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「優位の足を引っ張る脆さ」~2021.12.8 UEFA Champions League GS 第6節 ゼニト×チェルシー レビュー

 スタメンはこちら。

■時間を与えられさえすれば

 最終節を前にすでにグループステージの突破を決めているチェルシー。残すはユベントスとの順位決定のみとなった。ある程度の安心感がある最終節を迎えることとなったチェルシーはメンバーを入れ替えながらのテスト要素の強いメンバー選考となった。

 早速先制点をニアで合わせて決めたのはチェルシーの方。セットプレーにおける伝家の宝刀のニアすらし。これが決まれば守備側が防ぐのは相当難しいという形が決まり早速前に出ることになった。

 セットプレー以外の盤面でも序盤に主導権を握ったのはチェルシーの方。3トップのフォーメーションは2トップ+トップ下の形でゼニトのボールの出しどころである2CB+アンカーを抑えに行く。

    ゼニトのバックスは決してプレス耐性に強い方ではなく、時間を奪われるとプレーの精度は落ちてしまう。したがって、チェルシーのマンマークでのプレスはゼニトの前進を阻害するのに十分なものだった。

 一方のゼニトのプレッシングはチェルシーほど強烈なものではなかった。1トップのアズムンは積極的にチェルシーの最終ラインにプレッシャーをかけ続けているものの、2列目がそこまでアズムンの動きに追従する形にはならない。

   チェルシーのバックスはめちゃくちゃ足元がうまいわけではないが、時間を与えられれば正確に前に送ることができる選手ばかりである。目の前が空いたらきっちりボールを運ぶ。1列後ろの選手を引っ張り出せたらボールをリリースする。目の覚めるような縦パスや思わず声が出るサイドチェンジのような派手さはないけれど、確実に効くボールの動かし方を心得ている。

 というわけで枚数のあっていないゼニトのプレッシングはチェルシーにとっては非常においしかった。ゼニトとはことなり、1stプレスラインを突破するのにチェルシーはほぼ苦労しなかった。

 だが、この日のチェルシーは中盤の組み合わせがややぶっつけ気味。バックラインから受けた時間の貯金をうまく前に送ることができない。

 そういう細々した不具合をぶっ壊せるのがルカクの存在である。前線で相手のバックスにスピード、パワーというこの質の部分で優位を取れる。ロングボールだけでなく、左右に流れながらでもチャンスを作れるのが彼のすごいところである。

 ルカクのところがやばいとなると徐々に前に出てこなくてはいけなくなるゼニト。チェルシーはそのゼニトのボール奪取の姿勢を利用。大外でWBがゼニトのSBをピン止めし、その背後に選手を走らせる形でチャンスメイクを行う。

 大外からなら理屈に沿って相手を動かすことができる。いざとなればルカクチャンスを使えばいい。チェルシーが優勢なのは保持における最終局面で何とかなる力を持っていたからである。

 しかし、ゼニトもそういう意味では何も打開策がなかったわけではない。きっかけになりえるのはクラウジーニョ、アズムンのポストプレーである。この日のチェルシーは守備におけるポジションの取り直しが甘く、マイナス方向へのパスのケアに緩みがあった。そのため、ゼニトのポストプレーの受け直しの動きは放置されることがしばしば。

   ここからフリーの選手を作り、クラウジーニョに前向きな形でボールを預けられれば大きな展開からのチャンスメイクが期待できる。同点ゴールはクリステンセンの裏を取ったクラウジーニョから。前プレさえ凌げれば十分あったチャンスを見事に得点に結びつけて見せた。チェルシー側で見てみると失点のきっかけになったのはサウールのクリアミス。今季波に乗れていないサウールだが、この試合でも信頼を積み上げられたかは微妙なところである。

 さらに出番がないチェルシーの選手たちのミスの連鎖は続く。ゼニトが追加点を得たのはバークリーのロストから。プレスに行くか一瞬迷った形のバリオスだったが、ここは行って正解。隙をついて追加点をゲットする。バリオスは直後のヴェルナーの決定機を止めるなど、前半終了間際に印象的な活躍が目立った選手であった。

■最後に届いたパワープレー

 ゼニトがリードで迎えた後半だが、この時間帯においても優位を取ったのはチェルシーの方だった。ゼニトのIHが徐々に動きが鈍ってきて、スペースを空けるプレーが増加。ゼニトはチェルシーに使われたくない場所のケアが甘くなってしまい、後退を余儀なくされる。

 チェルシーはスペースのできた中央を経由する横断が可能となり、逆サイドに展開することでより相手の守りが薄い場所に狙いを定めての攻撃ができるようになった。

    相手陣に押し込んだ時にゼニトが簡単にラインを上げられなかったのはやはりルカクの存在が大きい。ライン際で体を張ることに徹すれば、その位置に最終ラインの高さが規定されてしまう怖さがある。アタッキングサードにおいて、この力を発揮したルカク。ヴェルナーがそのルカクが固定した最終ラインに対してワンツーで奥行きを作ると最後はルカク。同点ゴールで試合を振り出しに戻す。

 ただ、チェルシーも非保持においてはプレス弱まってきた様子。ゼニトはボールを持つことさえできれば、前半よりもプレッシャーが少ない状態で前進することができるように。70分以降は左サイドにはいったモストヴォイからの裏抜けで押し込む場面がちらほらみられるようになってきた。

 チェルシーはフォーメーションを3-1-4-2に変更し、ライン間で受けられる選手を増員。ハフェルツやプリシッチなどライン間にアタックできる選手を増やしたうえ、基準点となるルカクを下げ、流動性をアップさせて主導権を取り戻す。逆転ゴールを叩き込んだのはヴェルナー。後半の動きは今季前半戦の鬱憤を晴らすかのような動きだった。

 ビハインドに陥ったゼニトだったが、ジューバへのロングボールはゴールから遠く、なかなかシュートまで至らない。だが、ゼニトは粘り強く相手にプレスをかけ続けてボールを奪い取ると再びジューバへのロングボールで陣地回復を狙う。すると、ここから最後のチャンスを手にする。このチャンスを決めたのがオズドエフ。

 最後の最後で奏功したジューバのパワープレー。チェルシーにとってはラストプレーで首位通過を逃す痛恨の同点劇となってしまった。

試合結果
2021.12.8
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第6節
ゼニト 3-3 チェルシー
ガスプロム・アリーナ
【得点者】
ZEN:38′ クラウジーニョ, 41′ アズムン, 90+4′ オズドエフ
CHE:2′ 85′ ヴェルナー, 62′ ルカク
主審:セルダル・ゴズビュユク

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