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■匂いの強いユベントスが先制
前評判通りの2強2弱の様相で完全決着したグループH。すでにグループ突破を決めたユベントスがホームに敗退が決まったマルメを迎える形での一戦となった。
試合は2チームの力関係通り、ホームのユベントスがボールを保持しながら主導権を握り進めていく。マルメは撤退型の5-4-1がベース。ユベントスの最終ラインにはプレッシャーにはいかない。したがって、ユベントスの最終ラインはゆったりとボールを持つことが出来た。
ボールがサイドに渡るとシャドーが出ていく形で迎撃するマルメ。WBはなるべく出ていかず、5バックを維持することを優先しつつサイドからの迎撃を防ぐ。高い位置にフォローに行くのはCHの役割だった。
マルメが死守したいのはライン間のスペースの部分。6分に偶発的にライン間を使われたシーンでピンチに陥ったようにこのスペースで前を向かれると一気に旗色が悪くなる。
ただ、ユベントスも意識的にこのスペースを使えていたか?というとあやしいところ。ポスト役と裏への駆け引き役を買って出たモイゼ・キーンがめちゃめちゃ奮闘しながら相手のラインを押し下げることに尽力していたのは確かだが、ライン間で呼吸をしたいはずのディバラは存在感が皆無。相手の嫌なところに入り込むことが出来なかった。
しかしながら、マルメの保持はそれ以上に苦戦。シンプルに前線にボールが収まらず、ボール保持で全体を押し上げるための時間を稼ぐことができない。中盤中央ではボールを捌くのに時間がかかってしまい、あっという間にユベントスの選手に囲まれてボールをロスト。中央からの攻めはカウンターの温床になっていた。
というわけでどちらに得点の匂いがあったかを相対的に比較するとしたらより匂いが強かったのはユベントスの方。実際に得点を取ったのも彼らの方。壊したのは大外のルートからだった。右のワイドに張るベルナルデスキから大外突破でエリア内のモイゼ・キーンに合わせる形でユベントスが先制。外循環の形でマルメのブロックを破り一歩前にでる。
先制されてしまったこともあり、前に出ていかなくてはいけなくなったマルメ。試合の経過とともに徐々にマルメの陣形は縦に間延びすることになる。するとユベントスにはなかなか使えなかったライン間のスペースを使うチャンスがうまれるようになる。
最終ラインでボールをじっくり回しながら、中盤が食いつくまでじっくりと待つ。相手が動いてきたら縦にパスを入れて加速する。この形でユベントスは徐々に5バックの手前でフリーでボールが持てるようになる。構造的に幅には強いが、面には弱い5バックという形に対して、裏へのパスが自在に出せるフリーの選手を作られてしまうのは非常に致命的である。
ユベントスはアルトゥールがパスアンドゴーでライン間に侵入する動きを見せながら、攻撃の加速を手助けする。5バック相手に徐々にユベントスが押し込むシーンを増やしていくようになっていく。
先制されたことにより、結果的にさらに押し込まれることとなったマルメ。陣地回復の難易度はさらに上がってしまった。前進できるか否かはユベントスがプレスを弱めてくれるか否かにかかっており、前進を許してもらった場合にはゴール前はバッチリ固められている感。チャンスのきっかけすら掴むことが難しく前半を終えることになる。
■最小得点差ながらも完勝
後半も依然主導権はユベントスのもの。ただし、ボール保持のアプローチは微妙に変えてきた感じがある。前半に比べるとサンドロをあげ気味にする3-2-5の形でボールの前進を狙う頻度が増加する。ディバラに代えてモラタを入れるという選手交代にも踏み切ったユベントス。左サイドはベンタンクールと入れ替わる形でラビオが入った。
フォーメーションと人員変更の狙いとしてはライン間で受ける人数を増やしての保持の安定化が挙げられるだろうか。前半はモイゼ・キーンに加えて、アルトゥールがこのスペースに入り込むことで前進をしていたが、後半はモラタ、ラビオ、モイゼ・キーンの3人がこのスペースに常駐することで縦パスを引き出そうとする。単純に的を増やして、縦パスを入れやすくしようという魂胆だろう。
加えて、マルメのライン間のスペースが空くようになってからも輝くことが出来なかったディバラに代えて、ポジションニングの巧みさとポストの安定感があるモラタを投入することでPA付近でのコンビネーションの強化を図った。
マルメは前半の終盤に引き続き、ライン間をコンパクトに維持するのに苦戦。前線のタメが効かない問題も特に解決しておらず。大外のベルゲットがときたまフリーで持てるとそこから前進の予感が漂うが、パスコースが1つしかない場面が多々あり、ユベントスがボールをカットするのはそんなに難しい話ではなかった。
たとえば、ハーフスペースの裏抜けととか。狙いをつけるところは悪くないのだけど、ユベントスを出し抜くクオリティまでには至らなかった。中盤も選択肢探しでボールを動かすのに時間がかかるのは相変わらず。カウンターからユベントスを脅かすシーンはなかった。
ライン間を使いながら最終局面では裏を狙う局面を増加して徐々にマルメを追い詰めていくユベントス。時には相手にボールを渡しつつ、ゆったりと試合を進めながらも中央の危険なエリアにボールが入ってきたらがっちりとしめるというしたたかさも披露。むしろロングカウンターからチャンスを作る機会も終盤は作るようになった。
スコア自体は最少得点差ながら実力差は歴然。万が一という可能性すらマルメに掴ませなかったユベントスの完勝といっていい内容だろう。
試合結果
2021.12.8
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第6節
ユベントス 1-0 マルメ
ユベントス・スタジアム
【得点者】
JUV:18′ キーン
主審:イルファン・ペリト