19位に沈むバーンリー。去年は同時期7位。去年が大健闘過ぎる感はあるが、今年苦しんでいるのは事実だろう。増えたのは失点の数。昨季1年間失点39に対して、今季ここまでの失点は33。得点数は据え置きなので、勝ち点が伸びないのは仕方ない。4-4-2のイメージが強いバーンリーだが、トッテナム戦から始めた5バックは今節も継続。エミレーツから勝ち点を持ち帰ることができるだろうか。
負傷者の続出に合わせて、徐々にパフォーマンスが怪しくなってきたアーセナル。直近10試合のリーグ戦でクリーンシートは1つのみと、試合ごとに負傷者で編成が変わる最終ラインは泣き所だ。今節もDFラインはスクランブル。プレミア創立以来、ホームでは全勝というお得意様のバーンリーが今節の相手。上位陣を追い上げるためにも、まずは1勝を挙げたいところ。
スタメンはこちら。
【前半】
ナンバー10が輝く下地
5バックといっても前節は5-4-1の形だったバーンリー。今節は5-3-2の2トップ。前節でウイングの一角を務めたレノンの負傷も考慮してか、あるいは上背のないアーセナルのCB陣に対して、より縦に進みやすいように2トップにシフトしたといったところだろうか。ボールを持っていないときは2トップでプレスがメイン。ただ中盤の3のスライドは結構強めなので、バーンズはたまに2列目に落ちてケアしてたりとか、そういった微調整は挟んでいた。
アーセナルは3センターのうちの1枚は最終ライン近くに位置でボールを引き出す役割。残りの2枚はバーンリーの2トップと3CHの間に位置してボールを受ける。エジルは自由にピッチを動き回る。
アーセナルは序盤からチャンスを作れていた。要因としてはバーンリーの最終ラインを押し下げられていたことが大きい。メカニズムとしてはアーセナルのSBにボールが入る。ボールが入るとバーンリーのWBが捕まえに来るのだが、タイミングが遅く捕まえきれない。WBが空けたスペースは2トップのどちらかが利用して流れる。裏を取ってラインを押し下げてからは、DF-MF間をエジルや2トップのもう片方やCHが利用。間でボールを受けた後は、そのままフィニッシュしたり逆サイドに展開したりなど。
バーンリーは局所的には頑張りを見せるものの、組織的に守備ができていたとはいい難い。3枚のCHがチェックが甘くホルダーを自由になることが多かった。エジルやゲンドゥージ、ジャカはボールを自由に持たせると長いレンジのパスを通せるので、サイドに裏にと陣形のスライドが間に合わないようなボールを送り込まれていた。バーンリーにはボールホルダーにプレスをかけつつ、DF-MF間を圧縮する必要があった。裏を取られてラインを下げられた後のスペースを埋められない問題もあり、撤退後の守備もそこまで強固ではなかった。飛び出したDFラインの部分をMFがDFラインに入ることで埋めるので、DFとMFの間が空く場面がかなり。ライン間のスペース管理までいかなかったのかなとも。コークのように局面で個人が気を利かせて頑張る!とかはあったけども。
相手を押し下げることが可能で、相手のスペースの管理もホルダーへのチェックも甘いとなれば、エジルが輝く舞台は整ったといわざるを得ない。先制点のシーンは実質最終ラインに吸収された中盤ごと、1本のパスでバランスを崩させることに成功。崩れて空いたスペースを見のがなさなかったのがオーバメヤンである。この日キャプテンマークを巻いた10番の活躍でアーセナルが先制する。
ではアーセナルが先制点までに完璧な試合運びを見せていたかというとそういうわけではない。アーセナルの攻撃はSBを両方上げるパターンが多く、インサイトハーフの2人(エルネニー、ゲンドゥージ)もエリア付近まで突撃!という場面が結構あった。となれば攻撃を完結できなければ、カウンターをジャカ、モンレアル、ソクラティスで受けることになる。スペースは広大な上にラインコントロールは即席。相手が敵陣に残すのは2トップのみのケースが多かったが、そこにMFが1枚加わればもう数的には同数。一番危なかった2分のシーンを皮切りに割とピンチはあった。バーンリーのビルドアップのシーンでも、インサイドハーフのアフロコンビがいろんな人を追いかけてチェックしたけど取れなかったぜ!みたいなシーンもあって、結構個人的にはドキドキしてました。試合中にツイートした下記のような感情は、こういう危うさがベースにあったからかもしれない。エジルを軸にした遅攻のリズム感とか込みで。
先制点後はロングボール主体のバーンリーが前進するシーンが増える。アーセナルはCHの戻りがあまり徹底されておらず、ロングボールでの前進は割とうまくいっていた。オーバーラップしまくる両SBの裏はもっと狙われるかな?と思ったけども、バーンリーのWBが押し下げられており、あまり脅威にさらされることはなかった。対人守備で光ったのはソクラティス。バーンズとのレスリング対決はとても面白かった。当然どっちもイエローカードです。バーンリーは前進こそできるもの、決定的なシーンはほぼなし。アーセナルはモンレアルの負傷交代で3バックにシフト。いよいよベンチにもDFがいなくなったぜ!アクシデントはあったものの、試合は1-0で折り返し。やったぜ今季初めてのリードでのハーフタイム!
【後半】
ボールを持たされるバーンリー
前半よりも圧力を増して長いボールを入れてくるバーンリー。47分のシーンは後方からの押し上げがあり、落としをクロスで入れることであと1歩まで迫ったが、ソクラティスに跳ね返される。そこからのカウンターで追加点をものにしたのはアーセナル。回収したボールを素早く前に進めたゲンドゥージは見事。相手に当たりながらも、コラシナツを前進させられる球質であり、カウンターの起点として素晴らしい役割を果たした。バーンリーとしては、ラカゼットが使ったスペースに本来いるべきコークが戻れなかったのが痛恨。あそこでロストをしてしまえば戻るのは間に合わない。一番使われたくないスペースを気持ちよく使わせてしまった。
そこから先はバーンリーがボールを持つ場面が増える。アーセナル的には流れの中で、ボールを持たれても問題ないが、PA内に人数を送り込まれた状態で、クロス対応するシーンが増えるとまずくなる。まさしく失点シーンはそのような形。エリア内に人数をかけられた状態でボールを放り込まれて、カオスを作られた。ジャカとトレイラにはクリアのチャンスがあっただけに痛い失点だ。アーセナルとしては、クロスを上げた裏のスペースを使ってカウンターの場面が増えており、先ほど紹介したアーセナルの2点目はこのカウンターが実った形だ。
2-1の局面で選手交代に動いた両チーム。バーンリーは2トップを入れ替え、アーセナルはラカゼット→イウォビへの交代を実施。アーセナルは1トップ2シャドーへシフトすることに。バーンリーは先制点のようなクロスをサイドから上げる展開を増やしたいが、アーセナルが2列目の人数を増やしたことと、トレイラの投入でそういった場面はバーンリーが思ったほど増えなかった。チャンスはエリア内でロングボールの競り合いに勝った時のみ。フレッシュな2トップだったが、アーセナルを出し抜く場面はそう多くはなかった。
一方で交代選手が結果を出したのがアーセナル。カウンターのエジルのドリブル突破を起点に決めたのはイウォビ。特に後半に何回も見せた形のカウンターはようやく最後に結実した。試合は3-1でアーセナルの勝利。公式戦の連敗は2でストップだ。
まとめ
またしてもエミレーツから勝ち点を持ち帰ることがかなわなかったバーンリー。データ通り、得点力は据え置きで守備時の組織力や粘り強さは割引になっていたように見えた。アーセナルの両サイドバックの裏を狙えるレノンの欠場がなければ、もう少し異なる戦い方も選択できたように思える。5バックシステムは対強豪専用なのか、それともベースシステムとして守備改善の一手に据えるのか。ダイチの次の策が気になるところだ。
連敗を止めたアーセナル。ハードモードだったがなんとか勝利を手にした。序盤のアーセナルのライン押し下げはFW2枚の併用があったからこそ。スペースに流れるFWがいても、エリア内の密度をキープできたのはバーンリーのブロック攻略の一因になったはず。ここはエメリの策がハマった。渦中のエジルが結果を出せたのもポジティブだ。サイドバックで起用されたコラシナツも出色の出来。ベジェリンの欠場で失われた推進力を見事にカバーする攻撃参加で得点に絡む活躍を見せた。ただ、この試合もモンレアルが負傷交代したようにバックラインのクライシスは継続。それだけでなく、中盤にもリスクはある。トレイラとゲンドゥージはともに累積警告はリーチ。同時欠場になれば、今度は中盤がクライシスに陥る。
季節の到来を感じさせる年末年始の連戦はまだ始まったばかり。そしてアーセナルの野戦病院化は毎年恒例。今年も怪我人や出場停止に苦しむ季節がやってきたようだ。
試合結果
プレミアリーグ 第18節
アーセナル 3-1 バーンリー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 14′ 48′ オーバメヤン, 91′ イウォビ
BUR: 63′ バーンズ
主審: ケビン・フレンド