MENU
カテゴリー

「プロセスに信頼を与える」~2024.6.29 J1 第21節 川崎フロンターレ×サンフレッチェ広島 プレビュー

目次

Fixture

明治安田 J1リーグ 第21節
2024.6.26
川崎フロンターレ(15位/5勝7分8敗/勝ち点22/得点28/失点29)
×
サンフレッチェ広島(5位/8勝9分3敗/勝ち点33/得点36/失点20)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の対戦で川崎の6勝、広島の2勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

過去10戦で川崎の6勝、広島の2勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

Head-to-head
  • 直近11試合の対戦でアウェイゲームの勝利は2つのみ。
    • いずれも川崎が広島のアウェイで0-2での勝利。
  • 直近4試合の川崎の広島戦の勝利はいずれもクリーンシート。
  • 等々力で広島が勝利したのは2018年が最後。以降の5戦では未勝利(D1,L4)
  • 直近4年間の等々力での広島の合計スコアは1-11。

スカッド情報

川崎フロンターレ
  • 三浦颯太、丸山祐市、エリソン、車屋紳太郎は欠場が続く。
  • バフェティンミ・ゴミスは直近2試合でいずれもメンバー外。
サンフレッチェ広島
  • 山﨑大地は長期離脱中。荒木隼人も欠場が続く。

予想スタメン

Match facts

川崎フロンターレ
  • リーグ戦直近7試合で1勝のみ。
  • この7試合のリーグ戦でクリーンシートがない。
  • リードから落としたリーグ戦での勝ち点は14でこれより多いのは横浜FM(16)だけ。
  • ホームでのリーグ戦は直近6試合で無敗(W3,D3)
  • 山田新はここ2試合のリーグ戦でいずれも得点に関与しているが、ホームでのリーグ戦は7試合連続で無得点中。
  • 今季ここまでの公式戦で最も多く得点に関与しているのは家長昭博(6G,5A)
サンフレッチェ広島
  • 公式戦直近11試合で1敗だけ(W8,D2)
  • リードをされたリーグ戦での逆転勝利はここまでない(D4,L3)
  • 前半30分から後半15分までリーグ戦無失点。
  • 得点、シュート本数、枠内シュート本数が全てリーグ首位。
  • 大橋祐紀が今季ここまで挙げたリーグ戦9得点のうち8得点は関東のチーム相手のもの。
    • 浦和×2、FC東京、町田、湘南×2、川崎、横浜FM。前節の新潟のみが例外
  • 満田誠は直近2試合の川崎戦で4得点に関与(1G,3A)

予習

第13節 横浜FM戦

第19節 柏戦

第20節 新潟戦

準備中

展望

スタイル維持に成功したセクション、試行錯誤中のセクション

 直近のリーグ戦では7戦で1勝。唯一勝利した名古屋戦でも88分にハ・チャンレに1点差に詰め寄られる追撃弾を奪われており、終盤まで予断を許さない緊張感のある試合が続いている川崎。今節の相手は2ヶ月前にその「予断を許さない緊張感のある試合」で手合わせした広島である。

 広島のスタイルは前回対戦とほとんど変わっていない。J1でもトップクラスの強度を有しているチームであり、ボールを奪い攻撃を完結させるというサイクルを非常に高速で回している。得点やシュート関連のスタッツが軒並み秀でているのはこうしたスタイルを忠実に遂行することができているから。

 前線は高い位置からチェイシングを行い、DFラインの設定も高め。敵陣でなるべくボールを奪い返すべく立ち向かっていく。大橋や加藤が務めることが多い2人のシャドーは豊富な運動量を生かし、相手の中盤をマークすることが多い。中央付近に基本ポジションを取りつつ、ボールサイドへのスライドを行うことがしばしばである。

 大外はWBがその分高い位置にスライド。敵陣から強気でチェイシングを行っていく。注意したいのは高い位置から追いかけ回すのだが、完全なマンツーではないことである。人基準の成分は間違いなく強い広島の守備だが、マーカーが持ち場に対して著しく距離が離れてしまえば、相手を受け渡すこともしばしばあるということは川崎側として頭に入れておきたい。

 前から強気に攻めていくスタイルは後方に大きな負荷をかける。佐々木、荒木、塩谷の3枚看板は荒木の離脱によって解体されてしまったが、その穴を埋める中野のパフォーマンスは目を見張るものがある。高い対人守備の能力で完全にCBの一員として独り立ちした印象である。

 その一方で今現在試行錯誤の真っ最中なのはCHである。川村と野津田の移籍に満田の出場停止という事情が重なったこともあり、このポジションはテスト色が強い。サイドに飛び出す形で前線に絡んでいくことができる松本は攻撃的なアクセントになることを証明して立ち位置を確立しつつあるが、相棒はいろんな選手をテスト。マルコス、加藤といったより前に適性がある選手や、東のサイドからのスライド、あるいは中島の登用などいろんなプランがテストされている。

 満田は競争相手と比べてもCHでの経験は豊富だが、直近の試合ではWBを務めている。まだ試合を重ねていないとはいえ、CHとして退場して以降はまだ同ポジションで起用されておらず、優先度は見えてこない。

 CH候補の選手たちは総じてメンバー的には守備への意欲はあるものの、軽量級かつ前への意識が最優先の選手が多いのは気になるところ。出ていくことで穴を開けてしまっているなというケースも珍しくはない。

 今後入れ替えが激しいこのポジションに広島が補強をするのか、あるいはこのままのメンバーで後半戦も行ってこいするのかは不明。いずれにしてもこのポジションではまだ最適解を見つけている最中と言っていいだろう。広島は強敵ではあるがこの部分が試行錯誤中なのは川崎からすれば救いではある。

 保持には関しては高い位置からボールを奪えば直線的に進んでいく。ソティリウがいる時はまずはボールを預けてポイントとして、ポストから加速するパターンが多い。

 サイドからはWB。大迫や中野のフィードから外側から勝負を仕掛けに行く。加藤、大橋の両シャドーは内側でも外側の攻撃でもプレーできる。インサイドではポストの落としを受けて、アウトサイドでは少し外目のレーンのフリーランからチャンスを構築する。

 こう書くと汗かき役のようかもしれないが、スピードに乗った時の仕上げの質が高く、特に大橋はチャンスをフィニッシュに結びつける能力が高い。横浜FM戦のように相手を複数枚剥がすことができるという点を考えても、リーグ屈指の仕上げ役であることは間違いがない。

縦横無尽の列移動でCHに負荷をかける

 強敵であることは疑いの余地がないが、今の川崎であれば勝負できるポイントは十分にある相手だと思う。ここ2試合の川崎の強みはソンリョンや大南のような足元に不安のある選手を使いながらも、低い位置からの組み立てで相手のプレスと駆け引きしながら中盤に穴を開けて前進することができることである。

 特に中盤の枚数調整の部分が巧み。湘南戦のようにゼ・ヒカルドに任せてOKと判断し前に進んでいく橘田、新潟戦のようにビルドアップ隊に参加しつつもボールが前に進むにつれて自らがスルッと列を上げることができる山本など、MFの動きでビルドアップに枚数をかけながらも、後ろ重心にならないように調整をかけている。

 広島の守備の気になるポイントはまさにこの調整が効きそうなエリアである。広島の守備は相手のCHに対してシャドーの大橋と加藤が監視するのが通常であるが、高い位置に移動するとマーカーを離して後方にケアを任せる傾向にある。しかしながら、すでに述べたように広島のCHは現在試行錯誤の真っ最中。その上、前よりのポジションが多い分、広い範囲を守ったりマーカーを前線から引き取ったりなどは不慣れな選手が多い。

 よって、山本のように後方でボールを触りながら前線に列を上げるアクションはそうした広島のシャドーとCHが生み出すギャップに入り込むことができる可能性がある。

 「人ベースだけども、完全なマンツーではない」という広島の守備はイレギュラーなポジションに惑わされることが多い。先に挙げた山本の列上げに加えて効果的なのは横のレーン移動。顕著だったのは柏戦において縦横無尽に動きまわるマテウス・サヴィオを捕まえられず自由に攻撃の起点としてしまったことである。

 川崎でこの動きが期待できるのはもちろん家長だ。サヴィオの利き方を見れば、出張が刺さる可能性がある相手。中央付近をうろうろしながら縦パスを引き出したり、あるいはロングボールのターゲットになることに期待したい。

 同じ理屈で言えばSBの絞るアクションも効きそう。瀬川、ファン・ウェルメスケルケン、佐々木などはインサイドに絞ることで誰がついてくるのかを序盤のうちに確認しておきたいところである。

 横に動く家長やSBと縦に動くCHで広島のCHを縦横無尽に負荷をかけることが川崎の攻撃のプラン。強力なCBとロングボールでダイレクトに対峙するのではなく、その手前で起点を作ることで有利な状態で攻撃の仕上げに向かっていきたいところである。

 もちろん、プランの実装は簡単ではない。低い位置からのボール保持から逃げてロングキックがベースになれば、広島の中盤に負荷をかけることは難しい。新潟戦や湘南戦くらいは自陣から繋いで、広島の前線の視線を前に引きつけることは必要である。

 また、湘南や新潟と比べても仮にプランがハマったとしても支配力が持続する相手ではないのは明らか。優位に運ぶことができる時間はここ2試合と比べても短くなることが予想される。なおさら、1回の敵陣への侵入からゴールの可能性が高い状況を作り出し、得点に結びつけることが求められる。

 関東と広島を1週間で往復する相手のスケジュールはホームでの連戦となる川崎よりもハード。現に新潟戦では残り10-15分はかなり苦しい時間帯となっている。川崎は負傷者が戻ってきつつあることを踏まえれば、終盤戦でももう一山作れるかは勝負になる。

 非保持でも我慢は求められることになる。サイドアタックはシンプルではあるが、大外とハーフスペースのコンボから手薄な逆サイドを狙うクロスという得点パターンは強力。前回対戦は2つともファー寄りのクロスを決められている。川崎からすれば神戸戦でもファーのケアが甘くなることで失点を喫している。ここはケアしたいところ。

 また、直近2節の川崎は試合の経験値が薄い選手が出ている終盤の左サイドの守備の綻びが失点に直結している。試合の間隔が詰まっている中で修正は難しいが、ここもどこまで修正ができているかは気にすべきところである。

 ボトムハーフのチームに対して結果は残せなかったが、特に前半の試合運びは上位勢にもきっちり通用する仕上がりになっている。手も足も出なかった国立の神戸戦からの進歩を広島相手に見せることができれば十分に今後の自信になる。目先の勝ち点以上に、今自分たちが取り組んでいるプロセスに信頼を与えるためにも勝利は必須である。

 

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次