■的中したスカローニ采配が呼んだメッシの初タイトル
ラウンドが深まるにつれ真剣さが増していくのが決勝トーナメント。当たり前の話なのだが、コパアメリカは中でもその色が濃いコンペティションのように思える。その決勝戦がブラジル×アルゼンチンとなればその緊張感も最高に高まるというのは当然の流れといえるだろう。
試合は共に非常に慎重な入りとなった。相手に強引にプレスをかけに行くことはせず、自陣に穴をあけないことを優先し、とにかく失敗を避けていく形。共にネイマールとメッシという絶対的なスイッチの入れどころがあるが、そこにボールが入った時だけはファウル覚悟で全力で取り囲む。実況の倉敷さんは『コパの決勝は世界一レフェリングが難しい』というのもあながち間違いではないだろう。初手でカードを出してしまうと止まらなくなってしまう。
スローリーな展開がベース、速くなりそうになるとファウルで止める。この展開が続く両チームの中で変化をもたらしたのはアルゼンチンのこの試合の用兵である。ラウタロ・マルティネスやゴンサレスなどここまでスカローニが重用してきた選手たちは献身的ではあるものの、広いスペースで対面のDFを出し抜いてから独力でゴールを沈めるタイプではない。
出し手として効くメッシが封じられた以上、ゴンサレスの先発を回避したのは正解だったと思う。代わりに入ったディ・マリアはまさしく広いスペースで独力で勝負できるタレント。貴重な先制点を奪ったのも彼の仕事。対面のロディの対応があまりにお粗末だったとは言え、アバウトなボールでも広いスペースからゴールを陥れることが出来るディ・マリアを先発で使ったコンセプトが効いた場面だった。
劣勢となったブラジルは後半にネイマールをIHで起用する。めっちゃ奇策っぽいのだが、コンセプトはどこまで行ってもネイマールにボールを触ってもらうこと。そういう意味では合点がいくし、実際に効果もあった。
降りてボールを触るネイマールに対して、アルゼンチンの最終ラインから捕まえに出ていくと数が足りなくなってしまう。そしてそうなるとフレッジ⇒フィルミーノの交代で前線のアタッカーを追加した効果が出てくる。内に絞る分、余る大外にリシャルリソン。この大外のリシャルリソンパターンからブラジルが攻め立てるシーンが続く。
しかし、これにアルゼンチンはすぐさま数合わせで対応。交代で5バック化にして数の論理で大外が余らないようにした。
受ける選択肢をとり、跳ね返しに徹するアルゼンチン。ただ、ブラジルもネイマールの位置を下げた分、被カウンター対応はスカスカに。メッシとディ・マリアを軸にカウンターから独走を食らう場面もあった。特に最終盤のメッシの決定機は絶対にこれで決まったと思ったファンも多いだろう。逆に決まらなかったことでブラジルに押せ押せの雰囲気が流れる。
だが、これをアルゼンチンのバックラインがシャットアウト。マルティネスを中心に5バックの堅牢な守備をブラジルは最後まで崩すことが出来なかった。
優勝したアルゼンチンではついにメッシは代表レベルでの初のメジャータイトル。いや、ほんと良かった。このタイトルを引っ提げてワールドアップに再度チャレンジするメッシは熱い。コパアメリカの最終戦はブラジル×アルゼンチンの看板に偽りのない大激戦となった。