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「全員じゃないと意味がない」~2024.2.20 AFC Champions League Round 16 2nd leg 川崎フロンターレ×山東泰山 マッチレビュー

目次

展開に振り回された川崎が逆転突破を許す

 1st legから互いに2枚を入れ替えた両チーム。川崎はバックスの左側のユニットを2枚入れ替え。山東は38番の選手を右のWGに入れてバックラインに27番を投入。5番を中盤に上げること4-2-3-1をキープする選択を行なった。

 立ち上がりの落ち着かない展開を過ぎると試合は川崎のボール保持がベースになる。CB陣が開きながらボールを動かしていく。山東のプレスは4-4-2からのアンカーの受け渡し形。1st legよりは慎重なプレス配置だったといっていいだろう。

 というわけで川崎のビルドアップは2人のCBとGKのパス交換をきっちり活用すれば前からのプレス隊を外せる流れではあった。丸山がこの点で安定感を見せたのは収穫だろう。浮いているCBから降りてくる前線にパスをつけるというのが序盤の流れ、中盤は後ろにボールを受けにいくというよりも前線の落としを受けることで繋がろうという意識が高かった。

 しかしながら、ここでミスが出る。大南としては外に開く佐々木につけたかったところだろうが、連携が合わなかったのだろう。だが、その次の選択が強引すぎた。同サイドの1つ奥の家長につける選択をするか、相手にボールを隠す形でターンし、多少パスが弱くなってもソンリョンに蹴っ飛ばしてもらう選択肢を取るべきだった。

 大南のミスから川崎はトータルスコアをタイに戻される。山東はこれ以降も背負いながらボールを受けたがる橘田とSBにハメパスをつけることが多い大南に狙いを絞りながらプレスを仕掛けていく。

 この状況を見かねて家長がラインダウン。左の中盤に落ちた家長にボールを預けることで川崎の保持は落ち着くことに。家長の出張は流れによって評価が違うと思うけども、今日の展開であれば「仕方がない」だろう。この移動によって、川崎の攻撃は左サイドに偏重するようになる。

 押し込めるようになった川崎に再びミスの手が迫る。トリックプレーのミスなのかは知らないが、脇坂のよくわからないキックが相手に引っかかってカウンター。橘田の一瞬のためらい(間合いをミスればDOGSOなのでためらう気持ちはわかる)からカウンターの継続を許すと、カザイシュヴィリのおしゃれなアウトから山東は追加点。トータルスコアではリードを得る。

 それでも左サイド偏重の恩恵を受けた山本がライン間で浮くことで川崎は主導権を取り返す。山本を起点に三浦とマルシーニョが無限に抜け出しを続ける左サイドに山東は後手に回る。そして、ボール奪取からフィニッシュまでを一気にやり切った三浦の大仕事から川崎はトータルスコアをフラットに戻す。

 以降も左サイドから自在に攻撃を続ける川崎が一方的に押し込む展開に。橘田→マルシーニョという左サイドの裏抜けが効いたのかのようなラインギャップから生まれた決定機もあるなど、川崎が殴り続ける。それでもGKのファインセーブで山東はトータルスコアのリードを許さないままハーフタイムを迎える。

 後半に山東はフェルナンジーニョとパトを投入。前進はあくまでロングボールベースだった前半からモデルチェンジ。サイドを幅広く使いながら起点を作る形にシフト。前線に他の外国籍選手が入ったために、カザイシュヴィリが低い位置にボールを受けに降りてくる頻度を上げて保持の安定化を図っていく。川崎からすれば一方的に押し込まれた中国ラウンドでのリベンジができるかが問われる展開となる。

 今回の川崎は保持をベースに少しずつ押し返しに成功。特にプレスが強化されたわけではないので、根性を見せれば前半のようなプレス回避は十分に可能だった。そして、右サイドの突破からトータルスコアで勝ち越しとなるゴールをゲット。これで再び川崎が勝ち抜けの権利を得る。

 後方にスペースを開けながら勝負に出てくる山東。川崎はマルシーニョとエリソンを軸に背後を狙いながらクリティカルなチャンスから追加点を狙う展開に。その形自体は悪くはなかったが、なんとなく前線がプレスにかかっていた感があった。少なくともリードをしているわけでエリソンやマルシーニョも含めてレイト気味な強引なタックルを連発していたのは怪しさ満点だったと言えるだろう。

 そして、前線のプレスが外されたところから川崎は失点。エリソンはマルシーニョの穴を埋める形だったとして受け入れられるが、強引な家長の外切りプレスはシチュエーションを考えれば明らかに不要なものだった。シュート自体はスーパーだが、自分たちが展開に合わないプレーを繰り返してしまった帰結以外の何者でもない。

 川崎は3枚交代から4-2-3-1に移行。縦に間延びした状態を受け入れる方向性で対抗する。だが、これは前と後ろが乖離してしまいあまり機能せず。4-2-3-1への移行を昨季に受け入れることができたのは中盤の3人の役割に対して交代選手が均質的なプレーを期待できないからであり、今季とは少し事情が違う部分。そこをすっ飛ばして縦ポンに移行したのは個人的には腑に落ちない部分もある。それでも4-2-3-1で前後分断を受け入れるのであれば、中盤の底にミドルレンジのパスのあるゼ・ヒカルドを入れる賭けには出ても良かったかもしれない。

 川崎にチャンスがないわけではなかったが、より押し込まれる機会が増えたのはボールを早く前に送る構造ゆえの副産物。その結果、縦パスを引っ掛けてしまった流れからのCKで最後はジャジソンがゴールをゲット。試合は山東が逆転での突破を決めて、川崎の23-24シーズンのACLは幕を閉じた。

あとがき

 負けたことが全ての日なんだから、誰が良かったとかは意味があるけども意味はない。全員が負けちゃダメな日に負けてしまったことに責任の帰属を負えないチームはどうせまた負けます。みんなのせいで負けました。次はみんなのおかげで勝てたと思えるように精進しましょう。お疲れ様でした。

試合結果

2024.2.20
AFC Champions League
Round 16 2nd leg
川崎フロンターレ 2-4 山東泰山
等々力陸上競技場
【得点者】
川崎:30′ 三浦颯太, 59′ エリソン
山東泰山:8′ 73′ クリサン, 25′ 高准翼, 90+7′ ジャジソン
主審:アハマド・アルアリ

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