Fixture
プレミアリーグ 第21節
2022.1.1
アーセナル(4位/11勝2分6敗/勝ち点35/得点32 失点23)
×
マンチェスター・シティ(1位/16勝2分2敗/勝ち点50/得点51 失点12)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
直近5年の対戦でアーセナルの2勝、シティの11勝、引き分けが1つ。
アーセナルホームでの対戦
直近10試合の対戦はアーセナルの3勝、シティの6勝、引き分けが1つ。
Head-to-head from BBC sport
スカッド情報
【Arsenal】
・ミケル・アルテタはコロナの陽性反応で自宅隔離。アルベルト・スタイフェンベルフが代わりに指揮をとる。
・ノリッジ戦をCovid-19の陽性反応で欠場した冨安健洋、セドリック・ソアレス、カラム・チェンバースは引き続き起用できない見込み。
・エインスリー・メイトランド=ナイルズはCovid-19から回復し、起用可能の見込み。
→ただし、セドリックとチェンバースはフルトレーニング復帰の画像がSNSに上がっている。
→ピエール・エメリク=オーバメヤンは代表への早期合流を許可されたため欠場。
【Manchester City】
・フィットネスの問題があったカイル・ウォーカーは復帰の見込み。
・直近2試合を欠場したジョン・ストーンズ、ロドリは起用できるか不明。火曜日に強盗被害に遭い顔を切り付けられたジョアン・カンセロがロンドンに帯同するかもわからない。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
【Manchester City】
予想スタメン
展望
■スタイルとスカッドの色が首位固めの要因
アーセナルの2022年の初戦は首位をひた走るマンチェスター・シティとの一戦。いきなりのラスボス登場である。
今季のシティはチェルシー、リバプールとの3強を形成し、開幕から優勝争いを演じてきた。12月に入り、やや勝ち点のペースが減退しているチェルシー、リバプールを尻目にペースを落とさなかったシティが徐々に2チームを引き離して、優位に立っている。今の優勝争いはそんな様子である。
シティは首位固めに成功している要因はいくつかある。もっとも大きいのは特定の選手に依存しにくいスタイルだろう。どの選手が出ても、ボールを保持しながら試合を支配し、相手を押し込んでの展開を作り続けるというスタンスを維持することができている。
ここにきて前線の組み合わせに苦労し始めている感のあるチェルシーや、特定の選手の離脱でグッと機能性の落ちるリバプールに比べると、選手が離脱した時のダメージは比較的少ない。特に、前線の選手は特定の崩しに依存する色が薄め。
強いて言えば今季絶好調のベルナルドがいなくなると少し苦しいかな?という感じはするが、デ・ブライネという絶対的な主力がフルスロットルにならない現状でも快調に首位をキープできている。選手個人への依存度は相対的に低いと言っていいだろう。Covid -19の罹患者がそもそも他チームに比べると少ない感じもするけども。
もう一つは過密日程における消耗の少なさ。保持して押し込んで叩き潰すというやり方はボール保持の時間が長くなりやすく、精神的もしくは身体的な負荷がかかりにくい。そうした状態の時に問題になりやすいのは引きこもる相手に対しての崩しの解決策が見つからずに攻めあぐねてしまうことである。
だが、シティはそこを苦にしないチーム。引きこもっているチームを上から叩き潰せるチームである。前節のブレントフォードは比較的精度の高い5-3-2で自陣を固めていたが、それでも外側からのピンポイントクロスで破壊して見せた。
あとは即時奪回の際に一瞬エネルギーを入れればOK。ベースとして押し込むスタイルを貫くことができるのは押し込んだ時にどうにかなる攻撃の手段を有しているからである。
■大外&ブロック外の二段構え
アタッキングサードにおける具体的な崩しの手段としては大きく分けて2つ。まずは大外のトライアングルで崩しながら相手のラインを下げつつ早いクロスで仕留める形である。もはやシティの王道と言ってもいいパターンで、ベルナルドに代表されるハーフスペースの裏抜けがその一例である。
このオーソドックスな手法に対しては守備側は重心を低くしながら、1人抜け出されたとしても、カバーを作ることで対抗することができる。ブレントフォードが採用した5-3-2はその要素が強かった。
シティのもう1つの崩しのパターンはそれを咎める形である。ブロックの外側からの浮かせたピンポイントパス。シティの攻撃において個人の依存度が最も高い部分があるとすればここかもしれない。ここを牽引してきたのはカンセロ。自陣にひく守備ブロックがブロックの外でカンセロをフリーにすると、前線の動き出しに合わせて、その人が走り込んだ位置にピッタリ合う浮き玉が飛んでくる。
昨季猛威を振るったデ・ブライネのファーへのハイクロスからの折り返しもこの崩しのパターンに分類できる。ブレントフォード戦での得点はデ・ブライネがニアサイドのフォーデンの動き出しにブロックの外から合わせたもの。カンセロと似たような役割を担うことができるデ・ブライネの戦列復帰により、カンセロへのマークの負荷は減ることになる。
シティの攻撃でやや減った感があるのはサイドチェンジ。シティの今の攻撃は比較的右サイドに偏りがちな傾向にある。それだけ右で崩し切れてしまう。カンセロ、デ・ブライネはもちろん、マフレズやベルナルドなどのカットインが強みの選手もいる。場所は限定的でもエリア侵入の手段は多彩だ。
サイドチェンジがない分、CHがエリア内に侵入する頻度が増えたように思う。前線に駆け上がる機会が増えてきたのはロドリ。場合によっては中央でのパス交換から前線に抜け出すパターンも見せており、ここにきて新しい持ち味を見つけた印象すらある。
右で崩し切れる分、サイドからボールを引き取り逆サイドに展開するという役割とは異なる仕事に勤しむことができるんだなぁというのが今のロドリを見ての感想である。
■土俵に立ち、テーブルクロスを払い除ける
アーセナルにとっては当然難しい戦いになる。どこまで積極的に出ていくかは未知数だが、ローラインで凌がないといけない時間は間違いなく出てくる。フォーメーションは違えど、ブレントフォードの守り方は参考になる。サイドのトライアングルに対して枚数を合わせつつ対応をして、内側にはそれをカバーできる選手を用意する。CHの積極的な飛び込みやファーへのクロスという攻撃パターンを考えると中盤やWGが最終ラインに吸収されることはある程度受け入れる必要がありそうだ。
ポイントはハーフスペースを埋める選手が後ろ向きにならないこと。図で言うとジャカの位置に入る選手は裏を取られることを恐れてホルダーにチェックにいけなくなってしまうと、前を向かれてしまうことになる。そうなるとシティの攻めは自在。アーセナルはハーフスペースのの選手のチャレンジをある程度許容するように最終ラインの他の選手たちも細かくポジションを調整したいところ。
苦しい時間帯においては上の図のようにトップ下の選手にもスペースを埋めることを求めなくてはいけないだろう。重心を下げて守りたくはないが、ミドルシュートもある彼らに対して、中央を空けることはあってはならない。我慢の時間として割り切る必要がある。
一方でチャンスがありそうなのは攻勢に転じた時である。ゆったりとしたポゼッションにおいても、カウンターにおいてもアーセナルからすると十分に好機は見出すことができる。
ジンチェンコ、カンセロというSB陣に対してならば今のサカ、マルティネッリは特に早い展開において優位に立てる。好調のサカに関しては遅攻で正対する形を作ることができれば、シティのブロック守備を壊すためのノッチになりうるマッチアップ。シティの側に立ってみると欠場が続いていたウォーカーがこの試合にどのようなコンディションで戻ってくるかが重要になってくる。
シティはCBに関しても昨季と比べるとパフォーマンスに凄みはない。特にルベン・ディアスは悪いとは言わないが、鬼神のように守備における歪みをなかったことにし続けた昨年に比べると割引と言っていいだろう。CHも含めて、カウンターに関してはイエローカードという代償を払いながら止める場面も多い。アーセナルからすれば早い時間帯に警告を出させて、とりあえず止めるという選択肢をシティに選ばせないようにしたい。
ブロック守備に関してもアーセナルには崩すチャンスがある。レスター戦は特に顕著だったのだが、FWがプレスに出ていく場面において中盤がついていけずに遅れて出ていくケースが結構多かった。大量得点が隠れ蓑になってはいたが、立ち上がりからマディソンが大暴れしていたのはシティの守備の機能不全が前提にある。
アーセナルはこうしたシティの弱みを白日のもとに晒せるかどうか。シティが手強いのは弱点をポゼッションというテーブルクロスで覆い隠したまま試合を終わらせることができることである。
ポイントになりそうなのはシティの即時奪回に対してどのようなプランを有しているか。中2日かつ選手交代もターンオーバーもないブレントフォード戦のメンバーは流石に疲労が大きいはず。そもそも、デ・ブライネが起用される時間が増えてからは即時奪回でエネルギー全開でボールを奪い返しにくる頻度は下がっている。即時奪回に脆さが出る可能性は前回対戦時よりも高いとみる。
苦しんで何もできなかったシティのプレスに対してはアーセナルの成長分も見込める。開幕時に不在だったラムズデール、ホワイト(間に合えば冨安も)をはじめとした足元に長けたバックスの存在は大きな上積みになる。サカやマルティネッリも含めた長いボールを織り交ぜながらシティの即時奪回の目論みを潰せることができれば試合はアーセナルに流れるはずだ。
もうひとつ、別の角度のポイントはアーセナルがうまく試合に入れた場合、戦い方を変えてくるシティに対してどのように対応するかである。あるあるとしては攻撃で解決策が見つからない場合、ベルナルドがやたらめったら動くことである。最近は彼だけではなく、フォーデンやグリーリッシュのような選手が低い位置に顔を出す代わりにロドリやギュンドアンが前に出ていく縦方向の大移動が起きることがある。
こうした時間帯による変容について、どのように対抗策を見出すことができる。プランAがハマると強いが、修正はできないと言われるアルテタのチームの弱みが試されることになる。シティに勝つにはこの道は間違いなく避けて通れないと断言してもいいくらいだ。
今年のエティハドに代表されるように、アーセナルは最近のシティ戦でろくに試合すらさせてもらえなかったと言っていいだろう。つまらないミスで早い時間に簡単に相手にリードを渡し、あとは60-70%の出力でのらりくらりかわされながら追加点を取られておしまいという感じ。アーセナルはシティを倒すための土俵にすら立つことができていない。彼らはまだ変身を残す余裕がある状態でアーセナルと対峙している。
まずは、自らがシティと戦うことができるチームであることを証明すること。全員がコミットし、誰か1人でもサボったらおしまい。ここまで話してきた話はこの一文という前提がなければ、全て意味のない話になる。まずは土俵に上がること。5ヶ月ぶりに得た王者への挑戦権を無駄にしない姿を見て2022年を期待に満ちたスタートにしたいところだ。