1st leg
①バイエルン×ザルツブルク
■やり直しを覚えて大いに暴れ回る
1st leg
1stレグではらしくない戦い方で終盤になんとか追いついて面目を保つことができたバイエルン。 1stレグでのバイエルンの反省は率直に急ぎすぎてしまったことである。縦に早いプレーに精度が伴うことがなくボールロストを繰り返した上、サイド攻撃に糸口を見出せずに停滞してしまった。
2ndレグでは前回の反省を活かした戦い方でザルツブルクと対峙する。この日のバイエルンは後方からズレを大事にするビルドアップを行なっていた。各ポジションの選手たちはザルツブルクの4-4-2ダイヤモンドの間に配置されるような立ち位置に。後方の選手はボールを運びながらズレを探してボールをつけていく。
ズレができなければ後方にボールを戻してやり直し。強引な突破を挑んだ結果のボールロストを避けるように慎重に取り組んでいた。ザルツブルクが苦労したのはアンカー脇付近をうろちょろしているサネとミュラー。
特に機動力のあるサネは相手のプレスが及ばないところにボールを引き出しては、ドリブルでスルスルとライン間を突破。相手を引きつけて近くのレヴァンドフスキとミュラーをフリーにする。立ち上がりのチャンスはこの3人のコンビネーションから。この好機はバイエルンのゴールショーの幕開けであった。
このシャドーの選手たちは非常に厄介。内外問わず空いているスペースに顔を出す。基本はアンカー脇に陣取っているが、ザルツブルクのSBがバイエルンのWBに釣られてしまえば外に流れたりなど臨機応変な対応を見せる。
逆に大外のWBは対面するSBを1枚なら剥がすことができる。ザルツブルクは外では質的優位を使われ、シャドーには空いている場所で暴れ回るという大騒ぎに対応しなくてはいけない状況が続く。対応しにザルツブルクの選手が集まってきたら手薄な逆サイドに展開し、バイエルンは徹底的にザルツブルクを揺さぶる。
先制点は大外の質的優位から。コマンのサイドからレヴァンドフスキにクロスを送ると、ザルツブルクはPKを献上してしまう。続く、2失点目も同じくレヴァンドフスキが倒されてのPK。どちらもザルツブルクの苦しい対応が如実に現れたプレーであった。
常に2つ以上の選択肢を持つバイエルンに対して、ザルツブルクは中盤からボールを跳ね返しての反撃に移行することができず。あれよあれよという間に前半だけで4失点を重ねる。
後半、バイエルンがメンバーを落としDFラインが2人入れ替わったところでようやくザルツブルクはカウンターを成功。1点を返すことには成功。ただし、後半も大暴れするミュラーとサネは捕まえきれずにこの試合だけで7失点。
1stレグの反省を大いに活かして暴れ回ったバイエルンが前半だけで勝負を決めてベスト8に駒を進めた。
試合結果
2022.3.9
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
バイエルン 7-1 ザルツブルク
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
BAY:12′(PK) 21′(PK) 23′ レヴァンドフスキ, 31′ ニャブリ, 54′ 83′ ミュラー,85′ サネ
SAL:70′ ケアゴー
主審:クレマン・トゥルパン
②リバプール×インテル
■四面楚歌で堂々たる立ち回り
1st leg
ジュゼッペ・メアッツァでの一戦は下馬評を覆し、ホームのインテルが大いに善戦するという内容だった。ただし、それでもゴールまでは届かなかったし、スコアで言えば2点のアドバンテージがリバプールにあるという状況。アンフィールドという四面楚歌の状況でインテルはこの上ない難しいミッションに挑むことになる。
しかし、難所にもかかわらずインテルは堂々たるパフォーマンスだったと言っていいだろう。プレッシングでは2トップが2人のCBをマーク。中盤も使わせないように3センターが待ち構える。
インテルのプレスのいいところはホルダーに対して周りの選手と囲い込むように一気に取り切れるところ。この工程にゴーサインを出す段階でほぼミスがない。
ある場所に人をかけるということはその分、ほかのところが空いてしまうという意味でもあるけども、そのリスクをとっていい箇所を見極めることにとても優れている。なので時には撤退もする。けども、後ろに重くはなりすぎない。その匙加減が絶妙だった。
ただ、リバプールもさるものである。こういう場合の心得は十分。CBが普段より幅を取りながらアリソンを交えたビルドアップを行うことでインテルの2トップのマークを分散させる動きを見せる。これにより、出てきた中盤の噛み合わせのズレに縦パスを刺していくことで前進を狙う。
リバプールがやや物足りなかったのはインテルのバックラインに対して裏を狙う動きが乏しかったことか。その分、インテルの中盤にコンパクトに守ることを許してしまい、スペースを生むことはできなかった。SBが低い位置でのボールタッチを増やしたり、ジョーンズがファビーニョと位置を入れ替えたりなど、工夫はしていたものの、前線に奥行きが欲しかったのも事実である。
一方、インテルの組み立ては1stレグ同様にブロゾビッチ中心だった。バックラインの選手と位置を交換しながら自身は縦横無尽に動き回りながらフリーになる。浮いたところで相手のMF-DFラインのギャップ、もしくは大外の裏のどちらかを使いながら一気に前進する。
WBで裏抜けは前の試合も同様にできていた部分ではある。ペリシッチのフリーランは見事。だけど、この試合で光っていたのはライン間で受けるアレクシス・サンチェス。彼がターンして前を向くことでインテルの攻撃のスイッチが一気に入る。
後半、ブロゾビッチはさらに凄みを増す。勢いが出てきた右サイドのカバーに加えて、バックラインだけでなく、WBが降りて開けたスペースにも飛び出していく。こんなに状況認知に優れているとは思わなかった。個人的には大発見である。
トータルスコア的には追撃弾となる先制点も左サイドから切れ目をつないでいくインテルらしいもの。ラウタロ・マルティネスのスーパーゴールは、アンフィールドのファンを慌てさせるには十分なものだった。
しかしながら、盛り上がったインテルの反撃のムードに水をぶっかけてしまったのがサンチェスの退場。いいプレーを見せていただけに悔やまれるプレーだった。
インテルの主導権は数的優位をベースとした配置交換による前進から切れ目を見つけることで担保されていたので、10人になってしまうと流石にしんどい。その後はリバプールに寝かされたインテル。サラーからのダメ押しは決まらなかったが、10人での得点は厳しかった。健闘したインテルだったが、リバプールには一歩及ばず。2試合ともあと一味が足りずにCLの舞台から姿を消すことになった。
試合結果
2022.3.9
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
リバプール 0-1 インテル
アンフィールド
【得点者】
INT:61′ マルティネス
主審:アントニオ・マテウ・ラオス
③マンチェスター・シティ×スポルティング
■意地は見せた90分
1st leg
事実上、1stレグで決着はついてしまっているといっていいだろう。というわけでこの試合はスポルティングが敵地でどのように意地を見せられるか?という勝ち上がり以外の部分にスポットが当たる試合である。
立ち上がり、やはりボールを握ったのはマンチェスター・シティ。後方から横にボールを繋ぎ、3-4-3のスポルティングのシャドーを動かそうとする。一つずつズレを作りながら、相手を動かして攻め込むというのはマンチェスター・シティの戦い方の常套手段ではあるが、この日はなかなかズレを作った後のスピードアップができない。
スポルティングのトップであるスリマニはボールを取り切るところまではいけないものの、同サイドにボールを誘導して閉じ込めるようなプレッシングはできていた。ライン間もコンパクトに維持することができていたため、シティは狭いサイドからのパス交換でニッチな脱出口探しに苦心することになった。
というわけでシティのスピードアップの方法は狭いところをワンタッチで繋ぐ手段から。フォーデン、スターリングと繋いで一気に裏抜けした場面はその一例と言えるだろう。降りていくフォーデンの存在はこの試合におけるシティの数少ないスピードアップポイントとなっていた。
ボール保持の機会においてはスポルティングはそこまで縦に急ぐことはしない。サイドからボールを持ち運びつつ、同サイドのCBが攻撃に参加する形で巻き返しを狙う。テンポを上げるというよりは丁寧に一つずつ前進しながら保持の機会を生かしていこうとしていた。シティも高い位置からプレッシングにはいくが、ボールを取り返すほどのインテンシティはなし。試合はまったりとしたペースで進んでいく。
後半、シティはWGを左右入れ替えることで攻撃の活性化を狙う。得点取り消しになってしまったが、後半早々に右に配置されたスターリングがPA側にカットインしながらの横ドリブルにジェズスが合わせてネットを揺らすという狙いが出たシーンもあった。
だが、それ以降は敵陣で攻めあぐねるシーンが延々と続く。シュートの数はなかなか伸びず、得点までは辿り着けなかった。一方のスポルティングは交代選手のエドワーズの投入で速攻が活性化する。右サイドからのスピードアップで同じサイドの裏抜けで徐々にチャンスが増えてくるように。
しかし、こちらもゴールまでは遠く、途中交代で久々に出場機会を得たカーソンの守るゴールを割ることはできない。攻守に健闘を見せたスポルティング。得点という目に見える成果を得ることはできなかったが、シティ・オブ・マンチェスターでの90分は十分に価値があるものだったと言えるだろう。
試合結果
2022.3.10
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
マンチェスター・シティ 0-0 スポルティング
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム
主審:ハリル・ウムト・メレル
④レアル・マドリー×パリ・サンジェルマン
■ベンゼマが呼び起こしたベルナベウの魔物
1st leg
よく1-0で凌いだ!というのがマドリディスタの1stレグの正直な感想だろう。ベルナベウに帰ってくるとはいえ、内容的にはパリが圧倒。その上、カゼミーロとメンディという主力2枚を欠いて2ndレグに臨むのだから、不安の種は尽きない。
立ち上がりから強襲プレスをかけるマドリー。保持側のパリにプレッシャーをかけていく。序盤の序盤は面食らった感のあったパリだったが、これには落ち着いて対応。時にはリスキーとも思えるパス回しからマドリーのハイプレスをいなし、逆にいつのまにか裏をとってムバッペ!という流れになっているのは恐ろしい。
マドリーの保持の局面においてはパリは前に3枚を残す形。実質4-3のブロックで守る必要がある。パリのトップはローラインで迎え撃つ時には歩いては戻ってくるが、走ってプレスバック!というシーンはほとんどなかったと言っていいだろう。
1stレグに引き続き、ダニーロはヴィニシウスを監視。ハキミとセットで2枚で迎え撃つように。2枚に囲まれたヴィニシウスは序盤から苦戦。突破はおろか、ファウルに漕ぎ着けるのにも非常に苦労。4-3ブロックは横移動も迅速で、マドリーの横への揺さぶりに対応。
マドリーの左の攻めはヴィニシウスを封じられているし、右はアセンシオ、カルバハル、バルベルデがピリッとせず、機能しない。したがって、やや距離があるところからベンゼマに合わせてのピンポイントなクロスが最も惜しいチャンスになる感じであった。
その右サイドの攻めがむしろマイナスに働いてしまったのがパリの先制点の場面。カルバハルがメンデス相手に引っ掛けてしまうと、そこから一気にカウンター。右サイドが前がかりになっていた分、ムバッペのカウンター対応に出ていったアラバはぎりぎりになってしまった。それでもファーのシュートコースは切れていたと思ったけど、ムバッペはニアを撃ち抜いてしまった。つよ。
前半をなんとか0で凌ぐというプランは崩壊してしまったマドリー。後半はアセンシオが右→左への斜めのランで左サイドの攻撃にアクセントをつけようとする。だが、これもパリの網の中。
パリの保持は前半に引き続きまったりとしたテンポ。前線は降りる動きをしつつ、短くパスを繋いで前を向けた人が一気に前進する!みたいな。全員前に運べるからこそ、降りることを怖がらないのはパリらしいなと思った。
そんなパリだが、つなぎから思わぬミス。前半からやや無理筋な自陣での保持は目立っていたが、後半のベンゼマはその隙を見逃さず。バックパスのコントロールを手間取ったところですかさずドンナルンマに寄せて、ボールを奪い追撃弾をゲット。
このゴールでピッチにいる全員がここがベルナベウであることを思い出したかのようだった。そこからはマドリーは勇猛果敢。パリは攻めに出るどころの話ではなかった。混乱の中でダブルチームで対応されることが減ったヴィニシウスを軸にマドリーは徐々にエリア内に侵入する機会を増やしていく。
そして、決め手になったのはモドリッチ。ネイマールからの横パスをカットすると、そのままドリブルでパリの守備陣を切り裂く。左のヴィニシウスに展開し、もう一度ボールを引き取ったモドリッチはベンゼマに絶妙なラストパス。前半ならブロックに阻まれていたであろうパスがあっさり通るのだから、本当に流れとは恐ろしいものである。
さらに、その得点のリスタートからロドリゴがボールを奪取。ヴィニシウスに対応したマルキーニョスのクリアがベンゼマに渡ると一気にトータルスコアで逆転する。ベンゼマはあっという間にハットトリックである。
こうなると、パリは3人の前残りという仕組みがグッと重石になってしまうことに。守備陣の混乱は相当で、跳ね返すのが精一杯。ヴィニシウスからボールを取り返すことができず、そもそも前に出ていくことができない。
わずか15分強でベルナベウに飲み込まれてしまったパリ。優位に進めながら瞬く間に崩壊という悪癖を今年も披露してしまい、ラウンド16で姿を消すこととなった。
試合結果
2022.3.10
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
レアル・マドリー 3-1 パリ・サンジェルマン
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:61′ 76′ 78′ ベンゼマ
PSG:39′ ムバッペ
主審:ダニー・マッケリー