Fixture
明治安田 J1リーグ 第7節
2024.4.7
川崎フロンターレ(13位/2勝1分3敗/勝ち点7/得点10/失点9)
×
FC町田ゼルビア(1位/4勝1分1敗/勝ち点13/得点9/失点5)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
スカッド情報
- 大島僚太、宮城天、車屋紳太郎は負傷離脱中。
- バフェティンビ・ゴミスは帰国してトレーニングを再開。
- マルシーニョは前節の退場で1試合の出場停止。
- 三浦颯太は前節負傷交代。
- 松本大輔とエリキは長期での離脱中。
- 宇野禅斗とバスケス・バイロンは肉離れで離脱中。
予想スタメン
Match facts
- 公式戦5試合連続で計13失点して以降、2試合連続でクリーンシート継続中。
- リーグ戦3試合連続クリーンシートになれば、2022年5月以来約2年ぶり。
- 前節のリーグ戦のスコアレスドローは2023年3月以来1年ぶりのことだった。
- 4月のホーム開催のリーグ戦は直近4試合で1勝のみ(D1,L2)。
- リーグ戦では直近3試合全てで自分たちか相手のどちらかに退場者が出る試合を経験している。
- エリソンはデビュー以降4試合連続で得点を決めて以降、2試合連続で得点が決まっていない。
- 今季勝利しているリーグ戦はどちらも脇坂泰斗が得点を決めている。
- 開幕以降の5試合の無敗、および4連勝は前節ストップ。
- 勝ち点を得ている試合は全て先制点を手にしている。
- 関東アウェイのリーグ戦は直近3試合いずれもドローゲーム。
- セットプレーからの4得点は神戸(5)に次いで多い。
- 谷晃生は先発した川崎戦で3連勝中。
- 平河悠は代表戦も含む3月の公式戦で2ゴール、2アシスト。
予習
第4節 札幌戦
第5節 鳥栖戦
第6節 広島戦
展望
ミスと隙を作り出すためのサイクル
関東近郊の対戦相手が続く川崎。東京、神奈川ときて続く相手は再び東京組。目下J1を席巻中の町田が対戦相手。昇格組ながら首位に君臨するチームとの一戦が3連戦のトリになる。
町田のフォーメーションは4-4-2がベース。しかしながら、鳥栖戦の後半と広島戦はいずれも3-4-3を採用している。3バックを採用する際にはドレシェヴィッチ、ミンギュに加えて昌子の3枚のCBを併用する形で臨む。今のところ見られているのはこの2つのフォーメーションである。
だが、おそらく川崎戦ではこの3バックは採用しないだろう。理由はここまで3-4-3を使った状況は前から捕まえやすい3バック相手の広島か、リードした状況で攻め込まれて撤退した鳥栖戦の2つ。0-0でスタートする川崎戦というのはこのどちらにも当てはまらない。
加えて、これはなんとなくの勘なのだけど、黒田監督は広島戦を強度マシマシでどこまで辿り着けるかの現在地を図るマイルストーンにしている感があるように思う。それであれば、3-4-3は広島相手に前からぶつかることに重心を置いたものであり、ここで一区切りとするのではないか。4バックでの流れが悪いからフォーメーション変更に踏み切ったというわけでもないため、ベーシックな4-4-2に戻してくるのではないか?と予想する。
メンバーはかなり固定色が強い。バスケス・バイロンが負傷したSHに藤本が入ることになってからは予想スタメンに書いた11人がベースになっている。システム変更に伴うメンバー入れ替えを除けば、序列は今のところはっきりしている。登録メンバーが多いスカッドなので今後は入れ替える可能性もあるかもしれないけども。
町田の一般的なイメージとしてはロングスローやプレッシングになるのだろうか。ロングスローはイメージ通りガッツリ重宝されている。長身のオ・セフンをターゲットにその周囲に味方を何人か置いたエリアに向かってボールは放たれる。このロングスローは非常に厄介ですでに今季もゴールに繋がる形を生み出している。
長身のセフンの存在も脅威ではあるが、ロングスローのめんどくさいところはクリアに距離が出にくいことだと思う。ボールは山なりであり、基本的には足で蹴るボールよりも速度は遅いのがロングスローの特徴。サッカー云々ではなく物理的な話として、強く来たものを遠くに打ち返すよりも勢いがないものを遠くに打ち返す方が難しい。さらには先ほど述べた通り、町田はセフン周辺に味方をわらわらと纏わせるので、DF側はボールを触れたとしても助走をつけたり、あるいは十分にジャンプができる状態でボールにミートできないケースが多い。
よって、町田のロングスローは高さを生かすこと以上に、相手にクリーンな処理をさせないことに厄介さがあると感じる。跳ね返せないとなれば、当然ボックス付近にボールが落ちることになるのだから、町田にボールが渡ればそこから少ない手数で二次攻撃に移行することができる。
プレッシングのイメージを多くの人がどう思っているかはわからないけども、少なくとも前から数を合わせてのマンツーでのハイプレスというのはあまりやってこない。例外的なのは先に述べた対策色が強かった広島戦。だが、その広島戦ですら中盤が可変する動きを見せればついていくことはなかった。オールコートマンツーという形はほぼ行っていない。
というわけでベースになるのは4-4-2でのミドルプレスから前線の選手のチェイシングをきっかけでハイプレスに移行するイメージだろう。この形から鹿島戦、鳥栖戦と印象的なゴールを奪っている。特に鳥栖戦での平河のプレッシングはお見事。一気に間合いを詰めて対面の選手のエラーを誘っていた。
一方の鹿島戦ではホルダーの佐野へ近寄る動きを見せた安西によって、結果的にマーカーに近寄ったバイロンがボールを奪ってゴールへの導線を敷いている。それを踏まえると、全体の構造が重要というよりはよりミクロな局面においてボールを奪い取ることを目指しているように思う。
そのためには当たり前のことを高い精度と頻度で実施する必要がある。例えば、先に挙げたように平河が外切りのハイプレスを仕掛けるのであれば、インサイドでの動線も合わせて塞ぐとか。
先に挙げた鹿島のエラーを利用する形もその一種。要は自分たちが仕掛けた瞬間に盤面を最適化する、もしくは相手が隙を見せた時にその傷口を広げる。それが町田の強さのように思える。広島相手に3トップでのプレスに挑んだのは仕掛けるためのとっかかりとなるきっかけを枚数を合わせることで増やせると考えたからではないか。
選択肢を制限する、そして捕まえる。流れに乗れそうな時には逃さない。端的に言えばこのサイクルが町田の強み。相手ができることを制限して、隙やエラーを生み出すことはロングスローの精神にも近いものがあり、おそらくはこうしたことができれば別に黒田監督は手段はなんでもいいのだろうなと思う。そうした部分を引き起こす引き出しの多さと90分やり続けられるしつこさが町田のスタイルを下支えしている感がある。
町田の自陣からの保持は2CBと2CHが基本。左のCHの仙頭が2トップの脇に降りてビルドアップに加わる。インサイドに立つ柴戸はあまりビルドアップに関与せず、中央に止まることで相手の陣形に対する牽制の役割を果たしている。
細かいパスではなくロングボールが主体でセフンがターゲット。長身=競り合いを厭わないとは限らないのが昨今の長身FW事情だけども、セフンはほぼサボらず必ず競り合う。裏へのランも行うので、非常にめんどくさい。裏へのクロスもまた守備側としては対応が難しい例である。
ただ、打開力という点に関してはバスケス・バイロンやエリキが離脱している分、少し割引の感じもある。基本的はロングボールやロングスロー、シンプルなクロスから敵陣でのミスを誘発することが先に来る。もちろん、セフンの空中戦での競り合いにシンプルに負けるとアウトなので、川崎の守備陣には繰り返される空中戦に耐えつつ、ミスを出さないというタイトな90分になることは請け合いとなる。
取らなければいけないリスク
基本的には先に述べた4-4-2をベースにプレスのスイッチを入れてミスが出たところから一気に出てくるというのが町田のプランになるだろう。こうしたプランに耐えることのできずにミスをしてしまうチームが続々と町田を前に屈している印象である。
3バックの焼き直しはないという意味で「広島戦の町田は参考にならなさそう」とツイートをしたのだけども、町田と広島の試合を見ていくうちに「町田戦の広島は参考になるかもしれないな」という気持ちになった。
広島が町田にどのように勝ったかというとホルダーのワンタッチでのプレス回避と、反転からの推進力を生かす形を中盤で作れたことが大きい。町田の中盤はこの試合では挟み込むことができていなかったし、単独でボールを回収するボールハント能力と広大な守備範囲を有している選手はいない。町田の守備をどこから壊すのかを考えるのであれば、まずはこのセクションになるのは確実である。
よって川崎からすれば町田の中盤が守る範囲を広げたい。そのためには2トップとSHにはプレスに来てもらわないと困る。彼らが中盤のフォローにいけない状況と前向きのベクトルを作る状況を作らないといけない。なので、自陣でのビルドアップは今年一番の頑張りどころ。
もちろん、これは大いにリスクを取る形だ。鹿島や鳥栖のようにミスからのあっさりとした失点で逃げ切りを許すこともあるだろう。でも、このリスクを取るには理由がある。黒田監督は対策の鬼だし、単に前に蹴る形だけだとおそらく複数人で家長とエリソンを囲って終わりになるような守り方を組んでくるだろう。なので、おそらくロングボールはプレッシャーを逃がす以上の意味合いを持たすことができないと予想する。立ち上がりに蹴ってみて感触を確かめつつ、それ以外のソリューションを持たないと詰む可能性もある。
さらには押し込むことができたとしても、左にマルシーニョと三浦がいない形では川崎の定点攻撃は期待できない。右の家長のクロスを軸とした攻撃構築も間に合っておらず、得点を奪うという意味では少し期待が薄いように思う。なので、中盤で加速できるスペースを作ることにはこだわりたい。
ただ、押し込むこと自体は町田の攻撃に対する抑止力になるのでボールの捨て方がセットであれば、時間帯や状況によっては有効な手立てになると思う。過密日程、固定メンバー、そしてハードワークを身の上とするスタイルを加味すればボールを前に送る陣地回復の負荷はそこまで楽なものではないだろう。
話は戻るが、中盤の稼働範囲を広げるためにもGKの活用とCBの距離を取る形は必須。SHにプレスのスイッチを入れさせて背後を取る、もしくは高井からパスを受けたCHがシンプルにターンを決めるかインサイドで縦関係を作る。このどちらかには挑みたい。高井がCBで起用できる左では駆け引きにはトライしたい。そのためにはセフンを中盤のヘルプに行かせたくはないので、GKのソンリョンのビルドアップ参加やジェジエウがきっちり幅を取ることも必要だ。
こうした部分にこだわるのであれば、特に右のSBはMF型の橘田を起用するのがいい。山本を中盤で併用することができれば中盤でフリーマンを作ることは間違いなく容易になるだろう。ただ、このプランにはリスクも大きい。セフンはファーサイドへのクロスに競りかけることが多く、SBのミスマッチは致命傷になりうる。CHのロングボール耐性も含めてこれは個人的にはリスクをとりすぎかなという感覚もある。
ただ、パスワークで中盤の質的優位を生かす形を作らなければこの試合では勝利は見えないと思う。打開策はリスクの先にある。それをビルドアップで引き寄せられるかというのが町田戦の命題になる。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)