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「勤勉さを利用する」~2024.3.17 J1 第4節 鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ プレビュー

目次

Fixture

明治安田 J1リーグ 第4節
2024.3.17
鹿島アントラーズ(8位/1勝1分1敗/勝ち点4/得点4/失点2)
×
川崎フロンターレ(14位/1勝0分2敗/勝ち点3/得点6/失点7)
@県立カシマサッカースタジアム

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の対戦で川崎は11勝、引き分けが3つ。

鹿島ホームでの戦績

直近10戦で川崎の7勝、引き分けが3つ。

Head-to-head

Head-to-head
  • 直近15試合の公式戦の鹿島戦で川崎は無敗(W11,D4)。
    • 現在7連勝中。
  • リーグ戦において鹿島は16試合連続で川崎に勝てていない。
    • 2015年8月が最後の勝利。
  • カシマスタジアムでのリーグ戦において川崎は鹿島に9戦無敗(W7,D2)。
  • 川崎がカシマスタジアムでのリーグ戦で最後に無得点に終わったのは2005年。

スカッド情報

鹿島アントラーズ
  • 柴崎岳は負傷離脱が続いている。
  • 知念慶、関川郁万は前節メンバー外。
川崎フロンターレ
  • ベンチ外が続いている大島僚太、ジェジエウ、宮城天はグラウンドでの練習を再開。
  • 車屋紳太郎は左膝外側半月板損傷で離脱中。
  • エリソンは前節負傷でベンチ外。

予想スタメン

Match facts

鹿島アントラーズ
  • 昨季から数えてリーグ戦は10戦で2勝のみ(D4,L4)
  • ここまでセットプレーから2得点を挙げている。複数得点を記録しているのは他に湘南(3)だけ
  • 昨季のリーグ戦14勝の内、10勝がクリーンシート。
    • 今年の名古屋戦もクリーンシート。
  • シュートが枠内をとらえる確率は名古屋に次いで低い18.9%だが、枠内に飛んだシュートの57%が得点につながっておりリーグで最も高い。
  • 知念慶は直近2年のカシマスタジアムにおける鹿島×川崎でいずれも得点を挙げている。
    • 2022年は川崎所属、2023年は鹿島所属。
  • ランコ・ポポヴィッチは川崎相手に5戦3勝。勝利した3試合はいずれもクリーンシート。
川崎フロンターレ
  • 磐田と並びリーグ最多失点。
  • シュートの内の19%が失点に繋がっており、リーグワーストの数字。
  • 今季ここまで全てのリーグ戦で先制点を奪われている。
  • リーグ戦3連敗になれば昨季8月以来のこと。
    • この時もホーム連敗の後にアウェイで3敗目を喫している。
  • 等々力以外のスタジアムで開催された公式戦は直近9戦無敗(W6,D3)
  • 家長昭博は直近23試合の出場した鹿島戦で無敗(W16,D7)

予習

第1節 名古屋戦

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第3節 町田戦

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展望

中心となるロングボールのマイナーチェンジ

 開幕3戦はここまで1勝2敗。川崎は例年エンジンがかかるのが遅いチームではある。ただ、ここ数年は序盤戦に上位勢が固まっていたことを考えれば、今季の恵まれた相手に対する戦いぶりは内容的にも結果的にもかなり悪い立ち上がりである。

 今節の相手は鹿島。昨季はあらゆるお得意様に連勝記録を止められてしまうという川崎にとっては屈辱的なシーズンになったが、鹿島戦ではシーズンダブルを達成。いわば川崎にとって鹿島は残された最後のお得意様といってもいい存在だ。

 今季の鹿島はストーブリーグの出遅れが目立つスタートとなった。監督の選定の遅れ、メディカルチェックでの不具合による補強失敗などシーズン開幕前の段階ですでにバタバタ感がみられていた。

 そうした中で就任したのはJリーグ経験十分のポポヴィッチ。正直、レビューをきっちり書き始める前の時代の人なので、なんとなくボヤっとしたイメージしか持っていない。ワンツーとかメンバー固定といったキーワードがいくつかあるタイプの指揮官である。

    ワンツーに関してはこのチームにあまり落とし込まれている感じはしない。長谷川アーリアジャスールがいないせいなのかはわからない。

 一方でメンバー固定に関してはほんのり香りがしてきた。新指揮官となればこの段階でのメンバー予想はかなり困難なイメージだけども、鹿島のスタメンは結構想像がつく。早川、濃野、関川、植田、安西、樋口、知念、佐野、仲間、チャヴリッチ、鈴木の11人がすっと思い浮かぶ。

 知念と関川は前節メンバー外だったが、メディアでの川崎戦のメンバー予想には名を連ねていたのでおそらくは起用可能なのだろう。変更点があるとしたら右のSBの濃野がかなり狙い撃ちされていたので、須貝を入れる可能性もあるが、マルシーニョには去年やられているからあまり採用しない気もする。

 大きなスタイルとしては従来の鹿島から大きく逸脱するものではない。基本的には前線へのロングボールが組み立ての中心。中盤で相手を剥がしては局面を進めるパスを出せる佐野、やたらと絞る安西など個々では後方からの組み立てをがんばろうという気概がなくはないが、チームとしてはそこを特に大事にしている感じはしない。ちなみに、安西の絞りは割と後方のスペースをノッキングさせているので川崎にとってはこの周辺がハイプレスの狙い目になるだろう。

 前線はターゲットが2枚になった上に、鈴木の相棒にチャヴリッチが君臨。鈴木がサイドに流れてもボックス内で暴れることができそうな存在がいるというのは昨季の鹿島との相違点だ。

 チャヴリッチは真ん中にドンっと構えるタイプというよりは中央とサイド、もしくは表と裏を問わず相手のバックラインと駆け引きをすることができるタイプ。これまでの鈴木の相棒と比べると鈴木と均質的な役割を担うことができる。

 とはいえ、基本的には動きが大きいのは鈴木の方。左のハーフスペース付近を中心にロングボールを引き出す動きは今季も健在。2列目はこの動きを軸に攻撃に絡んでいくことが求められる。

 SHはキャラクターにだいぶばらつきがある。スタメン濃厚の仲間は鈴木がサイドに流れることを見計らってボックス内に突撃する役割。名古屋戦では2ゴールとすでに結果も出している。

 ほかにも司令塔型の樋口、ワイドに張ることができる藤井、またしても影も形も見えなくなってしまった松村とSHは多様だが、町田戦で面白かったのは新加入のパレジ。後半から左サイド(前半は右サイドを担当していた)に入ると、鈴木のサイドへの降りる動きに対してサイドに張り続ける。鹿島のSHは絞って突撃がメインなのだけども、確かに張り続けてしまえば対面のSBはピン止めできるし、相手のCBは釣りだしやすくなる。

 鈴木のロングボールを収める能力の高さとプレー範囲の広さを踏まえると、パレジを活用して鈴木がCBを釣りだしながらのロングボール後の相手のDFラインを乱しやすい状況を作れるのは面白いと思った。けども、そういった相互作用的な話よりはエリア内にガンガン突撃していく方が鹿島っぽいといえばその通りだけど。

 鹿島の守備はプレッシングとリトリートのフェーズをきっちりと分けている。ある程度前で構えるときはCHがやや縦関係になる。佐野がボールハントに出ていくのに対して、知念が後方でアンカー的に振る舞う。ちなみに2トップもチャヴリッチが前目の縦関係になりがちなので、4-4-2というよりは4-1-4-1になることも多い。

 リトリートのフェーズにおいては2列目の負荷が重い。自陣に戻る際にはボックス付近の高さに2列目が勢ぞろいすることが多く、一度下げると決めたらラインを割り切って下げる傾向がある。

 守備が最もうまくいったのはやはり無失点の名古屋戦だろうか。大外の山中というクロス砲台に対して、高い位置に出ていった濃野が徹底マーク。出ていくことによって空いたCB-SB間は知念がひたすらに埋めるという形で封殺した。正直、名古屋にはこの手しかなかったので先制点を鹿島が取った後にこのプランを愚直にやられた段階でほぼ詰みであった。

知念を超えていく

 川崎にとって鹿島はお得意様というのはこの記事のここまでで何回か出てきた表現ではある。だが、誤解を恐れずに言えば、京都戦までの川崎であれば鹿島から勝ち点を奪うのは難しいと思う。今の川崎にとって鹿島はそれくらい食い合わせが悪い相手に思える。

 川崎を今季ここまで苦しめている大きな要因はリーグ最多の失点。クリーンシートなし、3試合で7失点、そのうち半分以上がジャーメインというなかなかのパンチ力があるスタッツとなっている。

 川崎の失点の大きな要因になっているのはざっくりと3つ。「ロングボールによる前進に対する耐性の低さ」「クロスの出し手と受け手へのチェックの甘さ」「セットプレー」である。

 この3つはそのまま鹿島がそっくり得意な形である。ロングボールによる前進は彼らの肝だし、ハイクロスはアタッキングサードの主な攻略の形。バリエーション豊かなセットプレーはデザイン性に富んでおりポポヴィッチ就任以降の鹿島で最も改善の幅を感じる部分。樋口という優れたプレースキッカーとエアバトルに強い2CB+2トップとかけ合わせれば、今の鹿島の最大の強みといっていいだろう。もっともケアが甘いバイタル付近を使われるデザインを設計されたら失点の可能性は高くなるはずだ。

 このように鹿島の強みは川崎の弱みとよくマッチしている。川崎が一番手っ取り早く手当てできそうなのはロングボールに対する前進だろうか。京都戦でアンカーに入った山本は空中戦を始めとして、降りてくるFWへのチェックに関してほぼ仕事ができなかった。いくら保持で光るものがあってもこれでは継続は難しい。原の降りてくる動きと組み合わせられてしまうと、ほぼ間違いなくボールを収められていたし、鹿島のFWもこうした動きは得意である。高井の中盤起用をトレーニングマッチで試したというのは合点がいくと思ってしまった。

 高井は極端にしてもアンカーには降りてくるFWに対してきっちりと挟み込むタスクを行いつつ、空中戦で競り合えるキャラクターが欲しい。まんまシミッチやんけ!という気もするのだがいないので仕方がない。今のスカッドで言えばゼ・ヒカルドがこの役割に一番適しているように思う。フィルター機能とゲームメイクを両面兼ね備えた救世主として期待がかかる。

 それでも競り合いとなる局面では鹿島が有利だろう。ロングボールが行きかうアバウトな展開は極力避けるべきで、つなぐフェーズと急ぐフェーズはメリハリをつけてほしい。

 上福元を使ったここまでの2試合でさえ、立ち上がりは前にロングボールを蹴りながら様子を見ていたのだが、個人的にはこれも不要な気もする。エリソンかゴミスがいればまぁやる意味もなくはないかもしれないが、基本的にはそれ以外の選手が鹿島のCB相手にロングボールを収めるのは難しい。

 昨季完勝した等々力での鹿島戦ですらアバウトに蹴りあった立ち上がりの25分は鹿島にペースを握られている。仮に橘田のSBを継続するのであれば左に流れる鈴木の対面は彼になる。前進ルートの依存度的にも京都戦のトゥーリオよりもかなり苦しい展開になるのは容易に想像がつく。

 よって、絞るSBのところから佐野を前に引き出しつつ縦パスを差し込むこと。京都戦ではあまり多くは見られなかった形で鹿島の前後を分断する必要がある。この形を狙いたい理由は追って説明する。

   いずれにしても保持で相手をひっくり返すことに明確なアドバンテージがなければ、鹿島相手に橘田をSBで起用する意味付けは皆無。この部分を徹底できるかがすべてである。

 逆に急いで良い場面は2つ。1つはシンプルに両SBの裏をWGがつく形が整った時。マルシーニョはもちろん、家長も昨季の鹿島戦では裏抜けを効率的に行っており、脅威になっている。なお、ポゼッションが機能不全になれば家長は中盤に降りてきてしまうので、橘田のSBからの組み立てを後方で成立させることはより重要となる。

 もう1つは鹿島のセットプレーが終わった後のカウンターである。C大阪戦が顕著なのだが、鹿島のセットプレーは得点の可能性が高い反面、後方に残す人数が少ない。GKのキャッチからの素早いリスタート、あるいは跳ね返した瞬間の縦に急ぐアクションは推奨されるべき。得点の大きなチャンスとしてぜひとも活用したい。

 逆に言えばこの2つ以外は急ぐ必要はない。押し込むフェーズの攻略は京都戦ではフィーリングがなかなか合わないけども、今季の川崎はここを合わせないとどうにもならない。CBが晒されたら脆いというのはジェジエウが完全復活する以外は動かしようのない事実。CBが晒されるかたちを減らすための努力はどんなことでもする必要がある。局面を静的に抑えて、失点を減らすためのアプローチは最優先事項だ。

 よく「家長を外してハイプレスに舵を切れば」みたいなことを言っている人を見かけるが、そうしたハイプレスが成立するのはCFへのロングボールに対してCBの質的優位があるという前提があってこそ。アバウトに蹴っても成り立つ可能性があるロングボールに対して、後方の優位を担保しないのは収支が明らかなマイナスになる。

 即時奪回をすることができれば多少リターンは見込めるが、保持において3トップにただ蹴っ飛ばすだけで即時奪回における圧力は高まるわけがないので、必然的に押し込むフェーズは増やすことはセット。今のコンディションの家長のスタメンにこだわる必要は個人的にはないが、家長抜きで相手を押し込むことができるようにならない以上、家長がスタメンにふさわしくないとする論調には全面的に同意するのは難しい。オープンな状況を進んで作り出す際にはビハインドの局面であるか、もしくはエリソンとマルシーニョがどちらもピッチにいるという状況のうち最低でも片方は満たしてほしい。

 鹿島との試合に話を戻そう。押し込む前提であればアタッキングサードの攻略のプランもセットで示すべきだろう。昨季の鹿島であればハーフスペースアタックからのマイナスの折り返しの形が鉄板。この形から等々力で多くのチャンスを作り出していた。

 が、先に示したように今年は知念が勤勉にこのスペースを埋める役割を果たしている。昨季と同じようにハーフスペースを活用できるかはわからない。

 ならば、この状況を利用したいところ。「知念が必ずハーフスペースを埋める」という前提が成り立つのであれば、「ハーフスペースを狙えば知念は中央にはいない」ということも同時に成り立つ。知念の勤勉さを逆手に取り、行動パターンの逆を行きたい。

 佐野をなるべく手前に引き出すフェーズが重要といったのはこのため。橘田とアンカーの2枚の中盤で佐野を手前に引き出しつつ縦パスを入れて、サイドに振ってからもう一度中央にパスを戻る。佐野は手前に、知念はサイドにという形で分解できれば鹿島のバイタルは空く。

 この理想形ができなくとも、鹿島の2列目はかなり最終ラインとのスペースを空けない傾向があるため、押し下げたあとは中盤の手前を使いつつ、裏を取るアクションでMFとDFの2つの列を一気に飛び越すパスを使いたい。

 また、知念に関しては中盤で広いスペースを任された際に先にアクションをしてしまった結果、相手に簡単にすれ違われるケースが多い。川崎は鹿島に伝統的に中盤での攻防で勝ってきた。ここで知念を向こうに回して上回ることができないようであれば、鹿島越えはないと思う。

 ただし、川崎にとって前提は京都戦と同じ。どことやっても負けるような対応を極力減らすことが先決。そういう部分に甘さを見せるチームに鹿島はめっぽう強い。ここで後手を踏むようであれば、知念や安西の周りを狙うところまでたどり着くことはないまま簡単に吹き飛ばされてしまうだろう。3ポイントは大事だが、3ポイントに見合わないプレーを1つでも減らすことが今の川崎の最優先事項だ。

 

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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