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「半分だけレビュー」~2024.8.24 J1 第28節 浦和レッズ×川崎フロンターレ レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

効かされたサイド攻撃の初手

 ご存知の通り、試合は前半だけで終わってしまった。けども、まぁ半分だけレビューを書きます。よろしければ。

 立ち上がりにペースを握ったのは浦和であった。主導権のきっかけとなったのはボール保持。初手は左サイドの大畑が抜け出すアクションからクロスを上げることで川崎のボックス内に迫っていく。

 大外から仕掛けていったこのシーンはある意味この試合の象徴的な浦和の崩しのように思えた。浦和は保持において基本的に3-2-5に変形。グスタフソンが最終ラインに落ちることでズレを作っていく。このズレを活かしてサイドを動かした浦和が攻め切ることで主導権を握っていった。

 グスタフソンはやはり匠である。落ちる場所をコロコロ変えることで相手のプレスの狙いを絞りにくくしていたし、落ちる必要のない時は落ちないし、中盤でのポジションの整え方が絶妙。14分手前の脇坂に背中で消されたところから現れて、大島を引きつけつつサイドに逃がすプレーは最高であった。

 川崎が後手に回ったのは浦和のビルドアップに対するプレッシングである。高い位置から捕まえにいく意識はここ数試合より強かった川崎だが、やや空転気味。特に左サイドのマルシーニョのところがアキレス腱。彼が浦和のバックスにプレスに行くと、後方が簡単に空いてしまう。

 4-2-3-1というのは4-3-3に比べると構造的に中盤がWGの背後をケアしにくいし、大島がそのポジションを守るのであればなおさら。マルシーニョの後ろを三浦がカバーするにも後方に残るのが大島と車屋であれば、出ていくことを躊躇するのは当然である。

 マルシーニョのプレスが空転することによって、石原はオーバーラップで浮くことがしばしば。ただでさえ、大島サイドのプロテクトは今の川崎における課題なのだけども、マルシーニョが外されてしまうことで、川崎は一手損の状態でサイドの対応に追われることとなった。

 ただ、枚数が足りていてもこの日の川崎のサイドの守備対応には難があった。渡邊のようなどちらのサイドにも顔を出す不確定要素の存在もあるせいで、サイドの守備には受け渡しが発生。そのせいで浮く選手があっさりと出てきてしまう。

 12分すぎのサイドでの対応は苦しかった。大久保が大外でボールを持っている時にハーフスペースを走り抜ける石原は明らかに最優先の選択肢。むしろ、ここさえ消せてしまえば問題はないシーンである。ハーフスペースを抜ける手段1つしか持っていないチームが怖くないことは直近で対戦したFC東京で学んでいる。

 浦和としても本来は石原がここを抜けることで川崎の守備を動かしてどうこうという話に持っていくことは当然頭に入っているはず。だが、川崎は初手であるここを外してしまっていたので、浦和はあっさりとここからのルートからクロスに持っていくことができていた。サイドのズレに加えて、CBの車屋が潰しに関しては全く関与できておらず選択肢を制限できなかった。

 サイドの封鎖が遅れるのは右サイドも同じ。典型的だったのは10分手前のシーン。降りる関根の受け渡しに失敗した川崎は渡邊に裏を取られてサイドを破られて逆サイドの石原にあわやという場面を作られている。降りる関根にはおそらく佐々木がついていくのがリーズナブルなように思える。遅れて出ていった佐々木とファン・ウェルメスケルケンによって被害はさらに広がった感があった。普段左のCBをやっている佐々木も右では景色が違うのかなと思える場面であった。

 失点シーンもこの場面と同じく、大外からサイドを破られて逆サイドに流れたところから。大島のカバーに気を取られた三浦が石原を止めるのが遅れ、クロスを許す。逆サイドに流れる過程で佐々木が滑ってしまったこともあり、そのスペースに入り込んだ渡邊がクロスに合わせてゴールをゲット。間に合うかどうかは別としてまたしても車屋は反応できず、試合勘の欠如を露呈してしまった感があった。

光明と言える攻撃の形

 川崎の保持に対して浦和は前から積極的に阻害していく。渡邊、リンセンの2人は中盤をケアしつつ、バックスにプレス。さらには左のSHの関根が絞って川崎の中盤のケアに参加する。浦和から見た成功例となるのは3分の橘田を関根が挟んだシーン。ここでボールを奪えればショートカウンターの道が開ける。

 逆に川崎は関根の背後を使うことができればチャンスになりそうではある。やや拙いパスワークながらも2分のシーンなどはそういったボールの動かし方ができていた。しかしながら、まずは中盤に顔を出してプレスを回避することを優先したのか家長が低い位置まで降りることが多く、右サイドは深さを作ることができず。前節までは機能していた右サイドの連携は機能しない状態に。

 唯一、川崎の攻撃が機能したと言えるのは33分のシーン。右サイドからボックス内に遅れて侵入した家長が折り返すとインサイドのマルシーニョに対して縦方向の動きでフリーになった山田が決定機を迎える。これはプレビューで触れたボックス内でのクロスの受け方の工夫でもある。こうした場面も多く作れれば、今の川崎の攻撃の強みである三浦とファン・ウェルメスケルケンのクロスを活かすことができる。

 三浦とファン・ウェルメスケルケンの2人は自陣からのドリブルでボールを前進させるところでも貢献。堅かった中央のプレスを迂回する形でサイドから穴を開けることができていた。

 ただし、失点してからは押し込む機会が増えたにも関わらず、サイドでボールを動かしつつ浦和のラインを揺さぶることができなかったのは頭が痛い。サイドの崩しにおけるシンプルなSBのクロス以外のプランが打ち出せなかったのはこのメンバーであれば痛恨と言っていいだろう。

 試合は35分が過ぎたところでこうしたレビューでは触れることができなくなるような大乱戦に。ピッチではボールが止まるシーンが連発し、相手を動かすとかそういう話が通用する次元では無くなってしまった。その後、ハーフタイムに試合の中止が発表されて、この日は前半で試合は打ち止めとなった。

あとがき

 大島サイドの封鎖という横浜FM戦の課題はCBの入れ替えにより改善どころかさらに拍車がかかった感がある。さらには前から捕まえにいくことが難しいのではないかという仮説も立証されてしまい、改めて試合を保持で支配できないような展開におけるギアチェンジができないという課題が浮き彫りになった。その上、生命線である押し込んだ時のクオリティも直近では最低。45分で0-1での再開が想定される延期試合の状況が苦しいのは間違いないが、この日このまま続けても勝ち筋が見えなかった可能性もあり、見方を変えれば川崎はゴングに救われた試合とも取ることができるだろう。

試合結果

2024.8.24
J1リーグ
第28節
浦和レッズ 1-0 川崎フロンターレ【前半で中断】
埼玉スタジアム2002
【得点者】
浦和:32‘ 渡邊凌磨
主審:上田益也

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