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「未知な領域にたどり着けるか」~2021.10.27 天皇杯 準々決勝 川崎フロンターレ×鹿島アントラーズ プレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

天皇杯 準々決勝
2021.10.27
川崎フロンターレ
×
鹿島アントラーズ
@等々力陸上競技場

目次

戦績

近年の対戦成績

図1

過去5年の対戦で川崎の9勝、鹿島の2勝、引き分けは5つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の5勝、鹿島の3勝、引き分けは2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・川崎は公式戦の鹿島戦において直近10戦無敗(W6,D4)。直近6試合のうち5勝している。
・今季の2回の対戦はいずれも後半追加タイムに川崎が決勝点を挙げている。
・直近8試合の等々力での試合において鹿島は全て1得点。
・ノックアウトラウンドにおける1レグ制での対戦は過去7回全て鹿島が川崎を下して勝ち進んでいる。

 近年の成績は圧倒的に川崎が優勢。公式戦は直近10試合負けていない。初めのうちは勝ち半分、引き分け半分くらいだったが直近6戦で5勝と川崎が勝つ回数がさらに増えている。

 今回試合が開催される等々力でも直近6戦5勝。戦績は川崎優位だ。クリーンシートこそないとはいえ、今季の勝ち方も含めて鹿島には少なからず苦手意識はあるはずである。

 しかし、川崎にも打ち破らなければいけない苦手意識はある。ルヴァン、天皇杯、そしてチャンピオンシップと90分で決着がつくトーナメント戦においては鹿島に過去7回挑んで全て敗北。優位とみられる川崎だが、彼らにとっても個のラウンドでの鹿島は乗り越えなければいけない壁である。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・主だった負傷者はなし。

【鹿島アントラーズ】

・犬飼智也は全体練習には復帰済みだが、直近のFC東京戦は欠場。同じく負傷のブエノも部分合流済み。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・勝てば今季初めての公式戦7連勝。
・今季の等々力での公式戦は20戦無敗。
・ホーム扱いの天皇杯は7戦連続勝ち上がり中。
・天皇杯の直近6得点はいずれも異なる選手が決めている。
・レアンドロ・ダミアンは現在公式戦25得点。あと3得点で過去2季の得点数に並ぶ。
・家長昭博が出場した鹿島戦は直近19試合負けなし(W12,D7)

 リーグ優勝に王手をかけた川崎。早ければ次節の浦和戦で今季のリーグ戦の優勝が確定する。爆発的な攻撃力を軸とした前半戦の戦い方からは変わったが、終盤戦は90分をしたたかに戦う部分で前半戦と同じレベルで勝ち点を稼いでいる。

 中でも総力戦を強いられているのは天皇杯。得意のホーム開催でも非常に苦しい戦いを強いられている。昨年以降、天皇杯で複数得点を挙げているのは三笘薫ただ一人。日替わりヒーローはこの日も出てくるだろうか。

 Round16で決勝点を挙げたダミアンはあと3点で過去在籍2年分の総得点に並ぶ。鹿島戦の相性抜群の家長と共にチームを牽引できるだろうか。

【鹿島アントラーズ】

<鹿島のMatch facts>
・勝てば2ヶ月ぶりの公式戦連勝。
・直近8試合はいずれもクリーンシートがない。
・勝ち上がった直近4回の天皇杯準々決勝はいずれも1-0での勝利。
・直近3回の天皇杯でのアウェイ扱いでの試合はいずれも敗退している。
・上田綺世は直近5試合の公式戦で5得点。
・荒木遼太郎は直近8試合の公式戦で無得点。今季最も長く得点をとっていない。

 リーグ戦ではACLの出場権争い中だが、いかんせん旗色が悪い。負けと勝ちが交互の試合が続いており、直近2カ月は公式戦の連勝はない状況。ちなみにそのローテに当てはめれば、次の試合は負ける番になる。

 天皇杯の準々決勝は直近5回中4回は突破しており相性は悪くない。突破した試合はいずれも1-0での勝利。Head-to-headでも紹介したが、等々力でも直近8試合は全て1得点という状況。ジンクスに沿えば1-0での完封狙いである。苦手なアウェイ扱いだが、払拭できるかどうか。

 波のある状況においてかわらず好調なのは上田綺世。直近5試合で5得点。今季は等々力でも得点を挙げており、いいイメージでこの試合に臨めるはず。相棒を務めることが濃厚な荒木は得点こそ遠ざかっているが、ゴールまでの道筋を整えるアシスト役としての働きは十分。2人の若武者を中心にクラブ創立30年目の節目のタイトルに向けて川崎撃破を狙ってくるだろう。

展望

■2人のチャンスメーカー→上田が最大の武器

 ホームもアウェイも劇的な決着だった今季の鹿島戦。もっとも川崎的には『劇的』の2文字で楽しい思い出に変えられるのだろうけど、鹿島側からするとそんなに耳心地のいい言葉では心の整理がつかない2試合だったに違いない。

 カシマスタジアムでの今季2回目の劇的な試合を終えた直後、天皇杯でのエクストララウンドが開催されることが決まった。川崎にとっても鹿島は天皇杯では勝ったことのない相手。鹿島は今季の雪辱に、川崎はこれまでのリベンジに闘志を燃やしているだろう。

 鹿島の戦い方は前回の対戦からほとんど変わっていない。むしろ、方向性としてはその色をより濃く突き詰めていく感じである。直線的に打ちあうスタイルを志向し、敵陣でも自陣でもゴール前のシーンが数多くみられる展開。相馬アントラーズはそんな試合運びが特徴となっている。どこが相手だろうが、相手を鹿島色の展開に染める馬力はエグい。

 一方でいわゆる『鹿島り』に代表されるようなリードした終盤の試合運びや、展開に合わせて顔を変える老獪さはすっかりなくなっていく。だからこそ、川崎はカシマスタジアムで終盤に逆転するチャンスを得られたともいえる。

 攻撃における最大の武器はゴール前の上田綺世であることに疑いの余地はない。鹿島は彼にゴール前の機会をどれだけ与えることが出来るかが大きなポイントになるし、鹿島と対戦するチームにとっては彼への供給を断てるかが大きなポイントになる。

 大きく分けると上田にボールを届ける鹿島のプランは主に3つ。ダイレクトなロングボール、サイドからのクロス、そしてカウンター。逆にCFまでクリーンに届けるというのはあまり得意ではない。その分、強度を上げて自分たちも相手も早くプレーし、相手の綻びを素早くつくという方針になっている。

 自陣からクリーンに運ぶという『例外』が存在するのは荒木がピッチにいるときである。ライン間から独力で小回りの利くターンを持っている荒木ならば、低い位置まで降りてボールを受けて前に運びながら中央をかち割り、上田に決定機を与えることが出来る。これが上田にボールを渡すことが出来る最短ルート。荒木がいるといないとでは鹿島のサッカーの選択肢は異なってくる。

 同じ供給役としてはピトゥカの存在が挙げられる。サイドや裏への配球、簡単にはボールを奪えない懐の深さ、そしてエリア内への侵入も含めて総合的な攻撃力の高いMFである。

   けれども、彼は荒木と違って自分自身でターンして前を向けるタイプではない。なのでセカンドボールを拾ったり、歩いては先に前線が作ったためを活かしたりする形で前を向いてボールをうける下準備があった方が輝ける選手。

    まずは前が頑張る。そうしてピトゥカにチャンスを供給するためのチャンスを供給するという構造になっている。供給役だけど、まずは周り次第というプレイヤーである。タイプは異なるが、フリーで前を向いてナンボ!ただし、前を向けるかは周り次第!という点は少しシミッチと似通う部分はあるかもしれない。

■高負荷のCBのパフォーマンスは…

 守備においては早い展開を志向するだけあって、縦に間延びしやすさは否めない。前線のプレスはそこまで厳しくない。おそらくこれは広い守備範囲を賄えるレオ・シルバではなく、ピトゥカを起用し攻撃性能を優先したからだろう。今までの鹿島に比べるとFW-MFの間が間延びしやすいのは特徴だ。

 したがって、保持側からするとまず裏は狙いやすいポイント。ホルダーはプレスがかかっておらず、ライン設定も強気なので裏を狙う条件は整っている。

 CBは表裏に関わらず人に厳しく当たる上に、自らのエリアを放棄して相手を捕まえにいくことも多い。横スライド、前方へのチェイス、そして裏への対応など鹿島のCBは非常に負荷が大きい。

 横スライドに関してCBが出てくる頻度が高いので、攻撃側はハーフスペースの裏抜けを行えばCBをつり出しやすい。サイドのトライアングルでの崩しはここを念頭に置きつつ壊していきたい。前回対戦時にも書いたが、家長を使ったマッチアップの優位を使えれば川崎としてはエリア内に迫ることが出来る糸口を得ることが出来る。

画像4

 直近の試合でいえば関川はやや守備面で怪しい部分がある。横スライドに出ていきすぎてしまう場面や、逆にスライドを怠ってしまいCBの間やSB-CBのギャップを空けてしまう場面もしばしば。試合が終盤になると前方への飛び込みの強引さが目立ち、入れ替わられることで大きなピンチを招くことも多い。将来性やビルドアップの資質など大器なのはわかるが、現状では負荷の多い鹿島のCBにおいて粗も見える。

 したがって犬飼が間に合うかは非常に重要である。ぶっつけでタイトルがかかるビックマッチというのはコンディション面でも難しい試合になると思うが、仮に彼が万全の状態に戻ってくることになれば先に示した守る際の鹿島の高負荷のCBタスクをこなすことはできる。出場可否や状態も含めて気になる存在であることが間違いない。

■あえて染まるのもあり

 川崎以上に鹿島の戦い方は決まっている。むしろ、この試合は川崎が鹿島の仕掛けてくるハイテンポに対してどう立ち向かうか?という部分が序盤の見どころになりそう。

 理想でいえばなだめつつ抑え込むことが出来れば最高。鹿島に鹿島色を出させないまま完封すればそれは何よりの強さの証明である。鹿島を押し下げつつハイラインでカウンターを摘めればそれが最高である。

 ただ、現実的には90分間掌の上で鹿島を支配するのは難しいだろう。どんなに川崎が優勢な試合においても、鹿島にはめんどくさい思いをさせられてきたし、試合の中では必ず鹿島ペースに持ち込まれる時間はある。どこかでオープンな形に持ち込まれることは覚悟しておくべきだろう。

 もっとも、早い展開になることは悪いことばかりではない。後半戦の川崎は遅攻だけでは攻め切るのは非現実的。家長を軸とした右サイドの崩しはもちろん鹿島相手でも武器にはなるけども、左サイドの定点攻撃は清水戦を見ても完成はまだ先。

    マルシーニョはスペースとダイナミズムで勝負したいタイプだし、連携で勝負したい宮城と長谷川はここまではマルシーニョよりも優先度が高い選択肢になってはいない。彼らが出て来たとて押しこんだ状態では崩し切れるかはわからない。

 IHへの負荷の高さはやや不安ではあるが、一番苦しい時期に比べれば選手を入れ替えながらやりくりできる分楽ではある。そういう意味ではあえて鹿島色に染まる時間帯を作るのもアリだ。リードして終盤を迎えれば山村や車屋のような信頼できるリリーフもいる。理想はなだめながら勝つことだけども、陣容が揃った状態での真っ向勝負も悪くない。

    鬼木監督が就任してから川崎は常に新しいタイトルを取り続けてきた。だけども、今季はACLの敗退で新しいタイトルはなし。そういう中で残されたタイトルに未開の部分があるとすれば、極端だった前回のシードとは異なる形での天皇杯優勝。そして天皇杯での鹿島戦での勝利である。

 新しい歴史を刻んできた鬼木フロンターレにとって2021年に新しい扉を切り拓くには、鹿島を倒しタイトルに手をかけるしかない。国内2冠という明確な目標に向けて総力戦でこのラウンドを突破したい。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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