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「Catch up Premier League」~Match week 30~ 2022.3.18-3.20 etc

目次

①ノリッジ【20位】×チェルシー【3位】

■カンテの投入が仕上げの布石に

 5バックというフォーメーションとは裏腹に、トップから相手を捕まえにいく強気なスタンスだったホームのノリッジ。最終ラインにプレスにも行くし、降りていくチェルシーのトップの選手にも必死についていく。

 確かにチェルシーはプレスをかけると少しバタバタする部分もあったし、カバクのハフェルツへの果敢なトライからカウンターへのチャンスが出来そうな場面もあった。だけども、さすがに3バックに対して2トップが追いかけ回すのはちょっと無理がある。サージェントは頑張ってはいたが、チアゴ・シウバとクリステンセンの両方を捕まえるのは不可能。クリステンセンというボールの落ちつけどころを見つけてしまっていたチェルシーに対して、ノリッジのプレスは効果が限定的だったと言わざるを得ない。

 前進のしどころを見つけたチェルシーはセットプレーから先制。チャロバーが3分にネットを揺らして先手を取る。続く14分、左サイドからハフェルツとヴェルナーの縦関係からノリッジを押し下げると、マイナスのスペースに入り込んだマウントが追加点。この場面のマウントもそうだが、向かってくるノリッジの選手をいなせる力がある選手がいたのもノリッジにとっては誤算だった。コバチッチとか。

 ただ、ノリッジもノリッジでタイマンでやれる場所はあった。左サイドのウィリアムズ、アンカーのノルマンあたりは相手を剥がしながらの前進が可能。前線のプッキも十分にオフザボールで勝負できる状況だった。

 2点のビハインドでハーフタイムを迎えたノリッジは2枚替えで4-3-3にシステム変更、一気に状況を変えにいく。前からプレッシングに行くのかな?と思ったけどそういうわけではなく、ノルマンに代わってアンカーに入ったルップから幅を使いながらの攻撃を行いながら攻め込むことができるようになった。

 狙い目になったのは左サイド。交代で入ったラシツァの対面になるロフタス=チーク、チャロバーはパフォーマンスが不安定で、このサイドからの打開で十分にチャンスは出来ていた。そして、この左サイドからPK奪取。チャロバーのハンドを誘い、プッキがこれを沈めて1点差に迫っていく。左サイドという攻め手を見つけたノリッジは同点にするべくこちらのサイドを集中的に狙う。

 チェルシーは縦パスに積極的にトライはするが、フィフティーの状況で相手を外せず、ファウル奪取よりいい状況をなかなか生み出すことができない。

 そのチェルシーにとって反撃のきっかけになったのが終盤のカンテの投入。ライン間での反転で自らがボールを運ぶことで敵陣に迫っていく機会を増やしていく。

 すると、90分。試合を決める追加点はジョルジーニョから縦パスをうけとったカンテのドリブルが起点。ドリブルで押し下げたおかげでスペースを享受したハフェルツが得点をゲット。苦しみながらも試合を決めたチェルシーが連勝を伸ばすことに成功した。

試合結果
2022.3.19
プレミアリーグ 第30節
ノリッジ 1-3 チェルシー
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:69′(PK) プッキ
CHE:3′ チャロバー, 14′ マウント, 90′ ハフェルツ
主審:マーティン・アトキンソン

②ウォルバーハンプトン【8位】×リーズ【16位】

■負傷だらけの大乱戦を劇的な連勝で制する

 就任当初こそはプレッシングをある程度制御しながら相手に立ち向かうことで、ビエルサ政権からのサッカーに我慢を加えていた感じだったジェシー・マーシュのリーズ。だが、ここ数試合はもはや我慢感はほぼなくなったといっていいだろう。ビエルサ期ほど原理主義的なマンマークこそ見られなくなったが、前線から追いかけまわすサッカーでアップテンポなスタイルはすっかり復活している。

 今節の相手のウルブスはどちらかといえば、トランジッションは少なめに持ち込もうとすることが多い。特に守備の局面では撤退を優先し、試合を落ち着かせるスタイルのチームである。だが、リーズはお構いなし。ハイテンポな前線のプレスにウルブスを引き込んでいく。

 リーズは相手を土俵に乗せることには成功したものの、ウルブスは早い展開にうまく適応したといっていいだろう。左サイドハーフスペースへのモウチーニョやポデンスへの楔から大きな右への展開で、一気にプレスを脱出。展開力と突破力でリーズに差を見せつける。

 前半に目立ったのは途中交代で入ったトリンコン。左サイドからボールを引き取ったところで縦に推進力をもたらす存在として重宝。ジョニーの1点目に加えて、自ら2点目を取って前半でチームにリードをもたらす。

 1点目を奪われてからリーズは徐々にプレッシングがハマるように。エイリングを中心として縦パスへのチェックを非常に厳しくしたこと。そして、そこから奪った先へのカウンターへの移行がスムーズ。ウルブスのゴールを脅かす。

 そんなリーズの勢いを削いだのが負傷者。バンフォード、ジョレンテ、クリヒと前半だけで負傷者が3名。ウルブスのネベスも加えれば前半だけで4人も負傷者が出る乱戦だった。

 前半終盤から増えた乱戦の流れでウルブスはヒメネスがメリエと交錯。ヒメネスはこれで一発退場となる。リーズは脳震盪の影響で交代枠が1枚残っていたのがせめてもの救い。負傷したメリエに代わってクラエソンが急遽のデビューを飾る。

 10人になったウルブスを攻め立てるリーズ。ウルブスは5-4-0で堅く受けようとするが、個人のエラーのせいで穴をあけてしまう。1失点目はアイト=ヌーリ。長いボールに対して被ってしまいあっさりとエイリングに入れ替わられてしまう。2失点目はPA内の競り合いで敗れて、ボールを処理しきれず。負傷交代続出の連続得点は確かに劇的ではあるが、単純にウルブスのエリア内の対応の拙さが目についたことも事実である。

 しかし、ミラクル属性がついてしまったリーズは非常に厄介。ウルブスはヒチャンの投入で5-3-1にシフトしてペースを握り返そうとするが思うようにいかない。そんなウルブスを尻目にリーズは終盤に勝ち越しゴールをゲット。ボリーが体を入れられてしまい、最後はエイリングが決勝点を決める。

 最終盤はクラエソンのセービングで逃げ切ったリーズはこれで2試合連続の後半追加タイムの決勝点。負傷と乱闘、退場とトラブルだらけで前後半で20分弱の追加タイムが発生する大乱戦は負傷交代ですべての交代枠を使ったリーズの逆転勝利という劇的な形で幕を閉じた。

試合結果
2022.3.18
プレミアリーグ 第30節
ウォルバーハンプトン 2-3 リーズ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:26‘ ジョニー, 45+11’ トリンコン
LEE:63‘ ハリソン, 66’ ロドリゴ, 90+1‘ エイリング
主審:ケビン・フレンド

③アストンビラ【9位】×アーセナル【4位】

■不可解な2トップ不採用

 レビューはこちら。

 中2日×2セット目、かつ直近の試合はリバプールとの一戦。今季ここまでゆったり目のスケジュールですごしてきたアーセナルとしては厳しい日程に直面している。中2日のランチタイムにビラ・パークというのもなかなかにハードな行程である。

 だが、そんな心配もどこ吹く風。アーセナルは好調なパフォーマンスで試合の頭から主導権を握る。最も大きかったのはアンカーのトーマスをビラがうまく捕まえられなかったことだ。一応、ワトキンスが背中で消す形で監視はしていたが、動きなおしてしまえば簡単にフリーになれる。

    ビラはボールサイドと逆のシャドーに絞ることでアンカーを捕まえる要請が出ていたっぽいけど、ここはタイトさに欠けており、トーマスはストレスなくボールを持つことができた。そのため、アーセナルはトーマスから攻撃を展開。ビラ自慢の3センターのスライドも、トーマスの素早いサイドの展開を前にすれば厳しいものがあるのは火を見るよりも明らかだった。

 サイド攻撃も好調。左サイドのスミス・ロウはマルティネッリと比べると中央でラカゼットとつながりながらのパス交換が多く、大外のティアニーのフリーランのスペースを空けるのもうまい。リバプール戦の硬いサイドの連携はこの日は幾分かほぐれたように見えた。

 右サイドの攻撃も好調そのもの。アーセナルのプレミア通算2000ゴール目となる先制点を奪ったのはサカ。セットプレーからの流れでミドルシュートを仕留めて見せる。

 ビラは選手選びがやや不可解だったように思う。トーマスを捕まえるにしても普段のトップ下+2トップの形の方が楽だろう。ライン間を締めてブエンディアとコウチーニョを締め出されているビラにとっては、長いボールを受けるターゲットがワトキンスだけなのは心もとない。

 後半、突破口となったヤングのクロスに対しても受け手としてエリア内で勝負できるFWは2枚ほしいだろう。結局イングスを投入したのはワトキンスと入れ替わる形。外からのフリーランよりも絞ってエリア内勝負をさせたトラオレの投入は不可解で、エリア内に2トップを置いてヤングからクロスを上げまくればよかったように思う。

 そうした嫌がることをしてこなかったビラに対して、アーセナルは大人の試合運び。先制点以降はペースを落とすと、そこから試合の流れを掌握。PA内での対応も比較的安定しており、本当に危険だったシーンはワトキンスがポストを叩いたシーンくらいだろうか。

 この日、久しぶりの出番となったレノもきっちりクリーンシートを達成。ラストプレーで仕事をしたことも相まって、チームメイトに祝福を受けるレノの姿を見れば、今のアーセナルの雰囲気の良さは明らかだろう。目標達成に向けてポジティブな流れを取り戻しての代表ウィーク突入となった。

試合結果
2022.3.19
プレミアリーグ 第30節
アストンビラ 0-1 アーセナル
ビラ・パーク
【得点者】
ARS:30′ サカ
主審:アンディ・マドレー

④レスター【10位】×ブレントフォード【15位】

■押し込んで陣地回復の手段を奪う

 正直、序盤の20分はなかなかに見るのがしんどい内容だった。互いに様子見ということもあるのかもしれないが、後方からのアバウトな放り込み、サイドからのクロスというぼやけた前進からのボールロストを繰り返すことで、まともに攻撃ができなかった両チームだった。

 その20分を吹き飛ばすようなインパクトを与えたのがカスターニュが決めた先制ゴール。ゴール右隅に突き刺したスーパーミドルはここまでの20分はこれのための準備だったかのように思わせるほどだった。

 時間が経つにつれて両チームは徐々に狙いたい前進の形が見えてくるように。レスターはサイドでの旋回が目立つ。IH、SB、WGの3ポジションを軸に横と縦のポジションを入れ替えながらポゼッション。特にWGタイプではないマディソンを大外に配置した右サイドにおいては動きながら、大外をさまざまな選手が使う形で利用していた。

 左サイドもオフザボールが中心。今日もデューズバリー=ホールの裏への抜け出しが効いており、両サイドの攻略を中心に徐々にレスターがペースを握り始める。

 そして追加点はレスターに。ファウルを犯した瞬間から『あ、これはやばいかも』と思うような位置だったFK。直接FKでの得点はもはやマディソンが期待に応えた形と言ってもいいくらいだ。

 ブレントフォードもサイドに配置したFWへのロングボールからレスターがポジションチェンジで空けやすいSBのスペースを狙っていくことで前進をすることはできていた。ただ、ショートパスでの前進の手段は見えてこないので、レスターに押し込まれると厳しいものがある。

 立ち上がりはプレスのラインを上げながらレスターに対応できたため、敵陣に攻め込む反撃ができていたブレントフォードだったが、追加点が入ったあたりから徐々にラインが下がり始め、自陣に押し込まれるようになってくる。そうなるとロングボールを受ける陣地回復役の両FWも当然苦しくなる。

 後半も厳しい戦いが続くブレントフォード。イヘアナチョのキープを活かしながら味方とつながることができていたレスターとは異なり、トニーの孤軍奮闘に応えられる味方が出てこない。この日のシュマイケルはサイドにボールを付けるトライを積極的に行うなど、いつもよりかは幾分か余裕が合ったように思う。

 ブレントフォードは85分にウィサの反撃ゴールで1点差に迫るが、これ以上は得点を伸ばすことが出来ず。前半で作った2点のリードを活かしたレスターが逃げ切り勝利を決めた。

試合結果
2022.3.20
プレミアリーグ 第30節
レスター 2-1 ブレントフォード
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEE:20′ カスターニュ, 33′ マディソン
BRE:85′ ウィサ
主審:ダレン・イングランド

⑤トッテナム【7位】×ウェストハム【6位】

■間に合わなかったタイムリミット

 ウェストハムのフォーメーションは3-4-2-1。いつもの4-2-3-1とは趣を変えてきた形。おそらくこれはトッテナム対策だろう。5レーンを埋めてきちんとスペースを埋めながら迎撃するために、トッテナム戦においてそうした対策寄りのフォーメーション変更を敷いてくるチームは結構ある。ウェストハムもそのチームの1つということである。

 だが、ウェストハムにとっては想定外の事態が。それはトッテナムが積極的にラインを上げるプレッシングを行ってきたこと。とりあえず撤退を優先させることが多かった彼らが前からかみ合わせる形で追い回してきたのである。

   ウェストハムは優秀なチームではあるが、ビルドアップの脱出のルートが多いチームではない。このプレッシングには相当に手を焼いていた。

 そして先制点もこのプレッシングからのショートカウンター。ズマのオウンゴールを誘発したトッテナムは10分も立たないうちに先制点を奪う。

 ウェストハムの守備は噛み合わせは良好ではあるが、後方のレーンを埋めることを優先しているため、マンマークで追いかけまわす形ではない。2列目がホルダーに交互にアタックする形で守備を行っていたが、タイミングが遅く後方に穴をあけてライン間にギャップを作るだけ。トッテナムが追加点を奪うという流れは必然の物だったといっていいだろう。この日効いていたトッテナムの裏を取る動きと降りる動きの組み合わせは得点シーンでも見られたものだった。

 2点リードを奪ったトッテナムは撤退にシフト。だが、セットプレーからウェストハムが追撃弾を奪うと、後半は反撃の姿勢を見せる。

 守備に修正を加えたウェストハム。2CHがライン間をケアすべく縦の関係を作ることで降りてくるケインに積極的にチェックをかける。横幅はシャドーが絞ることで対応。大外が多少空くことを許容する代わりに、2点目の起点になった降りる動きを規制する構えを見せた。

 攻撃面では左のWBに交代で入ったフォルナルスの存在がアクセントに。左サイドから攻め込む形でウェストハムが攻勢に出る。トッテナムはロングカウンターの武器は有しているのだけど、リードしているけどしんどい時に簡単に裏に蹴ってイチかバチかで最短でゴールを狙う選択を続けることが裏目になった時間帯であった。バレても効くかもしれない大技よりも、この時間に欲しかったのは落ち着いた保持での押し返しである。

 しかし、ELで120分を戦ったウェストハムにはいい時間のリミットがあった。徐々に攻め手が止まり、敵陣に迫れないようになると、そこから先はトッテナムの最短でゴールを狙う!という作戦の収支が合うように。ウェストハムの帰陣が遅くなったこともあり、好機を増やしたトッテナムは88分にソンのこの日2点目のゴールで試合を決めて見せた。

 フォルナルスが効いている時間に点を獲れなければ、この日のウェストハムの勝ち点獲得は厳しかっただろう。前半の負債を返し切る前にタイムリミットが来てしまったウェストハム。来季の欧州カップ戦出場権争いからは大きく後退する1敗を喫してしまった。

試合結果
2022.3.20
プレミアリーグ 第30節
トッテナム 3-1 ウェストハム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ ズマ(OG), 24′ 88′ ソン
WHU:35′ ベンラーマ
主審:アンソニー・テイラー

⑥リバプール【2位】×マンチェスター・ユナイテッド【5位】

■デメリットだけ享受した3バック採用

 ベンフィカとのCL準々決勝に、エティハドとウェンブリーに乗り込んでのシティとの頂上決戦。ハードな日程が続くリバプール。CLとFA杯は勝ち抜け、リーグは持ち越しと少なくとも90点はつけていい成績でこの2週間を駆け抜けた。最大4冠の可能性が残っている中で厳しい日程は続くが、ベンチまで豪華な充実のスカッドでその過密日程と渡り合う準備はすでにできている。

 一方のユナイテッドは不振を極めている。絶不調のエバートンに敗れてしまったことはその象徴だろう。前節のノリッジには勝利こそしたが、最下位相手に刺し違え覚悟の特攻フォーメーションで臨み、ロナウドのFKで救われるというスリリングな白星であり、復調アピールとは程遠いものだった。

 布陣をいじってきたのはアウェイのユナイテッドの方。バックラインを3枚にして、3-4-3のフォーメーションでリバプールを迎え撃つ。だが、この3-4-3で何がやりたかったのかはよくわからなかった。

 降りていくリバプールの前線に対して、バックラインがついていく動きは見せていたので、おそらく後ろ3枚はリバプールの3トップについていく役割なのだろう。だけども、別にユナイテッドの中盤や前線が相手を捕まえるわけではないので、基本的にボールホルダーはフリーである。

それでいて、リバプールの前線にはマンマークで相手がついてくるのだから、降りる動きさえ見せてしまえばユナイテッドのバックラインには簡単に穴が空く。リバプールは降りてくる前線へのポストを使ってフリーの選手を作り、穴が空いた最終ライン目掛けて放り込む。リバプールがユナイテッドを壊すにはこれだけでよかったので、すごく簡単な仕事だったように思う。

 進んでユナイテッドのバックラインがリバプールの前線を同数で迎え撃った理由はわからない。本来、リバプールの前線との同数のマッチアップはどのチームにとっても避けたい形のはず。

 そんなリスクのあることをあえてやるときはそれなりの理由があるのが普通。例えば、相手から時間を奪うために前から人を捕まえるプレスに行った結果、仕方なく後方を同数で迎え撃つとか。そうした他の部分でリターンを得る可能性がある場合である。この試合のユナイテッドのように、そうした目的がピッチの中で見えてこないまま、バックラインが同数で迎え撃つというのはリバプールにとってはイージーモード以外の何物でもない。

 後半のユナイテッドはそういった部分はいくばくかは改善していた。ある程度前から捕まえに行くのならば、同じように後方で苦しい形になってもまだ理解はできる。前半はそうした狙いが見えないまま、ただただ殴られていたのでよく2点で済んだなというのが正直な感想である。

 後半はサンチョが登場し他の前線の選手にスペースを供給できるようになったのと、プレッシングで相手を捕まえる意識が増えたため、前半と比べればユナイテッドははるかにマシだった。それでもリバプールの優勢は動かない。効いていたのはチアゴ。つかれているチームにとって、プレーの緩急を付けながらテンポを落とせる彼の存在は偉大である。

そしてもう1人言及しておきたいのがロバートソン。鋭い出足によるプレッシングと機を見たオーバーラップで攻撃に出たいエランガを牽制。3点目は縦パスをカットして一気に駆け上がり、フリーになったマネにラストパスを送ると、4点目もプレッシングからハンニバルに洗礼を浴びせる。

 ユナイテッドの中で誰も良かった選手はいないがこの日のマグワイアは特に散々。いてほしい時におらず、動いてほしくない時に動き、動いて欲しい時に動けず、出してほしくないパスを出す。4点目は直接ボールを奪われたのこそハンニバルだったが、彼にパスを付けたのはマグワイア。あんな適当なパスをデビュー戦の選手につけるなんて、ロバートソンにプレスをしてくれといっているようなものである。

 リバプールにとってはイージーなゲームだったはずだ。リズムも得点も自由自在。無抵抗で穴を空けてくれるユナイテッドに対して、テンポを調整して週末に不要な疲れを残さない形で勝ち点3を奪うことができた。

 最後に。子供を亡くしてしまったロナウドのためにスタジアムが一体になって拍手をするアンフィールドは素晴らしかった。いざという時に手をつなげる関係性は素敵だ。ロナウドのお子さんのご冥福を祈るとともに、アンフィールドに集ったファンには敬意を表したい。

試合結果
2022.4.19
プレミアリーグ 第30節
リバプール 4-0 マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
【得点者】
LIV:5‘ ディアス, 22’ 85‘ マネ, 68’ サラー
主審:マーティン・アトキンソン

⑦ニューカッスル【14位】×クリスタル・パレス【13位】

■最小得点ながらも出来の差は大きい

 どちらのチームもまずは保持から解決策を見出すスタンス。同じ4-3-3のフォーメーションから相手のどこを壊していくかを探っていく。

 より、うまく相手を動かせていたのはニューカッスル。左サイドに狙いを定めて崩しを行っていく。主な経路としては左で作って右で壊す形。もちろん主軸はサン=マクシマン。彼のドリブルでピッチを横断しながら左側に寄せたパレスの守備ブロックを逆に振っていた。

 本来ならば、アンカーのシェルビーを経由するというのもニューカッスルにとっては逆サイドに動かす手段。だが、ここ数試合の振る舞いを見ると、パレスは特にアンカーのいるチーム相手には、ギャラガーをマーカーにつけて消しにくることが多い。そのため、ニューカッスルにとってはアンカー抜きで左右を横断できるサン=マクシマンの存在はありがたかったように思う。

 一方のパレスは立ち上がりこそWGの裏からボールを運ぶ意識を見せながら、敵陣に進むことができていたものの、以降はなかなか前進の手段を見せられなくなる。こちらもニューカッスルと同じく中盤が捕まっている形。だが、マーカーを抑えられている中で解決策を見つけられなかったという点ではニューカッスルと異なっている。

 徐々にライン間のスペースが空いてきたパレスはニューカッスルに保持でも余裕を持って前進を許すように。頼みのカウンターもニューカッスルに封じられ、40分近くシュートにすら辿り着くことができなかった。

 そうこうしているうちに先制したのはニューカッスル。カウンターから抜け出したのはこの日のフィニッシャー役である右サイドのアルミロン。相手に並走されてそこまで余裕がないながらも、華麗なフィニッシュでピンポイントにパレスのゴールを撃ち抜いて見せた。スーパーゴールである。

 ビハインドのパレスは後半、ザハを中心とした反撃を試みるが、ここは対面のクラフトが奮闘。ザハに単独で自由を与えない。左のハーフスペースにミッチェルが上がってのサポートができれば相手陣に侵入してからもチャンスを作れそうな気配はなくはなかったが、そうした場面は限定的だった。

 後半はこの展開がモノトーンで続いていた印象。ボールをもつパレスの攻撃を延々とボールを跳ね返していくニューカッスル。そして得点の気配はそこにはない。スタンドに映るチーム・サウジアラビアのみなさんが談笑している余裕は試合の最後まで崩れることはなかった。

 最小失点差ながらゲームコントロールはバッチリだったニューカッスル。パレスをきっちり退け、一時期の不振から脱出したことをアピールした。

試合結果
2022.4.20
プレミアリーグ 第30節
ニューカッスル 1-0 クリスタル・パレス
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:32′ アルミロン
主審:トニー・ハリントン

⑧マンチェスター・シティ【1位】×ブライトン【10位】

■デ・ブライネのギアチェンジ

 週末のFA杯のリバプール戦では、流石に疲労が色濃かったマンチェスター・シティ。アトレティコとリバプールのサンドイッチという嫌がらせのような日程は欧州屈指の完成度であるシティにとってもハードなものであり、FA杯の敗退は仕方ない部分だろう。

 CL準決勝に向けて一息入れたい、けどもリーグを落としたら、よりコンディションがいいリバプールに先を行かれる。シティにとってはそうした難しい状況で臨むブライトン戦となった。

 立ち上がりからボールを持つのはシティ。ブライトンはマンマーク色は強いが、陣形を維持することも大事にしていた印象。例えば、トップのウェルベックとグロスはアンカーをケアしながらCBを見る形。アンカーに余裕がないことを確認できないまでは強引なプレスには行かず。ロドリをフリーにしてまでは前に出ていかない!というスタンスだった。

 サイドの守備はWBが難しい舵取り。低い位置で関わろうとするアケや縦横無尽に動き回るカンセロをどこまで追いかけていくかは悩ましいところだった。けども、基本的には後方優先。WGにボールが出たら挟めるようなポジションを重視していく。

 いわば静的に試合を進めようとしていたブライトン。シティは38分のプレッシングのように瞬間的な強度は感じるものの、試合を通してはブライトンの強度低下戦略に巻き込まれた状態になっている。

 それでもシティはバックラインから駆け引き。SBが動いたり、ラポルトが持ち上がったり、ロドリが1つ前の列に移動したりなど、強度を上げない以外の解決策を模索できるのはシティの良いところだし、勝ち点を落とさない理由だと思う。

 ブライトンは非保持のやり方は悪くないが、保持に転じた途端に精度がガクッと落ちるのが残念。日頃のボールスキルが伴っていれば、もう少しシティのバックラインを脅かすことができたのだろうが、この日の出来ではカウンターが悉く引っ掛けてしまう。サンチェスがプレゼントパスしたマフレズが慌てなければ前半のうちにシティにゴールが入っていたはずだ。

 後半になり、先制したのはシティ。ククレジャはどこまで前に出ていきながらプレスを仕掛けるかを前半から非常に試行錯誤していたが、先制点の場面ではデ・ブライネを逃してしまった。逃走成功したデ・ブライネはそのまま敵陣までゴールを運び切ると、なんとかつながったボールはマフレズの元に。これが先制点になった。

 シーズン序盤は出遅れたが、やはり調子が整っていればデ・ブライネは別格。運ぶところや、敵陣に押し込んでからの左右に振るドリブルの精度がこの試合では圧巻だった。シティは徐々に惜しい場面を作るようになる。

 ここから試合は圧倒的にシティペースに。シティの2点目はフォーデン。エリア内から撃ち抜くトライのご褒美。シュートが人に当たったせいでサンチェスには防ぐことができなかった。そして仕上げの3点目はブライトンのミス起因。サンチェスのフィードが敵に渡るという重いミスはシティ相手だと2回も許してはもらえないだろう。

 デ・ブライネが入れた一瞬のギアチェンジをきっかけに試合を決めたシティ。強度を落としても引き出しの豊富さがブレないところにこのチームの土台の頑丈さを感じる内容となった。

試合結果
2022.4.20
プレミアリーグ 第30節
マンチェスター・シティ 3-0 ブライトン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:53′ マフレズ, 65′ フォーデン, 82′ ベルナルド
主審:マイク・ディーン

⑨バーンリー【18位】×サウサンプトン【12位】

■いつも通りのパッケージといつも通りじゃない解決策

 この試合に向けてサウサンプトンは3-5-2という珍しいフォーメーションを組んできた。これはおそらくバーンリーの4-4-2に対応する保持をするための形だろう。数的優位を確保できる3バック、浮きやすい構造のアンカー、そして大外とハーフスペースを併用しやすいサイドの関係性。いずれも3−5−2が4-4-2に対峙する構造的なメリットである。

 立ち上がりのサウサンプトンはこの噛み合わせのズレを最大限に活用しながら『蜂の巣にしてやるぜ!!』感のある迫力のある攻撃を繰り出す。バーンリーはボールを奪うところを定められず苦戦。特に大外で暴れるウォーカー=ピータースを止めることができず、彼のカットインから生まれたシュートをひたすら浴びる序盤戦になった。

 非保持では解決策が見当たらなかったバーンリー。しかし、保持においては早々に解決策を見出す。サウサウプトンの泣き所はやはり連携面だろう。メンバー的にも即席感が強い並びにおいて、コンセプトの外である非保持で振り回される展開は避けたいところなはず。

 それゆえ、高い位置からのプレッシングで捕まえたいサウサンプトン相手には大きく振るように揺さぶりながら相手を壊すアプローチをしたい。そこでうってつけだったのはマクニール。相手を剥がしての大きな展開が得意な彼にボールを集めて決定機が出てくるようになる。サウサンプトンにとっては空中戦でも地上戦でも物足りなさがあるWBを守備で晒される苦しい展開になる。

 保持においてはハーフスペースアタックを仕掛けることができるサウサンプトンのIHも非保持においては逆に動かされる立場に。12分のロバーツの先制点は見事にアームストロングが裏抜けで開けたスペースを利用されることになった。

 サウサンプトンが押し込んでいた立ち上がりは一変、あっという間にサウサンプトンの守備の連携の綻びを見つけたバーンリーが今度は逆に攻め込み続ける。フォースターがいなければ早々にバーンリーに追加点が入っていたはずだ。

 バーンリーは保持で試合を落ち着かせるというらしくない一面を見せながら前半は試合をコントロール。追いかけ回すサウサンプトンのプレス隊を完全にいなしていた。押し込む機会を増やすと、前半終了間際にセットプレーから追加点。先制点以降は100点と言っていい試合運びだった。

 HT明け、ほとんどフォーメーションには手をつけなかったサウサンプトン。保持主体の奇襲ならば当たり前ではある気がする。しかしながら、構造を変えないとなれば、後半もペースが変わらないのは必然である。バーンリーは保持ではある程度サウサンプトンに持たせつつ、自らも持つ形で時計の針を進めていく。オフサイドで取り消されはしたが、60分過ぎにはあわや3点目が入るところだった。

 限られた保持の機会においては、サウサンプトンはなかなか立ち上がりのような保持の火力を見せることはできず。頼みのウォード=プラウズの直接FKも不発となってしまい、PA内で奮闘するバーンリーのバックラインとポープをこじ開けることができず。結局はそのまま試合終了を迎えてしまう。

 フォーメーションをいじる奇襲を仕掛けながらも波の大きさといういつも通りのところを見せてしまったサウサンプトン。いつも通りの形ながら、いつもとは違う一面で劣勢をひっくり返したバーンリー。両チームのコントラストが印象的な一戦となった。

試合結果
2022.4.21
プレミアリーグ 第30節
バーンリー 2-0 サウサンプトン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:12′ ロバーツ, 44′ コリンズ
主審:スチュアート・アットウェル

⑩ワトフォード【19位】×エバートン【16位】

■縛られた成功体験

 立ち上がりにボールを持ったのはワトフォード。こうなったのにはエバートンのスタンスが大きく関係してくるといえるだろう。

    エバートンはチェルシー戦の成功を引っ張る形で引き続き5-4-1を採用。『チェルシーだろうとワトフォードだろうとまずはスペースを消すことから、ボールを持たせてよし』という判断なのだろう。

    というわけでボールを持つ序盤になったワトフォード。降格が決まったからなのか、メンバーは割と新鮮。特に雰囲気が変わったのはWG。セマとカルのWGはデニスやサールといった今季ワトフォードでレギュラーを張っていたメンバーに比べると内側に入ってボールを受けたがる感じが強い。

    ただ、ブロック守備を崩すという前提に立てば、やはりサイドから溶かすやり方の方が難易度が低いだろう。よって、ワトフォードにとってこの日のエバートンの非保持のスタンスはあまりありがたくはなかったように思える。

    エバートンの攻撃は持ったら急いで攻めるわけではない。ロングボール一発ではリシャルリソン1枚では完全に収めることはできないからである。かつ、ワトフォードの前線はプレスがきつくない。よってゆっくり攻めることもあった。

    もちろん、彼らの自慢のサイドアタッカーがスピードを生かせる状況を作ることができれば話は別。サイドから一気に攻めあがる形を使う。ゆっくりでも早くても気にしないというスタンスである。10分を過ぎるとボールを握るエバートン。それでもボールを失った後は無理に深追いをしすぎず、ある程度まで回されてしまったらリトリート優先。まずは安全第一というのがこの日のエバートンだった。

 スコアレスで折り返したこともあり、後半は少しプレスに強く出ていったエバートン。これにより、ワトフォードはラインの裏を取れる機会を得ることになった。

    ただ、ワトフォードはメンバーを代えた分、長いボールでは一気に前進は出来ない。そのため、こちらもプレッシングを活性化。じりじりとしていた前半に比べると、後半はややオープンな展開が続くことになる。

 決定機に迫る機会が多かったのはエバートンの方。リシャルリソンは決定的なチャンスを迎えるが、ここはフォースターがファインセーブ。先手を奪うことを許さない。

 87分にワトフォードはキャスカートを入れて5バックに変更。撤退型に切り替えて確実に守り切る方向にシフトする。正直、こうなってからのエバートンはノーチャンス。こじ開ける術を有さないエバートンは決め手を欠いてしまうスコアレスドローに。

 振り返ってみればエバートンにとっては前半の慎重策が裏目に出た格好か。スタンフォード・ブリッジでの成功体験に縛られてしまい、動き出すのが遅くなってしまったように感じたこの日のエバートンであった。

試合結果
2022.5.11
プレミアリーグ 第30節
ワトフォード 0-0 エバートン
ヴィカレッジ・ロード
主審:マイク・ディーン

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