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「先行逃げ切り型プランの評価は?」~2023.12.2 プレミアリーグ 第14節 アーセナル×ウォルバーハンプトン レビュー

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レビュー

ボールへの意識の強さを利用する

 ジョアン・ゴメスとレミナを揃って出場停止で欠いているウルブス。オニールにとっては中盤のやりくりは非常に頭が痛いことだろう。そんな悩める指揮官がこの試合に送り出したのは3-5-2。ドイルとトラオレ、ベルガルドと起用できる中盤候補をこぞって投入する形でフォーメーションを組む。

 プレビューではウルブスは2CHの5-4-1で戦ってくるという予想をした。だが、この試合ではSHが不在の5バックを採用。というわけでナチュラルにアーセナルのWG、SB、IHの3人を抑えられるフォーメーションにはなっていない。

 加えて、アーセナルのWGに対しては一般的には2枚の選手をつけるアプローチをするチームが多い。ウルブスもその例外ではなく、IHがWBのヘルプを行いながらアーセナルのWGのマークに対してヘルプをすることとなる。

 というわけでアーセナルの解決策はブレントフォード戦と同じである。後方支援するSBが相手の中盤の放って置けない位置に立ちながら攻撃に参加。時にはボックスに侵入していくことで、相手の守備基準を乱しにいく。

 ウルブスがブレントフォードと異なっていたのはブロックの手前でボールを受けるアーセナルの選手にも積極的にプレスをかけていたことである。もちろん、WGには2枚のプレスは行きたいが、かといって手前のSBがボールを受ければそこもIHがチェックする。簡単に言えば、ブレントフォードよりボールへの食いつきが良く、その分陣形が崩れることには無頓着だったとまとめることが出来るだろう。

 ブレントフォード戦におけるアーセナルの難点は左右のサイドでこの形に対して出来の差があったことである。左サイドは機能した一方で最後の最後を除けば右サイドはそれぞれのオフザボールの動きが互いにいい影響を及ぼすことができていなかった。

 その点ではこの試合は問題点が解消されたと言っていいだろう。むしろ、立ち上がりから右サイドの崩しはアーセナルの攻撃のメインストリームになっていた。特にサカとウーデゴールが冨安を効率的に活用することが出来るようになったことが大きな要因となる。

 それに加えて、右サイドに流れるジェズスがアクセントを加える。右サイドのポイントを増やしつつ、相手のDFを背負いながら落としで攻撃の方向を決めるジェズスは攻撃の進行方向を決める司令塔のような役割を果たしていた。

 先制点の場面は右サイドの連携とジェズスのサイドに流れたプレーを組み合わせた形から生まれたものだった。ジェズスがボールを収めつつ、安定した体勢で落としを決める。

 フリーでボールを受けたのは冨安。受ける直前にサカが手前を走ることでうまく対面のドイルを冨安から引き寄せていた。これはウルブスの人に食いついてくる姿勢を利用した形。ウルブスが人についていくパズルを組んだ結果、浮いたピースとなった冨安がサカにラストパスを決めて、これがゴールにつながることとなった。プレビューでの狙い通り、ウルブスの中盤を揺さぶっての先制点となった。

 冨安に関してはボックス付近での動きが秀逸。相手にとって手が届かない位置に立つことが上手い。インサイドレーン側での立ち位置ではおそらくホワイトを上回っていると言えるだろう。この試合でもまたアシストで自身の攻撃での有用性を示した結果となる。

 続く2点目はライスの大きな右への展開から。クロスが上がり、流れた逆サイドからジェズスとのワンツーでジンチェンコがボックスから折り返し、これをウーデゴールが仕留める。

 サイドからの押し下げからマイナスに構えるウーデゴールというのは昨季のアーセナルで非常に多く見られた攻撃の王道パターン。少し懐かしい形と言えるウーデゴールの得点からアーセナルはさらに突き放す。

 ウルブスからするとCHがごっそりとマルティネッリのケアにいってしまい、マイナス方向を警戒できなかったのが誤算。もっとも危険な位置に揃って向かってしまい、相手の次善の策がガラ空きになってしまうというのも、とりあえずボールを捕まえましょうというウルブスの指針らしいエラーのように思える。

大きな左右の展開とクーニャのポストで押し返されるが・・・

 2点をとったアーセナルはさらに攻勢を強める。ボールを失ったら素早く即時奪回に移行。前線はサイドにボールを追い込み、中盤は厳しく寄せて縦パスの出しどころをパスが出てくる前にチェックをかけていた。これでウルブスは前進の手段を封殺されることとなる。

 攻撃に移行したアーセナルはとりあえずアタッキングサードでのオフぜボールの動きの良さが目立っていた。サイドからの抜け出しが一発でうまくいかなくても人とコースとタイミングを変えて抜け出しにトライ。3人の関係性だけでなく、4人目や5人目が絡みながら絶え間なく抜け出しを行う。そのため、ボックス内の圧力はギチギチ。ウルブスは受けきれるかギリギリの体勢が続くことになる。

 サイドに注意がいってしまうと、中央では1人でポストプレーができるジェズスがいるのもウルブスからすると頭が痛いところである。味方をフリーにして前を向かせるジェズスがいればサイドチェンジは容易。同サイド攻略を突き詰める部分と広いサイドに展開する部分の両輪がうまく回っていたのがこの日のアーセナルである。

 11月は少しガレ気味だったWGもコンディションは良好。サカは右で猛威を振るっていたし、マルティネッリはダブルチームの間を割ってシュートまで持ち込むなど好調をアピール。サイドを軸にアーセナルは順調な攻めを続ける。

 しかしながら、徐々にウルブスがペースを引き戻す。2トップのクーニャとファン・ヒチャンが縦の関係性を作ることでアーセナルのDF-MF間を広げるアプローチを行なっていく。これにより、ウルブスは徐々にボールの預けどころを見つけることが出来るように。

 さらには縦パスからの左右の展開も有効。ドイル、ドーソンなどが積極的に大きな展開でアーセナルのプレスを広げる。狭く守ることで縦パスを刈り取ってきたアーセナルはこのウルブスの大きな展開でプレスが効かないようになる。敵陣での押し下げ、およびファウル奪取などからウルブスは30分付近から押し返すことが出来るようになってくる。

 しかしながら、アーセナルは自陣に押し込まれてもなお、ロングカウンター1つでガラッと景色を変えることが出来る。こうした瞬間的な切れ味はアーセナルの強度の高まりとしてRCランス戦から感じられている部分である。

 むしろ気になるのはアーセナルが自陣深い位置で奪ってからのパスに粗さが見えること。特にジンチェンコは下手なターンでボールを失っており、なかなかリズムに乗れていないと評することが出来るだろう。

 それでもなんとか無失点で凌ぎ切ったアーセナル。2点のリードを奪い、ハーフタイムを迎えることとなった。

攻撃トーンダウンの要因は?

 迎える後半も主導権を握るのがアーセナル。ウルブスは前半以上に高い位置からボールを奪いにくるが、アーセナルは無理なくこのプレスをいなしていく。

 特にボール保持の局面で効いていたのはトロサール。降りるアクションからの無理なターンで相手のカウンターを誘発してしまうというのは、IH起用された時のトロサールの難点であったが、この試合では降りて無理なくパスを散らすことで食いつきのいいウルブスのプレスからボールを逃すことに大きく貢献していた。

 トロサールは守備でも向上が見られる。一発で食いついては逆をとられるシーンははっきりと減り、抜かれる頻度は目に見えて少なくなった。ウルブス相手には守備面で強度が気になることは無くなるレベルまで辿り着いたと言えるだろう。冨安もそうだが、ここ1ヶ月で大きく成長した選手の一人といって差し支えないだろう。

 悪くはない入りを見せたアーセナル。ただし、アタッキングサードにおいてはアーセナルの威力は前半よりは明らかに割引となった。これは複数得点でのリードがあることが影響していると予想する。

 アーセナルの前半の攻め手はSBの的確なボックス付近での攻撃参加と、繰り返される前線への飛び出しがキーポイント。この動きは攻撃をやり切るということに主眼をおけば非常にいいプランだと思うが、仮に手前で引っ掛けてしまうと一気にカウンターを受けるリスクは高まる。

 そのため、SBは後半に攻め上がりの頻度を自重。カウンター対応を意識してかアーセナルはDFラインにボールサイドとは逆のSBを待機させた上で攻守のバランスをとる。この辺りは威力が落ちることをある程度飲み込みながらの前半からの変化のようにも思える。

 大外でボールを持つWGへのサポートが減ったことでサイドの崩しは自重が目立つようになったアーセナル。大外のサカに対してはウルブスが徐々に1枚でマークをするようになる。サポートはダブルチームではなく、縦に2人が並びながら。こうなると、サカは1人で複数枚抜ききらないといけない。加えて、サポートに行くトティ・ゴメスにも躊躇は無くなる。全員が高い位置を押し上げの攻撃は減ってしまい、ボールホルダーをきっちり押さえ込むという考えがこの時間はプラスに転じたように思う。

 アーセナルが攻め切れる頻度は明らかに前半よりも減ってはいる。前半強火→後半右肩下がりというのは昨シーズンのアーセナルでよく見た試合運びでもある。

 しかしながら、圧倒的な攻撃を続けなくなっても押し込まれまくってワンサイドで相手チームのチャンスが続く試合展開にならないのは成長である。プレスのトーンを落としたら落としてできっちりと戦えるのが今のアーセナル。この辺りはシーズン序盤のプレスでの火力だけでなく、構えて相手に隙を見せないという徹底していた部分が顔を覗かせたと言えるだろう。押し込まれながらもチャンスを作らせるほど主導権を与えていないのは十分に評価すべき部分でもある。

 ただし、失点シーンは反省する必要がある。ジンチェンコのあのドリブルは仮にうまくいったとしても大きなメリットを得ることができないプレーである。成功時にリターンがあるプレーであればミスをしても受け入れることが出来る。2点のリードを鑑みても、あのドリブルが行うべき意義があったプレーだったかはちょっと疑問がある。

 非保持における強度の部分は保持におけるジンチェンコの強みを踏まえれば仕方がない部分とも言える。だが、自らチームを失点のリスクに晒す保持時の振る舞いはそうした個人の特徴と比べると個人的には割り切りにくい。前半や前節で似たミスを繰り返したことも印象を落としてしまう要因となる。

 それでも1点を失った後には冷静にウルブスの攻撃機会への対応を続けたアーセナル。問題なく逃げ切って勝ち点3を確保。CL後の中2日という難しい日程ながら勝利を手にし、今季初のリーグ戦3連勝を決めた。

あとがき

 少し試合内容にムラがあったのは確かだが、その中でも試合運びという観点で成長を見せられたのは好材料。先行逃げ切り形という去年の試合運びをより手堅く行うことができた。昨季らしい押し込んだ状態での攻撃での切れ味と、今季らしい押し込まれた状態での安定感を見せられたのは、厳しい日程を踏まえれば悪くはないのかなと思う。

試合結果

2023.12.2
プレミアリーグ 第14節
アーセナル 2-1 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:6′ サカ, 13′ ウーデゴール
WOL:86` クーニャ
主審:ピーター・バンクス

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