MENU
カテゴリー

「今年の汚れ、今年のうちに」~2021.11.3 J1 第34節 川崎フロンターレ×浦和レッズ プレビュー

明治安田生命 J1リーグ 第34節
2021.11.3
川崎フロンターレ(1位/26勝6分1敗/勝ち点84/得点70/失点21)
×
浦和レッズ(5位/17勝7分9敗/勝ち点58/得点42/失点34)
@等々力陸上競技場

目次

戦績

近年の対戦成績

図1

過去5年の対戦で川崎の8勝、浦和の3勝、引き分けは3つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の4勝、浦和の2勝、引き分けは4つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近8試合の公式戦の対戦で川崎は浦和に無敗(W5,D3)。
・30節以降のリーグでの対戦は過去に7回。いずれの試合も川崎は負けていない。
・今季のルヴァンカップではアウェイゴール差で浦和が勝ち抜けている。
・ACLで浦和が川崎を下した2017年のリーグ戦は川崎が浦和相手にシーズンダブルを達成している。

 近年の戦績は川崎が有利。直近8試合で無敗と浦和に勝ちを与えていない。特に強さを見せているのが終盤戦での対戦。30節以降の過去に7回あるが無敗。現在は川崎の5連勝中だ。初優勝した2017年の埼スタの苦しみながらのクリーンシートは、後から振り返れば優勝に向けた細い糸を必死に離さないように粘った90分だった。

 だが、今季のルヴァンカップでは浦和に悔しい逆転突破を許した川崎。2017年のACLのようにまたも悔しい2ndレグでの逆転突破を許すことになった。その2017年はリーグ戦で川崎が浦和にシーズンダブルを達成。その2試合目が先ほどの紹介した埼スタの勝利である。

 あの日と同じようにこの試合は優勝につながりうる一戦。4回目のリーグ優勝の栄冠とカップ戦のリベンジを賭けたシーズンダブル達成に選手たちは燃えているはずだ。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・鹿島戦で交代した家長昭博は問題なく起用できる見込み。

【浦和レッズ】

・明本考浩は内転筋の負傷以降、ベンチ入りを果たせていない。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・引き分け以上で優勝が決まる可能性がある。
・リーグ戦は今季最長の7連勝中。
・ホームでのリーグ戦も7連勝中。
・リーグ戦でのセットプレーの得点はここまで7。昨季(16)の半分以下。
・レアンドロ・ダミアンはリーグ戦3試合連続で得点中。
・脇坂泰斗は出場したリーグでの浦和戦は4戦全勝。

 川崎が横浜FMよりも多くの勝ち点を積んだ時点で川崎のリーグ優勝は確定。したがって、他会場の結果次第では引き分け以上でタイトルをホームで確定させることが出来る。

 ホームでのリーグ戦は現在7連勝中。今季最多を更新中だ。しかし、その間川崎はカップでのホームゲームでは引き分けを3つ喫しており、浦和はその勝ちを許さなかった3つのうちの1つである。

 セットプレーの得点は数だけ見れば減少傾向だが、ここ数試合はカップ戦も含めてセットプレーから苦しい展開を脱する機会が増加。数字とは裏腹に終盤戦の武器になりうる部分であるといえよう。

 ダミアンには来日初のリーグ戦4試合連続得点がかかっている。過去6試合出場した浦和戦で無敗、鹿島戦と並び浦和戦で5得点に絡んでいる脇坂泰斗からのセットプレーがこの試合でも打開策になる可能性は十分にあるはずだ。

【浦和レッズ】

<浦和のMatch facts>
・敗れれば今季初めてのリーグ戦でのダブルを食らうことになる。
・直近10試合のリーグ戦で1敗(W7,D2)
・直近の公式戦で敗れた7試合のうち6試合はアウェイで喫したもの。
・今季先制した公式戦は30試合で1敗のみ(W21,D8)
・キャスパー・ユンカー出場時の90分のチーム平均得点は1.61。チーム全体での同数値(1.29)を大きく上回る。
・汰木康也は横浜FC戦で今季リーグ初得点を決めて以降、5試合のリーグ戦で4得点。

 負ければ今季初のシーズンダブル。逆に、ここをしのぐことが出来れば残るダブルの危険性は横浜FMのみとなる。

 直近のリーグ戦は10戦で1敗、かつ7勝と数字だけみれば好調だが、その1敗の神戸戦が大敗だったり、あるいはルヴァンカップで敗退したりなど、浮き沈みがある内容でもある。

 苦手なアウェイだが、先制点を許しがちな川崎相手に先手を取れれば勝機は十分にあるだろう。

 『今、一番状態がいい』とリカルド・ロドリゲス監督が太鼓判を押すユンカーや、山形時代に天皇杯で川崎を下す原動力になり、目下調子を上げている汰木を軸にゴールを奪い、ACL出場権獲得への望みをつなぎたいはずだ。

展望

■フリーマンが生む不確定要素

 天皇杯にはタイトルの可能性が残されており、リーグではACL出場権の可能性がある。シーズン終盤において十分にコンペティション的なモチベーションを維持できているチームである。

 もっとも、リカルド・ロドリゲス政権1年目のシーズンであり、相手は川崎となればたとえタイトルの可能性はないとしても、この機会をどう生かすかを最大限に考えるチームだとは思うけども。

 浦和の保持の基本線は後方の2CBと2CHの4枚で3-1を形成する。CHは縦関係となりビルドアップを行う。前方は5レーンに人を1人ずつ置くというスタンス。

 ポイントなのは後方で3-1でビルドアップを成立させることが出来れば、前方の5レーンに人を1人ずつ置いても、1人余ることである。このフリーマン役が現状では江坂ということになる。

画像4

 5レーンは決まった場所を決まった人が使うとなると、守る側は非常に対応がしやすい。例えば大外をSBがやるならそれに合わせてWGが下がりましょう!とか、IHが上がってきたらそれに対して中盤がついていきましょう!とか。

 常にその場所をその選手が使うことが分かっていれば、守備側は攻撃側の選手の移動をスペースを埋めるトリガーにすればいいので簡単。守備側はWGや中盤をはじめから下げてしまうと、どうしても受ける際に重くなるけど、相手がそこを使おうとするときに限定すれば、重心が後ろに傾く機会は限定になる。

 けども、誰がどこを使うかがわかっていなければ人の移動はトリガーになりきらない。他の人が使う可能性があるからである。5レーンを6人が使うとなれば、相手からすれば誰がどこを使うか?という話に不確定要素が混ざることになる。

 江坂の役割はその不確定要素を生むことだ。もちろん、後ろが苦しければ江坂は低い位置まで降りていってサポートすればいい。ビルドアップ時の後方の人数調整は酒井か江坂の役割である。江坂はピッチのどこでも時間さえ与えられれば輝く上に、時間があるところを見つける目も優れているので、この役割はうってつけのように思う。浦和は彼に時間を与えるための後方の仕組みがまだかな?と思ったけど、そこも平野が解決してしまった。

 この浦和の江坂フリーマン制はいつか読んだらいかーさんのリカルド徳島分析に結構似ている部分がある。江坂の役割は渡井がやっていた。

 誰がどこを使うか?という不確定要素を増やすために前線の選手はレーン移動を頻繁に行う。西や明本といったMFタスクが出来る選手がいない分、直近の試合では山中や酒井が大外を使うことが多いけども、シャドーも含めて内外どこでもプレーできる選手が多い。

 こういうレーンを入れ替えた際に、入れ替えた先のレーンでちゃんとその役割ができるか?というのは重要なポイントになる。そういう意味で最も気になるのはシャドーの得点力だったりする。大外をSBに任せる機会が多い中で、内側の仕事が増えた汰木が得点力を身に付けているのは頼もしい限りだろう。

 守備においてはユンカーの有無で傾向が大きく変わる。簡単にいえば、いなければプレス+ショートカウンターモードである。川崎サポーターはルヴァンですでに体験済みである。

 小泉と江坂が仕掛けるショートカウンターモードはユンカーがいると難しい。ユンカーの有無は攻守にチームの方向性を決めるといっていいだろう。

彼がいなければCHのプレスのベクトルは前に向くことが多く、前線のプレスの誘導先をつぶすことに意識が向きやすい。一方でユンカーがいるときはWGの裏や最終ラインのカバーなどCHは後ろ向きの守備に意識が向くことが多い。

 ユンカーは攻撃面においては現状出番を得ているメンバーの中で唯一直接的に相手の最終ラインにちょっかいをかけられる存在といっていいだろう。ピッチのあらゆる場所に顔を出すタイプではないため、流動性という面では他のメンバーよりは落ちるかもしれない。だが、機動力も十分でむしろラインの駆け引きからの抜けだしは得意分野。ラインを入れ替えてでのコンビネーションも試合を増すごとに向上している感がある。

 攻撃面で奥の選択肢をもたらせるユンカーは重要なピース。ルヴァンカップでの対戦時はプレス主体の戦術的な要素以上に、体調面で状態が整っていなかった印象なので、リカルド・ロドリゲスが状態を保証する状況においてどういうスタメンを送り出すのかは非常に興味深いポイントとなる。

■ユンカーでもノーユンカーでも解決すべき課題はある

 川崎が狙いたい浦和の弱みはバックラインの人数の手薄さである。今季、序盤の浦和はバックラインに人数をかけすぎるせいで後ろに重心が重くなってしまう現状が頻発していた。

 現状は後ろの人数をおさえながら、前に人を送ることでフリーマンによる不確定要素をもたらすことができている。ただ、バックスの足元は下手ではないがやや不安があるのも事実。例えば、余裕があれば前へのフィードは蹴れるけどプレスがかかると怪しかったり。あるいは神戸のように適応が難しいピッチだとタッチ数が多くてボール回しにスピードが出なかったりする。

 SBは人数調整にこそなるが、西がいなければビルドアップを解決してくれる治療薬になるのは難しい。時間を作れる平野がつぶされてしまうと前進できるルートは意外と少ない。ユンカーが前にいればDFラインとのかけひきに出るためにロングボールを蹴るのもアリだが、競り合いながらボールを収めて味方に時間を作るタイプでもない。

 なので川崎としてはハイプレスでまずはバックラインから時間を奪うアプローチは重要。理想の展開は保持で押し下げてハイプレスで奪い取るというハーフコートゲームを実現することである。

 特にユンカーが先発した時はこのプランを狙いたい。ユンカーの場合はSHが内に絞って前線のプレスに加勢することが多いため、SBにSHの裏を使わせたいところ。特にまともにぶち当たっては勝ち目が薄い酒井を縦に動かすアプローチは欲しい。そうすればでてきた酒井の裏をマルシーニョが使うことが出来る。仮に酒井がでてこなければ数的優位の中盤を使えばいい。なので、まずは関根の裏を取り、2列目のズレを生むことが川崎の遅攻の目的になる。

画像5

 すでに述べた通り、ユンカー起用時は最終ラインのズレはCHが埋めるというのが浦和によくみられる現象。なので、相手のサイドを乱した後は川崎は空くであろうバイタルをIHで強襲したい。

 もし、ユンカーを外してプレス主体の小泉、江坂コンビで来たら、もうこれはトランジッション勝負に挑むしかない。シミッチよりもボディアングルとポジショニングで勝負できる橘田がアンカーならば、浦和相手に真っ向勝負のリベンジに受けて立てる素養はある。

 守備はとにかく浦和のバックラインにプレスをかけること。ここに時間を与えると山中が大外、ユンカーが中央を使いながらシャドーがハーフスペースをぶっ壊す柏戦の二の舞になりかねない。山中は守備面では不安があるが、攻めあがらせたときの最終局面への関与はピカイチだ。

 川崎としては押し込み、彼の持ち味を消し、天皇杯の鹿島戦に続いて家長、脇坂、山根のトライアングルで浦和の左サイドを壊したいところだ、

 江坂と小泉主体のプレスにやられたこともそうだが、SB+ユンカーのコンビの攻撃でやられたのも等々力のしんどい思い出。ユンカーが出てこようが、プレス勝負を挑まれようが、彼ら相手に克服しなければいけない部分が今季の川崎にはある。今年の汚れ、今年のうちに。川崎としては課題をきれいにして、冬を迎えたいところである。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次