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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~Group B Match week 1~ 2021.9.2

 初戦負けちゃったけど、果たして日本はアジア最終予選を突破できるのか。その真相を探るべく、我々はグループBの試合を見てみることにした。というわけで欧州もアジアもグループBを全試合見てみます。それでは行ってみよう。

目次

①日本×オマーン

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■優位性の担保が外れたことが招いた敗北

 中央とサイドにバランスよく人を置いた日本の4-2-3-1に対して、オマーンが採用したのは中盤ひし形の4-4-2。中央に極端に人を置いたやり方だった。

 展開としては、中央に密集するオマーンの守備陣を日本がサイドチェンジを交えながら分解できるかどうか?というものになっていくのだろうなと予測できた。そういう展開に実際になった時に気になったのは柴崎の存在。柴崎の持ち味はトランジッション局面における状況把握の早さとそれを活かした縦パスで一気に局面を進めるカウンターを発動できることである。

しかし、この試合においては中央に人が多い陣形になっているオマーンに対して、一撃必殺スルーパスは相性があまり良くない。柴崎自体のコンディションは悪くはなさそうだったが、持ち味と展開がミスマッチになりそうなプレイヤーだなと思った。

 もう1つ、柴崎は守備においてニアのハーフスペースを埋める意識が希薄で、左のペナ角付近で相手に前を向かせる頻度が多かった。この試合においてはオマーンのアタッカー陣が中央から外まで自在に流れながら攻撃を繰り返していたので、対応しにくかったかもしれないが、3分のシーンのように割と埋めるのが簡単そうな場面でもオマーンの選手にノープレッシャーで前を向かせているのは気になった。

 オマーンの守備の目的は明らかに同サイドでの封鎖。ボールサイドのFWは自陣の低い位置まで下がっていたし、トップ下やアンカーなど盤面上はピッチのセンターラインにいる選手もボールサイドに流れることで密な状態を作っていた。

 それでも、日本は吉田を主体として対角にパスを送ることで徐々にペースをつかんでいく。広いスペースがある方のサイドに振るパスはもちろん、特に効果的だったのは右のWGの伊東の裏抜けに合わせたフィード。オマーンの最終ラインを縦に突っつくこのやり方は試合を通して最も効果的だったといえるだろう。

 逆に、大外のサイドでボールを持った時は手詰まり感があった。DF-MFのライン間の内側で原口のサポートをする先週や、ハーフスペースの裏に走り抜けることで、原口にカットインのスペースを作る動きがなかったことが停滞の要因。そうなると、原口がドリブルで相手をちぎって投げ続けなければ活路は見いだせない。

 オマーンの攻撃はその日本が出来なかったサポートが非常に上手だった。大外でボールを持つ選手を内外から追い越すように同サイドの裏抜けを挟むことでSBをピン止めしつつ、CHやSHをどかしてしまうフリーランは効いていた。後方からのビルドアップもアンカーが浮いたり、インサイドハーフがサポートのために降りてきたりなど日本のプレスにつかまらない工夫を披露。高い位置においてはサイドチェンジを減らす代わりに、エリア内に飛び込む人数をかけてクロスに威力を持たせるやり方に専念していた。

そういう時にこれまで何とかしていたのは日本のバックス。大外で持たれた場面でいえば酒井と長友にボールホルダーが食い止められてしまえば何もできはしない。しかし、この試合ではアジアで敵なしだった両者の絶対性は見られず。酒井に関しては試合後離脱したようにコンディションの部分がおかしかったし、長友も本来であれば置いていかれないところで置いていかれてしまう場面が目についた。吉田も離脱こそしていないが、コンディション的にはぎりぎりだろう。

 アジアで優位性を保つために不可欠だったバックスがツケを払えないとなると、いよいよゴールを脅かされることになる日本。抜け出しから大外に柴崎を引っ張り出すと、クロスするランで手前に入ってきた動きで植田を翻弄したアル・サブヒがフィニッシュ。試合終盤に先制点をゲットした。

 後半の日本は今、最も旬なタレントである古橋に左サイドを託すが、原口の焼き直しの役割では難しいだろう。もっとスピードに乗った状態でボールを渡したいプレイヤーだ。個人的にはこういうことをやらせたいなら三笘が一番向いている気がする。ちなみに前線の裏抜けも裏へのフィードもなかったことを踏まえると、チームとして奥行きを使う考え方はあまりなかったはず。そうなると仮に古橋を中央で起用していたとしても厳しかったように思う。

 アドリブで何とかしたい!という前提に基づくのならば、交代で入った久保と堂安を併用するアプローチが最もシンプルで効果的だと思う。けども、そのやり方がオマーン相手に通用しなかった以上は、前提を考え直さなければいけないのではないだろうか。バックラインの優位という安定性がなくなったこの試合は、日本の厳しい現状が見えてくる90分となった。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
日本 0-1 オマーン
市立吹田サッカースタジアム
【得点者】
OMA:88′ アル・サブヒ
主審:モハメド・アブドゥラ・ハッサン

②オーストラリア×中国

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■本命たる所以を発揮

 日本と同じく2次予選を全勝で突破したオーストラリア。グループBは突破の本命として戦うことになる。帰化戦略で戦力を増強した中国とカタールの地で迎える最終予選の初戦である。

 ゆったりとした保持で試合に入ったのはオーストラリア。自陣の浅い位置まで使った深さをもたらすビルドアップで、中国をおびき寄せる。それに対してどこまで出ていくか?という部分を問われた中国。若干その対応は曖昧になっていたように見えた。特に左サイドハーフの17番のウー・シンハンが出ていったあと、ややポジションに戻らないことで、大外を空けてしまうことが気になった。

 オーストラリアはSBを左側だけ上げる意識を高める3バック的な変形。左はSBのベヒッチが高い位置を取り、WGのメイビルがやや絞り目の位置。やや5レーン意識は高いチームのように思えたが、右の大外は埋まらないこともあった。CHは縦関係でアーヴァインがDFラインからボールを引き出す役割をこなす一方で、フルスティッチは前目に位置する。

 オーストラリアの前線が大事にしていたのは奥行き。特に両WGの2人が縦に抜ける意識が高め。2点のゴールはどちらもWGの裏抜けが効いたところから。中国のミドルゾーンに構えるバックラインをあっさり壊してしまった。

 中国のビルドアップは2人のCBに対してうまくサポートを作れなかったように思う。SBは早い段階で上がってしまい、CHは背中でオーストラリアのトップに消されており、前線に蹴るしかやりようがない。だが、エウケソンは独力でキープ力を生み出せるほどの凄みはなし。偶発的に右のウー・レイのドリブルがスピードに乗った時しかチャンスにならなかった。

中国は押し込んだ際もサイドの攻撃の糸口はなし。手詰まり感がオマーン戦の日本の振る舞いと似ている感じがしたのは寂しかった。特にエウケソンのポストを使ってサイドを変えた後の停滞感とかはそっくり。結局個人技頼みが否めなかった。オーストラリアが流麗なサイドチェンジからダメ押しの3点目を決めたのとはあまりにも対照的だった。

 試合はオーストラリアの完勝。内容をみても保持での落ち着き、カウンターの威力、横断での崩しなどあらゆる局面でオーストラリアが中国を上回り、グループBの本命としての存在感を示した。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
オーストラリア 3-0 中国
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:24′ メイビル,26′ ボイル, 70′ デューク
主審:コ・ヒュンジン

③サウジアラビア×ベトナム

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■常連国の貫禄でじっくりと料理

 アジア最終予選初の参加を決めることに成功したベトナム。記念すべき初戦はこのステージにおける常連のサウジアラビアである。

 ベトナムは常連国の胸を借りるつもりだったのか、アウェイで思い切りのいい立ち上がりを見せた。フォーメーションこそ5-4-1と後ろ重心ではあったものの、隙があればラインをあげながらのプレッシングを試みる。特に積極的なプレスを行っていたのはCHの2人。サウジアラビアのCHに対して前に出て保持の阻害を試みる。

 その勢いのままにベトナムは一気に先制。サウジアラビアのクリアが甘くなったところで、22歳の新鋭である19番のグエン・クアン・ハイのシュートが炸裂。若きWGがベトナムの最終予選史上初のスコアラーとなった。

 先制点の後はサウジアラビアの保持一色に。ベトナムのローラインの5-4-1に対して、まずはボール回しで様子を見ながら攻略法を探す。糸口として見つけたのはベトナムのCHの積極的なプレスを逆手に取ること。彼らを誘き出した上で背後のスペースに選手を多く送り込み、そこに楔を入れることで起点を作る。CFのアル・シェフリのポストプレーに合わせた抜け出しも見られるようになると、徐々に積極的だったベトナムの守備陣は脆さが見られるようになっていく。

 サウジアラビアのブロックの溶かし方は堅実だった。内側に狙いを定めるだけでなく、きちんと大外も噛ませることで、ベトナムの守備に的を絞らせない。外を使ったと思いきや、今度はWGから斜めの楔で中を使うなどやり方はさまざま。サウジアラビアのアプローチは派手さはないものの、確実にベトナムにダメージを与えていた。

 そのダメージが決定的になったのは後半開始直後。大外から裏をとったサウジアラビアに対して、右のCBであるド・ドゥイ・マンがハンド。そしてこれが2枚目の警告となり、PK+退場のダブルパンチを喰らうことになった。

 こうなると一気にペースは同点弾を決めたサウジアラビアに。5-3-1だと中央の楔をケアするために閉じることや、逆サイドの手薄さをカバーするのがどうしても難しくなるベトナム。一方的なサウジアラビアペースの中、勝ち越しゴールとして積極的なオーバーラップを見せていたアッ=シャラハーニーがヘディング(アフロってなんでこんなに空中戦強いんだろう)でネットを揺らす。勝ち点をなんとか確保しようと積極的に攻めたベトナムを、今度はカウンターアタックから裏返すとまたしてもPK。決定的な3点目を獲得する。

 結局試合はそのまま終了。開始直後こそ面食らったサウジアラビアだったが、ベトナムをじっくり料理し、常連国としての貫禄を見せつけた。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
サウジアラビア 3-1 ベトナム
キング・サウド・ユニバーシティ・スタジアム
【得点者】
KSA:55′(PK) アッ=ドーサリー, 67′ アッ=シャハラーニー, 80′(PK) アル・シェフリ
VIE:3′ クアン・ハイ
主審:タンタシェフ・イルギス

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