ブレントフォード【14位】×リバプール【1位】
負けちゃダメなところで負けてしまう
25節の開幕を飾るランチタイムキックオフはいきなり首位のリバプールが登場。プレミア名物の難所であるブレントフォードのホームに乗り込んでの一戦を迎える。
ブレントフォードのフォーメーションは3-5-2。強豪仕様の形に加えて、オールコートマンツー気味の強気なプレスでリバプールのバックラインに積極的にプレッシャーをかけていく。
一方のリバプールも非保持に回れば強気のスタンス。3バックに対して3トップがプレスに行き、WBに対してSBが出ていくことでプレッシャーをかけていく。
よって、互いにボール保持側は非保持側の強気のマンツーマンに対して、どのように対応するか?という部分が求められる立ち上がりになっていた。個人的にはより効果的な回答を示していたのはブレントフォードに見えた。WBでSBを手前につり出しつつ、2トップで2人のCBをピン留めしているところに中盤から1枚が飛び出してくるという形を作ることでボックス内にフリーマンを作る。
中盤の走力で言えばブレントフォードにも勝負になるタフさは存在するし、ハイプレスも回避できるくらいのパステンポはあったため、この動かし方は効果的。惜しむらくは駆け上がってフリーになったブレントフォードの中盤のシュートがことごとく足につかなかったことである。
リバプールはより前線の裏へのよーいドンを積極的に行うことで対抗するという根性仕様。どちらかといえば、トランジッション合戦を軟着陸させつつ、自分たちの保持に盤面を引っ張ってきたいというのがリバプール側の狙いだったといえるだろう。
やり直しを繰り返してプレスを退け、ブロックの外のフリーマンから裏抜けする前線にボールを渡す形で少しずつリズムを作っていく。ブレントフォードもそれに合わせて保持ムーブにシフト。リバプールを狭く守らせないための幅を使った動かし方で勝負をする。
互角な展開で先行したのはリバプール。セットプレーからのカウンターで先制。やりすぎてしまったリバプールのDF陣に対して抜け出したヌニェスが先制ゴールを仕留める。
このゴールのようにブレントフォードはこの試合において「そこは負けちゃだめだろう」という部分であっさりとリバプールにスキを許していた印象である。特に顕著だったのが後半である。リバプールの2点は非常に見事な流れるようなカウンターだった一方で、ロングボールを追い込まれて蹴らされた挙句にあっさりと跳ね返されてしまうというのは彼らのアイデンティにかかわる話である。
3失点目も4失点目も同じ。ロングボールへの対応はブレントフォードの土台の話である。リバプールは手数の少ない攻撃から効率よくゴールを重ねていくことができていた。
75分にトニーの1ゴールにブレントフォードの反撃を抑えたリバプール。今節も首位で週末を過ごすことを早々に決めてみせた。
ひとこと
これではブレントフォードは勝てない。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
ブレントフォード 1-4 リバプール
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:75‘ トニー
LIV:35’ ヌニェス, 55‘ マック=アリスター, 68‘ サラー, 86’ ガクポ
主審:マイケル・オリバー
バーンリー【19位】×アーセナル【3位】
5連勝でCLに弾みをつける
レビューはこちら。
ターフ・ムーアに見参したアーセナル。今週はミッドウィークに欧州カップ戦を控えるプレミア唯一のクラブとなる。
立ち上がりから優勢だったのはアーセナル。序盤の序盤こそちょっともたつくシーンがあったものの、すぐに修正。4分には左サイドから抜け出すマルティネッリからあっさりと先制ゴールを奪い取る。
ミドルゾーンに構えるバーンリーはなるべく堅い位置からボールを奪おうと中央にコンパクトなブロックを組んでいるのだが、ホルダーにプレッシャーをかけることができずにズルズルとラインを下げてしまう場面が目立ってしまう。
この辺りは大外をあっさりと明け渡してしまう弊害だろう。リバプール戦でもそうだったが、大外から突破や直接ゴールにリーチできる手段を持っているチームに対して、このレーンをオープンにしてしまうことはゴールに向かう電車道を敷いているだけである。
バーンリーはこの点を改善できずに苦戦。特にアーセナルは右サイドから裏のトロサール、ハヴァーツの2トップの動き出しに合わせたプレーを連発することでバーンリーを攻め立てていく。
反撃に出たいバーンリーだが、自陣からの前進の手段はほぼフォファナ一択。長いボールを預けられても独力で何とかしようとはしていたが、ガブリエウの牙城は厚くなかなか起点として安定した働きを見せられず。
アーセナルは40分手前にPKを獲得して追加点をゲット。盤石な状態で前半を終える。
迎えた後半もペースはアーセナル。横断からあっさりと1on1を制したサカがアーセナルに3点目をもたらす。事実上、試合はここで決着がついたといっていいだろう。
試合のテンションは両チームとも少し下がる状態になったが、アーセナルはラムジーの負傷に伴うインターバル明けからプレッシングを再開。ギアの切り替わらないバーンリーのバックラインに襲い掛かり、ボールを奪い取ってのショートカウンターを繰り返していく。
この試合ではなかなかフィニッシュのタッチが安定しなかったトロサールだが、4点目でようやく結果を出して安堵の表情。インターバル明けのラッシュをようやく結果に結びつける。
5点目もトランジッションから。キヴィオルの隙をついたスローインから裏に単独で抜けたハヴァーツが1on1を冷静に制して大差をつける。
アーセナルからすれば少々終盤に出てきた控え選手たちがピリッとしなかったという反省はあっただろうが、結果としては申し分はなし。5連勝という最高の形でCLに弾みをつけた。
ひとこと
3点差のインターバル明けからギアチェンジできるのはえぐい。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
バーンリー 0-5 アーセナル
ターフ・ムーア
【得点者】
ARS:4‘ ウーデゴール, 41’(PK) 47‘ サカ, 66’ トロサール, 78‘ ハヴァーツ
主審:ジャレット・ジレット
フラム【12位】×アストンビラ【5位】
縦へのキレ味が戻ったフラムが上位追走
ともに1つ上の集団からは離されつつある両チーム。ここは踏ん張りどころ。なんとか相手を叩いて上位に少しでも近づきたいところである。
立ち上がりはいずれもバックラインに強引なプレスにはいかない両チーム。フラムは流れの中から2列目がプレスのスイッチを入れて、一気に圧力を高めにいく。アストンビラはボール保持からリズムを作る。CBが広がる形からの3-2-5から縦パスで前進していく。
縦パスのリズムが出るポイントは2カ所。まずは起点となるバックライン。パウ・トーレスの復帰はポゼッションの安定という意味では非常に大きい。そしてもう1カ所はトップ下に入ったティーレマンス。前を向けば前線の動き出しに合わせる精度抜群のスルーパスからチャンスを高い確率で作ってみせる。
一方のフラムの前進はよりダイレクト。前線が右のハーフスペースに抜け出すアクションから少ない手数での前進を狙っていく。押し込んだ場面からセットプレーでリームが先制点を決めたかと思われたが、これはオフサイド。先制のチャンスを逃す。
ピンチの後はチャンス。先制点を決めたのは失点を仕掛けたアストンビラだった。ロビンソンが自陣で仕掛けたトリッキーなスローインをアストンビラが奪い取り、最後はあっさりとワトキンス。相手のミスをしたたかにつくゴールでアストンビラが先行する。
先制されたことでフラムは押し込みながらの崩しのトライをする。だが、攻撃はカウンター主体のアストンビラが優勢。トーレスとティーレマンスを使った縦へのパスの鋭さがチームに戻り、スマートな列の越え方からアタッキングサードでベイリーにボールを渡す形が抜群だった。
後半はポゼッションによるターン制バトルの様相。互いにリトリートするブロックに対して、後方から人数をかけた崩しを見せる。その中でアストンビラはリードをしているにもかかわらず、プレッシングから支配的に試合を進めたがる姿勢も見せていた。
後半も得意パターンからアストンビラは得点。ライン間のティーレマンス→ワトキンスという流れであっさりと追加点を奪い切る。この試合のビラらしい得点である。
フラムは左サイドからの抜け出しからロビンソン→ムニスの折り返しで粘りながら得点をゲット。諦めの悪いゴールを仕留めて1点差に迫る。
なんとか追いつきたいフラムはハイプレスに出ていくが、これはむしろアストンビラの縦へのスムーズな進撃を許してしまうことに。最後までビラが優勢となり、リードを守ることに成功。久しぶりにらしさを見せた勝利で3ポイントを積み重ねた。
ひとこと
ティーレマンスのトップ下、切れ味があっていいね。あと、パウ・トーレスの復帰も良かったね。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
フラム 1-2 アストンビラ
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:63′ ムニス
AVL:23′ 56′ ワトキンス
主審:ルイス・スミス
ニューカッスル【7位】×ボーンマス【13位】
エディ・ハウのマジックで勝ち点を掬い上げる
立ち上がりにボールを持つことになったのはアウェイのボーンマス。バックラインからショートパスを軸に繋いでいく。ニューカッスルはCBをゴードン1人で監視し、他ははめ込む形で追い回す。4-3-3を維持するケースにおけるオーソドックスな4-2-3-1への守り方になっている。
ボーンマスが非保持に回った際も守備の基準は同じ。2トップが縦関係を形成し、トップ下のクライファートはアンカーのマイリーを監視。中盤は嵌め込みながらバックラインはある程度持たせる形を作っていく。
というわけで両チームともまずは攻撃で嵌め込まれてる中で攻め手を作れそうなポイント探しに終始。特に苦戦していた感があったのはボーンマスの方。ソランケ、セメンヨといったキーマンはいずれも簡単に封殺されており、前線の起点としては計算するのが難しい状況である。
一方のニューカッスルはクリーンな抜け出しこそ少ないものの、ゴードンやバーンズがファウルを奪取することで攻め込むように。少しずつニューカッスルのファストブレイクからテンポは流れていく。しかしながら、ネガトラの部分でボーンマスに後手を踏むこともしばしば。全体が流れることでボーンマスもチャンスを享受したといっていいだろう。それでもセメンヨは前を向けずにニューカッスルの即時奪回の餌食になっていたけども。
降りるゴードンと飛び出すロングスタッフの組み合わせをギマランイスが繋ぐなど、少しずつらしい攻撃も見えてきたニューカッスル。流れた展開の中でも優位に立っていたのは間違いないだろう。
後半、ボールを動かす機会が多くなったのはニューカッスル。GKをパスワークに絡めながら、ピッチを広く使ったポゼッションを展開する。このまま落ち着いて試合を制御するかと思いきや、ニューカッスルはドゥブラーフカがとんでもないミスを犯してしまい、あっさりと失点。ボーンマスに信じられない形でリードを渡す。
しかしながら、ニューカッスルはすぐに同点に。セットプレーからPKを引き出して試合を振り出しに戻す。
得点ラッシュの流れはまたまだ継続。一進一退の攻防が続く中でカウンターを完結させたのはボーンマス。前半はさっぱりだったセメンヨが大仕事を果たして、距離のあるシュートを沈めることに成功。交代直前の一振りで再びリードを奪う。
以降は総攻撃を仕掛けるニューカッスルが一方的にボーンマスを攻め立てる展開に。なんとか、踏ん張っていたボーンマスだが、後半追加タイムにニューカッスルは追いつく。決めたのは伏兵のリッチー。まさにエディ・ハウマジックと言える選手登用で同点を手繰り寄せたニューカッスルがなんとか勝ち点1を掬い上げた。
ひとこと
リッチーの右サイド投入は読めない。まさにマジック。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
ニューカッスル 2-2 ボーンマス
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:58′(PK) ゴードン, 90+2′ リッチー
BOU:51′ ソランケ, 69′ セメンヨ
主審:マイケル・サリスベリー
ノッティンガム・フォレスト【16位】×ウェストハム【8位】
シャープさで圧倒したフォレストがウェストハムに完勝
降格圏が後ろに迫っているフォレスト。代表活動も一段落し、なんとかスカッドも整ってきたここから反撃に出ていきたいところである。
立ち上がりは高い位置からのプレスの掛け合いからスタート。縦に速い展開から激しいデュエルが見られる序盤戦となった。復帰戦となったアントニオはタイトなマークに苦戦。ブランクがある状態でいきなり起点として頼るのは厳しかった感がある。
10分経つと試合が落ち着く形に。バックラインは余裕を持ってボールを持つことができる。ただし、中盤センターラインでのマークは依然としてタイト。よってサイドからボールをいかに運べるかという勝負となる。
ウェストハムはクドゥスがその役を担うのだが、対面のネコ・ウィリアムスとフェリペが奮闘。加速から勝負を仕掛けるフェーズを許さず。攻める頻度はフォレストよりも多いのだが、ウェストハムはなかなかクリティカルにゴールに迫ることができない。
一方のフォレストは両サイドから深く抉ることができることがしばしば。左はハドソン=オドイ、右はエランガを追い越すネコ・ウィリアムスが存在感を示す。
そして、前半のラストプレーでフォレストは先制。中央でボールを収めながら反転したアウォニイが先制ゴールをゲット。ハーフタイムを前にリードを奪ってみせた。
後半、追いかけるウェストハムが一方的にボールを持つ展開。しかしながら、トップにアウォニイを残して他の箇所を人に当てはめる形になったフォレストに対して、ボールを動かしても隙を作ることができないままただただボールを回す展開が続く。
むしろ。奪ったら縦に早く進んでいくフェーズに専念していたフォレストの方が攻撃は有望。前線のアタッカーのフィーリングはよく、少ない機会で前進を狙うことができていた。
ウェストハムは試行錯誤を続けるが、70分にフィリップスが退場。フラストレーション優勢で感情のままにプレーした結果の警告2枚はなかなかにやるせ無いものがある。
10人になったウェストハムに対して、フォレストはオープンな状況をそのままに敵陣に攻める頻度がアップ。ボールを奪う位置もどんどん高くなり、攻め込む頻度と精度が高まっていく。
圧倒的優勢になったフォレストが試合を決めたのが後半追加タイム。右サイドのネコ・ウィリアムズがデュエルを制すると、ゴールを決めたのはハドソン=オドイ。好調なパフォーマンスをみせた2人が最後を締めてフォレストが貴重な勝ち点3を手にした。
ひとこと
ウェストハムはいかにもうまくいっていないチームのループに入ってしまった。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
ノッティンガム・フォレスト 2-0 ウェストハム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:45+5′ アウォニイ, 90+4′ ハドソン=オドイ
主審:トーマス・ブラモール
トッテナム【4位】×ウォルバーハンプトン【11位】
SB不在のトッテナムがまたしても連勝の機会を逃す
明確に調子を落としているわけではないものの、連勝がない分ブーストをかけている上位3チームからは置いていかれる形になっているトッテナム。ウルブスをホームに迎えて久しぶりの連勝を狙う一戦である。
左右にボールを動かしながらスタートしたトッテナム。アタッキングサードへの侵入は特に問題はなく、序盤からウルブスのゴール前に迫っていく。しかしながら、仕上げの部分はもう一声。主力が欠場している両SBの押し下げ→フィニッシュというパターンがないため、シューターが捕まっている状態はいつもより多かった印象である。
ビルドアップにおいてもエメルソンは頑張って絞ってはいるものの、効果的とはいえず。顔を出した後にどう動けばいいのかを非常に困惑しているのだろうなという振る舞いでポロの不在を感じさせていた。
序盤はウルブスもオープンな展開を享受。中盤は甘くなる序盤の流れを利用し、アタッカーがスピードに乗ってフィニッシュまで向かうことができていた。
試合が進むとトッテナムが一方的なボール保持に展開が移行。ウルブスは非保持で5-3-2で構える形で守備を組んで受け止める。我慢気味の展開になったが、セットプレーから先制したのはウルブス。ジョアン・ゴメスのゴールから先行する。
定点攻撃になるとやや物足りなさを感じるトッテナム。ウルブスは跳ね返しつつ、スポットでカウンターからの反撃で存在感を示していた。トッテナムの保持の時間の増加は必ずしも優位性の増加にはつながっていなかった。
それでも後半早々にトッテナムは同点ゴールをゲット。サイドから抉る形になったクルゼフスキが角度のないところからジョゼ・サを破って試合を振り出しに戻す。
後半のトッテナムは一方的な押し込む展開に。ウルブスとしては前半のように跳ね返せる機会すらない立ち上がりになる。それでも56分のようにようやくカウンターからチャンスを作ると、その7分後にはネトの独走から一気に陣地回復を図ってマイナスの折り返しをジョアン・ゴメス。注文通りのロングカウンターからのゴールを確保し、一歩前に出る。
なんとか打開したいトッテナムだが、ウルブスの5-3-2ブロックの前に打開策を見つけることができず。クロスの枚数は確保されているのだが、空中戦にフォーカスしたウルブスのDFに跳ね返される展開が続いてしまう。
クルゼフスキ、マディソンの2トップ下作戦や、3バック化することで前線の枚数を増やすアプローチを施したトッテナム。しかしながら、最後までネットを揺らすことはできず。終了間際のデイビスの決定機も枠を捉えることができなかった。
またしても連勝を逃したトッテナム。上位勢との勝ち点はまたしても開くこととなった。
ひとこと
割と主力が戻ってきたトッテナムだが、唯一いなかったSBがめっちゃ浮き彫りになった。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 1-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:46′ クルゼフスキ
WOL:42′ 63′ ジョアン・ゴメス
主審:アンソニー・テイラー
マンチェスター・シティ【2位】×チェルシー【10位】
殴ることをやめないシティから1ポイントを持ち帰る
リバプールとアーセナルは前の時間ですでに勝利。とはいえ、シティはこの試合とミッドウィークの中断分を連勝すれば首位に躍り出る。コペンハーゲン遠征後のハードな試合だが、ここはなんとしても勝利が欲しいところだろう。
立ち上がりからシティはハイプレスでチェルシーを強襲。畳み掛けるようなプレスから一気に先制点を奪いにいく。
しかしながら、チェルシーもこれに応戦。この日のチェルシーは深い位置からの反撃という形で裏抜けを作り出す点が非常に優れていた。ジャクソンをポスト役として段差を作り、フリーマンから裏にジャクソンもしくはスターリングが抜け出すシーンがそこそこな頻度で作られることとなった。
シティはサイドからオープンにクロスを上げる状況を作ることでチャンス構築。ハーランドに縦パスが入り、デ・ブライネに落とされて、裏のフォーデンに展開されたシーンなどはシンプル。ただし、チェルシーも大外の守備にはSB、そしてハーフスペースの封鎖にはエンソとカイセドが動員されているので、簡単にオープンな展開を作ることは難しい。
そのため、左右にボールを動かすことでチェルシーを揺さぶる。具体的には左右にボールを動かすことでエンソとカイセドにカバーリングを間に合わせないようにする方向性である。
この流れでチャンスを作ることができていたシティ。しかしながら30分以降はサイドを入れ替えながらの攻撃が機能せず。チェルシーはギャラガーが圧縮する形と逆サイドに展開されることは少なくなり、ボールサイドに守備者を動員できることが増えてくる。それでもチャンスを作れるシーンがあるのがシティの凄みなのだけども。
ギャラガーの働きはとても良かった。アンカーのロドリの監視に加えて、サイドの圧縮のためのスライドと機を見たCBへのプレスとあらゆる方向のタスクをこなしていた。
そして、先に挙げたカウンターの道筋からようやく先制点をゲット。ボールタッチが良好なジャクソンが自らポストをきっかけに抜け出すと、スターリングへのアシストを決めてついにリードを奪う。
迎えた後半。立ち上がりからシティは猛攻を仕掛けていく。カイセドの退場疑惑など、シティ側には選手が文句を言いたくなるような判定がちらほら。その度、シティは攻撃に怒りを込めての強シュートを連打するようになっていた。
攻撃の中心は左サイドのドク。攻め疲れないという彼の長所と単調さと相手を剥がした後のプレーの精度という彼の課題の両面が見えたのがまさにこの日の後半という感じだろう。それでもサイド攻撃におけるパスワークからクロスを上げる隙を作るのはさすが。コルウィルとディザジという粘っているチェルシーのCB陣もクロスに対して外されてしまうシーンが出てくる。ただ、この日はハーランドの決定力がイマイチでなかなかチャンスをゴールに結びつけることができない。
チェルシーは左サイドからの裏抜けカウンターという一本槍で後半は対抗。チルウェルとジャクソンという加速できる選手を軸に、なるべく少ない手数でシティの背後を強襲するプランである。リードしているという点では悪くはなかったが、当然頻度という部分では明らかに減ってしまう。
70分にチャロバーの投入で5バックにシフトするチェルシー。以降も守備的な交代を継続する。ロドリが追撃弾を決めた84分にはすでにもう一度攻撃に転じるのは難しい状況だった。
32本のシュートで殴り続けるシティだったが、最後まで勝ち越しゴールを決めることはできず。勝ち点3を詰めなかったシティはついに優勝争いのポールポジションをリバプールに明け渡すこととなった。
ひとこと
シティ、相手を殴り続けるということのスキルの高さがすごい。
試合結果
2025.2.17
プレミアリーグ 第25節
マンチェスター・シティ 1-1 チェルシー
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:84′ ロドリ
CHE:43′ スターリング
主審:アンディ・マドレー
シェフィールド・ユナイテッド【20位】×ブライトン【9位】
蛮行のアドバンテージでゴールショー
補強したはずのブレアトンは負傷してしまい、前節殊勲のアーチャーもベンチ外。補強をしたはずのポジションは補強前よりも苦しくなっているという皮肉な状態のブレイズ。
そんなブレイズは高い位置から積極的なスタート。立ち上がりはブライトンのゴールに迫るなど、非常に積極的なスタートを見せる。守備ではオールコートマンツー。ブライトンは保持からマンツーを外すためのタスクをスタートすることとなる。
ブライトンは前線のランを利用して外すトライを敢行。三笘、アディングラという2列目に加えて、3列目からはグロスが飛び出す形も使いながらブレイズのハイラインを壊しにかかる。
すると、ホルゲイトが一発退場。今季トップレベルの悪質なチャレンジは音速でOFR送りになり、10人になってしまう。
ブレイズは10人に変更。4-4-1のブロックを構築する。だが、このコンパクトなブロックは大外レーンのケアを甘くしてしまうことに。サイドからあっさりとラインを下げることを許すとセットプレーからブオナノッテが先制ゴール。
さらには直後には右サイドからの突破に三笘が合わせて最後はウェルベックが押し込むなど一気に安全圏に突入する。基本的には三笘とアディングラに対してはほぼブレイズは対応できていなかったのでいくらでも勝負できる状態だった。
ブレイズは5バックに移行。オスーラを下げる必要があったかは分からないが、左の大外を上がるランプティに対してSHのハーマーが下がる形で対応していたので、それであれば初めから5バックで整えましょうという算段なのかもしれない。
さらにはブライトンはアディングラやランプティなどサイドの守備にやや不安がある状態。マカティーやハーマーはここを突く形で突撃を繰り返すことで押し下げに成功。あわや前半終了間際にはゴールかというシーンまでこぎつけることができていた。
迎えた後半、ブライトンは4バックに移行。4-3-3をベースにグロスがSBから絞る形で攻撃を組んでいく。人数を前にかけるというコンセプトなのだろうが、さすがに右サイドは渋滞気味。高い位置を取るグロスに加えて、ファン・ヘッケやギルモアも流れてしまった分、人が密集。ブレイズの圧縮が容易になり、不要なカウンターを食らうことに。ファーガソン投入で4-4-2ベースにすることで再び広く流れるポゼッションに移行できるようになった。
すると、サイド攻撃からブライトンは仕上げにかかる。まずは3点目として左サイドの三笘が早めのクロスからオウンゴールを誘発すると、4点目は右サイドのグロスからアディングラへのアシスト。あっという間に点差を広げる。
仕上げにアディングラが少し幸運な5点目を決めて試合は終了。後半に再着火したブライトンが5得点でブラモール・レーンを制圧した。
ひとこと
今日はホルゲイトのせいにしていいです。
試合結果
2024.2.18
プレミアリーグ 第25節
シェフィールド・ユナイテッド 0-5 ブライトン
ブラモール・レーン
【得点者】
BHA:20’ ブオナノッテ, 24′ ウェルベック, 75′ ロビンソン(OG), 78′ 85′ アディングラ
主審:スチュアート・アットウェル
ルートン・タウン【17位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】
実らない決定機阻止の連打
カルト・ヒーローのマクトミネイの活躍もあり連勝をしているユナイテッド。この試合でも幸先の良い入りから早速リードを奪う。1分も経たないうちにバックラインの背後を取り、ホイルンドがあっさりとパスミスからの1on1を決めた。
ルートンからすると、ミスをしたベルが悪いのは前提ではあるが、なぜかホイルンドに走り負けて前に入られたオショーの怠慢も見逃せない。バックラインが処理をするとしても、広がってパスの選択肢になることでそこから攻撃に転じるルートは楽になったはず。オショーはそうした選択肢づくりを怠った。
ユナイテッドは勢いに乗ってあっという間に2点目。押し込む流れからガルナチョのミドルをまたしてもホイルンドが仕留めてさらにリードを奪う。ルートンは前からプレスに行きたい意思は伝わってきたが、ライン間の間延びがひどく、逆にユナイテッドの攻撃を加速させることで引き込んでしまっていた感があった。
順調なユナイテッドだが、これ以降は苦戦に見舞われる。保持から縦に速い仕掛けをベースにしているところはもちろんいいのだが、それ以外のところで試合の展開をなかなか制御することができず。チョンやモリス、オグベネといったアタッカーに簡単に前を向かせてしまい、前半のうちにモリスから反撃のゴールを受けることに。おおらかな展開でフリーダムな攻撃の撃ち合いが流れる状態で前半は流れる点の取り合いになった。
迎えた後半も大きな流れは同じ。イエローカードを受けているカゼミーロやマグワイアを下げてマクトミネイとエヴァンスを入れることは状況に対する手当ではあるが、状況を変えるための措置とは言えない。
実際にユナイテッドは交代で想定されるとおりにオープン上等のスタンス。CBをサイドのサポートに上げることで積極的に相手を殴りに行ったルートンの背後を狙っていく。
後半は非常にどちらが優勢だったかを表現するのは難しいところ。ユナイテッドの中盤に対して、バークリーとロコンガのルートンのCH陣は逆を取って運び、広いところに逃がすというフェーズを無限に繰り返しており、そこからサイドへと展開をすることはできていた。
その一方でオグベネ、ダウティーといった大外の選手たちは山なりのクロスに終始し、後半は効果的なクロスを多く上げることができず。試合直前で負傷してしまったアデバヨがいれば、こうしたクロスはもう少し効き目があったかもしれない。
ルートンのCBが攻撃で思いっきり敵陣に出てくることもあり、ユナイテッドはガルナチョやホイルンドがDFの背後でフリーで抜け出す場面もしばしば。カミンスキの鬼セーブと鬼神のようにプレスバックに励んでいたロコンガにより、何とかルートンはユナイテッドの決定機を防ぎ続ける。
しかし、そうした努力は勝ち点にはつながらず。奮闘したルートンだが大外からの攻撃に精彩を欠いてしまい、勝ち点1には届かなかった。
ひとこと
バッタバッタした後半だった。ユナイテッドからすれば3点目が取れれば十分にHTの交代策も肯定できるのだけど。
試合結果
2024.2.18
プレミアリーグ 第25節
ルートン・タウン 1-2 マンチェスター・ユナイテッド
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:14‘ モリス
Man Utd:1‘ 7’ ホイルンド
主審:デビッド・クーテ
エバートン【18位】×クリスタル・パレス【15位】
高さは正義
ロイ・ホジソンは体調不良でギブアップ。戦績的にも苦しい状態が続くクリスタル・パレスはマッカーシーを暫定監督に据えてグディソン・パークに乗り込む。
パレスの布陣はいつもと異なる3-4-3。3バックで4-3-3→ドゥクレが前に出て行って4-4-2にシフトするエバートンの守り方に対して、バックラインで枚数を確保する。ロングボールをシンプルに前に蹴っていくケースもあるが、攻め筋自体もOK。WBでSBを食いつかせて前線が裏を狙う形やそれをフリに中央を経由して逆サイドに横断するなど、序盤は前進のレパートリーを豊富に表現。新しいフォーメーションからエバートンのボックス内に侵入していく。
一方のエバートンは序盤こそ大きく左右を揺さぶりながらのボール保持を行っていたが、少しずつ直線的なロングボールにシフト。キャルバート=ルーウィンの高さと両SHの走力を活かした形から押し上げを図っていく。20分以降はパレスが撤退気味に構えたこともあり、攻撃の機会は増えて行ったが、セットプレーでのチャンス構築が中心のエバートン。放り込みは前進以上の意味合いはなかったように思える。
パレスにもセットプレーのチャンスはあったが、リチャーズはチャンスを決めきれず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半もバックラインからのロングボール合戦というダイレクトな展開になった両チーム。保持の機会が多くなって行ったのはエバートンの方だった。少し手数をかけた横断などテイストを変えたポゼッションから勝負を仕掛けていく。
前線も積極的に裏抜けを敢行するエバートン。パレスはついて行き過ぎてしまうことが逆に後手に回ってしまい、スペースを開け渡してしまうように。
しかしながら、先制したのはクリスタル・パレス。前線が根性で捻り出したスペースからアイェウがミドルを放って先制。この試合らしいダイレクトな展開から先制ゴールを決める。
反撃に出るエバートンは結局ロングボールが軸。ビハインドなのでターゲットを2枚にスイッチする形で攻勢に出る。やはりすがるものは高さである。
そして、その高さを生かす形でセットプレーから追いついたエバートン。中盤に入ったオナナの打点の高いヘディングから試合をフラットに戻す。ジョンストンはかなり粘っていたが、最後は高さに屈してしまった。
高さは正義という方向性で固まったエバートンは引き続きロングボールで壊しにいくが、最後まで決勝点を挙げることはできず。試合はタイスコアでの痛み分けで幕を閉じた。
ひとこと
高さは正義。オナナの打点は高かったー。
試合結果
2024.2.19
プレミアリーグ 第25節
エバートン 1-1 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:84′ オナナ
CRY:66′ アイェウ
主審:ポール・ティアニー