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「スタイルを出し入れできるかどうか」~2023.12.31 プレミアリーグ 第20節 フラム×アーセナル レビュー

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レビュー

キヴィオルが絞る意義

 2023年アーセナルの最後のゲームはクレイブン・コテージの一戦。前半戦最後の試合をウェストハム相手に落としたアーセナルにとっては敗れればロンドン・ダービーでの連敗となる。

 立ち上がりのアーセナルはハヴァーツへのロングキックからスタート。ウェストハム戦では出場停止で不在だったハヴァーツはこの試合で復帰。高さが復活したIHへのロングボールからのキックオフは印象的なものであった。

 序盤のアーセナルは強度十分の入りとなった。高い位置でのプレスからハイラインで相手を止めに行く。フラムは一旦ボールを持ちつつ落ち着かせながらボールを前に動かすアクションを狙う。無闇なロングボールを狙わないあたりは保持においても何かしらをやりたいという矜持は感じる。

 パリーニャやイウォビ、ボビー・リードの移動。バックラインへの列落ちや4-4-2で守るアーセナルに対して、フラムの右サイド側のMF-DF間かつハーフスペースのところに降りて受けるアクションが多かった。フラムの攻撃の出口になっていたのはキヴィオルの背後のスペースだろう。ここはSBが積極的なオーバーラップからの強襲で一気にクロスまで持っていく。

 その1回目の右サイドのフラムの強襲を跳ね返す形でアーセナルは先制。攻め上がったサイドの裏をマルティネッリでひっくり返し、最後に仕留めたのはサカ。前向きに戦いに行ったフラムを裏返す形でアーセナルは先手を奪う。

 アーセナルの保持は慎重なものだった。ウーデゴールの列落ちでのボール関与はここ最近と同じく多め。キヴィオルはインサイドに絞る姿勢は見えていたが、内側でボールを捌くところまでは辿り着いていなかったので、ライス以外のインサイドのポイントとしてウーデゴールが下がるというのは理解ができる。

 キヴィオルが内側に下がる意味があるかどうかは怪しいところだが、イウォビがキヴィオルの立ち位置を気にしており、かつボビー・リードがマルティネッリを基準に守備を行っていることを踏まえると、ガブリエウを解放するという意味合いはあった。アーセナルはここを安定してボールの供給ポイントとして使える予感があった。

 キヴィオルにわざわざ絞らせる意義があるかどうかはわからないが、ティアニーと異なりそもそも大外で何ができるかどうかを証明している選手ではないと考えれば、別に内に絞ってはいけない理由もないだろう。ガブリエウ解放という大義があればなおさらである。

 ただ、配球役としてはこのガブリエウの位置にジンチェンコがいればなぁとは思ってしまった。彼が最近の保持面でイマイチなのは寄せられて前を防がれた時の後ろへ逃すパスで認知ミスやパスミスがあることだと思うので、こういう状況であれば強みは出そうではある。もちろんそうなればフラムの対策も変わる気がするけども。

リスクを感じて欲しかった失点シーン

 手数をかけながらゆったりと時計の針を進めるアーセナル。たた消極的ではあったが日程的に苦しいことや先制点をすでに手をしていることを考えれば悪いことはない。盤石な構えだったように思えるアーセナルだが、フラムによってやや怪しい部分が露呈するようになる。

 フラムが十分な手応えを感じることができていたのはポジトラの部分である。特に縦にパスを差し込んだところを狙い撃ちにしてボールを奪い切ってからのカウンターが効果的であった。バッシー、パリーニャといったタックラーが中央への縦パスをシャットアウト。この日のジャッジの基準がこうしたコンタクトに寛容であったことはフラムにとっては幸運だった。

 ボールを奪った後の縦パスにおいてもフラムは優秀。いつもであればアーセナルはこの縦パスへのアプローチで攻撃を寸断するのであるが、それが機能せず。イウォビの懐の深さやヒメネスの体の預け方など相手側の要因もあるが、アーセナル側の体の重さも感じた。19分のヒメネスのボールの収め方などは従来のアーセナルであればカットできた部分だと思うし、ライスはかなり出ていくところの遅れが目立っていた。

 勤続疲労があればこうした部分に不具合が出るのは当然だし、今季ずっとチームを支えてくれた彼らを責める向きはナンセンスだろう。それでもいつも通りのノリで保持でチャレンジを行うのは難しい状況であることは確か。アーセナルがフラムに数回受けたカウンターを踏まえれば慎重な対応は踏む必要があった。

 そういう意味では28分の失点は落胆が大きいものだった。成功すれば大きなチャンスになるとはいえ、トランジッションからのホワイトのサカへのパスとオーバーラップはギャンブル要素が強いもの。サカが対峙していたのは今日潰しが効いていたバッシーだったし、オーバーラップをしてしまっためにホワイトのサイドからのカウンターは電車道。サリバとガブリエウが引き出されてしまい、逆サイドでヒメネスが仕留める。キヴィオルは無理を効かせれば自らがSBでプレータイムを得る正当性をアピールするチャンスだったが、クロスをクリアすることはできなかった。

 先制点以降も大きく流れは変わらず。アーセナルは後方で人数をかけてボールを落ち着かせながらゆったりとしたビルドアップを行う。WGへのサポートの少なさは気にはなるが、この点は失点をする前から同じ。あの失点の後であればホワイトがオーバーラップに二の足を踏むのはある意味当然感がある。

 42分のマルティネッリのシュートまでのシーンがようやく複数の選択肢を見せながらフラムの守備に狙いを絞らせなかったシーンと言えるだろう。後方の動きが重たく、かつトップがエンケティアであればハイプレスからなんとかする形も難しいだろうし、粘りながらチャンスを伺う形に収束していくのはアーセナルからすれば妥当なように思う。

追いかけるアーセナルの足枷は?

 フラムからすれば縦パスカット→カウンターというメカニズムが確立されている分、大きく前半から展開は動かす必要はない展開。保持に回ればプレスをいなすことができるので、押し込まれる機会は多くとも呼吸はできるという状況ではあった。後半の変化点はボビー・リードが前半よりも強気で列を上げるプレスを行ってきたことだろう。前半を見る限り、後方の押し上げを信用してアーセナルのバックスにプレスをかけるリスクはあると判断したのかもしれない。

 逆にアーセナルはハーフタイムに変更を行う。左のSBに冨安を投入。これにより左サイドは後方のサポートが回復。49分のようにサイドの選手(この場面ではエンケティア)に再加速できるパスが出せるところは冨安のいいところである。マルティネッリが馬力を見せなければカウンターが成立しそうになかったアーセナルにとっては非常に重要な変更だろう。

 しかしながら、後半もフラムのポジトラの鋭さは継続。サリバが力強いカットと裏対応で頼もしさを見せるが、保持面ではこの時間少し大雑把な感じが目についた。

 セットプレーからフラムは勝ち越しゴールをゲット。アーセナルからすればライスが初手で競り負けたところはエラーではあるが、それ以外のところに関しては少し不運さを嘆きたくなる場面。逆にサカが直後に迎えた幸運な決定機を決めきれないあたりが両チームのこの試合の命運を分けたといっていいだろう。

 選手交代から勢いをつけたいアーセナルに対して立ちはだかったのは雨である。交代から5-4-1の布陣を整えて、ロングカウンターに専念することを決めたフラムに対して、パスの精度が悪化する豪雨は有り難くないことこの上ない。アーセナルはパスの精度を欠き続き、オフザボールの動きも重たくなる。

 アーセナルは終盤に3-5-2へのシフトチェンジ。ウェストハム戦と同じフォーメーションである。しかしながら、この形はウェストハム戦を踏まえる限りは2トップになった分のクロスに飛び込む枚数が増えることが肝。サイドの崩しの観点で明確な改良が示されている方策ではない。

 すなわち、インサイドにおいては高さと枚数で勝負する必要がある。にも関わらずマルティネッリとハヴァーツを揃って下げたのはやや不可解。ハヴァーツがいなくなった直後にライスが右サイドから「ハヴァーツがいたらなぁ」というクロスを上げてきたのは流石に寂しさがあった。

 トロサール、ネルソンといった途中交代の選手もこの試合ではインパクトを生み出すことができず。雨によってクロスを入れるプロセス改善が阻まれたアーセナルは押し込みながらの総攻撃に至るまでにそもそも時間がかかってしまった上に、クロスの手前のフェーズで相手のサイドを崩し、PA内でのスペース創出を行うことはできなかった。

 フラムに逃げ切りを許したアーセナル。2023年最後の試合は今季初めての逆転負けで手痛い連敗を喫することになっていた。

あとがき

 中4日+ヒメネスの復帰となるフラムに対してアーセナルは中2日。プレビューの段階ですでに述べたが、この試合で内容を支配しながら戦うことは難しいのはあらかじめ予期できていたことでもある。

 そういう試合で重要なのは先制点である。先制点さえあれば、ある程度は相手をコントロールしやすくなる。

 この試合で悔いが残るのは先制してから追いつかれるまでのプロセスである。後半に馬力がないこともわかっていたし、終盤に悪天候が重なれば状況はさらにタフになる。ホワイトの失点前のプレーはやはり、避けて欲しかった。アーセナルの後方の強度とフラムの潰しのタフさ、そしてコンタクトに寛容なジャッジの基準。こういった部分を踏まえると、フィフティーの状況でボールを預けてオーバーラップをすることは少し向こう見ずだったように思える。

 最近は強度で押し切る試合も目立っていたアーセナル。もちろん、一戦必勝の重要な試合ではそれでもいいのだけども、勝ったとて退屈と言われながらクローズな展開で勝利したシーズン序盤戦の顔こそこの試合に必要なものだったと思う。

 今季のアーセナルは強度マシマシでも戦えるし、トーンを落として堅く戦うこともできるのはすでに証明している。ただし、そうした顔を局面によって器用に使い分けられるかどうかは未知。というかここまで問われていない部分だった。

 まさしくこういった顔の使い分けがフラム戦では明らかに不十分。違う顔を持ち合わせていても展開で使い分けられなければ意味がない。アーセナルが欧州とプレミアの二足の草鞋を履きこなすためにはこうした状況にあったスタイルの出し入れをこなす必要があるのは明らかである。

試合結果

2023.12.31
プレミアリーグ 第20節
フラム 2-1 アーセナル
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:29′ ヒメネス, 59′ ボビー・リード
ARS:5′ サカ
主審:ジョシュ・スミス

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