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「献身的なモラタが好転の兆しに」~2021.11.2 UEFA Champions League GS 第4節 ユベントス×ゼニト レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■サイドをどう使うか?

 第3節は終盤のクルゼフスキの一撃で何とか勝利をもぎ取ったユベントス。ホームで敗れたゼニトはグループステージ突破の可能性を残すためにも勝ち点1でも上積みが欲しい局面である。

 試合の主導権を握ったのはホームのユベントス。デ・リフト、ボヌッチ、ロカテッリの3人でビルドアップを行っていく形。もう1人のCHであるマッケニーは積極的に高い位置を取り、ビルドアップへの参加は控えめだった。

 もう1つ、この日のユベントスで特徴的だったのは前線の選手が中央に集まること。両SHのキエーザやベルナルデスキも含めて内側に絞る頻度が高く、大外はほぼSBにお任せ状態になっていた。

 ゼニトはそれに対抗してなのか3-4-3のシャドーが比較的閉じ気味なポジションを取る。したがって、サイドに常駐するのはユベントスのSBとゼニトのWBのみ。中央にわらわら人が集まる一方で、サイドは非常に手薄という陣形が出来上がっていた。

 だが、ユベントスは特にこの手薄なサイドを主体で攻略していこう!というような意識は高くなかったように見えた。サイドを積極的に活用することなく、中央の密集に突っ込んでいくトライアンドエラーを繰り返す。しかし、当然のことながら人がたくさんいる中央からの前進はハードである。

 一方のゼニトは4バックに変形しながらのビルドアップ。左のSBのカラバエフを押し上げながらのボール保持。両サイドのシャドーは攻撃においてもナローな形である。

 こちらは保持でサイドを使う機会はユベントスよりは多かったように思える。それでも大外に張る選手に対するサポートが少なく、大外か先に前進は難しかった。ユベントスはゼニトと異なり、非保持のフォーメーションの4-4-2がサイドに手薄なわけではない。したがって、ゼニトの非保持と比べてサイドで浮く選手は作るのが難しかった。

 それに加えて、ゼニト側の保持のサポートもイマイチだったように思う。サイドにヘルプしたり、ハーフスペースを抜けるように動いたりなど、もう少しサイドに顔を出し手上げられる選手がいれば、ゼニトはもう少し効率的にサイドの攻略が出来たかもしれない。

■FWの正しい使い方

 ボールを持つ頻度はユベントスの方が多かったが、前進がうまくいっていないのはどちらのチームも同じ。仕組みがどうこうというよりは単調なミスでカウンターのチャンスをつぶしてしまうことも多かったため、チャンスらしいチャンスは少ない序盤戦となった。

 そんな中で先制点を得たのはホームのユベントス。セットプレーからディバラが叩き込み少ないチャンスから一歩前に出る。しかし、前半のうちにゼニトは追いつく。こちらは非常にラッキー要素が強めのゴール。サイドの1対1の突破からボヌッチに当たったボールが高い弧を描きながらゴールに吸い込まれていくという何とも偶発的な流れで追いつくことになる。

 試合の流れとは異なる形での得点が続くこの試合。流れを引き寄せようと先に動いたのはユベントスの方だった。解禁したのはFWをサイドに流す動き。これにより中央偏重の攻撃に目途がついたユベントス。

    特にこの試合のモラタは非常に秀逸で、攻撃だけでなく守備における貢献も非常に高かった。前からのプレスだけでなく、サイドの戻りが遅れたと見るやスペースを埋めるためにプレスバックを行う。常に評価が分かれがちな選手ではあるが、この試合では献身性の高さを見せてチームを攻守にわたって助けることが出来ていた。ユベントスの2点目のPKのきっかけになったシーンもモラタのプレスバックによるカウンター対応から生まれたものだった。

    それにしてもゼニト側からするとこのPKは飲み込みにくいだろう。キエーザが倒されたシーンは非常に微妙でOFRの助言から判定が覆ってもおかしくはない場面だった。加えて、決められなかったPKの蹴り直しである。こちらはルール通りの運用ではあるものの、ファンの心情からするとぐぬぬとなってしまいそうなものである。

 このゴールをきっかけに試合は徐々にオープンに。後半のユベントスにおいてこの流れに乗れた選手が何人か。1人は当然キエーザ。EUROでも見せたドリブルの切れ味を広いスペースが生まれるようになった展開で存分に生かす。2点目の突破もさることながら、自ら沈めて見せた3点目は現代のサッカーにおいて貴重な大外から得点が取れる選手であることを証明したシーンといえるだろう。

 そして、マッケニーもこの展開にはのびのびしていた。スペースを見つけてボールを一列前に引き出すというタスクは中盤の守備が徐々にルーズになっていく終盤にかけてのゼニトに対して効くようになっていた。

 仕上げの4点目を決めたのはモラタ。ややボールが落ち着かない流れの中での得点となったが、サボらず抜け出しているところが献身性の高いこの試合のモラタらしい。最後にご褒美となるゴールを得ることが出来た。

 これまでのグループステージでの戦いぶりを見る限り、ゼニトは決してオープンな展開が苦手というわけではなかったが、この日は質でユベントスに上回られた格好。後半追加タイムにはジューバのポストを活かした追撃弾を挙げるのが精いっぱい。

 いつかのレビューでジューバはロングボールには強いが、おさまりがいいわけでも足元でのキープ力が高いわけでもないので、彼へのロングボールは陣地回復のために使うのではなく、PA内でゴールに直結する形で使うべき!といったが、まさしくアズムンへのゴールはこの形で生まれたもの。ユベントスからすると、終盤+3点リードで前線のプレスラインを下げたことにより、ゼニトの重心を上げるのを許してしまったゆえの失点だった。

 しかし、結果でいえばユベントスの完勝。グループステージ4連勝で決勝トーナメント進出を決めた。

あとがき

■あらゆる局面に対応した4連勝

 ややラッキーな部分もあったが、基本的には流れに乗りながら相手をしっかり叩いたユベントスを褒めるべき。特にこの試合ではモラタがあらゆるメガクラブで一定の評価を得る理由が見えた試合だと思う。得点から逆算できるタイプではないゆえに、どのチームでもエースを張れるわけではないが得点と異なるところで成果を上げられる。タスクワーカーとしてや、ほかにエースがいるチームならば輝ける存在である。

 チームとしてユベントスを見てみると、クローズ気味に戦う試合もオープンになって戦う試合においてもどちらに関しても結果をだしているのは好材料だ。優勝候補筆頭!というわけではないが、優勝候補たちにとっても決勝トーナメントでは当たったらめんどくさそうという印象はついたはず。不気味な存在として次のラウンドを盛り上げる存在になってほしい。

 対するゼニトは数字上では可能性を残すものの、他力本願な状況。EL行きが現実的だろうか。せめてホームでユベントス相手に勝ち点をとっておければ終盤にもうひと山作るチャンスを引き寄せることはできた。今はチェルシーを引きずり下ろすチャンスをユベントスが与えてくれることを祈ることしかできない状況である。

試合結果
2021.11.2
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第4節
ユベントス 4-2 ゼニト
ユベントス・スタジアム
【得点者】
JUV:11′ 58′(PK) ディバラ, 74′ キエーザ, 82′ モラタ
ZEN:26′ ボヌッチ(OG), 90+2′ アズムン
主審:アレハンドロ・エルナンデス

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