Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第10節
2022.3.2
川崎フロンターレ(2位/2勝0分1敗/勝ち点6/得点5/失点4)
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浦和レッズ(16位/0勝1分2敗/勝ち点1/得点2/失点4)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で川崎は8勝、浦和は4勝、引き分けは4つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎が3勝、浦和が2勝、引き分けは5つ。
Head-to-head
川崎優勢だったこれまでの戦績は覆りつつある。2021年は浦和に勝ち星こそなかったものの、ルヴァンカップではアウェイゴール差で川崎を下して勝ち抜け。リーグ後半戦となる等々力でのリマッチにおいても、終盤のゴールで川崎に勝ち逃げを許さなかった。
川崎にとって最後の砦であった対浦和戦無敗という記録もスーパーカップで打ち止め。むしろ、川崎にとって浦和は邪魔者になりつつある。川崎が勝ちきれない戦績は等々力でも同じ。直近4試合中3試合はドロー決着と浦和に粘られている。
2018年が最後となる浦和の川崎とのリーグ戦の勝利。ここから遡ること10試合の浦和のリーグにおける川崎戦勝利はすべてクリーンシート。最後に打ち合いを制したのは2005年と17年前まで遡る。つまり、最近のジンクスに拠れば浦和にとってはクリーンシートが必須。同じミッションを達成したスーパーカップの再現を狙えということである。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・FC東京戦で肩を負傷した車屋紳太郎は欠場が続いている。
・長期離脱中のジェジエウも引き続き欠場。
【浦和レッズ】
・キャスパー・ユンカーは今季ここまでベンチ入りがない。
・明本考浩は神戸戦の退場による出場停止から復帰。
・岩尾憲はG大阪戦の退場により1試合の出場停止。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
勝てば今季初めてのリーグ戦連勝となる。仮に2試合連続のクリーンシートとなれば2021年10月以来5か月ぶり。数字で見れば今季の公式戦4試合でクリーンシート2つという成績は昨年のラスト13試合に匹敵。4失点の横浜FM戦を挟んでいるため、守備力改善の説得力としてはいささか重みに欠けるが、一応無失点の割合は増えていることにはなる。
厳しい日程の中でホームに帰ってこれるのは救いだろう。リーグ戦に限れば直近23試合中20勝無敗という相性抜群の要塞で浦和にスーパーカップの借りを返したいところ。
そのためにキーになりそうなのはセットプレー。直近4試合における5得点のうち、CKから決めたのが3得点(シミッチ、ジェジエウ、山村)、PKが1得点(家長)である。今季はここまでリーグ戦全試合でCKからネットを揺らしている(横浜FM戦はファウルで得点は取り消し)。CKは重要な得点源になりそう。2019年の4試合連続ゴール以来のリーグ戦連続得点になった知念にも期待がかかる試合となる。
【浦和レッズ】
連敗の少ない浦和にとって、ここはリカロド就任2回目のリーグ戦連敗のピンチとなる。開幕3試合勝ちなしという状況自体は2018年以来4年ぶり。この年は4月の第6節まで勝利がなかった年である。だが、この2018年は川崎にシーズンダブルを決めた年でもあり、川崎にフォーカスしたジンクスとしては悪くない材料でもある。
アウェイでの未勝利は昨季から続き、5試合連続まで積み上げることに。相性のいい水曜の試合で今度こそリーグで川崎を打ち破りたいと目論んでいるはずだ。
近年の川崎戦の苦戦が終わったのはショルツの加入が1つのきっかけといっていいだろう。これ以来、川崎戦での大敗はパタッと止まる。最近では川崎キラーになりつつある江坂。だが、実は江坂にとっては川崎はキャリアにおいて最も負けている対戦相手でもある。リーグ戦は過去に1勝のみ、ここで敗れればついに通算10敗という大台に乗ることになる。川崎にとっては直近3試合で4得点を決めている彼を止められるかどうかは大きなポイントになるだろう。
予習記事
京都×浦和
浦和×神戸
浦和×G大阪
展望
■アバウトさが前に出た故の機能不全
2022年の開幕を告げるFUJIFILMスーパーカップでの激突から2週間半。川崎と浦和はリーグで再び顔を合わせることとなる。スーパーカップでは浦和の完勝といってよかった。プレスで相手を前から潰し、逆に川崎のプレスをかわしてボールを前に運び、攻守に圧倒し川崎を完封で下した。内容からしても『今年の浦和は強い!』とJリーグファンに知らしめることが出来たものだった。
それだけにここまでのリーグ戦で3戦未勝利というのは多くのファンにとっては予想をしていなかったことだろう。前提にあるのはやはりコンディション面での不調である。多くの選手がコロナウイルスに感染し、十分なフィジカルコンディションでないままプレーしたり、あるいはチームやリーグへのフィットがままならない選手を起用する必要があったりなどスカッドは難しい状況。近年はACL出場組の使命になりつつある序盤戦の過密日程にも首を絞められ、リカルド・ロドリゲス監督は非常に難しいやりくりを強いられている。
内容に目を向けてみると『スーパーカップでの浦和が実は強くなかった!』というよりは、スーパーカップの水準でパフォーマンスが出来る下地が現状のスカッドで整っていないという印象を受ける。コロナウイルスがどの選手にどの程度の症状を伴って発症したのかは定かではないが、一つだけ言えるのは前線や中盤が連動してボールを奪い取り、速いテンポを繰り広げて相手を置いていくような支配的なサッカーはスーパーカップ以降の開幕3試合ではできていないということである。
繰り返しになるが、やはりここはコンディション面の影響が大きい。現状ではいつ誰が出ても同じクオリティのサッカーができるチームではなく、チームを構築しながら戦力の見極めやユニットの発掘を行いながらシーズンを進めているのだろう。
攻撃においては後ろを2-2もしくは3-2の形で整えながら前方を5枚並べるやり方がベースにある。だが、リーグ戦においてはスーパーカップよりもアバウトなボールが多く、ビルドアップの人数調整で相手の陣形に穴をあけながらショートパスで進んでいくスタイルは棚上げになっている。
京都戦、神戸戦では明本へのロングボールの頻度が高く、全体を押し上げるような保持は減少。ワイドからボールを運ぶ役割を託された関根も、ドリブルをしてみていけるところまでいってみてから何ができそうか考える!みたいなプレーが増えている。そのため、チーム全体としてボールを前に進めた後の選択肢に困っていることが多い。
こうした攻撃は個人の最大出力勝負!のようなフィールドに入りこんでしまうと、浦和のような勤勉さと連携で勝負したいチームにとってはまだ厳しいように思う。どんなDFでも背負えるような陣地回復における第一人者のようなFWはいないし、自陣の深い位置からドリブルでボールを運んで強引にフィニッシュまで持っていけるタイプもいない。
今季の前線では現状チームナンバーワンのタレントといっていい江坂も、相手の死角に入りボールを引き出し、スペースで前を向き一刺しするタイプ。囲まれた状況で体を張りながら時間を作るタイプではない。
それよりは時間を前に送るようにチーム全員で水を運ぶように前線にチャンスを送り込むやり方が彼らの長所だろう。現状ではそれに心中しきれないのが大きな問題。アバウトさに走ってしまい、自らの長所を消してしまう試合が多い。退場者で苦しむ(当たり前っちゃ当たり前なのだが)のも、そうした場面で陣地回復を託せる前線の人員の不在とかかわっているといえるだろう。
■SB経由のビルドアップを巡る攻防
ということで浦和のテーマとしてはアバウトなロングボールに過度に逃げず、相手の守備を剥がしながら1枚1枚動かせるか。G大阪戦ではプレスに出て来た時間帯においてはショートパスを軸に、スピードアップのスイッチを入れて敵陣に迫ることが出来ていた。そして、川崎とのスーパーカップでもこれができていた。
少ないサンプル数であるが、共通点はどちらの試合も岩尾がいたこと。川崎戦では出場停止の彼がいない状況で浦和がどの程度アバウトさを消すことができるかは大きなポイントになる。
というわけで川崎のポイントとしては当然その逆。浦和に時間を前に送らせないようなプレスを行うことである。今年の川崎はWGが外切りのプレスを行うかはここまでまちまち。試合と展開、そして人選によって異なっている。おそらくであるが左はマルシーニョならば外切り、知念や小林ならばSBへのパスは容認するような立ち位置を取る可能性が高い。右サイドでは家長の後方を脇坂にカバーさせる外切りのやり方を使ってくるのではないか。相手の事情というよりは、連戦が続く中で家長に自陣深い位置までのプレスバックを課すとは思えない。
浦和の狙い目としては家長の背後を使うことになる。CBのショルツはこの家長の背後を使うパスも蹴れるし、あるいはボールを運びながらピン止めが出来る能力の持ち主。ショルツから左SBへのルートが使えれば浦和にとっては非常に大きい。
なぜならば、この試合の浦和の不安要素はプレスにおけるCHのボールコントロールであるから。高いボール保持のスキルと味方のホルダーのフォローに長けている岩尾なしでビルドアップをやり遂げることができるのかは大事な要素である。仮に脇坂が家長の背後を気にしなくていいのならば、浦和のCHへのマークはより厳しいものになる。浦和からすると、SBを絡めたビルドアップができるかは、アバウトさを捨てながら中央に時間を与えられるか否かの重要な分かれ目になる。
川崎としては浦和に蹴らせてアバウトな土俵に持ち込みたいところ。浦和に『ショートパスで剥がすトライを続けていいのか?』と迷いを出させたい。つまり、狙いは鹿島戦の再現である。鹿島戦のように早々にゴールを奪えれば最高だが、ショートカウンターから危険な場面を作れるだけでも十分。浦和が蹴りだすアバウトさに縋りつく展開になれば川崎ペースになるはずだ。
逆に一番避けたいのはプレスに出てきた川崎の中盤のスペースを使われる形。プレス時に広範囲をカバーすることになる橘田の脇で江坂に前を向かれて一気にスピードアップされることである。アンカーの橘田はもちろん、CBの谷口や山村には警告覚悟で止めに行く場面が出てきても仕方ないように思う。この形だけはイエローの代償を払っても避けたいところだ。
川崎の保持においても大事になってくるのは浦和の方針。スーパーカップではシミッチが捕まり、多くの川崎ファンのやり玉に上がった。リーグ2戦目以降は戦列復帰した橘田がこのポジションを務めてはいるが、正直アンカーが前を向けるか?というテーマに関しては、ろくに前線からプレスをかけてこない相手ばかりだったので不問とされている部分だと思っている。
浦和がCHに時間を与えられるか?のところで説明した通り、中盤中央の選手、特にアンカーはすでに今の時代は前を向かせてもらうポジションである。小回りが効いて、相手の立ち位置によってポジションを変えられる橘田のスキルでこれまでは何とかしてきた。
だけども、スーパーカップの浦和のようなアンカーに対して時間を奪ってくるチームを倒すためならば、周りがアンカーに前を向かせる仕組みは欲しい。より時間を与えられれば、橘田だって無理のないプレーで精度向上できるし、コントロールする余裕があれば精度は一級品のシミッチだって起用可能になる。
この浦和戦に話を戻せば、まずは浦和が川崎に対してバックラインにプレッシャーをかけることができるか。スーパーカップでのような前線と中盤が連動するプレスの発動頻度は下がった。浦和が開幕3試合では立ち行かない部分もあったプレッシングを蘇生することが出来なければ、川崎は鹿島戦のようなパスワークを見せることができるはず。押し込むことができれば、川崎が今季得意なセットプレーでのチャンスも広がる。
おそらく、お互いバックラインから時間を奪い取ることができるかが大勢を分けるように思う。浦和のビルドアップ隊にアバウトさを受け入れさせ、彼らのプレスをいなせるかがスーパーカップのリベンジの命運を分けると予想する。