Fixture
プレミアリーグ 第9節
2021.10.22
アーセナル(12位/3勝2分3敗/勝ち点11/得点7 失点12)
×
アストンビラ(13位/3勝1分4敗/勝ち点10/得点12 失点12)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
直近10試合の対戦でアーセナルの7勝、アストンビラの3勝。
アーセナルホームでの対戦
直近5年間の対戦でアーセナルの7勝、アストンビラの3勝。
Head-to-head from BBC sport
・勝てばアストンビラはアーセナル戦で59年ぶりの3連勝。それ以前の36試合の勝ち数と同じ。
・アーセナルは直近10試合のリーグにおけるエミレーツでのアストンビラ戦で4敗。これより多く敗れているのはマンチェスター・シティ(6敗)とチェルシー(5敗)だけ。
スカッド情報
【Arsenal】
・クリスタル・パレス戦のマッカーサーのタックルで負傷したブカヨ・サカは当日判断。
・その他にも2,3人アルテタがフィットネスを心配しているプレイヤーがいる様子。
【Aston villa】
・腿の怪我を負っていたレオン・ベイリーとバートランド・トラオレは復帰が濃厚。
・ウルブス戦で負傷交代したマット・キャッシュも起用可能な見込み。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
・直近6試合のホームでのリーグ戦で1敗のみ。13ポイントを得ている。
・開幕3連敗以降、リーグ戦5戦負けなし。
・負ければ2021年ホームで5敗目。ハイバリー時代の97年(6敗)に並ぶ。
・直近7試合のリーグ戦の負けはいずれも無得点。
・マンデーナイトに試合をした週に金曜日に試合をするのは87年の12/28と88年の元日以来初めて。
・8試合で7得点は86年以降最も少ない数字。
・ピエール=エメリク・オーバメヤンは2019年9月の5戦連続以降、初めてのホーム3試合連続得点のチャンス。
【Aston villa】
・金曜開催のリーグ戦は直近12試合勝利なし(D3,L9)。最後の勝利は1950年4月のチャールトン戦での4-1。
・直近8試合のアウェイでのリーグ戦は5敗。それ以前の17戦と同じ敗戦数。
・昨年の7月以来のリーグ3連敗の可能性。
・今季のリーグ戦12得点のうち、前半に記録したのは2点だけ。
・オリー・ワトキンスはアーセナル戦で昨季ビラが挙げた4得点のうち、3得点を決めている。
・エミリアーノ・マルティネスはビラ移籍以降45試合のリーグ戦で18個のクリーンシートを記録している。
予想スタメン
展望
■5-3-2採用の背景
開幕当初は4-2-3-1だったアストンビラ。しかしながらその開幕戦をその後の歩みを見るとあまり順調ではないワトフォード相手に落としたりなど、やや不安定な序盤戦になった。
そこで第4節より採用したのは5-3-2。この形が採用されたのはいくつか理由があるように思う。まず一つ目は戦力の入れ替えにまつわる部分である。今夏のビラの最も大きなトピックスは、当然グリーリッシュの退団である。生え抜き主将の移籍ということでフロントがわざわざファンに対して、この退団がどれだけ計画されたものなのか、そしてどのような策を講じたかという説明をすることになっていた。逆にいえばフロントがそれくらい準備をしていたということなのだろうけども。
グリーリッシュがいなくなってアストンビラから失われたのは、高い位置でのタメと自信を追い越す動きのコンボで相手のDFラインを下げつつ、ズレを作るというサイドの攻撃のメカニズムである。速いクロスをバチっと決める得点パターンが多かったのは、グリーリッシュがそういうボールを蹴れるからだけではない。彼がサイドでSBと対峙して止まることで、DFラインの高さをピタッと決めることができ、彼を追い越す味方やそこからのグリーリッシュのドリブルでその状況を壊し、蹴る前から最終ラインに高さのズレを作ることができるためだ。速いクロスを蹴れるだけでなく、速いクロスを入れるスペースがエリア内に存在するからである。
もしかすると、ビラは初めはグリーリッシュなしでその路線を踏襲することを目指したように思う。しかし、2列目のタレントの1人として獲得してきたブエンディアは9月の代表招集にまつわるトラブルで中断明けからベンチを温める機会が増えるように。そしてワイドの切り札として白羽の矢を立てたベイリーも負傷で出遅れ。サイドでタメを作り、速いクロスをサイドから刺すための形を踏襲するのは難しかったように思う。
さらにイングスが好調なのに加えて、ワトキンスがスタメンに復帰する状況が整うとなると2トップの採用は自然。4節目は相手がチェルシーだったこともあるし、後ろに思いフォーメーションになるのは仕方ない部分。そんな苦しい状況でくりだした5-3-2は比較的ハマった。
特筆すべき出来なのはスリーセンター。ラムジー、マッギン、ルイスの3人は非常に攻守に存在感が高い。チェルシー戦では流石に撤退優先になっていたが、それ以降の試合では相手の中盤を積極的に阻害。彼ら3人の守備への献身性の高さが5-3-2の重心を極端に後ろになることをうまく回避している。
ブエンディア、ベイリーに加えてトラオレ、エル・ガジ、ヤングなどWG系のプレイヤーが豊富なことを考えればいずれば4-2-3-1の回帰を狙っている部分はあると思う。3センターは保持が苦手なわけではないけども、やはり5-3-2だと相手を押し込んでからゆっくり攻める形の物足りなさは否めない。前節のウルブス戦は保持の機会が比較的ある試合だったけど、やはりそう感じる場面は多かった。
おそらく、4-2-3-1もどちらも使えるのが理想。ただし、現有戦力の持ち味を生かすならば5-3-2が優先というのがアストンビラの現状なのだろう。
■縦方向に引き剥がす多角的なメリット
アーセナルとしては前節の対戦相手であるクリスタル・パレス以上に厄介な相手かもしれない。3センターの組織力は彼らよりも上だろう。カウンターの精度とボール奪取力はとりわけ彼らの強みになっている。特に今季のマッギンの好調さはかなりのもの。ギャラガーに匹敵する存在感を示している。
5-3-2相手ということで定点攻撃はあまり効きにくい。アストンビラの布陣は初めからハーフスペースを封じている形なので、クリスタル・パレス戦で最も効いたと言える左ハーフスペースをラカゼットとオーバメヤンでシェアするやり方は一工夫をしなければ使えない。パレスはどちらかといえば、ハーフスペースには無頓着なチームである。5-3-2に対してどのような解決策をアルテタが用意したのかは気になるところ。
最も効くのは奥行きを使いながら攻めて行くことだろう。3センターを超えたときに、バックラインが自陣側に背走するような形になれば、アストンビラの5バックはラインが乱れやすいという特徴がある。ワトフォード戦で失点を重ねたもの、なんとなく撃ち合いに付き合ってしまったからである。
アストンビラの3センターは運動量も多く、自陣側にひきつけることができれば光は見えてくる。5バックと3センターを剥がすようなイメージである。
もう一つ、アストンビラを縦に間延びさせるような展開に持ち込みたいのは、彼らには5-3-2を維持するための前線の交代の選手が豊富ではないこと。前節のウルブス戦もだが、終盤にガス欠の様相を呈すれば、クオリティを90分維持するのは難しい。
なのでアーセナルとしてはそこまで粘れる状況を作らなければいけない。昨季のような自滅で失点するのが最悪である。苦労をさせて終盤まで勝敗がもつれる形に持っていきたい。もちろん、早めに試合を決められればそれに越したことはないけども。
そして保持では大外の崩しが問われる。特に、アーセナルのSBには時間が与えられることが想像できる。右サイドの保持で迷いが生じている感じのある冨安はもちろん、左のティアニーも初期位置が高いため、そこまでビルドアップで貢献ができているとは言い難い。アーセナルはSBのところで相手のWBと駆け引きができれば、中盤やバックスが引き出せる可能性は高まってくる。ティアにーと冨安でハーフスペースを閉じる盤石の5-3-2に風穴を開けることができれば、アーセナルは大きく勝利に近づくだろう。
したがって、保持では全体的にプレスを引きつけることへのトライが必要ということである。しかし、それには当然リスクがつきものである。アーセナルは前節、2列目にプレスで捕まる形で失点を重ねてしまっている。保持で相手を自陣に引きつけるやり方は当然こういった状況においこまれる可能性は十分あるはずだ。
しかし、今季のアーセナルは保持型のチームに大きく舵を切る決断をしたスカッドになっている。アストンビラのプレスを怖がってばかりいて、全体がやたら低い位置まで降りてきたり、無闇なロングボールを繰り返してばかりしていては明らかに成長がないし、このスカッドを組んだ意味もない。
前節、ミスをして失点に繋がったロコンガは『早く次の試合をやりたい』と言っていたが、そう言った前向きのメンタリティは頼もしい限り。早速、アーセナルはクリスタル・パレス戦での反省に向き合うことになる可能性が高い状況。チェイシングに優れている3センターに2試合連続でつまづくようならば、保持主体という看板自体に暗雲が立ち込めることは間違いない。内容面でも大きなプレッシャーがかかる試合になるだろう。