どうも。プレミアライフ楽しんでますか。僕は楽しんでます。今季も快調に全部見るマンです。というわけで恒例の定点観測序盤戦編です!よろしければ!
【1位】チェルシー
5勝1分1敗/勝ち点16
■成果も伸びしろも十分で国内外タイトルの期待がかかる
トゥヘルの途中就任で冬から一気に上昇気流に乗り、クラブ通算2回目のビックイヤー獲得までかぎつけた昨シーズン。今季もその勢いは継続し、好調でリーグを駆け抜けている。
対戦相手を見てもこの序盤戦は順位以上の価値があったといっていいだろう。シティにこそ敗れたものの、アンフィールドでは退場者が出て追い込まれたところから奮起。タンスにしまったモウリーニョの魂を取り出して専守防衛で10人ながらも勝ち点1を持ち帰ったのは大いなる成果だ。ノースロンドン勢は揃って前半で一ひねりと圧倒的な力の差を見せつけている。
アストンビラやクリスタルパレス、サウサンプトンなどその他の相手も一癖あるチームが多かった序盤戦。その中でこれだけの勝ち点を得ることが出来たのは大きいだろう。新加入のルカクは再デビュー戦となったアーセナル戦から不動のスタメンを確保。並のDFなら相手を背中に背負いながら押し下げる形でチェルシーに深さをもたらす。以前在籍時にはレパートリーに入っていなかったポストも身に付け、これまでのチェルシーの前線にはなかった要素を付け加えている。
一方で敗れた公式戦の2試合は学びの多いものともなっている。リーグのシティ戦ではルカクとヴェルナーという快足2トップでシティの最終ラインに決闘を挑むというアイデア自体は良かったものの、ハイプレスで完全に時間を奪われてしまい、バックラインからボールを前に送るフェーズでうまくいかなかったのは誤算だった。
続くサウサンプトン戦でも最終ラインに時間を与えないスタイルのプレスには苦戦。4-4-2は理屈の上では外しやすい形ではあるが、かみ合わせ無視で根性でスライドしてきたセインツにやや戸惑い気味に。ウォード=プラウズが勢い余ったタックルで退場していなければ試合はどうなっていたかはわからない。
もう一つの負け試合であるCLのユベントス戦ではルカクがボヌッチとデリフトに抑え込まれて起点になり切れず。シティに比べて定点色が強い中で、もっとも優位が見込まれる部分を封じられたときの心もとなさを露呈している。
ただ、ここは伸びしろになる部分だろう。システムに流動性を持たせるスペシャリティを持つマウントの不在は割り引いてもいいし、ルカク自身も中央で背負わなければいけないタイプではない。積極的に起用法を見出そうと登用している控え選手たちも含めてここから可能性を広げる余地は十分だ。変身を残して終盤戦を迎えられれば国内外において大きなアドバンテージとなる。
招聘において懸念だったトゥヘルの上層部との相性の悪さもここまでは全く問題なし。相変わらず、公園で野球を教えるおっさんみたいな風貌ではあるが、選手やフロントからの信頼は厚い。チェルシーの監督が軒並みぶち当たっている求心力の低下を今季も避けることが出来れば、複数タイトルを視野に入れた終盤戦も夢ではない。
Pick up player:エドゥアール・メンディ
序盤戦のプレミア最強GK。正確な判断×高い身体能力の組み合わせはチート。遠目から打ち破ることはほぼ不可能な上に、アストンビラ戦のように距離を詰めながらの対応もピカイチ。順調に世界最高峰のGKへの階段を登っている。
他の候補⇒マテオ・コバチッチ,ロメウ・ルカク,カイ・ハフェルツ
【2位】リバプール
4勝3分0敗/勝ち点15
■2つの課題を考えるともっと貯金は欲しい
ワイナルドゥムこそフリーで手放すことになったが、ヘンダーソン、サラー、マネ、フィルミーノと高齢化の懸念もある主力は軒並み慰留。少ない補強ゆえのチームのフレッシュさと年々増えている怪我人という部分で開幕の段階では不安要素はあったものの、今季ここまでリーグ戦は4勝3分とリーグ唯一の無敗。CLで引き当てた死の組においてもミランとポルトに連勝し、一息を突くことが出来る序盤戦となった。
事実上の補強といえるのは昨季ほぼ全休となっていたファン・ダイクの完全復活である。守備においてはもちろん、攻撃においても対角パスの本数がかなり増えた感じで、やや前線が狭くなっていた昨シーズンに比べて、幅を使いながらの攻撃ができるようになったのは大きな進歩である。
特に活性化が見られるのは右サイド。行動範囲が広がったサラーは外側での仕事を増やしつつ、ゴールもコンスタントにあげるという異次元の活躍を披露。彼の相棒として高い資質の片鱗を見せていたエリオットの長期離脱は残念だが、ヘンダーソンが安定したパフォーマンスを見せて内外を使い分けながらの攻撃を披露。アレクサンダー=アーノルドが不在の試合でも十分に攻撃の目処が立つようになった。
勝敗とは別の軸の話ではあるけど、名勝負メーカーとしての評価も高い。特に中断直前のシティ戦での息の詰まるような攻防とブレントフォードでの撃ち合いは絶品。タクティカルな部分でもエンターテイメントの部分でも非常に見どころの多いチームである。南野拓実の出場機会が少ないのは残念なところではあるが、ほとんど文句のつけようのないパフォーマンスと言っていい。
懸念点となりそうなのはアップテンポな展開がやや多いことか。保持で休みながら支配するというチアゴを中心としたスタイルは現状で棚上げになっている感が否めず。スカッド全体が高齢化している状況で、アップテンポな状況が増えてくるとシーズン後半のパフォーマンスに影響が出てきても不思議ではない。
加えて、年明けにはアフリカネーションズカップも重石になるはず。どのチームも選手派遣の負荷はあるとは思うが、マネとサラーが抜かれてしまうのならばリバプールのダメージは特大だろう。中盤のケイタも含めて考えるとアーセナルと並んで冬場のスカッドのやりくりは苦戦を強いられる可能性が高くなる。
従って、冬場に向けて貯金を作れるかが当面の課題になりそう。ライバルに比べるとスカッドに厚みがあるチームではないだけにこのペースを落とさずに勝ち点を積み続けて、ある程度アドバンテージをとっておきたいというのがクロップの本音ではないだろうか。
Pick up player:モハメド・サラー
ロナウドみたいにこのままゴール前に特化したスコア職人になるのかなと思いきや、今季はサイドでの仕事をもう一回増やすというのは意外だった。当然守備もそこまでサボらない。ゴール前での凄みをそのままにチャンスメイカーとしても高い活躍を見せれば、世界的にも異次元な存在になれるはずだ。
他の候補⇒フィルジル・ファン・ダイク
【3位】マンチェスター・シティ
4勝2分1敗/勝ち点14
■ラボでの試行錯誤が続く序盤戦は踏ん張りたい
グアルディオラのキャリアにおいては異例の長期政権に突入している感があるマンチェスター・シティ。今季も昨季に引き続き、非常にラボ感のある序盤戦となっている。
今季のシティの実験の最大の特徴はSBが極端にしぼった形のせませまの最終ライン。相手の1stプレス隊を取り囲むように中央で数的優位を作る。
例年と異なっていたのはSBには高い位置までの攻撃参加も同時に担わせようとしていたこと。特に序盤戦はその傾向が強く、SBにはビルドアップでの数的優位とサイドでのトライアングルの崩しに両方参加することが課されていたように思う。
そういう意味では個人的にはメンディが試合に出れない事態になってしまったのはグアルディオラにとっては痛かったんじゃないかなと思う。ビルドアップには言うまでもない強みをみせるカンセロだが、高い位置まで出ていく役割まで両立させるのは難しい気がする。メンディに低い位置での役割さえ仕込めば、高い位置まで出ていく馬力は十分。メンディがいた序盤戦は特にそういうことを狙っていたんじゃないかなと邪推する。
メンディが出れなくなってからはSBは絞ったり開いたりと相手に応じて柔軟に変えるようになった印象である。一方で前線はやや定まり切らない感じを受ける。やはり、懸念となるのは9番だろう。最大のターゲットだったケインを取り逃がした今夏。本職9番の不在にグアルディオラは取り組む必要が出てきている。
最も9番にタイプが近いジェズスは今季は右WGでのトライを決めている感じ。CFのレギュラー争いには今のところ参加していない。序盤戦にCFを務めたフェラン・トーレスは個人的には受けてからゴールまでの動きがスムーズで好みだったが、指揮官としてはあまりピンとこないのか徐々に出番を減らしている。
スターリング、フォーデン、グリーリッシュといろんな選手を試しているこのポジションの基軸がどこで固まるのかがチームの輪郭が見えてくる。あるいは固めずにこのまま進んでいく道もあるかもしれないが。
ここからのパフォーマンス向上が見込めるデ・ブライネと絶好調のベルナルドがいる中盤は期待できるし、ディアスも昨シーズン並みのハイパフォーマンスを維持している。前線のパフォーマンスが上がってくるかは大きなポイントになりそう。
気にしなければいけないのはシーズン序盤戦でのトチリを回避できるかどうか。今季は例年以上にハイレベルで混戦となっているリーグ戦で中盤で成績が落ちるようなことがあれば、一気に置いていかれる可能性もある。さらに、例年は組み合わせに恵まれている感のあるCLも今季はグループステージから気を抜けない組み分けになっているか。
『ラボ』の成果が実を結ぶまでの間にタイトルが見えなくなっては意味がない。収穫の時を迎えるときに視野にタイトルがあるかどうかがポイントになりそうだ。
Pick up player:ベルナルド・シウバ
売却報道から一転、開幕からチームの中心として君臨し続けている。シティの特殊技能である旋回の中心人物であり、試合の中で相手に歪みをもたらす隙を見つけることが出来る稀有な存在だ。
他の候補→ガブリエル・ジェズス、ジョアン・カンセロ、ジャック・グリーリッシュ、ルベン・ディアス
【4位】マンチェスター・ユナイテッド
4勝2分1敗/勝ち点14
■スールシャール印からロナウド印へ。垣間見える大駒増加の影響
勝ち点的には上位に肉薄しているが、上位3チームと比べると内容にはやや型落ち感があるのがマンチェスター・ユナイテッドの現状だろう。堅実に勝ち点を積み重ねてはいるが、リーグタイトルを狙えるかといわれると少し説得力に欠ける部分もある。
もっとも大きなトピックスといえばロナウドの帰還だろう。12年ぶりに赤い悪魔のユニフォームをまとい、オールド・トラフォードに凱旋した英雄が今季のユナイテッドの中心なのは間違いない。
チームにも早速影響はでている。高い打点のヘディングや理不尽な場面でのスコアリング能力など、得点の部分ではすでにチームにポジティブな効果を与えているロナウド。一方で、試合の流れの中の攻撃においてはやや彼のところでノッキングしている感が否めないのも事実。ここ数年の明らかな武器だった手早いカウンターは、いったん足元にボールを置きたがるロナウドのところに入ると、ややスローダウンをしてしまう。
サンチョが時間がかかりそうな予感の中で前線を牽引しているのはブルーノ・フェルナンデスやグリーンウッド。だが、彼らとロナウドとの相性もまだ何とも言えない感じ。特にグリーンウッドは体のキレの良さこそ感じるが『ロナウドスタイル』との食い合わせが微妙なところである。ロナウドナイズされたチームはよくも悪くもすでに個性を発揮している印象だ。
前線にロナウド、SHにポグバと前線に大駒がが多い関係もあり、スールシャール印といえるであろう、硬く守って手早く仕留めるの方向性を維持するのは難しくなっている印象。中盤以降の非保持の負荷はむしろ高まって得るように見える。
そんなチームの中で頭を悩ませているのが最終ラインのやりくり。ショウ、マグワイア、ヴァランと順々に離脱と復帰を繰り返しているせいでとにかくメンバーが固まらない。加えて健康体のワン=ビサカもCLで一発退場。なかなかメンバーが揃わない状況が続いていく。
時折見せる勝負強さは頼もしいが、ロナウドから逆算していくチーム作りはやはり難しいものがある。おそらく、今夏にロナウド復帰というシナリオはなかったし、獲得が決まったのも市場の後半。それでもシティに取られるくらいならというクラブとしての矜持は十分に理解できるもの。そこは理屈の外の話といってもいい部分ではある。
ただし、そんなロマンあふれるストーリーは他のチームからすると関係のない話。今まではタクティカルな要素よりも問答無用のプレス強度とカウンターで押し切ってきたビックマッチにはやや不利なチーム設計になっているように思う。それともその部分すら理屈ではない力でロナウドが押し切るのか。赤い悪魔とロナウドの第2章はまだ始まったばかりである。
Pick up player:メイソン・グリーンウッド
ロナウドの到来で目立たないが、今季は躍進の予感を漂わせるパフォーマンス。カウンターの運び屋としての役割に加えて、大外からのカットインドリブルの精度も向上。得意のシュートまで持って行くパターンが徐々に増えているイメージだ。
他の候補:クリスティアーノ・ロナウド、ポール・ポグバ、ダビド・デ・ヘア
【5位】エバートン
4勝2分1敗/勝ち点14
■稼働範囲+パワー+スピード。ハンマーを振り回して上位をキープ
前任のアンチェロッティを古巣のマドリーに引き抜かれたオフシーズン。次の監督の座に就いたのはマージ―サイドの街並みに赤から青に色を変えて戻ってきたラファエル・ベニテスである。関係ないけども、この両名はやたら同じチームの指揮官についている。レアル・マドリー、チェルシー、そしてエバートン。
昨季はハメスを軸にファンタジー感あふれる形で序盤戦からリーグを牽引していったが、途中で頓挫。その反省もあってか、今季はアスレティックな路線で大きく舵を切っている。
カタールに去っていったハメスややや出遅れ気味のリシャルリソンやキャルバート=ルーウィンに代わって出番を増やしているのは、今夏獲得したアタッカーたち。タウンゼントとグレイ、ロンドンとスピード+パワー重視のプレミア経験者で前線を埋めて、昨季とは大きく異なる色で結果を出している。
このカラーに既存戦力でばっちりフィットするのがドゥクレ。稼働範囲が広ければ広いほど、展開が早ければ早いほど生きる典型的なBox to Box型のMFは少し早すぎるかな?と思うカウンター局面でも前線まで平気で顔を出せるエンジンを有している。シンプルに相手の帰陣よりも早く攻めあがれるので、走るだけで被カウンター側の選択を絞らせない異分子として相手を見出すことが出来る。
一方でチームとしてはやや大味な感も否めない。ブロック守備のもっさり感は指揮官が変わっても同じ。特にサイドや前方にアランやドゥクレが引っ張り出されてしまうことで中央がぽっかりと穴が空いてしまうシーンは非常によく見る。ファンタジーからフィジカルに舵を切っても出入りの多さは変わる雰囲気はない。
大味だけど、当たれば倒せるハンマーを持っているというのが今のエバートンの印象。昨季はここからズルズルパフォーマンスを落としていったが、今季は粘りを見せることが出来るだろうか。
Pick up player:アブドゥライェ・ドゥクレ
昨季も自由にやっていた感はあったけど、今季はさらにスケールアップして大暴れしている印象。ベニテスエバートンのワイルドさを象徴する存在。
他の候補→アンドロス・タウンゼント
【6位】ブライトン
4勝2分1敗/勝ち点14
■決定力改善での躍進に差し込む影
昨季から内容はいいけど勝ち点は稼げていないという筆頭格だったブライトン。今季はついに勝ち点の上でも上位につける快進撃を見せている。継続路線を突き進むポッターの元、昨シーズン同様に支配的にボールを保持して試合を進めるスタイルはさらに熟成している。
新加入のククレジャも開幕早々にフィット。今やブライトンの左サイドの保持の落ちつけどころとして欠かせない存在になっている。スムーズに新加入選手がフィットできるのも、ポッター監督が定めた下地となる決まり事がしっかりしているからだろう。
それにさらに上乗せされているのがFW陣の決定力である。昨季は大事なところでことごとく枠にシュートがいかず、勝ち点上積みの機会を立て続けに逃しまくっていたのだが、今季はむしろ得点に関しては勝負強さが際立つ。
とりわけ、目につくのが終了間際の得点の多さ。試合終了間際の一撃で今季唯一の黒星を付けたブレントフォード戦や、ラストワンプレーで宿敵に祝杯をあげさせなかったクリスタルパレスとのM23ダービーなど大事なところで勝ち点を拾うことが出来ている。
その2試合で得点を決めたトロサールとモペイは昨季の決定機逸の代表的な存在だった。だが、とりわけモペイは今季は決定力の部分で覚醒。すでにPKを除いて4得点を挙げており、シュートが決まらないストライカーの名を過去のものにしつつある。
チーム全体で見られる取り組みとしては新しい要素としてハイプレスを組み込もうとしている。昨季は全体の切り替えを減らしていくリトリート主体の守備が中心だったが、今季は高い位置から捕まえに行く形にもトライ。自分たちの保持を大事にするだけでなく、相手の保持を阻害しにかかっていく。
そんな中でアキレス腱となりうるのはバックラインの機動力。ラインを上げた際は広い範囲をカバーする最終ラインには高い負荷がかかる。プレミアのアタッカー相手では分が悪いブライトンのDFラインをサポートする存在が必要だ。
いうまでもなくそれはビスマになるだろう。だが、負傷離脱に加えて良からぬ噂が流れており、復帰に暗雲が立ち込めている状態。すでに彼を欠いた試合ではハイプレス以外にも攻守にスケールダウンしている跡が見られている。好調のチームを支える大黒柱が不在となればそれも当然ではあるけども。
攻守に可動域が広く質も高いビスマが不在となれば、ハイプレスへのトライはおろか平時のポゼッションやブロック守備の精度も下がってしまう。好調のチームに差し込んだ一寸の闇。ポッター監督は予想外の角度から飛んできた難局を乗り切ることが出来るだろうか。
Pick up player:ニール・モペイ
アーセナルファンなので当然彼のことは嫌いだけどよくやっていることは認めないといけない。2桁取れるストライカーがいればと多くのサポーターが頭を抱えた悩みを徐々に解消する存在になりつつある。
他の候補→マルク・ククレジャ
【7位】ブレントフォード
3勝3分1敗/勝ち点12
■序盤戦を席捲する『20番目のチーム』
スウォンジーとのプレーオフ決勝を制し、初のプレミアの舞台を踏むことになったブレントフォード。プレミア20枚目のチケットを掴んだプレーオフ組は今季プレミア最大のサプライズといっていいだろう。
スコアだけでなく内容も圧倒した開幕戦であるアーセナル戦でいきなりのプレミア初勝利を掴むと、そこから滑り出した勢いは止まることはなかった。唯一の黒星が90分の決勝点に沈んだブライトン戦ということを考えれば、今季彼らと対戦した全チームが苦しんでいるということで間違いないはずだ。彼らの愛称である『ビーズ』が表す蜂のように多くのチームにとって厄介な存在になっている。
ハイライトは勝利した開幕戦よりも第6節のリバプール戦だろう。2季前の王者をホームに迎えた一戦では、エネルギッシュな戦いでリバプールにどこまでも付きまとっていくしつこさを披露。とりわけ光っていたのはファーを狙ったハイクロス。おそらくは『狙うのはファー』『サイドでボールを持ったらPAに少なくとも2人は突撃する』という少ないながらも徹底した決まり事で相手の守備の狙いを定めて破壊するのだろう。
思えば、開幕戦のアーセナル戦もそうだった。トニー、ムベウモの2トップに当ててセカンドボールをひたすら拾い続ける。2部時代と似た戦いかたであったが少ない原則を守り徹底するというスタイルはリバプール戦と通じる部分がある。
もっとも重要なのは当然エースのトニーだろう。2部で得点王だったこと。ワトキンス、モペイなどブレントフォード出身のストライカーがすでにプレミアで実績を残していることを踏まえてもすでに期待値は高い存在だったが、その高いハードルを悠々を越えてきた感じ。強みである空中戦だけでなく、高い位置からのプレッシングやサイドに流れてのカウンターのおとり役からのチャンスメイクなど非常にプレーの幅が広いストライカーである。
加えて、相棒のムベウモもプレミアで通用する身体能力の高さを披露。上下動の負荷が高い中盤やWBにも高いアスリート能力を揃えており、高い位置からのプレスを比較的長い時間続けることが出来る。
最終ラインの強度にはやや不安があるが、それをうまく覆い隠している。希望に胸を膨らませながらプレミアの旅路を堂々と突き進んでいるロンドン第6のチーム。中断明けはいきなりチェルシーとの大一番。またしても強敵に一刺しする意地を見せてくれるか。プレミアファンは今から楽しみにしていることだろう。
Pick up player:イヴァン・トニー
開幕節は初物に弱いアーセナルだからこその大暴れかと思ったが、普通にどの試合でも大暴れ。プレミアの舞台で通用するどころか、今やリーグでも指折りの対戦したくない選手といっていいだろう。
他の候補:ダビド・ラヤ
【8位】トッテナム
4勝0分3敗/勝ち点12
■開幕節の成功で狂った歯車
9月にはリーグのてっぺんだったはずが、そこからあれよあれよという間に3連敗。開幕戦でマンチェスター・シティを撃破し、最高のスタートを切った時の勢いは残念ながら今のチームには感じられない。
個人的にはその開幕戦勝利こそがトッテナムのその後の歯車を狂わせた原因のように思う。開幕戦においてはシティに対して4-3-3型の守備で中央を固めるやり方で勝利。ただ、この勝利はトッテナムのシステムがシティの項で今季取り組んでいると紹介した自陣深い位置中央に人を集めるやり方とかみ合ったことが大きかった。
にもかかわらずヌーノは開幕節以降もこの手法をメインに。クリスタル・パレス戦、そしてノースロンドンダービーはこの手法にこだわったゆえに敗れた一戦といっていいだろう。特にノースロンドンダービーはIHの横幅を広げる動きにアリとエンドンベレが対応できずに完敗。次のアストンビラ戦では中央とサイドにバランスよく人を配置する4-2-3-1にシフトして勝利を収めている。
攻撃面ではいずれのシステムにおいてもやはりビルドアップの拙さが目に付くところ。モウリーニョ時代と同じく2列目のアタッカーにとりあえず届けて頼む!みたいなやり方がメインになっている。
そんな状況の中でやや存在感が薄まっているのがケイン。どんなに劣勢でもボールを収めてチームを押し上げる強さを持っていたケインだったが、今季はその凄みが感じられず。プレミアでは劣勢の流れに飲まれてしまう場面も珍しくない。
代わりに輝きを見せているのはソン。時間をもらう側の色が強かったこれまでに比べて、ボールを引き出しながらのアシストも増やしているシーズンとなっている。ケインと入れ替わるように前進からフィニッシュまでの幅広い負荷を背負う存在になりつつある。
ただ、伸びしろを決めるのは2本柱以外の存在。それも若手のタレントだろう。ヒル、スキップ、ロメロなど各ポジションにはチームの要になりうる若手の選手がいる。指揮官が交代してなおなかなか代わり映えしないチームの現状に上積みを期待するのならば、彼ら3人のようなフレッシュな新戦力ということになるのではないか。
Pick up player:オリバー・スキップ
中盤が安定するかしないかは単純に彼が出ているかいかないかによるところが大きい。ホイビュアが前に出ていくのをサポートできるのは中盤で彼しかいないだろう。
他の候補:ソン・フンミン
【9位】ウェストハム
3勝2分2敗/勝ち点11
■揺るがないセンターラインの土台は今年も生命線
群雄割拠のプレミアリーグにおいて、昨年躍進したチームが2年連続で他のチームの脅威になるのは結構難易度の高い技である。ただ、昨年躍進したウェストハムに関しては今年もどのチームにとっても非常に厄介な存在となっているといっていいだろう。
ベースとして後ろに重たい布陣で構えつつ、スピード豊かなアタッカーを活かすというやり方は変わらない。昨季後半に加入してチームを牽引したリンガードの退団は痛いのだが、アントニオという軸がしっかりしている以上は、互いをよく知るアタッカー陣から繰り出されるカウンターの迫力は十分である。
加えて、今季はCHのライスが積極的にサイドに出ていって攻撃に参加しているのも面白い。ソーチェクがエリアに突撃することも多いので、こうなると中盤は空洞化してしまいそうな予感もするが、今のところライスのサイドに流れる変化が被カウンター時の脆弱性を呼んでいる感じはしない。最終ラインからの押し上げがしっかりしているからだろう。
欲を言えば最終ラインの連携は少し怪しいところ。オグボンナの相方が未だに定まっていない状況で、ここ数試合は相棒を務めているズマも相変わらずの不安定さ。まだレギュラーに定着したというのは尚早だろう。ウェストハムの堅守の根幹を支える部分なだけにここに目途が立つか否かは大きな問題になりうるだろう。
こちらはやや事情は異なるものの、新加入のヴラシッチは他の戦力が万全な中でプレータイムの割り当てが後回しになっている。チーム事情でフィットが進んでいないだけだろうから、こちらは少し時間がかかってもいいのかもしれないけども。
懸念になりうるのはやはりセンターラインの離脱者だろう。昨季はほぼフル稼働だったライス、ソーチェクのCHコンビの不動さは変わらないし、CFのアントニオも同じ。この3人とクレスウェル、コーファルの両SBへの戦力依存度は高く、誰か一人かけてもガクッとチーム力は落ちてしまいやすい。
昨年同様安定したセンターラインを年間を通して維持できるか。ELとの並行したシーズンになる今季においても揺らがない土台を維持できるかどうかがここからのポイントになる。
Pick up player:デクラン・ライス
フル労働をこなしていたEUROからスムーズにシーズンに入れたという点がまず異常。めっちゃ丈夫なのは大事。それプラス攻撃面での貢献で新しい可能性を模索している感じなのも◎。
その他の候補:マイケル・アントニオ
【10位】アストンビラ
3勝1分3敗/勝ち点10
■ハマった3センターと豊富な2列目の両にらみがカギ
大黒柱であるグリーリッシュの退団という大きな節目を迎えた今季のアストンビラ。CEOが直接生え抜きの主将の退団理由をファンに説明した動画が話題になっていたが、確かにこのグリーリッシュの退団はアストンビラにとっては事前に準備されていたものだったのだろう。そう思えるくらいこの夏の動きはスムーズだった。
最前線には経験豊富なイングス、2列目には注目株だったブエンディアをクラブレコードで呼び寄せた上に、ドイツからベイリーも加入した。もちろん、グリーリッシュの退団は痛いだろうが層の厚さでいえば昨年をしのぐ。
開幕当初のフォーメーションは昨季の4-2-3-1を継続。新戦力の中では特にイングスのプレータイムが長かった。負傷がちな体質が懸念だっただけにここまでは順調。稼働してしまえばクオリティには問題ない。
転機となったのは第4節のチェルシー戦。ブエンディアやベイリーの離脱やワトキンスの復帰などのスカッド事情と対戦相手との力関係を考慮した5-3-2を採用するとこれがなかなかにハマる。
そのチェルシー戦では勝ち点こそ拾えなかったが、相手のGKがメンディでなければ勝ち点は彼らにも与えられうる展開だった。固い守備からのカウンターへの素早い移行はグリーリッシュのタメという大きな武器がなくなったアストンビラの新機軸になりうる。
とりわけ好調だったのは3センター。ラムジー、マッギン、ドウグラス・ルイスのトライアングルの完成度の高さはリーグでも屈指。ボールハントから攻撃までこなす弱点の少ないユニットだ。単なる撤退に留まらず、5-3-2のまま全体を上げたプレスにも移行できるのは彼ら3人のスキルの高さゆえだ。
ただ、今夏の補強とスカッドを考えればFWとCHの控えが手薄で2列目が大量に余るこの布陣は本意ではない部分もあるだろう。4-2-3-1との両にらみで完成度を上げていきたいというのが本音。2つのプランを熟成させながらアフターグリーリッシュにもアストンビラありというところをぜひともみせてほしい。
Pick up player:ジェイコブ・ラムジー
昨季からの伸びしろで選出。完成度では他の2人にはまだ及ばないが着々とプレータイムを重ねるだけの堅実さとポテンシャルは兼ね備えている。個人的には今季楽しみな選手の1人。
他の候補:ジョン・マッギン, ドウグラス・ルイス
あと半分は次ね。