Fixture
プレミアリーグ 第30節
2022.3.19
アストンビラ(9位/11勝3分14敗/勝ち点36/得点41 失点39)
×
アーセナル(4位/16勝3分8敗/勝ち点51/得点43 失点31)
@ビラ・パーク
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でビラの3勝、アーセナルの7勝。
ビラ・パークでの対戦成績
過去10戦でビラの2勝、アーセナルの5勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
スカッド情報
【Aston Villa】
・ウェストハム戦で筋肉系のトラブルがあったルカ・ディーニュは当日判断。
・カラム・チェンバースとドウグラス・ルイスは負傷があり出場は不透明。
【Arsenal】
・アルテタによると冨安健洋は出場のチャンスがあるとのこと。
・冨安を除けばスカッドはフル。
Match facts from BBC sport
【Aston Villa】
【Arsenal】
予想スタメン
展望
■3センターのハードワークで解き放たれるコウチーニョ
今季のプレミアリーグには冬の移籍市場がターニングポイントになったチームがいくつかある。大型補強で終盤戦を待たずに降格圏からの大脱出を済ませてしまった感のあるニューカッスルはその代表格といえる存在だ。
ニューカッスルほどインパクトがあるとは言えないが、アストンビラも冬の移籍市場をチームにとってポジティブな形で活用したチームの1つだろう。2021年の末にスミスからジェラードへの監督交代を行ったビラ。冬の移籍市場においては3人のレギュラー格を補強した。
最終ラインにはプレミアでの経験が豊富なディーニュ。ベニテスとの確執を契機にエバートン(彼らは別の意味で冬の移籍市場がターニングポイントになったクラブだ)からジェラードにもたらされたプレゼントといってもいいだろう。加入からすぐにレギュラーに定着するとニューカッスルに旅立って行ったターゲットの穴を補って余りある活躍を見せている。それだけに前節の負傷は痛恨だ。
CBにはアーセナルファンにとってはおなじみのチェンバースがレギュラーを奪取。最終ラインのプロテクトに加えて、ミドルやアウトサイドキックでのチャンスメイクなど華麗な足技でも存在感を発揮している。
そして別格な輝きを放っているのが前線のフェリペ・コウチーニョ。バルセロナからかつて選手として共闘したジェラードの元に馳せ参じたコウチーニョは加入直後から毎試合のように得点に絡む大活躍。アストンビラの攻撃の新しい柱として君臨している。
ビラのチーム作りのコンセプトは大きく分けて2つ。1つは新加入のコウチーニョを攻撃の柱として組み込むこと。加入当初は立ち位置としては左のWGだったコウチーニョ。だが、左サイドには大きく開くことは稀で、むしろ逆サイドに配置されたブエンディアを相棒としてなるべく近い距離感でプレーすることで輝きを放っていた。
途中から4-3-3から4-3-1-2にフォーメーションは変わったが、元々自由に動くことが多かったコウチーニョにとってはあまり大差はないだろう。システムを変更して狙いを変えたというよりは、相棒がブエンディアからイングスに代わったことでより収まりのいいフォーメーションを選んでいる。そんな感じである。いずれにしても内に絞るコウチーニョを活かすために彼とリンクする攻撃的なタレントを用意するのが今のビラの流儀だ。
もう1つ、ビラのコンセプトの大きなポイントは3センターの強みを生かすこと。ある程度自陣の深い位置まで攻め込まれてしまっても、前線はプレスバックせずに3センターが根性でスライドすることが多い。
ラムジー、ルイス、マッギンの3センターの運動量は豊富。非保持における左右のスライドを3枚で90分崩壊せずに続けられる上、攻め上がりもこなすことができるのだからはっきり言って異常である。
前線のユニットの形が1トップ+2シャドー型だろうが、2トップ+トップ下型だろうがある程度自由に動かせるのは、結局は後方は7枚で見るという前後分断型のシステムを3センターの運動量でなり立たせることが出来ているからである。
前線にはサイドチェンジの阻害という最低限の仕事だけしてもらい、できるだけ前残りしてカウンターに備えてほしい。このサイクルがなり立てば、ビラは殺傷能力が高い攻撃を繰り出すことができる。
タメが効いて押し上げられるグリーリッシュの不在の穴は3センターの奮闘により、前線を3枚前に残すというやり方で一応の解決を見た感じはある。
自由に動き回るコウチーニョを別とすれば、前進のパターンとして持っているのは、ルイスのサリーで3枚になった最終ラインから左に大きく開いたミングスから長いフィードを飛ばすというもの。コウチーニョが左に流れることが多い+ミングスからのフィードが起点になりやすいので、全体的に左で作って右で仕留めるという流れ。トップのワトキンスも左に流れながら数的優位の構築に貢献することもある。
逆に右は後方から飛び込む選手を作ることでフィニッシュに厚みを持たせる。マッギン、キャッシュなどは左サイドで作った攻撃を仕上げるべく、遅れて後ろから入り込んでくる選手たちである。エリアに飛び込むだけでなく、一歩引いてのミドルも備える彼らは相手チームにとって間違いなく厄介な選手であるといえる。
■前後分断の弱みをつく
アーセナルにとっては守備においては考えることが多い相手だ。自由に動き回るコウチーニョのマークをどのように受け渡すか。ルイスのサリーで開くミングスはどこまで深追いするか。
マンマーク気味に前に強気に出ていくのは一つの策だろう。そうなった場合に気にしなくてはいけないのは2トップ×2CBのマッチアップだ。ワトキンス、イングスと同数で対峙することはリスクを伴う部分でもある。サウサンプトンは同じように正面からぶつかり、あっさりとこの2トップにボコボコにされた。コンディション面ではビラが優位な中で、彼らの二の舞は避けたいところである。
ビラの2トップは比較的2人とも表で受けるのを好むタイプなので、ハイラインで裏を取られるリスクをある程度取るのは個人的にはあり。全体をコンパクトにできればコウチーニョが息をするスペースを消すこともできるため一石二鳥。このやり方でうまくコウチーニョを試合から締め出したのが先週末のウェストハムだった。
ビラの左側から押し込まれた時の逆サイドのケアも気にしたいところ。片側に寄せられた挙句、逆サイドに振られるのはキツイ。キャッシュとマッギンはこうした好機は見逃さない。
前節90分攻守に走り回ったマルティネッリにこのケアをお願いするのはやや酷に思う。プレータイムの側面でも負傷リスクを考えればここは一度休んでスミス・ロウにこのタスクをお願いしたい。
攻撃においてはビラの3センターをいかに勢いをもって越えられるか。バックラインが下がりながらの対応になると、ビラは脆さは出てくるので、ライン間でのパス交換でのスピードアップからの速攻はリバプール戦に引き続き狙っていきたいところである。
サイド攻撃においてはやはり4-3ブロックだとトライアングルの動きには弱い。特にサイドの浅めの位置からのアーリー目のクロスに関してはケアが行き届かないことも多い。アーセナルは裏抜けで奥行きを狙うのはもちろんのこと、SBは積極的に角度のある位置からのクロスでエリア内を狙うアプローチも面白いように思う。
日程は厳しい。フレッシュなメンバーが揃うビラにアウェイで立ち向かわないといけないのだ。難所だが、インターナショナルブレイクを勝利で迎えるため、そしてリバプール戦のようなレベルの高い試合が多く待っているCLの舞台に返り咲くため、ここはなんとか白星をあげたいところだ。