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①オーストラリア×日本
■再び決め手になった川崎ユニット
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スタートダッシュには失敗したが徐々に順位を上げてきた日本と、日本に敗れてから緩やかに下降線をたどっていっているオーストラリアの一戦。互いに負傷者を多く抱える中でアジア予選はいよいよクライマックスを迎える。
序盤、ボールを持つ機会が多かったのはアウェイの日本。IHを最終ラインにおろしながらSBを上げる形を取り、サイドの選手を押し上げる。
中央を固めてくるオーストラリアの守備網に対して、日本は裏にボールを出す形でのアプローチも。浅野、南野などから前線の裏を狙う形で、スピード不足のオーストラリアの弱点をうまく出し抜いて見せた。
数の上では揃っているオーストラリアの中盤だったが、田中と守田の2人を守るにはメトカーフとステンスネスのコンビはいささか力不足といわざるを得ない。動き直しで相手を置いていかれてしまい、中央から日本のストロングである右サイドへの展開を許してしまうこともしばしば。防波堤になり切ることはできなかった。
右からの攻撃が成り立つのならば、左サイドの南野は何時ものように安心してエリア内に飛び込むタスクに集中できる。シュートは枠には飛ばなかったけどね。それでも中央でのデュエルと右サイドでの質はオーストラリアに対して決定機を作った大きな強みといっていいだろう。
一方のオーストラリアは右サイドのフルスティッチへの長いボール一辺倒。日本の左サイドの対応が遅くなりやすいこともあり、右に流れた形からのチャンスメイクを選んだ一因だろう。あわやという冷や汗をかく場面もあった。
後半、前半以上に長いボールでの前進を狙うオーストラリアに対して、日本はお付き合いする形に。アジアの舞台ではオープンに試合が流れると、それに付き合えるように快足アタッカーを投入するのだけど、この試合ではベンチにそのタスクを請け負える人が不在。いつもに比べると、この時間帯に相手ペースから脱する手段が乏しかった。
その状況に屈しなかったのが守田。右サイド、深い位置でボールをキープし味方のオーバーラップを促す。手前に引き出してのためだけではなく、奥に入り込んでのつぶれ役も出来ていたので、山根や伊東からすると非常にありがたかったはずである。
山根、伊東、守田を軸に右サイドでの川崎風味の崩しで優位を得た日本は畳みかけるべく、左サイドに三笘を投入。すると89分。山根のクロスに絞った三笘が先制点をゲット。ワールドカップ出場を大きく引き寄せる。
つづく後半追加タイムにはまたしても三笘が追加点をゲット。オーストラリアサポーターとライアンに無駄なトラウマを植え付ける形で試合を決定づける。
守田を軸にした右サイドの崩しとジョーカー三笘。今予選で日本を助け続けた川崎ユニットが最後の最後でも決め手になり、日本は今大会も無事にワールドカップ出場を決めることができた。
試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
オーストラリア 0-2 日本
ANZスタジアム
【得点者】
JAP:89′ 90+4′ 三笘薫
主審:ナワフ・シュクララ
②中国×サウジアラビア
■イチゴなきお祝い
第9節の最初の対戦カードであるオーストラリア×日本の結果を受けて、試合前にW杯進出が決まったサウジアラビア。プレッシャーが少ない状況で中国との一戦を迎える形になった。
試合は序盤からサウジアラビアがボールを握る時間が続く。中国の1トップのチャンの脇にCHのモハメド・カンノ、アル=シェフリの2枚が降りてくることで安定してボールを持つことができるようになっていた。
だが、ここから先にもう一歩踏み込むフェーズにおいてサウジアラビアは苦戦。ライン間への縦パスは中国のバックラインによる積極的なチェックによって潰されてしまうし、大きく幅を使った展開は中国の5バックとシャドーで挟みながらスマートに対応。サウジアラビアは裏への動き出しもそこまで多くなかったため、後方での安定したボール保持とは裏腹に、ここから先にスムーズに進むことが出来ていなかった。
逆に中国はカウンターから好機を得る。サウジアラビアのSBの積極的なオーバーラップの機会を逆手に取り、サイドからのカウンターでチャンスを見出すように。序盤でやれて自信がついたのか、30分くらいからプレスに出ていく機会も増えて、サウジアラビアに圧力をかけるケースは徐々に出てくるようになった。
それでもさすがにサウジアラビアから格上の貫禄は徐々に出てくる。外を循環させながら、サイドからの押し下げの機会を増やすようになったサウジはバイタルからのミドルで中国の守備を強襲するように。左サイドからはアッ=ドーサリーのカットインも見られるようになり、押し込む時間帯が増えてくる。
すると、前半終了間際。先制したのはサウジアラビア。CKからニアでフリックをしたアル・シェフリのゴールでハーフタイムまでに前に出ることに成功する。
後半もサウジアラビアが押し込むペースは変わらない。序盤に大ポカからの大ピンチを迎えるが、逆に言えばミスらなければ中国には決定的なチャンスを与えない。大きく幅を使いながらアブドゥルハミドのオーバーラップで奥行きを狙っていく形。前半よりも決定機の数は増える。
カウンターの初動を遅らせることができれば、中国はパスをつないでいるうちにいつの間にかミスる。交代で入った17番のワイツンは脅威にはなっていたが、マークが3枚も4枚もついている状況では何とかするのは難しい。
だが、ミスって決定機を与えてしまったのがこの日の後半のサウジアラビア。エリア内での軽率なPKから中国に同点のチャンスを与えてしまうことに。
サウジアラビアは序盤から相手を攻め立ててはいたが、追いつかれてしまうと『なんとしてでも!!』感が薄れてしまうのは仕方ないだろう。W杯出場をお祝いしたかったところだが、勝利というケーキのイチゴを載せるのには失敗してしまったサウジアラビアだった。
試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
中国 1-1 サウジアラビア
シャールジャ・スタジアム
【得点者】
CHI:82′(PK) 朱辰杰
KSA:45+1′ アル・シェフリ
主審:モハメド・ハッサン
③ベトナム×オマーン
■物足りなさが残る中で4位を確定させる
おそらく、現地映像のトラブルのせいで立ち上がりの7分ちょっとくらいは見れないというなかなかパンチの効いた試合になったベトナム×オマーン。というわけで立ち上がりの展開はよくわからん!というのが正直なところではあるが、基本的には力関係が上のオマーンの方がポゼッションを高めながら試合を進めていた。
フォーメーションの噛み合わせ的にはオマーンのポゼッションにおいてはSBが空く。ベトナムの5-3-2のフォーメーションに対して、オマーンはすでに最終予選のおなじみになった同サイドのオーバーロード気味の攻撃でベトナムのゴールに迫っていく。
仕上げとなるのは裏抜け。右サイドの大外のアル・ハルティの抜け出しを終点としてベトナムのバックラインを押し下げていく。逆にいえば、この裏抜けが仕上げにならないとオマーンの攻撃は完結しない。いつもに比べればこのオフザボールの動きの量は少ない感じで、その分相手ゴールに迫る迫力は割引されている感じはした。
一方のベトナムもなかなかいつも通りには行かない感じ。19番、エースのグエンの存在感はこの日は希薄。落ち着きながらのボール保持はできているので、オマーンに一方的に攻められ続けしまう!という展開は避けることができてはいたのは確か。しかし、ここまでの予選において攻撃の仕上げのほとんどに絡んできたグエンの存在感が低くなると物足りなさが出てくるのは当然だろう。オマーンと同じく、裏抜けで一気にシュートまで持って行きたいが、なかなかいい形を生み出すことができない。
迎えた後半はベトナムが押し込みながらのスタート。敵陣でのプレーを増やしながらセットプレーを獲得し、あわやハンドからのPKを得るところまではオマーンを追い込むことができていた。
しかしながら、セットプレーから結果を出したのはベトナムではなくオマーン。65分にコーナーキックの流れからアル・ハシリが先手をとって均衡を破る。
ベトナムはここから中盤からの飛び出しの量を増やしながら、前線の厚みを増そうと試みるが、がっちり守るオマーンに対してなかなかこじ開けることができない。むしろ、跳ね返されての手早い攻撃への以降で逆にオマーンに脅かされることもあった。
どちらも攻撃で迫力を出せない中でセットプレーでの1点を守ったオマーン。これで勝ち点を2桁に乗せることに成功。グループBにおける4位を確定させて最終節を迎えることとなった。
試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
ベトナム 0-1 オマーン
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
OMA:65′ アル・ハシリ
主審:ハンナ・ハットタブ