①リーズ【16位】×アーセナル【4位】
■正面衝突はお任せ
レビューはこちら。
控え選手は見知らぬ名前ばかり。リーズは非常に厳しいスカッドでこのアーセナル戦を迎えることとなった。アーセナルとのマッチアップで最も苦しかったのは1人で2人のCBを監視しなくてはいけなかったCFのゲルハルトのところ、そしてラカゼットにどこまでついていくか迷いが出たCBのコッホのところ。リーズにとっては数的均衡ではない2か所のポジションで悩みが出た。
アーセナルの攻撃はこの2つの歪みをうまく活用したものだった。CBがボールを運んで中盤を引き出す動き、そしてCFが降りてきて最終ラインに裏抜けのスペースを作る動きの2つ。
ライン間のジャカ、ウーデゴール、トーマスなどが前を向き、マルティネッリやサカ、ティアニーの裏抜けを待ちながらボールを動かす。そうして裏を取り、メリエのいるゴールを強襲する。こうして流れでチャンスを量産したアーセナル。
もう1つ、トランジッションの局面においてもアーセナルは優位に。大きな展開を出せる選手も前でタメを作れる選手もいないこの日のリーズ。ラカゼットのプレスでショートパスを誘導されるとそこからSH、SB、CHが囲むようにボール奪取。アーセナルの先制点はこの形から生み出されたショートカウンターによるものである。
ゲルハルトが苦労したプレッシングの誘導からあっさりと点をとって見せたアーセナル。縦への裏抜けが刺さりすぎてしまう副作用として、縦に急ぎすぎてしまい保持で落ち着けない時間帯もあったのは難点ではある。
しかし、正面衝突すればこの日のリーズにはまず負けることはないだろう。途中出場でもきっちり役目を果たしたスミス・ロウも含めて2列目の4人がいずれも得点に絡んだアーセナル。アウェイでの連敗を止める快勝でリーグ戦3連勝を果たした。
試合結果
2021.12.18
プレミアリーグ 第18節
リーズ 1-4 アーセナル
エランド・ロード
【得点者】
LEE:75’(PK) ラフィーニャ
ARS:16’ 28’ マルティネッリ, 42’ サカ, 84’ スミス・ロウ
主審:アンドレ・マリナー
②ウォルバーハンプトン【8位】×チェルシー【3位】
■待ち構えるウルブズに打つ手が見えず
ベンチ入りの人数はたったの6人。そのうちの1人が病み上がりのコバチッチということになると、この試合においてはスタメン選びにトゥヘルの意志を反映させる余白はほとんどなかったといってよさそうである。
そんな中でもっとも目を引いたのはカンテとチャロバーの組み合わせ。ビルドアップにおいては3CB+チャロバーの4人で運んでいく形だった。この形を採用したのはウルブスがシティやブライトンのような保持型のチームに対して、ある程度迎え撃つ戦い方を敷く機会が多かったからだろう。3-2よりもより前に人数をかける形で敵陣攻略を挑むことに。
人数調整の部分も意図しつつ、カンテのフリーランをアタッキングサードで使いたかったというアイデアもトゥヘルの中にはあったはず。かつては守備的MFの代表格だったが、今ではボール保持でも十分以上に輝ける存在である。負傷が増えているのはやや気がかりではあるけども。
アタッキングサードでズレを作るのが3トップ+カンテであるならば、後方からズレを作ることを求められているのが3CB。ウルブスのような2トップに対しては空いた1人が持ち上がることにより、中盤より後ろをずらしながら穴をあけていくのがチェルシーの十八番である。
だけども、その十八番はこの日のウルブス相手にはあまり通用しなかった感じ。ウルブスの中盤は2トップの脇からCBに運ばれることを見越して守備をしていたように見えた。イメージとしては『ここに運んでくるでしょ?』という形でチェルシーのCBの進む動線の先にあらかじめ立っていた形。
したがって、チェルシーが後ろからボールを運んでもいつものように敵の陣形がずれるという機会があまり多くはなかった。
むしろ、中盤を縦関係にしたことでボールロスト時にウルブスはチャロバーの脇から横断をしながらの前進が容易になる。これをみたチェルシーは守備時にジェームズを上げる形で4-4-2にシフトチェンジ。ウルブスの前進に対して調整をかけて、相手の攻撃をスローダウンさせる。
深いところに入るまでは行けるウルブスであったが、そこからの攻めあぐねは前節と同じ。シティ相手にも通用したトラオレ大作戦もつかうことがなかったため、なかなかゴールに効果的な形で迫ることが出来ない。
チェルシーは前半途中に負傷したチャロバーがハーフタイムに交代。サウールが中盤に入る。しかし、どうも前進の手助けができないサウール。ボールを受けに降りるばかりで全体の重心を押し上げることができない。
だけども、もうチェルシーには選手起用で幅を出すことができない。バークリーを前線の誰かに代えるのが精いっぱいでこれ以上の手打ちは不可能だった。
対するウルブスも後半に打開策を見出すことが出来ず。互いに枠内シュートは1本ずつという乏しい内容で終わった一戦。特に開催延期を申し入れていたチェルシーの苦しみが如実に感じられる試合展開となってしまった。
試合結果
2021.12.19
プレミアリーグ 第18節
ウォルバーハンプトン 0-0 チェルシー
モリニュー・スタジアム
主審:デビッド・クーテ
③ニューカッスル【19位】×マンチェスター・シティ【1位】
■よくやってこれという距離感
ニューカッスルは前節のリバプール戦に引き続き、2CHの守備時の強度を危惧した4-1-4-1の形でシティを迎え撃つことに。ただし、リバプール戦で負傷交代したサン=マクシマンはスターターから外れてしまうという対シティを意識した時には少し苦しい立ち上がりとなった。
シティと撤退型で戦うときは『全員がコミットして下手なことをしない。その上で彼らのシュートが外れるように祈る』しかないのだけど、この日のニューカッスルはこのセオリーをあっさり破ってしまう。クラークはドゥブラフカとの連携をミスってしまい、PA内でカンセロのクロスをバウンドさせてしまうという痛恨のミス。ディアスをこれが押し込んでシティは5分で先制する。
先制点をおぜん立てしたカンセロはその後も大暴れ。前半のうちに試合を決定づける2点目をミドルで叩き込む。ニューカッスルとしては嫌な思い出がフラッシュバックしただろう。なにせ前節もアレクサンダー=アーノルドにスーパーシュートを似たような位置から決められているのである。やたら右SBにミドルシュートを決められるという呪いで前半のうちに2点差を付けられてしまう。
結果的に4-0で負けたのだけども、ニューカッスルとしては1-0にされてからは出来ることはやっていたと思う。中盤のプレスラインを下げないようにヘイデン→ロングスタッフにスイッチしてなるべく1トップを孤立させないプレッシングをしていたし、サン=マクシマンがいないならいないでロドリ周辺を狙いつつの左右に振りながらのカウンターも繰り出すことはできていた。
だが、やることはやっていたからこそ苦しいこともある。左右に振りながら敵陣に押し込んだ後にシュートを打つまでの工程は現状のニューカッスルにはない。だからこそ、直線的なサン=マクシマンへの依存度がなかなか下がらないのである。
中盤を押し上げた守備をしても、取り切れずに徐々に間延びをしてしまえば、今度はライン間を使われてスムーズに前進を許すケースも出てくる。4失点目のようにジェズスのようなドリブラータイプでない選手に大外から1on1で破られてしまうとなると、シティ相手に守るのは難しいだろう。
やることはやった上の4-0だからこそ遠い。新オーナーの元で生まれ変わるべく懸命に動いているニューカッスルだが、はるか向こうのチームの完成形はまだ見える気配がない。
試合結果
2021.12.19
プレミアリーグ 第18節
ニューカッスル 0-4 マンチェスター・シティ
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
Man City:5′ ディアス, 27′ カンセロ, 64′ マフレズ, 86′ スターリング
主審:マーティン・アトキンソン
④トッテナム【7位】×リバプール【2位】
■構えて刺すことで優位を得る
乱暴な分類でいえばコンテのサッカーは比較的保持に主眼を置いた攻撃的なものにラベリングされるものと思っていた。だけども、この試合ではトッテナムはリバプールに対して完全に迎撃姿勢。3バックというよりは5バックで自陣を埋めながらリバプールを自陣で待ち受ける形となった。
5バックはなるべく動かさずにリバプールのSBに対してはIHが出ていって前で止める。エンドンベレには過酷な仕事のように思えるが、最近のリバプールの攻撃は右サイドによっており、エンドンベレのサイドはストロングサイドではない。逆サイドのアリはこうしたタスクワークが出来るタイプの選手。なるべく5バックを動かさないというオーダーに応える動きを見せていた。
ただし、エンドンベレは守備ではアリほど貢献できなくとも、先制点の起点にはなることができた。ウィンクスの素晴らしいボール奪取からエンドンベレに渡り、最後は縦のケインへの綺麗なラストパスになった。縦を塞げなかったミルナーとケインの動き直しが光った場面であった。
だが、リバプールは前半のうちに追いつく。ベン・デイビスのボールロストはちょっと攻めにくいが、マネに裏を取られて中の陣形を乱した挙句、クロスでジョッタと競り合えなかったサンチェスにはもう少しやりようがあったのでは?と思ってしまう。
後半もリバプールの勝ち越しゴールはサンチェスのサイドから。1on1をジョッタに振り切られてしまい、左右をピンボールのように行きかった流れから最後はロバートソンが押し込んで見せた。
しかし、直後にアリソンが決定的なミスから失点の献上。飛び出しのタイミングを誤ったアリソンをかわしたソンは無人のゴールにボールを押し込むためのボーナスステージだった。
こう書くとリバプールはもったいないミスで勝ち点を落としたように映るかもしれない。だが、迎え撃ってカウンターの流れでむしろこの日はスパーズの方が試合を優勢に進めていたともいえる。リバプールのカウンター迎撃が怪しい場合は大体3センターがキャパオーバーになっていることが多い。
ミルナー、ケイタ、そしてモートンの3センターでは強度の高いゲームではこれだけスカスカになってしまうのも当然といえば当然。それを尻ぬぐいできるファン・ダイクがいないとなれば多少リスクを犯してもアリソンが飛び出したくなる理由もわからなくはない。ロバートソンの退場と許されたケインにスポットが当たりがちな結末となったが、内容的にもリバプールには勝てなかった理由が十分にあった。
劣勢が引き金になったミスから勝ち点を落としたリバプール。逆にトッテナムはコンディションが懸念される中、久しぶりに元気なパフォーマンスをファンに届けられた上に勝ち点1を得ることが出来た上々の結果といえるだろう。
試合結果
2021.12.19
プレミアリーグ 第18節
トッテナム 2-2 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:13′ ケイン, 74′ ソン
LIV:35′ ジョッタ, 69′ ロバートソン
主審:ポール・ティアニー
⑤サウサンプトン【14位】×ブレントフォード【12位】
■仕上げは裏返して
前節から5バックという新しい形にトライしているサウサンプトン。今節も5バックでのトライは継続。ブロヤとレドモンドをトップに並べる5-3-2でブレントフォードとの一戦に臨む。
5-3-2はブレントフォードと同じフォーメーション。だが、同じフォーメーションを使っても噛み合わないのがこの対戦のややこしいところ。3バックに対しては2トップでプレスをかけていかなければならないのである。
そのプレッシングの噛み合わなさに苦しんだのはブレントフォード。積極的にプレッシングには行くものの、ボールを奪いきれない。特にWBのところのプレスに遅れるシーンが目立ち、サウサンプトンに前進を許す。ディアロ、サリスのところから時間を得ながらサウサンプトンは進むことができていた。
先制点はセットプレーから。ウォード=プラウズ→ベドナレクのラインで奪った得点は2試合ぶり。CKから先手を奪う。
サウサンプトンは守備でも積極的な方策がはまっていた印象。3バック×2トップのズレをサウサンプトンほどうまく活用できないブレントフォードはとりあえず2トップにボールを預けてしまえ!というやり方をとりがちだったのだが、サウサンプトンの3バックはトニーとムベウモに前を向かせる前にチェックをかけて解決。ブレントフォードになかなかチャンスを与えない。
なんとか、このプレッシャーの中で同点に追いついたブレントフォード。ムベウモがサイドに流れることで奥行きを作り、トニーに引っ張られたエリア内のセインツの守備の隙を突く形でジャネルトがシュートを叩き込んだ。
しかしながら、前進効率がより高いサウサンプトンが前半の内に勝ち越し。またしてもセットプレーからディアロのミドルがポストにあたり、フェルナンデスの背中に当たってゴールに跳ね返ってしまう。
やや不運な形で勝ち越しを許したブレントフォード。後半はボールを持ちながら押し込む時間帯を多く作りつつ、攻めの機会を窺う。しかしながら、ボールを持たれていても効率的な攻撃ができていたサウサンプトン。ボール奪取から一気にロングカウンターを発動し、後半早々にロメウのアシストからブロヤが追加点を奪う。
サウサンプトンは縦に速い攻撃を相当後半は狙っていた感じ。ブレントフォードの守備陣が速い攻撃に脆いのを知っていたのだろう。54分のフォースターのキャッチからリスタートの速さを見ても、ある程度ブレントフォードの弱みとしてスカウティング済みだったのかもしれない。
4点目を飾ったアダムスのゴールも速い攻撃から得たもの。アタッカー陣を動員して前がかりになるブレントフォードを嘲笑うかのようにカウンターを発動して試合を決めたサウサンプトンが大量得点で快勝を決めた。
試合結果
2022.1.11
プレミアリーグ 第18節
サウサンプトン 4-1 ブレントフォード
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:5′ ベドナレク, 37′(OG) フェルナンデス, 49′ ブロヤ, 70′ アダムス
BRE:23′ ジャネルト
主審:スチュアート・アットウェル
⑥ウェストハム【5位】×ノリッジ【20位】
■際立つボーウェンの意欲
立ち上がりから積極的な姿勢を見せたのはウェストハムの方だった。中でも序盤からゴールへの姿勢を強く打ち出していたのはボーウェン。アントニオに引っ張られた最終ラインに空いたスペースに入り込み、ゴール前の良いポジションからシュートを放つ。
ウェストハムはライン間への縦パスの意識が強かった。ランシーニは攻撃時には1列前のポジションを取るので、ライン間に立って縦パスを引き出す選手は非常に多かった。背負えるアントニオやポジショニングが巧みなフォルナルスなどライン間の侵入の手段は豊富。
逆にノリッジはこのライン間の侵入の縦パスをほぼ阻害できなかった。特に気になったのは前進のキーマンであるライスを簡単にフリーにさせていたこと。ここを開けてしまうから、縦パスも通されてしまうし、ウェストハムは攻撃時に左右に自在に振ることもできてしまう。
ノリッジの攻撃はトップの選手の収まりに全てを託すやり方。時間をもらえてもロングキックしか蹴れないバックラインからではCFに貯金を作ることができない。というわけでロングボールや強引な縦パスでトップにボールを収めようと試みる。
しかしながら、このやり方では前進できなかったノリッジ。縦パスを受けるFW陣のトラップが流れてしまい、相手にボールを奪われてしまう。ウェストハムと同じようなライン間侵入を見せることはできなかった。
攻撃の質で違いを見せつつあるウェストハムは右サイドからボーウェンがクロス性のシュートで先制!と思いきやオフサイドでの取り消し。意外性あふれる得点は認められなかった。だが、その後ボーウェンは本当に先制点をゲット。クファルからのクロスに合わせるというボーウェンにしてはこちらも意外性のある形で先制点を奪う。
後半も展開は変わらない試合に。選手を入れ替えてもボールが収まらないノリッジに対して、中央でボールを受けた選手がビシバシターンを決めて前を向くことができるウェストハム。そして、めちゃめちゃボーウェンは後半も得点への意欲がすごい。抜け出してゴール、そしてシュートまで持っていく形を量産し、試合を決めるゴールに迫る。
その仕上げが決まったのは試合終盤。フォルナルスのサイドチェンジからマスアクのクロスを合わせて試合を決める追加点をゲット。2得点に加えてゴールの枠を叩くショットまで、多くの決定機に関わったボーウェンの活躍で、最下位のノリッジをウェストハムが一捻りしてみせた。
試合結果
2022.1.12
プレミアリーグ 第18節
ウェストハム 2-0 ノリッジ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:42′ 83′ ボーウェン
主審:シモン・フーパー
⑦マンチェスター・ユナイテッド【5位】×ブライトン【9位】
■退場者が課題解決のお手伝い
立ち上がりからボール保持で主導権を握ったのはアウェイのブライトン。ポゼッションで主導権を握りながら、ユナイテッドを前後左右に揺さぶる。この日のユナイテッドの守備は1トップがロナウド。となると最終ラインに制限をかけるのは非常に難しい。
というわけで自由にボールを動かすことができたブライトン。せめてもの抵抗で陣形をコンパクトに維持しながら、ビスマをマクトミネイが監視するという形で展開を阻害しようとする。しかし、ブライトンは最終ラインから裏に幅にと前線に供給。ユナイテッドを敵陣に抑え込む。さらにブライトンはプレスも機能しており、前半早々にはフレッジのパスミスを活かして、デヘアを脅かすシュートシーンを作り上げるところまで行った。
ただ、ユナイテッドもこの日はカウンターの気配が良好。先頭をかけるロナウドはもちろん、それをフォローするエランガとサンチョのフリーランも効いていた。その代わり、撤退されるとユナイテッドは厳しかった。中盤はブライトンのマンマーク攻勢で完全に捕まっていたし、押し込んだところでサイド攻略もできていなかった。というわけで30分も経てば割り切って蹴るシーンが増えたユナイテッドだった。
というわけで試合はブライトンが攻守に安定した形で進めていた。その形が覆ったのが後半早々のブライトンの2つのミス。自陣のビルドアップの過程でビスマのボールロストからロナウドがあっさりと先制ゴールを決めると、その直後には同じくビルドアップのミスからダンクが決定機阻止で一発退場。これで試合の流れがガラッと変わる。
ビハインドに数的不利のブライトンは前半とは打って変わって、ユナイテッドにプレスをかけられない時間帯が続いていく。ユナイテッドはリードを得たこともあってか、落ち着いて左右に展開しながらブライトンを押し込む。ラングニック就任以降においては割と慌ただしい展開で主導権を握ることが多かったが、この試合の後半はボールを持ちながら主導権も握っていた印象。サンチェスのビックセーブがなければ試合はもっと早くに決着していたはず。
ただし、試合終盤に反撃に出たブライトンに対しては多少緩さは目立ったユナイテッド。特にサイドの守備は緩く、クロスを簡単にあげさせるせいで冷や汗をかいた場面もあった。
しかし、仕上げを決めたのはユナイテッド。この試合で決定機を決めてきれていなかったブルーノ・フェルナンデスがラストプレーで独走を決めて追加点。後半の試合コントロールに問題があったここまでのユナイテッドだったが、退場者も手伝っての完勝。暫定ながらも4位に浮上した。
試合結果
2022.2.15
プレミアリーグ 第18節
マンチェスター・ユナイテッド 2-0 ブライトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:51′ ロナウド, 90’+7 フェルナンデス
主審:ピーター・バンクス
⑧ワトフォード【18位】×クリスタル・パレス【13位】
■引きずり込まれた土俵
粘っての勝ち点も重要ではあるが、そろそろ勝利で勝ち点を積む試合を増やしていきたいワトフォード。今節の相手は降格にも欧州カップ出場権にも無縁な残りシーズンを過ごしそうなクリスタル・パレスである。
立ち上がりから主導権を握ったのはアウェイのクリスタル・パレス。SBを経由してナローなワトフォードの前線のプレスを横に広げる。すると、ワトフォードの前線はパレスのポゼッションに対して誘導がかからなくなってしまう。
3-1の後方のビルドで相手の陣形を広げたパレスは、狭く守ってカウンターに移行したいワトフォードの狙いをうまく外したといっていいだろう。相手としては出ていきたくない大外を使い中を広げる。そして、内側が広がればそこを使う。パレスの先制点はまさにこの外に引っ張り出して中を使うという類のもの。ワトフォードはマテタへのクロスに対してコンパクトに守ることが出来なかった。
一方のワトフォードはサリーでルーザが最終ラインに落ちながらのビルドアップを模索するが、こちらはなかなかうまくいかない。先述のようにパレスには外に広げられてしまい、ボールをうまく取り返せる感じもしなかった。それだけに早々にセットプレーから同点に追いついたのはワトフォードにとっては非常に大きかった。
ワトフォードが得意な前進は相手が動いてくれた時にそれを裏返す形のもの。パレスがプレスに色気を出しすぎて、無謀なボールの追い方をしたときが彼らのチャンス。相手を外して一気にスピードアップをかける。
つまり、パレスは相手を自ら動かしながら前進する。そして、ワトフォードは相手が動いてくれたことを利用して前進する。互いに全く異なるスタイルでの相手の剥がし方となった。ただ、よりメカニズムが機能していたのはパレスの方。2点目も大外からファーのクロスでギャラガーが追加点をゲットする。
後半、リードしたパレスは比較的落ち着いた展開に持って行く。保持ではヒューズが位置を下げることで3-2のビルドアップに調整。ボールを奪われないことの優先度を引き上げた。プレスには無理に出ていかずにワトフォードに能動的に相手を動かせるトライをさせるように仕向ける。
ワトフォードは奮闘してはいたが、押し込めてもゴールをこじ開けるほどのクオリティではなかった。幅を使っての攻撃はパレスの方が一枚上手。ワイドでの質的優位の権化のようなザハの追加点で終盤に一気に突き放す。
前半終盤の追加点もあって、相手の土俵に引きずり込まれた感のあるワトフォード。追い上げを図りたい延期分の一戦をモノにすることはできなかった。
試合結果
2022.2.23
プレミアリーグ 第18節
ワトフォード 1-4 クリスタル・パレス
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:18′ シソコ
CRY:15′ マテタ, 42′ ギャラガー, 80′ 90′ ザハ
主審:アンドレ・マリナー
⑨エバートン【17位】×レスター【9位】
■意地のリシャルリソンが勝ち点1を持ち帰る
シーズン終盤、毎試合が正念場となっているエバートン。今節の対戦相手は残留争いにも欧州カップ戦争いにも関与していないが、残りのリーグ戦の数が多く、ここから忙しくなってくるレスターである。
両チームとも4-3-3ベースのフォーメーションだったが、その質には差が出た。保持でクオリティを見せつけたのはレスター。アンカーのメンディが前を向くところから左右にボールを大きく振りながらのサイド攻撃までの流れが非常にスムーズだった。
非保持側のエバートンにスポットを当てると、アンカーのケアを誰がやるかが曖昧だったのがいただけない。誰かがマークにつくのか、トップが消すのかがどっちつかず。おかげでメンディは誰の助けを借りずとも簡単に前を向くことができた。
保持で中央から大きな展開をして、サイドで崩してチャンスを作る。5分に生まれたレスターの先制点はゆったりとしたポゼッションからの崩しとしてはお手本のようなものだった。WGのマークを外れた位置で受けたリカルド・ペレイラからサイドで三角形を作っての崩し。これにより、エバートンはアンカーのデルフがサイドに釣り出されている。空いた中央に入り込んだバーンズが先手を奪った。
一方のエバートンの保持はだいぶ相手に捕まってしまった感。ショートパスからの組み立てを志向してはいるのだが、エバートンは味方に前を向かせる意識が低いという難点がある。この試合は受け手が常にレスターのマークマンに捕まってしまっており、そこから脱出することができなかった。
唯一の希望の光となっていたのは背負ってもキープできる懐の深さのあるイウォビ。リシャルリソンにむやみにロングボールを蹴るよりは、彼にとりあえず預ける方がまだ可能性があった。それでも相手を外しながら運べていたレスターに比べればチャンスメイクの数は少ない。エバートンは切替を早くしつつなるべく乱戦に持ち込むことで純粋なアタッカーのクオリティ勝負という戦える土俵に持ち込もうとしていた。
前半の途中からやや相手のペースに釣られた感のあったレスター。後半は、再びゆったりとしたポゼッションから押し込みペースを取り戻す。70−80分付近はレスターの決定機のオンパレード。特にセットプレーからカスターニュ→ルックマンと繋いだものは非常に惜しかった。
これを凌いだエバートンは試合終了間際にセットプレーを主体として相手のゴールに襲いかかる。それが実ったのが後半追加タイム。意地を見せてボールをゴールに押し込んだのはリシャルリソン。手ぶらでは終われない思いが呼んだ同点弾はエバートンに貴重な勝ち点1をもたらした。
試合結果
2022.4.20
プレミアリーグ 第18節
エバートン 1-1 レスター
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+2′ リシャルリソン
LEI:5′ バーンズ
主審:デビッド・クーテ
⑩アストンビラ【14位】×バーンリー【18位】
■対策の5バックアゲイン
前節、クリスタル・パレスに5-3-2型のストンビラシフトを敷かれたアストンビラ。残留に向けて必死子いている最中のバーンリーにとってはこれを利用しない手はない。
といってもバーンリーはここ数試合5-3-2をそもそも使っている。ビラ対策として挙げられるのはどの部分だろうか。
答えは左右偏重である。アストンビラは左からクロスを上げて右でそれを仕留める形が定着。ディーニュは高い位置を取ってクロスを上げる役割を重点的に行い、逆にキャッシュやマッギンは右サイドからそれを仕留める役割を担う。
よって、バーンリーが行った防衛策は陣形をアストンビラの左に偏らせる。これによってビラのエリア内の砲台となっているサイドの封鎖を行おうという算段である。
前節に引き続き、対策を敷かれたビラ。この試合ではバレていてもいいので左サイドからクロスを狙っていくスタイルを選択。右サイドでの奥行きができない分は中央も頑張る。ワトキンスのポスト、ライン間のブエンディア受けることで起点を作っていく。
対するバーンリーは左右に砲台を用意。左はテイラー、右はマクニールという形でクロッサーを用意し、エリアの外で相手につっかけてファウルをもらい、セットプレーをかせぐ形でなんとかチャンスを創出するといった流れである。
だが、そんな中でバーンリーにPKのチャンス。コルネに対すビラのファウルはやってしまった感があふれるものである。これをバーンズが決めてバーンリーが先制する。
しかし、後半はビラペース、圧力をかけていくとついに右サイドから待望の同点ゴール。マッギンからブエンディアといういつもの逆のルートで同点に追いつく。アストンビラはイングス、トラオレと交代選手が続々とチャンスに絡んでいくイケイケの展開になっていく。
だが、バーンリーもこれに対抗。ポープがきわどいシュートに番人として立ちはだかると、バーンリーの攻撃千載一遇のチャンスをまさかのミス。
終盤は5-4-1にシフトして痛み分けを狙ったバーンリー。まずは、引き分けでリーズに優位な状態を作り、最終節を迎えることとなった。
試合結果
2022.5.19
プレミアリーグ 第18節
アストンビラ 1-1 バーンリー
ビラ・パーク
【得点者】
AVE:48’ ブエンディア
BUR:45+3‘(PK) バーンズ
主審:ポール・ティアニー