MENU
カテゴリー

「現在地がわかる中断明け」~2024.8.7 J1 第25節 川崎フロンターレ×ヴィッセル神戸 プレビュー

目次

Fixture

明治安田 J1リーグ 第25節
2024.8.7
川崎フロンターレ(14位/6勝10分8敗/勝ち点28/得点35/失点35)
×
ヴィッセル神戸(4位/12勝6分6敗/勝ち点42/得点37/失点21)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

戦績

近年の対戦成績

直近5年間の対戦で川崎の7勝、神戸の4勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

過去10戦で川崎の6勝、神戸の2勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

Head-to-head
  • リーグ戦では直近2試合とも神戸が川崎に勝利。
    • 川崎はリーグ戦で3試合連続未勝利。
  • しかし、開幕前のFFSCでは川崎が神戸に勝利している。
  • 直近3回の公式戦での対戦はすべて1-0での決着。
  • 神戸が川崎にダブルを達成すれば2011年以来13年ぶりのこと。

スカッド情報

川崎フロンターレ
  • 丸山祐市は欠場が続く。
  • ジェジエウは肉離れにより一時帰国。
  • 高井幸大は代表活動を終えて帰国済み。
  • セザル・アイダルが期限付き移籍で加入。
ヴィッセル神戸
  • 酒井高徳、宮代大聖、汰木康也、山口螢は中断前の公式戦及び親善試合を欠場。

予想スタメン

Match facts

川崎フロンターレ
  • 直近6試合のリーグ戦で無敗。ただし、勝利は直近の1試合のみ。
    • 最後に敗れたのが神戸。
  • 直近6試合のリーグ戦は無得点も無失点も記録していない。
  • ホームゲームでのリーグ戦での敗戦は4月7日の町田戦が最後であり、以降の8試合で無敗(W3,D5)
  • リードした状況から落としたのは25ポイントでリーグ最多。2番目に多い横浜FM(18)より7ポイント多く落としている。
  • 小林悠は神戸戦で11得点を挙げておりカードにおける最多得点者。
  • セサル・アイダルがプレーすればファビアン・ゴンザレス以来2年ぶりのJ1のコロンビア人プレイヤーとなる。
ヴィッセル神戸
  • リーグ戦直近8試合で1敗のみ(W3,D4)
  • リードを奪った14試合では負けがない(W12,D2)
  • クロスは広島(665)に次いで、リーグ2番目に多い644本。
    • 3位以下は400本台
  • 公式戦における前半の失点は5だけで全体の21%。
  • 大迫勇也は直近3試合の出場した川崎戦で3得点。
  • 佐々木大樹はリーグ戦2試合連続で得点に関与している。

予習

第22節 広島戦

第23節 札幌戦

第24節 名古屋戦

展望

負傷者がいてもメカニズムを維持できるか

 オリンピックで寝不足の日々が続く中でついにJリーグも再開。まずは11日間で3試合のリーグ戦をこなす真夏の過密日程から後半戦はスタートする。

 初戦の相手となるのは神戸。川崎からすれば負ければシーズンダブルを食らうことになる試合である。

 神戸は前回対戦の時と大きく変わっていない。もちろん、中心となるのは大迫。神戸は彼だけのチームではないけども、中心に彼がいるのもまた間違いがない。ロングボールのターゲットとなり、前線で起点を作り前向きの選手を生み出すという点ではJでは右に出る選手はいないといってもいいだろう。

 この大迫を起点として前向きの選手を作ると、素早くサイドに展開。ここからのクロスからボックス内に迫っている。Match factsで触れた通り、クロスはJにおいては広島と神戸が圧倒的な本数を記録している。ほかのチーム以上にゴールに向かう手段として頻繁に使っていると位置づけていいだろう。

 クロスは裏に抜けた選手から狙う形と、裏を狙う選手を囮にマイナスでフリーになった選手からクロスを上げるパターンが多い。クロスのターゲットはもちろん大迫が強力なのは言うまでもないが、大迫を囮にして武藤などほかの選手が入り込むのがうまいのが神戸の特徴である。このあたりも大迫が中心だけど、大迫だけじゃないという今の神戸らしさを表しているといっていいだろう。

 ざっくり神戸の攻撃をまとめると、

「(大迫のポストなどを用いて)中盤でフリーの選手を作る」

「サイドに展開に2人、もしくは3人で裏抜けもしくはマイナスでフリーの選手を作りクロス」

「逆サイドから絞った選手+中盤の攻め上がりを生かし3人程度でクロスを押し込む」

 ただ、神戸は若干怪我人が多く、このモデルの機能維持には怪しさもある。負傷者が大きいのは前線の左のユニット。汰木と宮代の欠場が続いているため、実直に抜けだしと飛び込みを繰り返すことができるIHの佐々木と組むWG探しに苦慮している。

 直近の公式戦である名古屋戦ではパトリッキが先発を務めた。もちろん、鋭さはあるのだけども、どちらかといえば自分が抜け出すタイプなのでやや一本調子になりやすく、サイドからのコンビネーションでフリーを作ってクロスを上げるタイプではない。初瀬をフリーにする場面も限定的で攻撃に参加する頻度も少なくなってしまう。パトリックはどちらかといえば、大南を退場に追い込んだシーンのようにジョーカーとして登場して背後を狙う直線的な攻防が増える後半戦で欲しいタイプの選手である。

 サイドチェンジを引き受けてクロスを上げる、そして逆サイドから来るクロスに飛び込むという今の神戸のWGに求められる要素に一番近い働きをしているのは広瀬だろう。だが、神戸は右のSBの酒井が負傷。飯野はいるのだけども、彼はなかなかプレータイムが増えてこない。広瀬をこちらに回す場合もあるだろう。

 そうなれば、左は山内かパトリッキのどちらかになる。いずれにしても左右のサイドはユニットとしての機能が重要。負傷者の復帰がどこまで見込めるのか、そして再構築はどこまで進むのかは注目ポイントだろう。

 CHでは山口の欠場が噂されている。カウンター時に攻め上がりから中盤から厚みをもたらせる役割として、活躍が目覚ましかっただけに、ここでの欠場は残念。山口不在の影響は気になるところである。

 守備では攻撃ほど属人性はないので、欠場者の影響はそれなりに抑えることができると予想。少なくともバックスに人が足りなかった昨季ほど人がいないことによる苦しい部分は薄いように思える。井手口も非保持であれば山口と遜色ない潰し屋ぶりを発揮することができるだろう。

 保持時は4-3-3色が強いが非保持においては4-4-2。大迫と左のIHが前線に並ぶという2トップのカラーのコントラストがはっきりした4-4-2だが、均質的に守備の負荷を担っている印象だ。大迫は前回の川崎戦で高井のパスルートを寸断する巧みな守備を披露。川崎の左サイドを封鎖する切り込み隊長を担っていた。

 守備に関しては構える場面と出て行く場面を場合によって使い分ける柔軟性がある。ブロックの中に縦パスが入れば、中盤での激しいデュエルからインターセプトを狙い、一気に攻撃を加速させることもできる。

 SBは人によっては対人強度にはやや不安があるが、山川とトゥーレルのCB陣は強力でそこまで苦手な場面は多くはない。CFにも優位を作らせない優秀なユニットである。

 昨季のチャンピオンチームだけあり、大迫という軸ははっきりしながらもどんな局面に対してもある程度対応ができる幅の広さと強度はきっちりと持ち合わせている印象である。やや、負傷者で層は薄くなっているのでACLが始まって以降のやり繰りは少し気になるところである。

ファーのクロス対応が問われる左ユニット

 神戸は相手によって明確にやることを変えるような対策型のチームというよりはどこが相手でもやるべきことをきっちりやりつつ、展開によって少し味付けを変えてくるようなチーム。したがって、神戸を倒すために川崎に求められることは前回と同じである。

 もちろん、大迫とのデュエルでどこまで後手を踏まないかは重要である。川崎はCFに対してMFとはさみながら潰すのではなく、CBに潰す役割を投げるので、大迫のような手前を使って叩く選手には相性がとても悪い。今をときめく高井にもこうした奪いきれない状況でもきっちりと出て行ってしまうので、事態をより悪化させてしまうという難点がある。

 出て行くのであれば、きっちりとボールにアプローチするもしくはボールに入る前に体を寄せて安定した体勢でプレーさせないことだろう。大迫は優秀なので、多少体をぶつけられてもきっちりとプレーできることもあるだろうが、それでも体をぶつけないことには始まらない感がある。

 またMFも自陣から出て行くことの意味合いを考えるべきだろう。前後に挟むことができれば大迫を抑える難易度は少し下がるし、逆に背後を使われるような安易なスペースの空け方をするのであれば、さらに大迫を抑える難易度は上がる。

 もっとも、プレスに関しては大迫に関係なく前回の対戦では課題が残っている。左のユニットである山内と遠野の連携がぐちゃぐちゃで、WGの山内がマークをあっさりと外されてしまい、遠野が引っ張り出されて中盤がスカスカになるという状況の繰り返しだった。

 神戸の攻撃のメカニズムで述べたが、大迫のポストを使わなくてもクロスを上げるためにサイドに展開できれば彼らの攻撃は成立する。山内と遠野を外し、中盤でフリーの選手を作るという手順でも神戸の攻撃の土台は作ることができる。

 というわけで川崎も前からのプレスで不用意にこうした状況を与えないことが重要になるだろう。大迫を完全に抑えるのが難しいのがわかっているからこそ、連動しない前からのプレスから中盤にスペースを明け渡す流れは避けたい。

 ややこしいのは直近の名古屋戦でそうだったように神戸のバックスにはプレッシャーをかけられるとバタバタする傾向があること。つまり、きっちり追い込むことができればプレスをかける意味が出てくる相手なのである。序列が下がったゴミスが出てこないと仮定するのであれば、川崎の前線の機動力は前回よりはあるはずなので、どこまでプレスに積極的に取り組むかは重要なポイントになる。

 クロスの対応に関してはまずホルダーにどれだけ制限をかけられるかが重要。神戸の前線はサイズがあるのでハイボールでも苦しい対応にはなるが、それでもインサイドで準備ができる分にはマシ。すでに述べたように神戸のサイドのユニットは人員の入れ替えでやや機能不全になる可能性があるので、川崎のサイドの守備はきっちりとついていきたい。

 さらにはファーサイドのクロス対応にも要注意。大迫をフリーにしないのは前提だが、神戸は大迫を囮に浮いたほかのターゲットを生かす形がとても多い。大迫がニアなら浮くのはファー、大迫がファーならニアと大迫の引力を使って空いたスペースに佐々木大樹や武藤、山口が飛び込むのがとてもうまい。

 前回の対戦で川崎はニアに絞る武藤に対して佐々木旭が引っ張られてその外側を使われるケースが頻発した。大迫の引力を使う武藤の引力を使って、さらに空いたスペースを使われるという流れである。三浦もこうしたクロス対応はあまり得意としていないので、非保持で武藤とマッチアップすることはとてもハードなめぐりあわせになるはず。いずれにしても武藤の絞りはどの試合でも見られる普遍的な可変なので、ここへの準備はきっちりと行っていきたい。

 基本的にはこのクロスが攻撃のベースになるため、川崎がリードして終盤を迎えた時は逃げ切りの方策として必ず3バックの準備をしておくべきである。保持で時間を作りながらというのも90分のスケールで見れば重要だけども、最後の数分を守り切るのに人海戦術ができないチームは絶対にACLでは無理。神戸のような攻めの厚みの増し方をしてくるチームはアジアにたくさんいるので、そこを意識して低い位置での守備で最後は締めるということはきっちりやってほしい。

 保持も基本的には前回と同じである。バックスとGKで神戸の2トップのプレスをきっちり外すこと。前回はバックスが相手の誘導を外せないまま強引に縦パスを入れて、待ち構える山口にゴミスへのパスルートを封鎖されることで攻撃が成り立たなかった。

 家長の出張やゼ・ヒカルドの投入のように、山口にマーカーを用意することができれば行動範囲が広くないアンカー役の扇原の左右は空きやすい。この試合では山口ではなく井手口が予想されるが意識することは同じ。川崎は4-2-3-1でのビルドが増えているが、CHが井手口の仕事を増やすように動きながらボールを受けてもらい、ライン間へのパスルートを空けたいところである。

 アタッキングサードでは4-2-3-1の分、WGとSBの攻撃での二人称の攻撃が増えやすい。ゴミスの序列が下がったことでボックス攻略は振り出しに戻った感があるが、左大外の三浦や山本のサイド活用など柏戦ではこの部分には光が見える展開になった。バックスから相手の中盤を引き出しつつ、縦パスでスイッチを入れてCHを解放、もしくは武藤の背後を取る形で三浦のオーバーラップが刺されば、川崎はチャンスを迎えることができるかもしれない。

 守備ではコンパクトな4-4-2ブロックから相手のCFを挟みつつプレス隊は余計なスペースを与えない。保持では自陣からボールをつなぎつつ、サイドからの攻撃を少ない人数でも成立させるための手法を確立する。神戸を倒すためにやるべきことはどちらも後半戦の川崎が石にかじりついてでも取り組まないといけないことのように思える。

 ACLがあり、週2の試合が増えることで、前半戦よりも負荷が高まるシーズンになるのはもはや確実。神戸という強度の高い相手に対して、どこまでこの課題をやり切ることができるかで後半戦の川崎の現在地がわかる一戦になるだろう。

 

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次