MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 7~ 2021.10.2-10.3

目次

①マンチェスター・ユナイテッド【4位】×エバートン【5位】

画像2

■斜め成分を活かせるうちは・・・

 互いに4-2-3-1のフォーメーションでスタートした両チーム。序盤からボール保持で主導権を握ったのはマンチェスター・ユナイテッドだった。そこまで可変は激しくなく、CBとCHの4枚で低い位置からビルドアップ。サイドに大きなボールを送り、そこから人数をかけた崩しでエリアを狙うことが主なやり方である。

 サイドの崩しはひし形が基本。ブルーノ・フェルナンデスはボールサイドに絡む代わりに1トップはビルドアップ関与は免除されることが多い。この棲み分けはトップがカバーニだからこそ。クリスティアーノ・ロナウドはこの約束事の外側の人間である。

 ユナイテッドがこの試合よかったことはサイドからのクロス以外に斜めに入り込む成分を左右で用意していたこと。例えば、ルーク・ショウのフリーランとか。大外を取られたらクロスに備えればいい!と相手に割り切らせない点はいい感じ。

 この斜め成分の動きはエバートンに効く。なぜならエバートンは守備におけるCHの行動範囲が非常に広く、中央にスペースを空けてしまうことが多いから。出て来たドゥクレやアランの脇を差されるような動きは苦手なのである。

 そして実際この斜め成分に対応できずに先制点を献上する。右サイドの斜め成分担当のグリーンウッドがドゥクレの脇からすり抜けるように中央に入り込むと、ブルーノ・フェルナンデスを経由して逆サイドのマルシャルまでボールがつながる。DFラインを下げながら受けることに成功したマルシャルが先制点を叩き込む。

 しかし、ユナイテッドが盤石にし試合を運べたかというとそういうわけではない。この試合のユナイテッドはどこか対人が緩い。中盤のトランジッションの局面もドゥクレやグレイに力負けするシーンもあったし、エリア内では人数が揃っていてもマークに対する警戒が甘い時もあった。

 オープンな状況におけるエバートンの強さに脅かされ続けると、迎えた後半についに同点に。グレイのドリブルからラインを押し下げると最後はタウンゼント。完璧に打ち抜かれたミドルに対してデヘアは一歩も動くことすらできなかった。

 その後、エバートンはデイビスを投入し、4-5-1に布陣を修正。中盤の人を増やし、ユナイテッドの横スライドに対して脇を差される危険性を減らす。すると、ユナイテッドはこれまでほどはチャンスを作れなくなり試合は落ち着いた展開に。

 ロナウド、ポグバと大駒を続々と投入したユナイテッドだったが、足元へのパスが増える分、攻撃はむしろ停滞。ポグバのファウルの荒さを見ると、だいぶフラストレーションを溜めていた様子。

 勝ちきれなかったユナイテッドは2節連続で勝ちを逃すことに。他の優勝候補に比べて日程が楽なはずの序盤戦だったが、優勝に向けて弾みのついた滑り出しとは言えなくなってしまった。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 エバートン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:43‘ マルシャル
EVE:65’ タウンゼント
主審:マイケル・オリバー

②バーンリー【19位】×ノリッジ【20位】

画像5

■停滞脱するきっかけは…

 未勝利同士のチームの一戦であり、ノリッジにとっては第4節のアーセナル戦以来の19位との対戦。代表ウィーク明けを逆天王山ではじめ、逆天王山で代表ウィークを迎えるという1ヶ月になった。

 アーセナルと対戦したあの日からノリッジには残念ながら内容の向上は見られていない。4-3-3から5-3-2という守備的な布陣にシフトはしたものの効果は限定的。守備の決定的な改善には至っていない。

 対するバーンリーも同じく苦しんでいる。といっても彼らの序盤戦の苦しみは昨シーズンから2年連続。ただし、今年は昨年と違ってすでにミー、タルコウスキ、ポープの守備の3枚看板は揃っている。上がり目となりそうなアタッカーのコルネが早々に離脱してしまったのが痛い。

 試合はそんな苦しむ両チームの対戦らしい内容になってしまっていた。とりあえず中に起点を作りたいバーンリーだが、ノリッジの5-3-2はMF-DF間はコンパクトに維持。バーンリーの攻撃は固めてある中央から突っ込んでいく形になってしまう。こうなると流石のウッドでも収まらない。

 ノリッジはノリッジで重心を下げた分のツケを払うことに。狙い目となるロングカウンターは機会が減少。2トップにしたことでこれまでの4-3-3に比べて枚数も減少。開始位置が低く、枚数も少なくなってしまうと迫力も減少という三重苦だ。

 バーンリーの守備陣の攻略法は整う前に壊してしまうこと。ノリッジの攻撃陣の持ち味はロングカウンターは直線的に進み、一気にゴールまで陥れること。文字にするとノリッジの攻撃はバーンリーの守備に対して相性が良さそうなものなのだが、バーンリーの攻撃を塞ぐことを優先した結果、この相性の良さを活かせなかった形だ。

 ともにミスが多く、ゴールまで近づくことすら困難な展開。間延びした展開の中で両チームがファウルを犯し続けて、カードがやたら嵩んでいくという見に来たサポーターが後悔しそうな内容だった。

 後半になるとWBの上がりを積極的にしたノリッジを起点に徐々に試合が動き始める。といってもノリッジが優勢に立ったわけではなく、この積極的な動きをむしろバーンリーが有効利用するように。

 WBが上がったスペースから裏をとり、クロスを上げる頻度が上がった後半のバーンリー。サイドからファーへのクロスは後半特に刺さるようになっていた。ロドリゲスかマクニールが足元にボールが落ちてきた時にもう少し落ち着いていればこの試合の勝利は彼らのものだったかもしれない。

 ノリッジが終盤にクロス対応に慣れたこともあり、押し込まれた割には決定的な機会は少なかった。そこはノリッジが根性を見せた部分だとは思う。

 スコアレスに終わった逆天王山はどちらかが上昇気流に乗るための一戦というよりは、むしろ両チームの貧窮ぶりを見せつけられる内容になってしまった。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
バーンリー 0-0 ノリッジ
ターフ・ムーア
主審:ケビン・フレンド

③チェルシー【3位】×サウサンプトン【16位】

画像6

■テンポの早さで苦しめて、テンポの早さで苦しむ

 ミッドウィークのCLから大幅にメンバーを入れ替えたチェルシー。ヴェルナー、チャロバー、ロフタス=チーク、ハドソン=オドイ、チルウェルなど、今季ここまでリーグ戦では限られたプレータイムしか得ることができていないメンバーがこの試合では起用されていた。

 前線のメンバーが入れ替わったことでルカクの起用方法がどう変わるか?という部分を気にしてみていたが、あまり変わらない様子。基準点型のCFとして深さを取る役割で4-4-2に出るハイプレスの牽制役として機能していた。

 正直、チェルシー相手に4-4-2でプレスに行くというのは割と自殺行為だと思うのだが、この試合のサウサンプトンは高い位置から奪いに行くことで腹を決めていた様子。噛み合っていなくても、時間さえ奪ってしまえば確かにこの日のチェルシーの面々ならばミスは出る。シャドーにハフェルツやマウントのような優れた引き取り手がいないことは大きかったかもしれない。

 それでもチェルシーは中盤に時間を与えられた際には問題なく呼吸ができる。コバチッチは相変わらずの存在感。ここにボールが入れば、積極的に攻め上がる両WBの幅とルカクの奥行きを使いながら、サウサンプトンの守備ブロックに攻め込むことができていた。セットプレーからロフタス=チークのスラしをチャロバーが決めて先制したこともあり、チェルシーはスコアだけ見れば上々の序盤戦だった。

 だが、先制後もプレスの手を緩めないサウサンプトンにはチェルシーは引き続き手を焼く。ボール保持の際はサイドで多角形を作り、きっちりチェルシーを押し込むサウサンプトン。特に左SBのウォーカー=ピータースの縦横無尽に動きに対してはチェルシーは後手に回っていた。ゲーム勘も含めたコンディションはサウサンプトンの方が良かったように見える。

 そんな中でサウサンプトンはPK獲得。今季絶好調のリヴラメントを今季苦しんでいるチルウェルが引っ掛けてしまい、同点の機会を与えてしまう。リプレイも見るとタックルした瞬間に多くの人が頭を抱えていたスタンフォード・ブリッジの観客のリアクションが全てを物語っている感。この場面ではリヴラメントとの決闘にチルウェルは敗れてしまった。

 アップテンポなリズムを引き寄せて、コンディションの良さでチェルシーを苦しめていたサウサンプトンだったが、ここで落とし穴が。ウォード=プラウズのジョルジーニョへのタックルが一発退場と裁定されて10人で戦うことになってしまう。悪意は感じなかったが、ここまで優勢に進めてきたリズムの速さにしっぺ返しを食らってしまった感じだ。

 こうなるともうペースはチェルシーに。10人でプレスがかからなくなったサウサンプトンに対して、ヴェルナーが勝ち越しの得点を挙げる。バークリーからの大きな展開はサウサンプトンがタイトなプレスが消滅したゆえの伸び伸びとした形。10人になったことを存分に活用した得点だった。

 試合は終盤にPKのリベンジを果たしたチルウェルのゴールで完全決着。主導権を握ったリズムの速さの制御が効かなくなったサウサンプトンにとっては、途中までうまくいっていただけにダメージの大きい敗戦。しかも、ここから3試合はウォード=プラウズが不在という難局に挑むことになってしまった。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
チェルシー 3-1 サウサンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:9′ チャロバー, 84′ ヴェルナー, 89′ チルウェル
SOU:61′(PK) ウォード=プラウズ
主審:マーティン・アトキンソン

④リーズ【18位】×ワトフォード【12位】

画像7

■押し切ったワンサイドで90分間制圧

 立ち上がりから非常にワンサイドな展開だった。試合の主導権を終始握ったのはホームのリーズの方。普段の4-1-4-1ではなく、4-2-3-1に変更してリーズにかみ合わせるように調整してきたワトフォードを一蹴したといいっていいだろう。リーズの左右のCBの運びはワトフォードの前線の守備を揺さぶったし、ここからずれを作って前進することはリーズにとっては難しくなかった。

 ワトフォードが致命的だったのは前線の守備がハマり切らなかったことではなく、むしろバックスの対応の方だろう。リーズのロングボールは人ではなくスペースに出されるのが特徴。特にこの日欠場のバンフォード以外の選手が受けるときはよりその傾向が強まる。

 ワトフォードはこのロングボールに対する警戒度が薄かった。スペースに流れる動きについていく動きが緩慢。CFのロドリゴと、WGのラフィーニャの2人が主に移動が多いキーマンなのだが、この2人に対する最終ラインの対応が甘い。

 特に最重要人物といってもいいラフィーニャとマッチアップするローズは下がるのをやめてしまいがち。WGなの?ってくらい攻め残る。なんでだよ。遅れながらホルダーの押し下げに対して、ラインを下げていくワトフォードの最終ライン。だが、リーズは押し下げたことで生まれたスペースに、IHとSBが後方の援軍が到着。厚みのある攻撃でワトフォードを脅かす。

 先制点こそセットプレーからのジョレンテのゴールだったが、流れの中からの得点機会が山のようにあったリーズ。その1点以外、流れの中で得点が入らなかったのが不思議なくらいである。

 ワトフォードの前進もなかなかに苦難の連続。CBが運べないため、リーズはここをロドリゴに任せて後方から無理にプレスに行かない。その分、中盤の守備のマッチアップ相手をきっちり捕まえることでワトフォードの中盤に前を向かせない。そして奪いきる。

 ワトフォードのショートパスからの組み立てはむしろリーズのショートカウンターの機会に。かといってロングボールに逃げても前線に収まる選手はいない。終盤こそ、ややリーズの息切れに助けられた感もあり息を吹き返してはいたが、試合の流れで見れば明らかに完敗だろう。

 加えて、キングやシエルラルタなどセンターラインに負傷者が続出。踏んだり蹴ったりの一戦となってしまった。開幕戦からのしりすぼみの内容を見れば監督解任も致し方ないだろう。

 一方のリーズは内容が伴った形で嬉しい今季初勝利。終盤こそ、メリエのクロス対応にやや危うい部分はあったが、バンフォード抜きでこれだけやれたのは大いに自信になるはず。中断明けから復調を見せてほしいところだが。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
リーズ 1-0 ワトフォード
エランド・ロード
【得点者】
LEE:18‘ ジョレンテ
主審:シモン・フーパー

⑤ウォルバーハンプトン【14位】×ニューカッスル【17位】

画像1

■多角的に攻めるウルブスが優勢を勝利に結びつける

 カウンターパンチの撃ち合いかと思った試合だったが、試合はウルブスの保持の時間が長く進むことになった。プレスのラインがそこまで高くなく、特にWGがリトリートの意識が強いニューカッスルに対してウルブスは3CB+CHの片方が降りてくる形で安定して保持を進める。

 もっとも、ボールを持たれることに関してはニューカッスルにとっては抵抗がないことだろう。いざとなればサン=マクシマンを軸としたカウンターのワンパンチで倒せるし、カウンターの機会さえあればニューカッスルには十分チャンスはある。

 しかしながら、ウルブスの保持にニューカッスルはうまく対応できていない様子だった。ウルブスの保持にうまく対応できるかどうかは2CHのサイドチェンジを阻害しつつ、スムーズに左右に振られないことが重要。だが、ニューカッスルのIHはウルブスのCHに引っ張られてしまうことで徐々に中盤後方のスペースが空くように。ヒチャン、ヒメネスなど前線の選手がライン間で簡単に受けられるようになった。

 ニューカッスルのIHが作るギャップを活かして縦に進めるウルブス。浮いたライン間から裏に抜けだしたファン・ヒチャンから優勢に進めた展開に沿って先制点を得る。その後もチャンスを作るのはウルブス。再びヒチャンの抜けだしから今度はトリンコン。だが、これはクロスバーに阻まれる。

 ニューカッスルは保持の局面ではU字ポゼッションに終始。なかなか相手のエリア内に迫れない状況で苦しむ。それでもサン=マクシマンはさすが。トリンコンのチャンス逸から、やや両チームとも落ち着かないふわふわした展開が続くと、ボールを受けたサン=マクシマンはドリブルをスタート。横ドリブルを噛ませて相手のDFラインを止めてから、ボールを裏に送るパスは新しいレパートリーが開けた感じだった。その流れからヘンドリックがミドルを突きさして同点にする。

 しかし、試合の大局は後半も変わらずウルブスが有利。保持でも非保持でも落ち着いた展開になるとウルブスにペースが流れてしまう。ウルブスは前線のライン間を使う動きは引き続き使いつつ、徐々に左右に振りながら薄いサイドを作りながらの攻撃も出てくるようになった。

 すると、追加点をとったのは再びファン・ヒチャン。初得点以降順調に得点を重ねていくアジア人のストライカーがチームをもう一度前に押し出す。

 最終盤は受けに回ってしまったウルブス。ファウルが多く、不用意なセットプレーのチャンスを与えた部分があったのは気になるが、最後までニューカッスルにスムーズに攻め落とすことを許さなかった。サン=マクシマン以外は完璧に封じたウルブスがニューカッスルに競り勝った。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
ウォルバーハンプトン 2-1 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:20‘ 58’ ファン・ヒチャン
NEW:41‘ ヘンドリック
主審:グラハム・スコット

⑥ブライトン【6位】×アーセナル【10位】

画像3

■負傷者の手当てに奔走

レビューはこちら。

 ノースロンドンダービーを制し、一気に上昇気流に乗りたいアーセナルと勝てば首位というM23ダービーで引き分けてしまい、勝てば順位という絶好の機会を逃してしまったブライトンの一戦。雌雄を分けるダービーを越えた直後の両チームの対戦である。

 前節から形を変えたのはブライトン。5-2-3から5-3-2型のフォーメーションに変更してこの一戦に臨む。狙いとしては攻守にビスマの不在を補うためだろう。顕著だったのは守備の修正で、中盤3枚をかみ合わせる形で構える。

 今年のブライトンは高い位置からのプレッシングにトライしていたのだが、広範囲をカバーできるビスマの欠場以降はプレッシングの強度を据え置きに。だが、この日はアーセナルの中盤に枚数を合わせて高い位置からのプレッシングに再度トライする。

 このプレッシングの成否は微妙なところ。アーセナルの保持を阻害できたといえば阻害出来てはいたのだが、後方が広い範囲をカバーしなければいけない状況で受けるとやはり弱みが出る。

PKを与えた前節と同様にやはりアキレス腱になっていたのは左サイド。カバーの意識が薄いククレジャとスピードが足りないバーンのコンビはサカに好き放題やられており、少ない攻撃機会ながらも決定的なダメージを与えられてもおかしくなかった。収支としてプラスかどうかは微妙なところだ。やはり、前に出るなら中盤までで攻撃は食い止めたい。そのためにはビスマは欲しい。

 攻撃面では中央を経由できなかった前節からの修正を狙いたいところ。真ん中からの前進は前節ほどは消極的ではなかったものの、今節もククレジャへの偏重はそこまで改善せず。ただ、この試合のアーセナルは大外に一度つけることでSBをつり出すことが難しくなかったので、そのSBの裏をIHやFWがつきやすい5-3-2は悪くなかったかもしれない。

 修正するために変更したのがブライトンならば、ジャカの負傷で修正せざるを得なかったのがアーセナルである。そのままリプレイスとして入ったロコンガは積極的に左サイドに流れてティアニーを押し上げる形で起用。

 しかし、相手のズレを狙ったこの形はブライトン側のマンマークでついてくる作戦によって不発。中盤が空洞化したためにバックスが無理なミドルパスを多用するせいで、ボールをひっかけ発動した相手のカウンターをスカスカな中盤で受けなければいけないという悪循環に陥っていた。

得点の機会はなくはなかったが、仕組みの部分ではブライトンに上回られたアーセナル。一方のブライトンも修正の成果は見られたものの、攻守のクオリティの詰めの甘さが垣間見える。ビスマだけでなくウェルベックの不在も痛かった。

 ブライトンの視点から見ても、アーセナルの視点から見てもこの相手ならもっとやれた気がするという消化不良の部分が残る試合だった。

試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
ブライトン 0-0 アーセナル
アメリカンエキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:ジョナサン・モス

⑦クリスタル・パレス【15位】×レスター【13位】

画像4

■半年あれば世界は変わる

 立ち上がりのセットプレーにこそ危うさはあったクリスタルパレスだが、序盤からペースを握ったのは彼ら。すっかりおなじみになったヴィエラ式の4-3-3がレスターの4-4-2を完全に振り回していた。

 ヴィエラになってから取り組んでいる広く広くのビルドアップにレスターはほぼ対応できず。GK、CB、アンカーの4枚に対してレスターの2トップはタジタジ。後方のCHがプレスのサポートに出てくると、そのスペースにクリスタル・パレスのIHが入り込み前進していくというメカニズム。

 レスターのバックスが押し上げきれないこともあり、間延びした中盤をクリスタルパレスが攻略。敵陣に押し込んでいく。一方のレスターはなかなかボールを前進させられず。普段よりもCBが幅を取り、2トップとともに連携しながらサイドでバーンズとルックマンの周りにサポートの動きをつけたかったのかもしれないけども。だが、そもそも押し上げる機会が少なく、あまり狙い通りにはならなかった。

 しかし、先制したのはレスター。ハマっていなかったプレスが前触れなく得点になるのだからサッカーはすごい。イヘアナチョがアンデルセンにかけたプレスから独走で先制する。これで勢いに乗るレスター。プレスを徐々にはめて前に出てくるように。

 引っ掛けてしまえばレスターの2トップは強い。ショートカウンター用の選択肢を多く準備できる。その強さを見せつけたのが2点目。開いたヴァーディだけではなくイヘアナチョという選択肢も準備することができた。そこまで至らなかったレスターが得点という特効薬でプレスが引っかかるようになり、2トップの良さが出る展開になったイメージだ。

 パレスは保持の文化がないチームゆえの戸惑いという感じ。設計が失敗しているわけではないんだけど、1つ大きなミスが出ると少しずつ判断が遅くなったり、ポジションが後ろに寄ったりしてしまいバランスが変わってしまう感じ。

 それでも後半頭からはパレスは修正。再び攻勢に出る。活躍したのは途中交代のオリーゼ。左で作って右で仕留める形でクロスを叩き込み、追い風を吹かせる。同点ゴールを決めたのも同じく交代選手。シュラップは投入直後のプレーで貴重な同点弾を早速決めて見せた。

 プレスがかからずズルズル位置が下がってしまっていたため、ボールを持って試合を落ち着かせようとマディソンを投入した矢先の同点になったレスター。もはやもう一度攻勢に出る元気はない。レスター、メンバーを代えずにメソッドの変化をつけるのが苦手になったように思う。前半の4-4-2はかなり配置で殴られた印象だけど、手の打ちようがなかった感じ。

 後半に再びラインを下げることになったり、終盤は引き分けやむなしの姿勢も見えたり。試合を決めきれないパレスが保持でレスターを押し込むという構図も含めて両チームの今季の立ち位置の変化を感じるような試合だった。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
クリスタル・パレス 2-2 レスター
セルハースト・パーク
【得点者】
CRE:61′ オリーゼ, 72′ シュラップ
LEI:31′ イヘアナチョ, 37′ ヴァーディ
主審:アンソニー・テイラー

⑧トッテナム【11位】×アストンビラ【8位】

画像8

■パワーバランスの変化の兆し

 ノースロンドンダービーの完敗からリカバリーの一戦となるトッテナム。3連敗という苦しい状況で迎えるのは前節オールド・トラフォードで勝利を挙げたアストンビラである。

 トッテナムはメンバーこそ大幅に入れ替えなかったものの、フォーメーションを4-2-3-1に変更。極端な中央偏重から中央とサイドにバランスよく人員を配置する形に変更した。フォーメーションの変更が効いたのか、それとも単にホイビュアとスキップの併用が効いたのかは微妙なところだが、守備が前節よりも落ち着いたのは確かだろう。

 しかしながら、攻撃における手詰まり感は相変わらず。アストンビラは5-3-2だが、この日は前から必死にプレッシングするスタイル。アストンビラのWBが前に出ていき、SBから時間を奪うことで、トッテナムの後方は出しどころがなくなってしまう。

 苦し紛れのケインもこの日は全く背負えず。カンファレンスリーグでは得点を決めたようだが、プレミアで劣勢時の攻撃の起点となれるほどは復調していないようだ。アストンビラのCBの出足の良さもトッテナムの前線を苦しめ続けた。

 そんなときに頼りになったのはソン。裏抜けとPA内の斜めの走りこみの組み合わせでアストンビラの守備網に風穴を空ける。アストンビラのプレスが不十分で、トッテナムが高い位置までボールを持つことが出来、敵陣まで押し込むことが出来た際は、ソンの動き出しに合わせてPA内に侵入する。

 先制点はそのソンの裏抜けで奥行きを作る形からスペースの空いたバイタルからホイビュアがミドルを打ち抜き、トッテナムが先制する。

 一方のアストンビラはプレスまではハマるものの、そこから先の一手でゴールに迫るところの詰めの甘さが目立つ。時間と共に背負ってヨシ、裏に抜けて良しのマッギンの存在感が増えてくる。

 フォーメーションを変えたとはいえ、トッテナムの4-2-3-1は中央もサイドもバランスよく賄える形のはずなのだが、ケインとエンドンベレの1stDF部隊がろくに制限をかけないので、ホイビュアとスキップの負担は時間を追うごとに増えていった。

 真ん中に起点を作ることで徐々に攻撃の機会を得るアストンビラ。得点はワトキンスとラムジーが中央でねばったところから。ラムジーのケアにロメロが出ていった分、中央で空いたスペースに入り込んだワトキンスが同点ゴールを決める。

 だが、この試合を決めたのはソン。左サイドからドリブルで裏をとり、再度ラインを押し下げると最後はターゲットのオウンゴールを誘発するクロス。後ろでルーカスでいたこともあり、ターゲットはイチかバチかでクリアするしか手段がなかったシーンである。今のトッテナムの中心はケインではなくソンかもしれない。

 中盤戦以降はCHも含めた6人で必死にビラの攻撃を押し返したトッテナム。PAの人垣で最後の最後までアストンビラの攻撃を体を張ってしのぎ、連敗を3で止めることに成功した。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
トッテナム 2-1 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:27’ ホイビュア, 71‘ ターゲット(OG)
AVL:67’ ワトキンス
主審:クリス・カバナフ

⑨ウェストハム【7位】×ブレントフォード【9位】

画像9

■またしても終盤の大仕事で決着したダークホース対決

 昨シーズンに続いていぶし銀枠として堅実な成績を残して一つ格が上のクラブになっている感のあるウェストハムと開幕からビッククラブ相手にダイナミックな試合で今年の台風の目枠であるブレントフォードの一戦。好調な両チーム同士の非常に楽しみな試合である。

 意外にも試合は非常にワンサイドな展開になった。序盤は一方的なブレントフォードペース。高い位置からのボール回収とPA内へのクロスの枚数の掛け方でウェストハムを圧倒する。

 ブレントフォードは非常に内側での楔を使った前進がスムーズになってきた。ポストと受け手の関係が整理されており、少ないタッチで素早い方向転換が可能に。ブレントフォードは開幕時のプレースタイルから徐々にできることを増やす方向にチャレンジしている感じが非常に好感が持てる。

 開幕した時は2トップへのロングボールの一辺倒からの前進が目立っていたけど、今はグラウンダーの楔を付けながらポストを生かして前進することができる。こういうチームは見ていて積み重ねがあるから楽しい。チームの核であるトニーはその代表例だろう。中央にどしっと構えるだけでなく、サイドに流れながらのアシストもお手の物。多くの役割をこなすことがバッチリ板についてきた。

 そんな流れの中でこちらもすでにプレミア級であることを証明しつつあるムベウモのゴールでブレントフォードが先制。そのペースのまま前半を飲み込んで押し切る。

 しかし、前半の途中から徐々に圧力を高めてきたウェストハム。中盤のプレスの強度を高めてショートカウンターを発動する回数が徐々に増えていく。ブレントフォードの中盤はこれに伴ってラインを下げたため、セカンドボールの主導権はウェストハムに移っていく。

 後半、左で作って右サイドの選手がPA内になだれ込む形でチャンスを作るウェストハム。手こずりはしたが80分にボーウェンがようやくこの形から同点弾を叩き込む。

 だが、試合はまだ終わらない。またしても終盤に試合を動かしたのはブレントフォード。そしてリバプール戦と同じく決めたのはウィサ。後半ラストプレーでロンドンスタジアムの観客を黙らせたブレントフォードがまたしても大仕事。土壇場で勝ち点3を獲得し、ダークホース対決を制した。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
ウェストハム 1-2 ブレントフォード
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:80‘ ボーウェン
BRE:20‘ ムベウモ, 90+4’ ウィサ
主審:ピーター・バンクス

⑩リバプール【1位】×マンチェスター・シティ【2位】

画像10

■SBをめぐる攻防で両チームに残る確かな手応え

  代表ウィーク突入前のトリを飾るのは首位を争う両チームによる大一番。近年はもはや英国版クラシコというくらいの重厚さを見せているクロップ×グアルディオラの対決である。

 まず、目についたのはシティの配置だ。ベルナルドを左IHに置き、フォーデンがWG、グリーリッシュがCFという形でスタートする。

 プレス時のWGの外切り志向が強いリバプールに対して、シティが狙ったのはWG-SB-IHのトライアングルのスペース。リバプールは当然本気モードなので、ヘンダーソンがお留守にすればサラーも戻るくらいの胆力を見せてはいたが、シティはSBを務めるミルナーを引き出すことができればリバプールの最終ラインは横にずらすことができていた。

 シティはこの左サイドでのフリーランの手段が豊富。グリーリッシュとフォーデンはどちらが裏に抜けてもそのまま折り返しのクロスを上げることができる。ミルナーはどちらかといえば、フォーデンに手を焼いていたように見えた。

    割と縦方向の裏抜けはシティは意識して連打していたが、リバプールがそこを消しきれなかったのはベルナルドが内側で受ける準備をしているから。縦に立てば横に進まれてしまうし、そもそも外切りプレスを交わされてここまで来ているので同サイドのカバーはヘンダーソンで手一杯。シティはこの形から最終ラインにズレを作っていく。

 一方のリバプールの保持で武器になっていたのはマティプの持ち上がり。アンカーをケアする気持ちが強いトップのグリーリッシュはそこまでCBにプレスをかけず。この恩恵を受けたマティプが中央から持ち上がり、リバプールの配球の中心になっていた。

 シティとしては20分に2トップに移行する形でこれを修正。リバプールのバックスへのプレスをかけると、今度は長いボールでサイド攻略に挑む形で移行するリバプールだった。

 シティがミルナー前のスペースを狙い撃ちしたように、この日の両チームの狙い目としたのはSBだった。サラーが起点となりシティを壊した2点はいずれもカンセロを縦につんざくような形。1点目はマネとジョッタのフリーランのコースが非常に素晴らしかった。2点目のサラーの得点には特にいうことももはやない。

 シティは前半と異なるアプローチでサイド攻略に。まず右サイドでリバプールのSBと正対し、足止めをしたところで横断をして相手を横に揺さぶる。1点目はジェズスの横へのドリブルが効いていたし、2点目は後半に存在感を増したデ・ブライネが頻発していた左サイドへの一発のサイドチェンジからである。そしてもう一度デ・ブライネ。終わってみれば大仕事。

 試合を通して目立っていたわけではないけども、終わってみればサラーとデ・ブライネというのは千両役者感がえぐい。両チームとも勝ち点1という結果は満足ではないだろうが、サイドを巡るハイレベルな攻防の先に大駒が仕事をするというヒリヒリした試合を演じられた手応えは確かに残っているはずだ。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
リバプール 2-2 マンチェスター・シティ
アンフィールド
【得点者】
LIV:59′ マネ, 76’ サラー
Man City:69′ フォーデン, 81′ デ・ブライネ
主審:ポール・ティアニー

  おしまいじゃ!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次