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「強いやつらに会いに行く」~2021.9.14 AFCチャンピオンズリーグ Round16 蔚山現代×川崎フロンターレ プレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

AFCチャンピオンズリーグ Round16
2021.9.14
蔚山現代(韓国)
×
川崎フロンターレ(日本)
@蔚山文殊スタジアム

戦績

過去の対戦成績

図2

 6試合の対戦で蔚山の3勝、川崎の1勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近4回の対戦で川崎は蔚山に勝利がない。
・蔚山にとって川崎は最も対戦回数が多い日本勢。
・蔚山ホームの試合では3連勝中。
・6回の対戦で川崎は蔚山をクリーンシートに抑えたことはない。

 国内では川崎優勢のスタッツを紹介することが多いのだが、この試合は蔚山が明らかに優勢な試合となる。今回が7回目とやたら川崎との対戦が多い蔚山。川崎は直近4試合で勝利を挙げることが出来ていない。

 当該カードの特徴として最も印象的なのは6試合の中でアウェイチームが勝利を挙げたことがないということ。川崎はミッションインポッシブルへの挑戦ということになる。得点力に苦しむ中で蔚山相手にクリーンシートがないというデータも重石としてのしかかってくる。

スカッド情報

【蔚山現代】

・transfermarktによるとふしょうしゃはいない。

【川崎フロンターレ】

・谷口彰悟、大島僚太、旗手怜央、車屋紳太郎はメンバー外が続いている。
・塚川孝輝は練習復帰の模様。
・マルシーニョは登録不可のため出場は不可能。

予想スタメン

画像2

Match facts

【蔚山現代】

<蔚山のMatch facts>
・直近9試合の公式戦は無敗(W6,D3)。
・直近9試合中8試合の公式戦で複数得点を記録。
・直近5試合のホームでのリーグ戦でクリーンシートは1つだけ。
・国内の公式戦におけるホームゲームは今季1敗のみ(W9,D5)
・イ・ドンジュンはリーグ戦で決勝点を5点挙げておりリーグトップ
・ホン・ミョンボは日本代表と2013年の東アジア選手権で対決。柿谷曜一朗の2得点で敗れている。

 Kリーグで首位をひた走る蔚山。先週の金曜日に行われた全北現代とのシックスポインターはスコアレスのドローだったが、それ以前のリーグ戦は3連勝中。調子を上げているチームといっていいだろう。

 中でも印象的なのは得点力。複数得点をバンバン記録しており、ストライカー陣は好調といっていい。一方でクリーンシートの少なさは目につく。勝った試合も先制を許すものもちらほら。それを許容できるほどの得点力があるということだろう。

なかでも、際立つのが右のWGを務めるイ・ドンジュン。今季のリーグ戦9得点中5得点が決勝点というクラッチシューターぶり。得点に絡んだ今季の12試合は全勝とラッキーボーイでもある。彼が得点を許すと蔚山は波に乗ってしまうようだ。

 指揮官のホン・ミョンボは代表チームでの経験が豊富な指揮官。ゆえにACLでの日本勢との対戦は未経験のよう。韓国代表としては日本代表と2013年の東アジア選手権で激突。この時は日本が柿谷の2ゴールで勝利している。余談だけどこの時の日本代表は多分国内組中心だったんだろうけど、ここに川崎のメンバーが全然いないことを考えると、今の川崎はだいぶ強くなったなと思う。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・直近5試合の公式戦で1勝のみ。
・ACLでの試合は直近9試合負けなし。
・中立地開催だった2021のGSを除けばACLのアウェイゲームは直近7戦で1勝のみ。
・2点リードの試合は浦和戦で引き分けるまで73連勝中だった。
・知念慶はACLにおいて10試合の出場で7得点。71分に1回のペースで得点を挙げている。
・鬼木監督は過去4試合の蔚山戦で勝ったことがない(D2,L2)

 浦和との激闘は結果こそついてこなかったが、今のチームが何者であるか証明できた試合だったと思う。ただ、練習動画でも塚川以外の主力の復帰が確認できない中で、依然として厳しい戦いは続くといえるだろう。

 そんな中でのアウェイでの蔚山戦なので川崎としては難局も難局である。ACLでは9戦無敗だが、これは大邱以外はイージーだった今年のACL戦績でだいぶ下駄を履いていることは否めない。今年のGSを除けばACLのアウェイゲームは7戦1勝のみ。唯一の勝利もオーストラリア勢のシドニーFC。上海上港と蔚山現代を中心に東アジアでのアウェイでは相当苦しんでいる。

 「2点差は危険なスコア」というのはこの状況で73連勝中の川崎にとっては戯言なのだが、浦和戦ではついにこの連勝もストップ。ちなみに、浦和戦以前に2点差を追いつかれた状況はいつだったかというと、2018年のACLで蔚山現代に追いつかれた試合だったりする。なんか、このタイミングで当たるのはどこか因縁めいたものを感じる。

 ACLの舞台ではストライカーは3人ともいい成績を残しているといえる。3人のうち、最も1点にかかる時間が少ないのは知念慶。こちらも正直今年のGSで下駄をはいたデータだといえるが、過去に蔚山戦で2ゴールしているのは見逃せないところ。蔚山戦未勝利の鬼木監督に勝利をプレゼントする得点を決めることが出来るだろうか。

展望

■屈強なセンターラインが軸

 ACLのラウンド16は全勝でグループステージを突破したチーム対決。おそらくだが、互いに嫌な相手を引いたと思っている両チームの対戦である。今回、蔚山戦のプレビューを書くために参考にした試合はACLのグループステージの4節~6節。あれからは2カ月たっているので蔚山はチームとしては何か変わっているかもしれない。けども、Kリーグは見れないので仕方ない。

 ちなみにACLはDAZNの視聴期限が1週間。というわけでこれを書いているのは7月である。下準備からお目見えまでのラグが自分史上一番長い。どうでもいいけども。

 蔚山は率直にいって強いチームだと思う。センターラインは韓国勢らしい強靭さを誇っており、ここがチームを支える骨組みといっていいだろう。トップのヒンテルゼーアはハノーファーに移籍したが、セフンも競り合いに強いストライカーでクロスに合わせるのが非常にうまい。

 バックスのブルタイスも強力。スピードもパワーもあるタイプ。大邱にはエジガルという前線の核はいたけど、バックスで超強力な個はいなかった。蔚山はCBに広い守備範囲を課しているところからも彼らを1つの武器としている色が強い。攻撃も守備も強固なセンターラインを軸に作られており、センターラインの強さは彼らの大きな強みといえる。

■大外はクロスのために、ただし例外あり

 攻撃の部分は先ほども述べたようにFWへのクロスが軸になる。ビルドアップはいわゆる3-2-5型となるパターンが多いだろうか。バックラインの片側が押し上がり、相手の最終ラインの周辺に人数をかけるスタイルで前線の受け手を揃える。バックラインはCB+SBのどちらかの1枚の計3枚が多い。

撤退して守備をする相手にはCBが持ち運んだり、SBが両方上がったりなど人数をやや攻撃にかけたようなバランスにすることも多い。でも川崎相手ならばそこまで極端に攻撃に軸を置いてくることはないと思う。バランスを重視しながら過度なリスクは取らないはずだ。

 SBの上がりは左よりも右の方が多い。SBを務めるジェイウーやテファンは右の大外で高い位置を取ることがデフォルトでここからエリア内にクロスを狙う。ただ、右に攻めのルートを限定しているわけではなく、右SBが上がるのが決まりというわけではない。ボールサイドのSBが上がることが基本なので左からもオーバーラップはある。

 外で勝負するタイプのWGがいないというのもSBのオーバーラップが奨励されている理由の1つだと思う。いずれにしても、大外はクロスを上げるところというのが彼らの1つの考え方である。大外でフリーの選手を作るためにサイドで多角形を作るのが蔚山の主なパターンである。パス交換で外を空けていくスタイルである。ただし、これはヒンテルゼーアがいるときの話。攻め方の傾向が変わっている可能性はある。

 例外なのはSHもしくはトップ下に入るカザイシュヴィリ。大外からのクロスというパターン以外の崩しのレパートリーをもたらしてくれる選手。ドリブルでのカットインで独力で点を獲ったり、あるいは内側をこじ開けるようなパス交換の仕上げをしたりなどスキル的にはチーム随一の存在。彼がいれば蔚山の攻撃は外一辺倒にはならない。

 カザイシュヴィリはポジションに寄らず内側やや左でプレーすることが多く、外に開くことはあまりない。後方は数的優位、前方は5レーンの原則から外れることもある存在で自由なポジションで崩しのジョーカーとして機能するイメージである。

 守備は4-4-2ブロックがベース。常に高い位置から行くわけではないけども、SHが高い位置で相手を止めてマイナスのパスを誘発したところがプレスのスイッチになることが多い。ただし、直近のリーグ戦では4-1-4-1の採用が多く、傾向は異なる可能性がある。

 どちらかといえば高い位置からサイドに閉じ込めるイメージが強く、トップのプレスに対して中盤はグイっと押し上げる。先ほども述べたとおり、後方のCBのカバー範囲の広さは織り込み済みで多少無理な対応になっても止めるのが彼らの役目である。そういう意味では川崎とちょっと似ている。蔚山のがパワー寄りで川崎の方が崩しにより特化した感じだろうか。

 無論、蔚山的には撤退守備もOK。前線からチェックにいかない場合は4-4-2のゾーンをベースに高さのある中央で攻撃を跳ね返すスタイルである。プレスもブロックも展開によって使い分けられる柔軟なチームという印象だ。

■リスクを取る必要はある

 では川崎がどう立ち向かうかである。どうやっても強敵なのは間違いない。まずはCB-CFのマッチアップのパワーバランスが試合を分ける大きな要素になるだろう。互いのマッチアップでFW側が優位に立てるチームが大きくこの試合を制することに近づくのは間違いない。

 だが、どちらのチームも圧倒的にFW側が勝つことはないのではないだろうか。もちろん、局所的にFW側が勝つことはあるだろうが、ハイクロスをただ上げればOKという状況になるほどマッチアップがワンサイドに傾くことはないと見る。

 蔚山の攻撃を受ける上で最も避けたいのはサイドチェンジである。薄いサイドを作られて精度が高いクロスを放り込まれてしまうとクロス攻撃を跳ね返し切るのは難しい。特に中央にクロスに飛び込めるFWを2枚同時に起用する場合、逆サイドのSBも競り合いのターゲットになる。そうなると登里ではミスマッチが出来る可能性がある。どちらかといえばここまではトップ下はテクニシャンを起用する傾向が強いように見えるが、パワー寄りにシフトした場合は他の選択肢を優先しても不思議ではない。

 理想としてはサイドに閉じ込めながら、素早いサイドチェンジを阻害する。圧縮することでカザイシュヴィリが輝けるスペースも狭めることが出来る。

 逆に川崎としてはダミアンのロングボールがどこまで効くかが重要なポイント。彼への長いボールの放り込みは早い段階で試して、どれだけやれるのかを把握しておきたいところである。

 ただ、結局は相手を引き出しながら後方のスペースを空けていく動きが必要なように思う。最終ラインでプレス隊を引き付けて中盤のスペースを空ける。相手のプレスのスイッチを逆手に取り、中盤より後ろが守るスペースを広くさせるのは必要なことだと思う。

 守備の部分でいうと蔚山はボールサイドの逆側のCHの絞りが甘く、そこに脱出のカギはあると思う。CHの周辺のスペースを空けることで、スピード感をもって相手のCBラインに向かうことが出来れば川崎の前線の機動力を生かした攻撃が効くようになるはずだ。ただし、ここは4-1-4-1を採用していればカバーしやすくなる部分である。むしろ、そういう欠点を補うためのフォーメーション変更かもしれない。

 後はトランジッション。やや深い位置にはなるが蔚山のSB⇒SHの縦パスはパスカットの狙い目になる。特に蔚山の左サイド。縦に付ける際は角度が狭くなりやすく、川崎としては先読みがしやすい部分。山根にはここのインターセプトからカウンターに転じる縦パスまでの一連の動きを期待したいところである。

 いずれのやり方もリスクはある。プレスにかかったり、裏を取られてしまったりなど一転ピンチになるような状況でのギリギリの戦いになるはず。CFに対する川崎のCBのマッチアップも同じようにリスクを伴うものになるだろう。

 だが、強い相手にはリスクを伴わなければ勝てない。ラウンド16にして総力戦の様相だが、強い相手を倒してもっと強い相手に会いに行くためにもこのステージで負けるわけにはいかないところだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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