストを受けたワトキンスが勝ち越しゴールをゲット。わずかなシュートの隙を逃さずにゴールを決めたワトキンスはまさしく仕事人という感じだった。

 その後は試合はオープン合戦。ビハインドということもあり、一度押し込むと攻撃に迫力が満点。マルティネスやポストに助けられるシーンが徐々に増えてくるアストンビラ。しかし、トッテナムも中盤を越される機会が多く、決定的なチャンスを与えることもしばしばだった。

 しかしながら、マルティネスが後半はゴールに鍵をかけることに成功。決定機の多い試合に見事に抵抗して見せた。

ひとこと

 前半リードで折り返ししかトッテナムの勝つ道はなかった感じがある。

試合結果

2023.11.26
プレミアリーグ 第13節
トッテナム 1-2 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:22‘ ロ・チェルソ
AVL:45+7‘ トーレス , 61′ ワトキンス
主審:ロベルト・ジョーンズ

エバートン【19位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

リスタートはイバラの道

 なかなか勝ち点を積み上げられないという現象はフットボールではよくある話ではあるが、勝ち点がいつの間にか減らされるというのはフットボールの世界ではレアケース。今季プレミアでその憂き目にあったのはエバートン。軌道に乗り無縁になったかと思われた降格圏に逆戻りとなっている。

 対するユナイテッドもCLでは敗退の危機、リーグ戦ではCL出場権争いにぎりぎり食らいついている。こちらも楽な状況ではない。

 積極的なプレスに出てくるエバートンに対して、ユナイテッドはバックラインからの対角パスで対抗。ラッシュフォードがコンバートされた右サイドから勝負を仕掛ける。同サイドで裏を取るとマイナス方向のクロスから決定機を作りだす。これがユナイテッドの攻撃の狙いである。

 狙った攻撃の形は想像をはるかに上回る華麗さで成就。マイナス方向にズレ過ぎたかと思われたクロスはガルナチョのダイナミックなキックで豪快にネットを揺らす形となった。

 ビハインドになったということもありエバートンはロングボールを軸に手早く反撃。トップのキャルバート=ルーウィンを生かしたハイボールは有効な上に、セカンドボールの回収勝負でもユナイテッドに対して優位に。左右からのクロスからシュートを積み重ねていく。

 対するユナイテッドは中盤に入ったメイヌーが落ち着いたゲームメイクを披露。派手さはないがきっちりとキープしながらゲームを組み立てていく流れを作っていたのは好感が持てる。しかしながら、ユナイテッドの攻撃は敵陣での加速には物足りなさが残り、エバートンよりも一歩手前であるシュートに行く前の段階で攻撃はストップしてしまっていた。

 迎えた後半、流れとしてはバタバタしたもの。ユナイテッドからすると押し込まれる頻度は減ったものの、依然としてオープンな状況を作っていること自体はエバートンに有利に働いているように思えた。

 しかしながら、追加点を決めたのはユナイテッド。メイヌーのサリーに押し出されたマグワイアが何とかボールを運ぶと、パスを受けたマルシャルが持ち出しから倒れる。一度はシミュレーションで警告を受けたマルシャルだが、OFRの結果PKに判定は変更。ヤングはまたしても失点に関与するプレーを犯してしまう。

 このPKをラッシュフォードが決めてリードは2点に。エバートンは判定自体には嘆く権利はあるだろうが、がら空きの中盤からあっさり運ばれてゆえのピンチというところは反省したいところである。

 ゲイェのミドルなど反撃のチャンスを狙っていたエバートン。押し上げながら支配的に試合を進めるが、高いラインの背後を取られてしまうと一気に怪しい場面が出てくることになる。

 最後の賭けにも負けたエバートンはマルシャルにもとどめの一発をお見舞いされてジエンド。勝ち点10を失った再スタートはホームで完敗を喫する厳しい内容のものになってしまった。

ひとこと

 後方で安定したフィードを見せていたリンデロフ、ゲームメイクが光ったメイヌー、渋い存在感を見せたマルシャル、復帰戦から安定したパフォーマンスを見せたショウ、スーパーセーブを見せたオナナなど個々に分解すれば明るい材料は多い。けども、明るい材料がこれだけにあるにもかかわらず、支配感がない感じは少し気になるところでもある。

試合結果

2023.11.26
プレミアリーグ 第13節
エバートン 0-3 マンチェスター・ユナイテッド
グディソン・パーク
【得点者】
Man Utd:3‘ ガルナチョ, 56’(PK) ラッシュフォード, 75‘ マルシャル
主審:ジョン・ブルックス

フラム【15位】×ウォルバーハンプトン【12位】

PK狂想曲となった一戦をフラムが制する

 マンデーナイトの一戦はズルズルと順位が下がっていきまずい雰囲気が出ているフラムがトッテナムを撃破したウルブスを迎え撃つカード。フラムにとってはじりじりとした停滞感を打ち破りたいはずである。

 立ち上がりからボールを持ったのはホームのフラム。右サイドを軸にサイドの奥を取るアクションからウルブスのゴールに迫っていく。開始直後のペレイラの裏抜けなどはかなりクリティカルにゴールに迫っていたといえるだろう。

 ウルブスはこれに対してカウンターで応戦。自陣深い位置からのロングカウンターで前線のアタッカーを生かす構えだ。ボールを持ちながら打開策を探るフラムとカウンターから活路を見出すウルブスの関係性である。

 この構図から抜け出す形で先制したのはフラム。左サイドの大外に立ち位置を取るウィリアンを軸として前線に飛び出したロビンソンが折り返したボールをイウォビが仕留めてゴール。幸先よく先行する。

 先制したことによりプレスを強めるウルブス。しかし、フラムは保持からこのプレスをいなす。順調に軌道に乗ったかと思えたが、敵陣でのプレーが単調になりがちなのが難点。愚直なハーフスペースの裏抜けは5バックのウルブスに先読みされるようになり、少しずつ停滞感が出てくる。

 保持では左右に揺さぶっていくウルブスによってフラムのプレスが動かされる展開に。同点ゴールは流れるようなポゼッションから。ウィリアンのプレスをすんでのところでかわしたブエノから、右サイドを起点に前進。最後はファーのクーニャが仕留めて同点とする。

 このゴールで勢いに乗ったウルブスはハイプレスを開始。敵陣でのハイプレスが機能し、フラムはビルドアップで苦しみ自陣から出ていけないようになる。

 この流れは後半も継続。ボールを持ちながら押し込まれるフラムはウルブスに対して苦戦を強いられる。しかしながら、スコアは逆に動く。自陣でのボール保持でまごついたウルブスはセメドがケアニーを倒してPK献上。フラムがリードを奪う。

 これでフラムが勢いに乗るかと思われた矢先に今度はリームがカライジッチを倒してフラムがPKを献上。流れとは逆の方にPKがあたえられるケースが続いていく。

 そしてこの試合の決着もまたPKによるもの。フラムが獲得したこの最後のPKは議論を呼ぶものだろう。映像を見る限り接触があったかはグレー。OFRでの判定も納得感があるとは言い難い映像が主だった。

 やや玉虫色の決着となったが後半のPK狂騒曲的な展開を制したのはフラム。何はともあれ久々の勝利を手にすることができた。

ひとこと

 後半だけで3つのPKは結構珍しい。

試合結果

2023.11.27
プレミアリーグ 第13節
フラム 3-2 ウォルバーハンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:7‘ イウォビ, 59’(PK) 90+4‘(PK) ウィリアン
WOL:22‘ クーニャ, 75’(PK) ヒチャン
主審:マイケル・サリスベリー

今節のベストイレブン

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