このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第28節
2021.9.18
徳島ヴォルティス(17位/6勝5分17敗/勝ち点23/得点20/失点40)
×
川崎フロンターレ(1位/20勝6分1敗/勝ち点66/得点58/失点17)
@鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム
戦績
近年の対戦成績
過去4回の対戦で川崎の4勝。
スカッド情報
【徳島ヴォルティス】
・岸本武流は前節退場により出場停止。
・宮代大聖は規約により出場不可。
・ムシャガ・バケンガにデビューの可能性。
【川崎フロンターレ】
・大島僚太、旗手怜央、車屋紳太郎、谷口彰悟は欠場が続いている。
・山村和也は蔚山戦で負傷交代。
予想スタメン
Match facts
【徳島ヴォルティス】
<徳島のMatch facts>
・2018年11月のJ2時代以来のリーグ戦5連敗。
・直近5試合のリーグ戦は全て無得点。
・直近14試合の公式戦でクリーンシートはない。
・チーム全体のセーブ率が61.5%でリーグ最下位。
・今季の勝ち点23のうち、21は現在の順位がボトムハーフのチームから得たもの。
・公式戦のチームトップスコアラーは6得点の宮代大聖。
残留に向けて正念場といったところだろう。現状でのリーグ戦は5連敗。そのいずれにおいても得点は取れておらず、8月9日のG大阪戦以来1カ月以上勝ち点はおろか、得点から遠ざかっている。
かといって守備面でも盤石さはなく、14試合連続で失点中。リーグで最も少ないセーブ率もあってかGKは上福元から長谷川に交代している。
上位勢は苦手+今季トップスコアラーである宮代の不在と川崎戦に向けての不安材料はあるが、コンディション面での優位を利用しての勝ち点奪取をもくろんでいるはずだ。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts>
・直近6試合の公式戦で1勝のみ(D4,L1)
・アウェイゲームは2戦連続で未勝利。直近4戦で1勝。
・ACL直後のリーグ戦は5連勝中。
・直近19試合の16位以下のチームとの対戦は無敗(W15,D4)。
・山根視来はタックル勝利数46でリーグトップ
・脇坂泰斗は今季の枠内シュート率18%。自身のキャリアワースト。
ACLの遠征、及び敗退はチームにとって心身ともに大きなダメージがあることは予想される。負けてはないが勝てておらずそれがコンペティションの敗退につながっているというのが現状である。
今節からまた2試合アウェイでの連戦が続く。移動の観点から見れば長距離となる移動は次の代表ウィークまではこの徳島が唯一となる。なんとかここをしのいで関東に帰りたいところだ。
優位なデータとしてはACL後のリーグ戦は5連勝中であること。そして、16位以下と順位が低いチーム相手ならば勝率が高いこと。こちらは20戦近く負けておらず、2018年9月のG大阪戦を最後に負けていない。
ACLでさすがの存在感を見せた山根。高い位置からのアプローチでチームを助けている。代表を機に一層パフォーマンスを上げているといっていいだろう。一方で殻を破り切れないのが脇坂。三笘の離脱以降のポイントである得点面では枠内シュートの率が大きく低下。昨年は33%,一昨年は54%だった枠内シュート率は20%を割っている。精度が戻ってこなければ数字はついてこないだろう。
展望
■J1でのジレンマとの戦い
徳島はMatch factsで述べた通り、苦しい状況が続いている。基本的なチームのコンセプトは春に対戦した時と大きく変わっていない。立ち位置を制御しつつ、ボールの保持を大事にして前進していくことを重視しているスタイルである。
その中でやや悩ましい部分が垣間見えるのが今の徳島である。根底にあるのはおそらくJ1で戦っていくの中のジレンマなのかなと思ったりする。
徳島のやり方を復習する。画像は3月のプレビューから引っ張ってきているので多少メンバーが代わっているがご容赦を。ざっくりだから詳しくは昔の記事読んでね
1. +1を作る
CHの2人が段差を作り、片方(図だと岩尾)が最終ラインとリンクする役割でもう片方(図だとジョエル)が前方に入り込む役割。足りなければジョエルは岩尾とフラットになることもある。5レーンは両WBとシャドー、CFで埋まっており、トップ下の渡井はフリーマンとなって好きに動くことが出来る。
2. 3-2-5
SBの役割がアシメのパターン。多くの場合は右の岸本が高い位置を取り、左のSBが低い位置に留まる形で人数調整をする形が多い。
3月の時点で今季は②のパターンが多い!と紹介したけど、今はさらに②の色が濃くなっているように思う。この②のやり方のいいポイントは最終ラインでの数的優位を活用しながら丁寧に1stプレスラインの突破をしやすいこと、そして大外のWBに楽にボールを届けられるルートがあることである。
逆に難点は何か。バックスにボールを運ぶ能力がなければ中央でズレを作るのが難しいところ、そして、大外のところで打開が出来なければ手詰まりになりやすいところである。
この3-2-5を採用した時の難点が今の徳島が得点で苦しんでいる部分といえるだろう。バックスはカカやジエゴなど外国籍選手が入ったことである程度強度は増した。安部のように開幕当初にスタメンを張っていた選手だと、J1ではややフィジカル面で心もとない部分があるということだろう。足元の技術は惜しいが、泣く泣く外すという判断に至ったはずだ。
しかし、非保持強化のために入れたバックスの外国人選手は現状ではビルドアップ面でなかなか違いを出せていない。したがって、どうしても中が動かせないことが多い。ポヤトスも中盤の形を変えたり、岩尾が最終ラインの左に落ちたりなど、ここ数試合で様々なことを試しているが、どうもしっくりこないのが現状だ。
仮にビルドアップに関わる人を減らせば、①のやり方でズレを作れるのだろうが、現状のバックスのスキルでは人を減らすリスクは取れないのだろう。足元のスキルは高いがミスの多さゆえに上福元から長谷川に正GKが代わったのも、ビルドアップの観点だけで見れば手痛い部分である。
無論、それでも3-2-5で攻撃を成立させる手段は十分にある。もう1つのメリットである大外からの破壊である。5レーンを埋める形ならば、ニアのヘルプとしてハーフスペースに人も置けるし、突破した後、エリア内に逆サイドから飛び込む選手も用意できる。
だが、多くのチームはすでにボールサイドのハーフスペースをどう塞ぐか?についてはインストール済みなことが多い。そうなってしまうと、大外が打開をしなければチームの攻撃は膠着する。大外に負荷がかかる構造だ。西谷はいい選手だが、チームの崩しを一手に引き受けるほどの突破力を期待するのはやや重荷な感はある。
そうなってくると浮いている人が作ることが重要になっていると思う。誰がどこに出てくるの?とか、ここを誰が使うんだろう?とかそういう不確定要素。3-2-5は攻撃において使いたいスペースに人を網羅的に置くことが出来ている形ではあるが、その場所に出たり入ったり入れ替わったりが少ないと個々の打開力に依存する可能性がグッと高まってしまう。
徳島は立ち位置が決まりすぎている上に、決定的な打開力を有していないためにやや硬直しているような印象を受けるように思った。でも、なんで3-2-5を使っているの?と考えると、最終ラインの強度とトレードオフになった結果!というのが出発点になってしまうので、ジレンマ。だが、宮代不在の前線でバケンガが起爆剤になればあるいは打開も見えてくる。本人も意気込み十分な新外国人選手がチームの得点力不足を解決する一手になるだろうか。
■動かせても使えなければ意味がない
川崎としてはまずは5レーンをきっちり封じることだろう。ボールサイドのハーフスペースをどう埋めるか。ここは整理しておきたい。徳島は中盤を介した高速サイドチェンジのような部分はあまりないので、まずはボールサイドで突破されないことが重要だ。
4-2-3-1の採用はそのやり方の手助けになりうる。CHが落ちることで同サイドをカバーはしやすい。4-3-3を採用した場合はIHはWGの裏のスペースを埋める意識が高く、最終ラインのヘルプは難しい。アンカーが動いてしまえばバイタルを空けてしまうというまた別のリスクを背負うことになる。
大外でそもそも前を向かせないという考え方もあり。登里、山根の両SBは高い位置まで追いかけていって背中方向からボールを取るのがうまい。大外を担当するであろう西谷、藤田征に前を向かせないのもありだ。余談だけど、徳島としては大外のフリーランで効いていた岸本の出場停止は非常に痛い。
この大外への速めのチェックがうまくいけば押し込んでのワンサイドゲームも視野に入る。できればボールを持ちつつ休みながら試合を進めたい川崎にとっては、思い切って前からっていうやり方を考えてもいいだろう。
徳島の守備は4-4-2と4-1-4-1の使い分け。特に4-1-4-1の守備で気になるのはIHがやたら前に出ていくこと。SHより高い位置に出ていく上に、出ていくタイミングがちょっと遅い。ホルダーに対して、一番近い人だけが順番にダッシュしている状況は隙があるように思う。ホルダーにはある程度プレッシャーをかけられても選択肢は絞り切れていないから。
徳島がその状態が最も顕著になるのは4-1-4-1からのIHの飛び出しである。サッリ時代のチェルシーの非保持とかと似ている。出て行くタイミングの遅さゆえにカンテがチェイスしてもあまりうまくいってなかったように思う。カンテで無理なら難易度は相当高いやり方。個人でいうと鈴木徳真がスペースを空けてプレスに飛び出すことが多いように感じる。
そして、4-4-2でも4-1-4-1でも気になるのは最終ラインのカバーリングが遅いこと。中盤が最終ラインの手助けに入ることが少ないため、最終ラインが動かされてしまうと穴が空いてしまう。
ただし、懸念があるのは川崎も同じ。徳島がカバーに入るよりも先にスペースを使わなければ穴が空いていても意味がない。そういう意味では川崎にも硬直のリスクはある。韓国帰りで心身ともに疲弊している川崎がどれだけのコンディションでこの試合に臨めるかはもちろん大きなポイント。仮に動けなければ徳島と同じく個の打開力が問われる展開になりかねない。懸念となる硬直を避けられるチームが優位に立てる試合となるだろう。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)