ヒューズを解任し、ハーゼンヒュットルを新監督に迎えたサウサンプトン。降格圏に沈んでおりチームとしては致し方ない決断かもしれない。見てないけども。ハーゼンヒュットルといえば、ライプツィヒの前監督。果たしてプレミアでもガンガン行こうぜ!が見られるのだろうか。ちなみにマーク・ヒューズは隠れアーセナルキラー。異なる4つのクラブ(ストーク、ブラックバーン、QPR、マンチェスター・シティ)でアーセナルを倒したことのある監督だったりもする。
22試合無敗記録は続いているも、最終ラインは大変なことになっている。ホールディングとマヴロパノスは長期離脱、ソクラティスとムスタフィは出場停止、コシエルニーとモンレアルは負傷明け、コラシナツは試合前に負傷。なにがどうなっているのか。健康なのは右サイドバックのベジェリン(この後負傷交代します)と34歳のリヒトシュタイナーだけだ。今季ここまで驚きの采配を見せてきたエメリ。この試合はどういう手を打つだろうか。
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【前半】
噛み合わされて圧縮
ばっちりかみ合わせのフォーメーションを作ってきたセインツ。どちらがボールを持っているときも基本的には3-4-3の陣形を大きく崩すことはなかった。アーセナルでいえば、ボールを持った時のゲンドゥージが若干セインツの守備の基準点をずらそうと動き回っていたように見受けられた。
個人的なライプツィヒのイメージはいわゆるストーミング一派の最先端なのだが、このサウサンプトンはちょっとイメージと違った。アーセナルのCBにはボールを持たせるが、中盤にはボールを持たせることを許さないように設計されているように見えた。アーセナルの中盤(3-4-3の4にあたる部分)がボールを持つと、サウサンプトンのCHは厳しくチェックに。その際にサウサンプトンの3トップは、プレスバックして前から挟み撃ち。後方のCBはパスの受け手のアーセナルの3トップを背後から厳しくチェックし、アンティチポを狙うという流れ。ストーミングというと前からガンガン襲い掛かるイメージだったけど、このサウサンプトンは特にアーセナルの中盤において、縦方向に圧縮する要素が大きかったように思う。アーセナル的にはまんまとハマってしまった感じ。さらに言うとサウサンプトンがボールを奪ったときのアーセナルのCHと後方の3バックの間がかなり空いていたので、ボール奪取後すぐにこのスペースをサウサンプトンの前線に使われてカウンターというシーンは結構見かけた。
サウサンプトンが圧縮してくるのならば、アーセナルが狙いたいのは裏。リヒトシュタイナー→ムヒタリアンのところはかなり狙っていたけど、結構引っかかっていた。左の方がまだ前進はできていた。ただ、こっちのサイドはジャカが供給元なので、もう少しいけるかなと思ったけど、あんまりだった。イウォビが裏抜けの機会が多くなかったのと、モンレアルのサポートがコラシナツほどは素早くなかったのが一因かなと。ちなみにこの日のアーセナルは直線的な動きがとても多かった。人についてくる傾向がサウサンプトンはとても強かったので、もう少し斜め方向の動きは欲しかった。そうしたら空いているスペースはできたかも。後半みたいに。裏に抜ける動きがあると、今度は間が空いたりするのだが、間で受けても、大外を走ってくれるWBがいないと厳しい。ベジェリンが大外をフリーランで抜ける機会も少なかったし、もともとあんまりコンディションよくなかったのかなと。
アーセナルが裏を取ることでラインを押し下げても、サウサンプトンのラインが整うのが先の場面のほうが多かった。裏を取っても、サウサンプトンがラインを下げて追いついてしまって、結局は後ろに戻す!みたいな。逆に言えば、下げたラインのギャップをダイレクトにつくシーンがもっと増えればアーセナルの決定機は増えたはず。例えば1点目のムヒタリアンのゴールのように。前半は1-2でサウサンプトンのリードで折り返し。リードしてハーフタイムを迎える機会はまたもお預けだ。
【後半】
数的優位より質的優位
前半終了間際にベジェリンを負傷で失ったアーセナルは4-4-2にシフト。オーバメヤンと交代で入ったラカゼットの2トップに。この交代で、サウサンプトンのそれぞれのマークが若干あいまいになった。ハーゼンヒュットルの胸中を想像するに、準備期間がなかった中でマンマークで徹底的に相手についていかせる作戦は比較的遂行しやすかったのだろう。ラカゼットが投入されて前線が流動性を増していくのには、あまり対応できてないように見えた。特に狙いをつけたのはベトナレクの裏。イウォビと流れてくるFW陣にはサウサンプトンの右サイドはかなり手を焼いていた。
陣形が押し込まれるとサウサンプトンにも迷いが生まれる。アーセナルの2点目のシーンで迷ってしまったのはロメウ。プレスバックしてきたラカゼットに狙われ、失点の起点になってしまった。
エメリは後半はよく修正していたと思う。2トップは横に流れつつ裏を取ることで、サウサンプトンのWBは位置を下げざるを得なくなった。全体が後ろに下がれば、DFとMFの間のスペースができる。そういう展開でエジルを使うというのは合点がいく。フィットネスが万全じゃなかったので、実効性はイマイチだったけど。理屈としてはうまく言ってたかなと思う。サウサンプトンを押し込んでいたし、決定機といわないまでもチャンスは作っていた。サイドの崩しの重要なカードであるベジェリンを失っても修正できたのはポジティブだ。
ただ、アーセナルは負けた。この試合の結果を分けた要因をあえて挙げるとするのならば、サウサンプトンのクロス→シュートにおける質的優位だろう。アーセナルはこの部分でサウサンプトンの後手を踏んでいた。アーセナルが3枚のCBを起用した理由の1つが守勢に回った時のPA内の数的優位の確保であるということは間違いない。実際にそこに関しては大いにできていた。CH-CB間のスペースはかなりサウサンプトンに使われていたものの、サウサンプトンの前線は素早くゴールを陥れる動きはあまり見られず、逆に陣形を押し上げるためのボールキープを行う場面がゴールにつながることもなかった。より強い相手なら失点に繋がりうる要素だけど。3失点はいずれもエリア内のターゲットは1枚で、アーセナルが数的優位の場面。こぼれ球を押し込めるような位置さえサウサンプトンの選手はいなかった。にもかかわらずボールにも選手にもアプローチできず、失点を複数回喫してしまうのならば勝つのは難しい。アーセナルの数的優位をサウサンプトンの質的優位が上回ったと結果だ。。前線の選手のロストを責める声も見られたが、こうした状況でのクロスから複数回失点を繰り返すようだと、勝ち点を重ねるのは難しいと形容せざるを得ない。もちろん怪我人やサスペンションというエクスキューズもあるし、この試合の3バックをエメリは今後は使わない可能性もある。使ってよくなる可能性ももちろんある。しかし、この試合のパフォーマンスに関していえは、DFラインと起用したエメリにはいい評価をつけることはできないだろう。
まとめ
一定の強度を取り戻したサウサンプトン。ここからどのような方向でチームを導くかは不明だが、とりあえず初勝利を挙げられたことで、ハーゼンヒュットルは胸をなでおろしていることだろう。2得点を挙げたイングスの動きは秀逸。得点のシーンはクロスも抜群だった。DFラインは若干ふわふわしていたので、前方の守備組織を構築しながら後方の負荷をやわらげる方向に進めば、残留への道は見えてくるはずだ。あとどうでもいいけど、ハーゼンヒュットルのリアクション、面白いからずっとカメラで映しておいてほしい。
無敗記録は止まってしまったアーセナル。ここまでの平均勝ち点は2.0と聞くといい感じな気もするが、実は前年度とは勝ち点は4しか上積みされていない。昨季と比べて成績が上向いているのは確かだが、昨季のアーセナルは年をあけてから成績が落ちている。年明け前は実質週1で回せていたが、ELが本格化してからは週2ベースになる。エメリはヴェンゲルよりはリーグ戦のローテーション傾向は強いので、杞憂に終わればいいのだが。まずはエメリ自身初の年末年始の過密日程へ。ここを超えて年明けに定めるリーグ目標は何になるだろうか。
試合結果
プレミアリーグ 第17節
サウサンプトン 3-2 アーセナル
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:20′ 44’ イングス、85’ オースティン
ARS:28’ 53’ ムヒタリアン
主審:クリス・カバナフ