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「Catch up Premier League」~Match week 16~ 2023.12.9-12.10

目次

クリスタル・パレス【14位】×リバプール【2位】

2つの決め手になったエリオット

 2週連続ランチタイムキックオフという厳しいスケジュールを迎えているリバプール。セルハースト・パークで迎え撃つパレスはどんな状況でも優位に働くものは活用したいくらいには追い込まれている。なんとか勝ち点をもぎ取りたい一戦である。

 案の定、ボールを持つのはリバプールの方である。パレスはリバプールのバックラインにプレスに行かず引いて受ける形に終始した。ただし、別枠で狙い目として設定していたのはアンカーの遠藤。彼がボールを持つとヒューズが積極的に狙い撃ち。ボールを持っている状況をひっくり返した流れからあわやPKを献上してしまいそうな場面も出てきたほどだった。

 いつもよりややパレスの中盤に迎撃の姿勢が強かった分、リバプールは横断しながらパレスのDF-MF間をつないながら逆サイドにつないでいく。ロングカウンターのきっかけも少なくはなかったが、ややヌニェスとディアスの役割がかぶっている。このあたりはここ数試合見られる欠点なので少し調整が必要なところだろう。

 とはいえ、パレスもまた遠藤を狙い撃ちにするプレス以外にはなかなかボールを前に進めるきっかけがなく苦戦。リバプールよりも明らかに得点のにおいがしない状況だった。

 27分に訪れたロングカウンターのチャンスはサイドへの展開をしたシュラップとゴール前まで駆け上がったレルマが見事。もう一歩で完結させられるところだった。

 このカウンターからパレスはカウンターの機会が増加。序盤よりもフラットに展開を持っていく形でハーフタイムを迎える。

 後半、リバプールは遠藤を下げた影響でパレスはプレスの目標を失うことに。前半は4-2-3-1気味だったが、後半は4-5-1フラットでラインを低めで迎え撃つ。その分、前線に入ったマテタをターゲットにロングボールを主体として前進をしていくスタンスに切り替えた。

 スキをうかがっていたパレスは手早い攻撃からチャンスをゲット。ボックス内でクアンサーのPKを誘う。これをマテタが決めてゴール。パレスが先手を奪う。

 しかしながら、試合の流れはそこから一変。交代直後のエリオットがアイェウを2枚目の退場で追いやったところで主導権はリバプールに。パレスは4-4-1の関係性が整理できないまま右サイドの奥を取られるようになると、マイナス方向に待ち構えていたサラーが同点のゴールを奪う。

 その後も一方的に右サイドからパレスを攻め立てるリバプール。パレスは大外とハーフスペースを組み合わせてくるリバプールのアタックに後手を踏み続けるように。

 そして決壊したのは後半追加タイム。エリオットがズルズル下がったパレスのブロックの手前からのミドルシュートでこじ開けに成功する。

 終盤のクローズはややバタバタしたリバプールだったがアリソンが重要なところをやらせないままシャットアウト。数的不利で流れを掴んだリバプールが敵地で逆転勝利を挙げた。

ひとこと

 アイェウの退場と決勝ゴールの両面で活躍したエリオットがまぶしかった。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
クリスタル・パレス 1-2 リバプール
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:57‘(PK) マテタ
LIV:75’ サラー,90+1‘ エリオット
主審:アンディ・マドレー

ブライトン【8位】×バーンリー【19位】

そびえたつ守護神が勝ち点奪取の立役者

 非常に意外だったのはブライトンのスタンス。CHのバレバがサリーしながら3バック化する。本来、ブライトンはあまりサリーするチームではないのだが、この日はデフォルトで3バック化への変更をする。

 大外のレーンを使うのはSBのミルナーとグロス。押し上げられる形で高い位置にポジションをとる。この日のブライトンの特徴はファーガソンの落としを拾うことができる選手が多く存在していること。内に絞るアディングラ、ペドロはもちろんのこと、ララーナなどの選手も含めて中央に選手を多く集める。

 イメージとしては中央のパス交換を崩しのきっかけにしようということだろう。三笘やマーチの不在のチームは簡単に外に起点をすることができない。それならば、インサイドのパス交換を崩しのきっかけにしてアウトサイドで仕上げようというイメージ。グロスのシュート場面などは見事だった。

 しかしながら、立ち上がりは慣れない形のパスワークに苦戦。自陣でのミスからバーンリーにカウンターのきっかけを与えてしまうこともしばしばだった。

 自陣からのビルドアップも含めてバーンリーはビルドアップでゆったりとしたスタート。ビルドアップの枚数調整は十分なように映る。ブライトンのプレスをいなしての敵陣への侵入の精度はそれなりにあった。

 しかしながら、ブライトンは少しずつ敵陣への侵入の頻度を増やす。サイドの裏抜けから致死性のクロスを上げることもちらほら出てくるようになる。ブライトンのパス交換も安定し、精度は時間経過とともに向上した。

 だが、先制点を決めたのはバーンリー。コレオショの不在を埋める形になったオドベールのシュートがネットを揺らし先行。押し込まれがちだった前半終盤をひっくり返す形でリードを奪ってハーフタイムを迎える。

 反撃を狙うブライトンは2枚を交代。三笘とギルモアを入れて一気に攻勢に出ていくことを狙う。確かに時間をサイドに運ぶことができれば、三笘は多少は怖さを見せたが、むしろ目につくのはバーンリーの保持での落ち着きのほうだ。ボールを的確に回しつつ、左サイドのオドベールを出口にしてブライトンのゴールに迫る。

 非保持でもバーンリーは同サイドを圧縮してスペースを消す動きが目立つ。狭いスペースにブライトンを追い込み、ミスを誘っていく。ブライトンは三笘とグロスの左サイドにボールを集約。同サイドを使う三笘のサポート役でファーで裏を狙うグロスを使っていたのは面白かった。少しずついつも通りの攻撃ルートに傾倒するブライトンだった。

 この状態からブライトンは同点ゴールをゲット。直前に同じ流れでゴールが決まらなかったが、グロス→アディングラのファーサイドの裏を狙うクロスから追いついて見せる。

 以降はワンサイド気味に相手を殴る展開が続くブライトン。バーンリーは5バックに移行するが、ブライトンの1点目のパターンを止めきれず。ファーのヒンシェルウッドやアディングラからピンチを作られ続ける。そこに立ちはだかったのはトラフォード。ファインセーブの連発でさらなるゴールを許さない。

 押し込まれる苦境を救い続けた守護神の活躍でバーンリーは1ポイントを死守。ブライトンのホームから勝ち点を持ち帰ることに成功した。

ひとこと

 トラフォード様様の1ポイント。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
ブライトン 1-1 バーンリー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:77′ アディングラ
BUR:45′ トラフォード
主審:サイモン・フーパー

マンチェスター・ユナイテッド【6位】×ボーンマス【15位】

解禁された策がオールド・トラフォードを飲み込む

 この試合の後にCL生き残りをかけたバイエルン戦が待ち構えているマンチェスター・ユナイテッド。とはいえリーグ戦ではトップ4を追う立場が続いており、なかなかトーンダウンをするのも難しいややこしい状況である。

 そんな二足の草鞋に悩んでいるユナイテッドの心を見透かしていたのかはわからないが、ボーンマスは久しぶりに高い位置からのオールコートマンツーを解禁。片道切符感がある開幕当初のプランの封印を解き、いってこい!のプレスを仕掛けていく。

 このアクションは立ち上がりからユナイテッドの動揺を誘ったように見えた。いきなりオナナがあわやというプレーを見せると、降りていく中盤の選手にも容赦なく列を上げてくるボーンマスに苦戦するユナイテッド。自陣からの脱出が思うようにいかない。

 そして、その流れからボーンマスは先制点をゲット。低い位置まで下がっていったブルーノからマクトミネイへのパスをクックがカット。そのまま勢いよく攻め上がり、ソランケのゴールをアシストしてみせた。まんまとユナイテッドはボーンマスが仕掛けた立ち上がりのプランに飲み込まれることとなる。

 ユナイテッドは失点シーンのように選手が降りるアクションをしながらのビルドアップを志向することが多かった。しかしながら、アムラバトのサリーもブルーノの列落ちでのビルドアップもあまりユナイテッドの前進の助けになっている感はなかった。時間経過と共にユナイテッドが敵陣でのプレーを増やした理由はシンプルにボーンマスが得点を奪ったことでオールコートマンツーをマイルドにしたためだろう。

 左サイドはレギロンとショウのオーバーラップを軸に枚数をかけた崩しを行っていくが、それぞれのランがばらばらになることが多く、ホルダーがオープンになるケースが少なかった。むしろ、こちらのサイドはロングボールの迎撃性能から言えば収支はマイナスといえる。

 また中盤は押し込むフェーズでミスが連発。前節は殊勲の2ゴールを手にしたマクトミネイはパスミスから必要以上にボーンマスからカウンターを受ける機会を作ってしまってい。

 後半もボール保持をするのはユナイテッドだが、トランジッションの局面で優位にたつボーンマスが得点を奪う。ファーサイドに待ち構える形でユナイテッドの左サイドにミスマッチを作ったビリングが2点目を奪って見せる。

 そして、セットプレーからはボーンマスは3点目。セネシの2節連続のゴールから試合を完全に決定づけることとなった。

 ユナイテッドはブルーノが無駄な警告で次節のリバプール戦での欠場が決まるなど踏んだり蹴ったり、終盤はあわや4失点目を奪われてしまいかける(攻撃側のハンドで取り消し)など、最後まで全く覇気のない内容に終始した。

 CLを控えるオールド・トラフォードを完全制圧したボーンマス。大きな傷跡を残したユナイテッドはタイトなスケジュールでリバウンドメンタリティを見せなければいけなくなった。

ひとこと

 前節のボーンマスはちょっと重かったのだが、今節だいぶシャープさが戻っていて安心した。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 ボーンマス
オールド・トラフォード
【得点者】
BOU:5‘ ソランケ, 68’ ビリング, 73‘ セネシ
主審:ピーター・バンクス

シェフィールド・ユナイテッド【20位】×ブレントフォード【11位】

スーパーゴールがワイルダーに初勝利をプレゼント

 監督解任後の初戦はリバプールに敗れてしまったワイルダー。2戦目の今節はブレントフォードをホームに迎えての一戦である。

 そのリバプール戦でもそうだったように立ち上がりは良好だったブレイズ。左右にボールを揺さぶりながら敵陣にスムーズに侵入していく。保持においては存在感があったのはブルックス。ここまでのプレータイムはあまりない選手だが、ボールタッチが多く左サイドでのゲームの組み立てに貢献している。

 プレッシングも非常に積極的。特にサイドは高い位置で止めることを意識しており、SHもSBも前へのスライドでブレントフォードのパスの受け手を阻害する。ボールを奪ったら素早くカウンターに移行するなど攻守の接続がうまくいっている序盤戦だったといえるだろう。

 時間の経過ともにブレントフォードは少しずつボールを持てるようになる。ブレントフォードは保持において3-2-5気味に変形。左の大外に立つジャネルトに対しては右のSHのマカティ―が列を下がりながらスペースを埋めていく。

 ブレントフォードが配置を外してきたことで徐々に後手に回るブレイズ。前半は効いていたサイドの守備に関してもトラスティがあわや一発退場のタックルを見舞うなどスレスレの対応が続く。やはり、プレースピードが上がると両チームの強度への対応力には差がある印象。この点でブレントフォードが優位に立ったのはこれまでのプレミアの経験値の差だろう。

 しかしながら、前半の終盤にその状況をひっくり返すスーパーゴールが生まれる。右のSHであるマカティ―がブレントフォードのブロックの外側から放ったシュートはすっぽりそのままゴールイン。前半終了間際に大きな1点を手にする。

 先制点を手にしたこともあり、ブレイズはバックラインが位置を下げて後方のスペースを埋めることに終始。時には最終ラインに6枚が並ぶ形でスペースを埋めることもしばしば。よって、ブレントフォードはボールを持ちながら攻略をすることを強いられることに。

 アタッキングサードまではボールを運ぶことは安定していたブレントフォード。しかしながら、エースであり前線の崩しのきっかけであるムベウモがいないのは重たくのしかかっている。右の大外にたつルイス-ポッターは現状での定点攻撃の担い手としてはやや物足りない部分だともいえるだろう。

 ブレイズは保持から追加点を狙ったり、あるいはカウンターからアーチャーが攻め立てることができたりなどうまく時間を使いながら残り時間を消費。何とか逃げ切りに成功したブレイズは今季2勝目をゲット。ワイルダーは就任2戦目にして早くも初勝利を挙げることとなった。

ひとこと

 本当にマカティ―のゴール様様。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
シェフィールド・ユナイテッド 1-0 ブレントフォード
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:45+1‘ マカティー
主審:スチュアート・アットウェル

ウォルバーハンプトン【13位】×ノッティンガム・フォレスト【16位】

終盤は無理をしない痛み分けに

 共に3-4-3を採用してきた両チームの一戦。パッと見た感じでは相手にマンツーでプレスをかけやすいミラーフォーメーションでの座組になっているが、どちらのチームもバックラインには強引にプレスにはいかず。ボールを持つ側がゆったりと攻略する展開になった。 

 しかしながら、前線の選手がボールを受ける際にはマークは両チームともタイト。前にボールを簡単には差し込めない状況を保持側がどうするか解決策を探る展開となった。

 ボールを持つ機会が多かったウルブスはなかなか苦戦を強いられている中で、カウンターに注力したフォレストが先制。まごついたウルブスの左サイドのポゼッションにクヤテがちょっかいをかけることに成功し、右のネコ・ウィリアムスに展開。彼からのクロスをトフォロが仕留めて先行する。

 以降はややラインを下げて受ける構えを見せたウルブス。保持の機会が増えたウルブスはよりブロック攻略の様相が強くなる。

 ウルブスは右サイドの面々の位置を変えるローテーションが攻めの生命線。WGのサラビアにクーニャのサイドチェンジとレミナの攻めあがりがアクセントになっていた。

 同点ゴールもその形から。クーニャとサラビアのレーン交換からフリーの状況を作り出し、試合を振り出しに戻す。

 同点ゴール以降は試合の展開は変わらず。保持はウルブス、カウンターのフォレストという展開が続く。エランガのスピードを生かしたロングカウンターを狙っていきたいフォレストだが、アタッキングサードでのシャープさはチーム全体に足りず、フォレストの方がやや攻め手がなく苦しい状況が続くこととなった。

 後半もボールを持つのはホームのウルブス。フォレストはロングボールを放って以降のプレッシングをセットで組むことでボールを奪いに行くが、ウルブスのポゼッションにいなされてしまい不発に終わる。

 ウルブスが押し込む流れが瞬間的に変わったのは70分過ぎ。ネコ→トフォロという先制点と同じ流れから2点目未遂のシーンが生まれる。ウルブスはこの時間帯はフォレストに付き合うような直線的な動きが多かった。フィジカル面を問われるようになるとムリージョはここ数試合で厳しさが露呈している印象がある。

 それでもエランガのロングカウンターを見せつつ勝負に出るフォレスト。80分以降は再びウルブスがボールを持つ流れになった。しかしながら、特に両チームには強引に点を取りに行く姿勢は見られず。終盤はあまり得点の機会が多くないまま、試合はタイスコアの痛み分けで幕を閉じた。

ひとこと

 アウォニイがいないフォレストにはこれが限界だったかもしれないが、ウルブスの終盤戦にはもう少しクオリティは欲しかった感じがする。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
ウォルバーハンプトン 1-1 ノッティンガム・フォレスト
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:32‘ クーニャ
NFO:14‘ トフォロ
主審:サム・バロット

アストンビラ【3位】×アーセナル【1位】

難攻不落は首位相手でも継続

 レビューはこちら。

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 ホームで連勝街道を突き進むアストンビラ。シティを倒した中2日でアーセナルと対峙するというなかなかハードなミッションに今節は挑むこととなる。

 しかしながらタフな日程にも関わらず、アストンビラのパスワークのキレは素晴らしかった。アーセナルも決して無謀なプレスをしたわけではないのだけども、追い込んで外すというところでアストンビラが上回ったのも事実だ。

 特に7分の先制点の場面は非常に見事。ティーレマンスとベイリーのコンビで右サイドを制圧すると、折り返しをマッギンが仕留めて先制。リードした試合では今季全勝のアストンビラが先行する。

 アーセナルはFW-MF間のジンチェンコからの裏へのパスやWGのカットインのアクションからの横断など、長いレンジのパスから打開を図るがなかなかこのパスの精度が合わない。唯一フィーリングが合っていた感のある左サイドからの突破もカマラがスライドすることで対応。中央ではドウグラス・ルイスがアーセナルの鉄板得点パターンであるウーデゴールへの横パスを封鎖。アーセナルに得点を許さない。

 アーセナルは高い位置からのボール奪取からのショートカウンターには移行することができていたが、なかなかゴールまでたどり着くことができない。かつての友であるマルティネスが守るゴールマウスは非常に堅牢なものであった。

 後半はアストンビラの選手交代により左サイドではジンチェンコが解放されるパターンが増えていく。この左サイドからジェズスやマルティネッリが裏を狙いながらアストンビラを押し下げていく。

 ジンチェンコが解放される要因となったのはベイリーの負傷交代に伴い、トップにディアビを入れたからだろう。セカンドトップの位置に立ちながら中盤を埋めることができるティーレマンスに比べると後方のケアが甘いのは仕方がない。それに攻撃に出た時の2トップの威力を考えれば多少のマイナスはおつりがくるものである。

 後半の頭は主導権を握ったのはアーセナル。しかしながらラムジーの登場によるアストンビラの配置の整備や、アーセナルの前線から選手交代でマルティネッリやジェズスがいなくなったことにより、後半の立ち上がりの時間ほどロングボールが効かない展開になる。

 89分にはネットを揺らすことに成功したアーセナルだが、ボールはハヴァーツの腕にわずかに触れておりゴールを認められることはなし。結局最後までマルティネスの守るゴールマウスを打ち破ることはできず、アーセナルは首位陥落となった。

ひとこと

 強度も高くクオリティも充分で見ごたえのある一戦。瞬間的な出力で先制点を取ったアストンビラがその中でもきっちりアーセナルの時間を削り取ったのが印象的だった。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
アストンビラ 1-0 アーセナル
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:7‘ マッギン
主審:ジャレット・ジレット

エバートン【17位】×チェルシー【10位】

逆境上等の姿勢を象徴する勝利

 勝ち点減という痛恨の処分を受けてから、失われた勝ち点を狂ったように取り戻しているエバートン。特に本拠地であるグディソン・パークはそうした上げ潮の雰囲気に乗っかるがうまいサポーターが集っている。前節結果が出なかったチェルシーとしてはあまり歓迎できる状態ではない。

 バックラインからゆったりとボールを動かし続けるのはチェルシー。縦関係を組むエバートンの2トップに対して、きっちりと誘導を外しながらの前進を狙っていく。

 ただし、中盤では少しボールのタッチ数が多くなってしまい、エバートンのプレスを不用意に引き寄せてしまうことが多かった。そうした部分でうまく流れに乗れていなかったのがブロヤ。中盤に降りるアクションでボールをひっかけてしまい、なかなか効果的なボールプレーができずに苦戦していた。

 逆に存在感を見せていたのはパルマー。パンチ力のあるミドルなどパスワーク以外でもクオリティを高いプレーで押し込んだ後のチームを牽引する。

 エバートンの攻め筋はサイドの裏からのダイレクトな攻め筋。正直に言えばそこまで成功率は高くはないが、その流れの中で相手にハイプレスをかけるところまでがセットになっている。サンチェスまで追い回すこともしばしば。サンチェスはいつも通り、ギリギリまで相手を引き寄せてからショートパスでの回避というリスクをかけたプレーでエバートンのプレスを外していく。

 サイドの裏からの攻め筋はチェルシーからしても有力。前半は総じてチェルシーがやや優勢だったといえるだろう。

 後半もボールを持っているのはチェルシー。前半に比べればややオープンな流れながらも再びポゼッションから先制ゴールを狙っていく。

 しかしながら、先行したのはエバートン。見事なカウンターから反撃に出てマクニール→キャルバート=ルーウィン→ドゥクレとつないでリードを奪う。

 追いかける立場になったチェルシーはさらに押し込んでのポゼッションの時間を増やしながら攻略を狙っていく。しかしながら、ブロック攻略において難点になるのは前半にジェームズが負傷した右サイドに縦ベクトルの成分がないこと。ポチェッティーノはスターリングの投入でこの問題の解決を図る。

 しかしながら、マイコレンコの粘りは素晴らしかった。振り切られずについていくことでスターリングがこの試合のアクセントになることを防ぎ続ける。CBはライン間へのパスに対して厳しくチェックをかけながらPA内では壁になり、チェルシーのクロスを跳ね返し続ける。

 跳ね返し続けた先のご褒美はセットプレーの追加点。終盤に入ったドビンがセカンドボールを叩き込み、試合を決める一撃を沈める。チェルシーは交代で入ったペドロヴィッチのパンチングに飛距離が足りなかった。

 押し込まれても動じることなく跳ね返したエバートンが粘りの勝利。予期せぬアクシデントに見舞われながらも勇敢に戦っている直近の彼らを象徴するような試合運びだった。

ひとこと

 エバートンの中盤のプレスの強度はプレミアでもなかなか高水準になってきたように思う。

試合結果

2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
エバートン 2-0 チェルシー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:54‘ ドゥクレ, 90+2’ ドビン
主審:マイケル・オリバー

フラム【12位】×ウェストハム【9位】

ゴールショー、第2幕

 ここ最近振るわない試合が続いているフラムだったが、前節はその鬱憤を晴らすのようにフォレストに5得点の大勝。いきなりの爆発で悪い流れをシャットアウトして見せた。

 今節の相手はより上位のウェストハム。互いに中盤の枚数合わせを優先し、バックラインにプレスを無理にかけないチーム同士の一戦。保持側がどのようにブロック攻略を成功させるかの引き出しが問われる展開に。

 ウェストハムはロングボールを軸に攻めているが、相手のバックラインを揺さぶるアクションを伴っていないため、雑な印象が先行。なかなか刺さるような攻撃を繰り出すことができない。セットプレーでのウォード=プラウズのプレースキックを除けばあまりチャンスらしいチャンスは作れない展開だった。

 フラムもそういった点ではウェストハムと同じく明確な崩しのメカニズムがあったわけではない。それでもこの日のフラムには相手を打ち破るパワーがあった。ゴールを決めたのはヒメネス。往年のボックス内の怖さを取り戻す一撃でフラムが前に出る。

 ここから前節に続くフラムのゴールショー第二弾が開幕することとなる。まずはウィリアン。横断からウォード=プラウズの脇を取る形で手薄な右サイドにボールを運ぶと、これを仕留めてリードを2点に広げる。

 前半の最後はセットプレー。アダラバイオがCKを仕留めてリードは3点に。先制点以降、ウェストハムのバックスの集中力の欠如は露骨。フラムの右サイドのユニットが躍動するのとは対照的に、淡白に失点を積み重ねてしまう。

 後半、ウェストハムは3バックに移行しつつプレスを強化。5レーンを埋めるアプローチはわからなくもないが、人を多く置いたことで帰ってラインが乱れてしまうように。フラムはラインの表と裏を使い分けながらウェストハムの最終ラインをパスでもてあそぶような流れが続くことになる。

 というわけで後半もペースを握ったのはフラム。4点目をウィルソンが仕留めるとこれでゲームは完全に終戦モード。どちらのチームも主力を下げるムーブを行い、結果を受け入れての幕引きを行うようになっていく。

 フラムのゴールショーのトリを飾ったのはヴィニシウス。若いジョーカーが前節に続く圧巻の5ゴールの幕引きを担当することとなった。

 堅守で鳴らすウェストハムに対して前節に続くゴールショーを繰り広げたフラム。2試合で10得点を挙げて上位に一気に迫る連勝を記録した。

ひとこと

 フラムは得点を挙げてからの波の乗り方が見事。今一番のせたくないチームである。

試合結果

2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
フラム 5-0 ウェストハム
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:22‘ ヒメネス, 31’ ウィリアン, 41’ アダラバイオ, 60‘ ウィルソン, 89’ ヴィニシウス
主審:ポール・ティアニー

ルートン・タウン【18位】×マンチェスター・シティ【4位】

3分間の2発で5試合ぶりのリーグ戦勝利

 シティを迎え撃つルートンはいつも通りのハイプレスでお出迎え。シティもまたアルバレスのポストからフォーデンが抜け出すからチャンスを作るスタートとなった。

 シティのビルドアップはいつもとテイストが違った。一番わかりやすい特徴は左に張ることが多いWGのグリーリッシュが必ずしもレーンを守っていないこと。シティはロドリ、コバチッチが列を降りつつ、SHと2トップの4枚が中央に集結しつつ、ポストからのターンor落としで裏抜けを図っていく。

 ストレートにこの動きで背後が取れるならばこれでやり切るし、難しいのであればシティは左サイドから攻め落としていく。今度はグリーリッシュが開きながら押し込み、エリア内に走り込むフォーデンやアルバレス、もしくはマイナスに待ち構えているロドリのミドルでルートンのゴールを脅かす。カミンスキにとっては非常に忙しい立ち上がりとなった。

 ルートンはCB2人がGKを挟みながらビルドアップ。シティが無理にプレスに来なかったこともあり、バックラインから落ち着いてボールを持っていく。詰まりそうになったら前線へのロングボールでプレスから逃げる割り切りも。前線のアデバヨはもちろん、ブラウンやダウティーもロングボールのターゲットになっていた。

 しかしながら、ロングボールを縦に繋いでいくとどうしてもジリ貧になるのがルートン。アデバヨがサイドに流れてしまったらエリア内に誰が残ってるねん問題は切実である。

 というわけで優勢だったのはハイラインを抜け出す形と定点攻撃の両面で準備ができていたシティの方だった。しかしながら、先制点を決めたのはルートン。主役はまたしてもバークリー。中盤での華麗なタッチでシティのプレスをあっさりいなして逆サイドに展開。ボールを引き取ったタウンゼントからファーで待ち構えていたアデバヨがシュートを叩き込み先制。ディアスとウォーカーの2人をものともしないパワーヘッドにより、前半終了間際のワンプレーでルートンが先行する。

 後半もルートンは先制点にも関わらず高い位置からのプレスを敢行。シティはプレスをいなすポゼッションから後半を始めることとなった。前半とのシティの違いは左右をバランスよく活用していたことだろう。ウォーカーはインサイドにも顔を出すようになり、前半以上の流動性をシティは見せていた。

 押し込むシティが同点ゴールを決めたのは62分。猪突猛進モードで道を切り拓いたロドリのこぼれ球をベルナルドが仕留めて追いつく。カミンスキの虚をついたタイミングでの見事なゴールだった。

 さらに3分後にシティは勝ち越し。ハイプレスからのファストブレイクを決めてゴールを奪ったのはグリーリッシュ。右サイドを軸とした攻撃からスコアをひっくり返す。

 自陣低い位置からの無駄なロストが嵩張ったせいで逆転を許したルートン。モリスを投入し、アデバヨ以外の前線のターゲットをおくが、なかなかゴールを奪えず。中盤では復帰戦となったロコンガがボール奪取の局面でアクセントになれず、あまり試合に入ることができなかった。

 終盤に何回か迎えたセットプレーもシャットアウトに成功したシティ。およそ1ヶ月ぶりという長いトンネルを抜けたプレミアでの勝利を逆転で手にすることとなった。

ひとこと

 ハーランド不在でのプランとしては面白いものだなと思った。

試合結果

2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
ルートン・タウン 1-2 マンチェスター・シティ
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:45+2′ アデバヨ
Man City:62′ ベルナルド, 65′ グリーリッシュ
主審:ティム・ロビンソン

トッテナム【5位】×ニューカッスル【7位】

クロスのチューニングを合わせたトッテナムが6試合ぶりの勝利

 マディソンとファン・デ・フェンの負傷以降、成績が振るわないトッテナム。5試合連続勝ちがないリーグ戦で対峙するのはこちらも前節グディソン・パークで終盤に崩れてしまったニューカッスルである。

 立ち上がりからボールを持つのはホームのトッテナム。インサイド、特にアンカー脇を狙いながら縦パスを引き出していく。特に捕まえづらいのはトップ下に入ったクルゼフスキ。相手の手が届かないところに入り込むだけでなくWGのソンに合わせた前線への抜け出しも含めてトッテナムの攻撃に流動性を持たせる。

 トッテナムはサイドから裏を取るアクションでラインを押し下げることに成功するが、なかなかクロスが合わない。抜け出すのにトップスピードに乗りすぎてしまい、クロスを合わせることの難易度が上がってしまっている印象を持った。

 一方のニューカッスルは立ち上がりにゴードンが抜け出す形からチャンスを作ったが、これをデイビスがカットしてトッテナムは事なきを得る。ロングボール主体のカウンターでの勝負を仕掛ける形となったニューカッスルだが、トッテナムに比べるとどうしても攻める機会が足りていない。

 敵陣でのプレーが多いトッテナムは左サイドのソンの仕掛けから先制。やや静的にクロスを入れるタイミングを図ることができれば、きっちりと合わせることを証明したトッテナム。ソンのクロスに合わせたウドジェが先制点をしとめる。

 さらに、ソンは左サイドでの仕掛けからもう1点を上乗せ。前半を2-0で折り返す。

 後半もイケイケで攻めるトッテナムだったが、ニューカッスルは後半幅を使いながらじっくりとポゼッションで押し込んでいく。サイドでの関係性を使いながらフリーマンを作りクロスを上げるという一連はあまり前半のニューカッスルには見られなかった部分である。

 サイドからのクロスはオープンになることもあり、得点のチャンスもあったニューカッスル。右サイドだったがボックス内の競り合いを制することができず。なかなかシュートチャンスを手にすることができない。さらには速い展開になると勤続疲労からか精度が足りなくなるというおまけつき。なんとか制御しながらの展開になりつつあったが、次のゴールを決めたのはトッテナム。ポロのキックに目測を誤ったドゥブラーフカの飛び出しにリシャルリソンがゴールを決める。

 このゴールで試合は一気にワンサイドに。高い位置から阻害するプレスから浴びせかけるようにチャンスを作り続ける。あとは枠内に飛ばすだけ!というシュートをトッテナムは重ね続ける。

 4点目はPK。飛び出しが間に合わなかったドゥブラーフカがソンを倒してPKを献上。ダイレクトに2失点に絡んでしまったのはハウとしては頭が痛いところだろう。このPKを仕留めてトッテナムは大量得点を奪い取る。

 ニューカッスルは最後の最後でジョエリントンが意地の一発を仕留めるが反撃はここまで。速いテンポでニューカッスルを置き去りしたトッテナムがリーグ戦6試合ぶりの勝利を手にした。

ひとこと

クルゼフスキのトップ下の目処が立ちつつあるのはポステコグルーにとっては大きい。

試合結果

2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
トッテナム 4-1 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:26′ ウドジェ, 38′ 60′ リシャルリソン, 85′(PK) ソン
NEW:90+1′ ジョエリントン
主審:クリス・カバナフ

今節のベストイレブン

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